ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

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朝日社説の陸自スーダン派兵論(再掲)

Written by Tanigawa

2013/12/25 at 13:20

ガルトゥング「ネパールの危機」(再掲)

J・ガルトゥング氏のレポート「ネパールの危機:好機+危険」(2003年5月22日)を読んだ。4頁ほどの短文だが,ネパール・トランセンドの概略はつかめる。

1.ネパール・ワークショップ
ネパールでのトランセンドは,2002年7月,PATRIR/TRANSCENDによって始められ,全国へ展開され,その一環としてガルトゥング氏(G氏)も2003年5月16-20日,訪ネした。

2.8プログラムの実施
G氏の日程は,国家人権委員会(NHRC)により完璧に準備され,8プログラムが実施された。

No.1,7=リシケシ・シャハ記念講演。知識人,ネパール世界問題協会対象
No.2-6=主要当事者との対話。政党幹部,NHRC関係者,人権活動家,和平仲介者,政府要人,軍・警察幹部,政府和平交渉団,マオイスト和平交渉団。

3.直接暴力・構造的暴力・様子見
G氏によれば,紛争に対しては,大別すると,3つの態度がある。

(1)直接暴力を行使する党派
(2)構造的暴力の現状維持を図る党派
(3)「高貴な」,アパシーによる,あるいは無気力な様子見の多数派

4.M,K,TP
ネパール紛争の主要当事者は,マオイスト(M),国王=国軍(K),第三勢力(TP)の三者である。

G氏は,もしMとKの2者対立なら状況はいっそう悪かっただろうと考え,紛争解決への大きな役割を第三勢力のTPに期待する。

TP(Third Party)=主要政党(PP),市民社会(NGOなど),人民(People)

5.対話による平和
つまり,TPが一致協力して,MとKを交渉テーブルにつけ,Mとともに暫定政府を設立し,憲法を改正する。この方向に向け,人民(People)は街頭に出て圧力をかけ,また市民社会も強力に圧力をかける。Mには議会制民主主義を,Kには立憲君主制を宣言させる。

そして,MとKの兵士を武装解除し,彼らを保健衛生,学校・道路建設などの共同作業に就かせる。

以上が,停戦,対話,互譲,創造性の下に行われるなら,平和が実現する。

6.ネパール紛争の危険断層
G氏によれば,ネパールにはもともと紛争を引き起こす危険な断層が11カ所あった。

(1)資源枯渇,環境汚染,(2)ジェンダー差別,(3)青少年問題,(4)国王の政治権力,(5)国軍,(6)貧困,(7)少数派文化,(8)ダリット,(9)支配文化,(10)地域格差,(11)外国介入

G氏によれば,これらはすべて人権問題であり,いわゆる「マオイスト問題」ではない。したがって,それらには人権問題として取り組まなければならない。それには,以下のようなことが必要である。

・全党ラウンドテーブル,人権対話を組織し,停戦監視,人権実現を図る。
・スリランカのSarvodaya,インドのDevelopment Alternativesのような経験から学び,そうした活動を組織する。
・平和・人権のための大会議の設立。
・真実・和解のプロセスを進める。

7.いくつかの疑問
G氏のトランセンド提案は,包括的であり,試みるに値するものも多い。その反面,これを読んだだけでは,いくつかの疑問が残るのも事実だ。

(1)TPは平和勢力たり得るか?
G氏は,もしMとKだけなら,事態はもっと悪化していただろうと考えているが,私はむしろ逆だと思う。MとKの2項対立(G氏の最も嫌う構図)であれば,紛争は一方の勝利か両者の妥協でもっと早く解決していたのではないか。

私は,ネパール紛争を泥沼に引き込んだのはTPの無原則,無責任な行為だと考えている。

(2)「人民」の示威行動,市民社会の圧力は有効か?
G氏は,「人民」が街頭に出て圧力をかけ,また市民社会(NGO,労働組合など)が圧力をかけることにより,PP,M,Kを平和に導いていけると考えるが,私はそうではないと思う。

ネパール政治の病巣は,まさに街頭政治,圧力政治,つまり制度不信にある。これ以上,街頭政治,圧力政治に頼ったら,紛争はますます泥沼化し,収拾がつかなくなるだろう。

(3)人権問題か?
G氏は,「人権」を文化中立的,普遍的なものと考えているようだが,それは間違い。「人権」は,明らかに近代西洋的価値であり,ネパール伝統文化とは両立しない。

「人権」強要の痛みを考えず,それを普遍的価値としてネパールに押しつけようとしても,成功はしないだろうし,もし成功しても,それは文化的に望ましいこととは言い切れないと思う。

(4)分権は前進か?
G氏は,分権(devolution)や緩い連邦制(soft federation)を提案するが,それは近代国家を経た北側諸国の発想であり,ネパールには妥当しない。ネパールの課題は,むしろ強力な国家主権の確立である。

ネパールの悲劇は,国家権力が強すぎることにではなく,弱すぎることにある。

(5)母語教育の可能性?
母語教育は,本当に住民自身が望んでいるのか? それはむしろポストモダン西欧諸国のロマンチックな(はた迷惑な)失われた夢の強要であり,現実には少数派民族の差別強化,固定化になりはしないか?

(6)市民社会,NGOは機能するか?
G氏は,わずか5日間の訪ネ中に8つものプログラムが完璧に組織され,時間通り実施されたことにいたく感激されているが,これはセミナーがネパールでは効率的なイベントになっているからである。

その現状を見ると,NGOをさらに組織したり,会議を開催することにあまり多くは期待できない。NGO産業,セミナー興業が繁盛し,庶民には無縁の高級ホテルでの豪華パーティが増えるだけ。むしろ構造的暴力の拡大になるのではないか?

8.疑問を超えて
以上,あえてG氏のレポートへの疑問を述べたが,これはトランセンド法を否定したいがためではない。

ネパール紛争は10年もたつのに,他の方法ではこれを解決できなかったことは,歴然たる事実だ。トランセンド法についてはまだ読みかじった程度なので,まずは思うがままに疑問を提起し,これらを手がかりに,さらに学び,ネパール紛争へのトランセンド法の適用可能性を探っていきたいと思っている。

* Johan Galtung, The Crisis in Nepal: Opportunity + Danger, May 22, 2003. (Report to UNDP, Kathmandu and NHRC, Kathmandu)

(2006/04/03掲載)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/02/15 at 11:14

ポカレル前副首相の長崎講演会(1/28)記事

Written by Tanigawa

2013/02/15 at 10:49

カテゴリー: 平和

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ポカレル前副首相講演: 憲法政治学研究会

130127a ■会場:同志社大学

130127c ■講演会

130127b 130127d
 ■カドガ.KC氏(左)とポカレル氏(右) / バッタライ大使(左)とBN.アディカリ氏

130127p  ■京都新聞1月28日

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憲法・政治学研究会 第542回例会

日時:1月27日(日)午後1時-5時
会場:同志社大学 今出川キャンパス 寧静館5階会議室(Tel:075-251-3120)

講演1:Ishwor Pokharel(ネパール前副首相兼外相)
    「ネパールの平和と民主化への道」
講演2:上田勝美(龍谷大学名誉教授)
    「日本の平和憲法と民主主義」

コーディネート・通訳:Khadga KC
   (トリブヴァン大学政治学部准教授、京都大学ASAFAS研究フェロー)
   谷川昌幸(元長崎大学教授)

主催:憲法・政治学研究会/憲法研究所
http://www.wld-peace.com/kenpo/kenpo.htm

Written by Tanigawa

2013/01/27 at 00:43

カテゴリー: 憲法, 政党

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憲法・政治学研究会:ネパールと日本の平和と民主主義

「ネパールの平和と民主化への道」 イシュワル・ポカレル(ネパール前副首相)
「日本の平和憲法と民主主義の課題」 上田勝美(龍谷大学名誉教授)

日時:1月27日(日)13:00-17:00
場所:同志社大学今出川キャンパス「寧静館」5階会議室
   地下鉄烏丸線「今出川」下車、電話:075-251-3120

主催:憲法・政治学研究会/憲法研究所

■参加費無料。ご来聴歓迎。

Written by Tanigawa

2013/01/09 at 11:36

カテゴリー: 平和, 憲法, 民主主義

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軍民協力に前のめり,PWJ

朝日新聞(7月20日)耕論「PKOあれから20年」に,ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)の石川雄史氏のインタビュー記事が出ている。石川氏は,JICA専門家等を経てPWJ南スーダン現地事業責任者。(他のインタビューは,川端清隆国連政務官(安保理担当)と高村正彦元外相・防衛相)

この耕論インタビューにおいて,石川氏は自衛隊南スーダン派遣を高く評価し,自衛隊とNGOとの協力,つまり軍民協力(民軍協力)の積極的推進を提唱されている。

「今年初め、自衛隊の施設部隊が首都のジュバに入りました。少人数で活動する私たちNGOと違い、300人以上の部隊はやはり存在感があります。彼らは情報を求め、現地で活動してきた日本のNGOと、積極的に交流しています。・・・・様々な制約を抱える自衛隊が、さらに地域に根ざした活動をしようとする際には、私たちNGOとの連携もぜひ、前向きに模索していただきたい。今後のPKOでは、NGOとの連携で国益確保する道もあると思うのです。」

これは驚くべき発言だ。自衛隊南スーダン派遣は,憲法違反であり,自衛隊自身も消極的であった。内陸深くの南スーダンに,はるばる日本から軍隊を送り込み,道路や橋などを建設することに,何の意味があるのか? 補給をどうするのか? 戦死者が出たら,どうするのか?

自衛隊南スーダン派遣は,当事者の自衛隊のこのもっともな合理的な反対を無視し,外務省が「安全保障の素人」一川防衛大臣や迷走田中防衛大臣を利用し,ゴリ押ししたのだ。

その自衛隊南スーダン派遣を,PWJは積極的に評価し,しかもNGOとの連携で自衛隊は「国益確保」を目指せという。かつては日本政府を厳しく批判したこともあるPWJ=平和の風・日本だが,最近は,風向きがかなり変わったようだ。

すでにPWJは,ハイチにおける自衛隊協力について,軍民協力の先駆けとなるものとして,外務省や防衛省・自衛隊から高く評価されている。

「10年12月、わが国の非政府組織(NGO)であるピースウィンズ・ジャパンと連携し、瓦礫とゴミの山となっていた地域に公園を造るため、自衛隊部隊が敷地の整地を行った。・・・・国際平和協力活動でのわが国のNGOとの連携は自衛隊にとって初めてのことであった・・・・。・・・・NGOとの連携などは新防衛大綱で示された方針にも合致しており、今後とも、ハイチでの活動をより効果的なものとすべく様々な活動に取り組んでいくこととしている。」(防衛白書2011「ハイチにおける自衛隊の活動について」

このような軍民協力は,NGOだけの問題ではない。防衛省・自衛隊がいまNGOと並んで主要ターゲットとしているのが,大学である。大阪大,神戸大,広島大,慶応大など,多くの大学が,NGOも取り込みながら,軍学協力に向かって突っ走っている。

そして,ここにはなぜか日本財団・笹川平和財団が深くコミットしている。たとえば,平和構築フォーラム参照。また,軍学協力については,【政治の動向】軍民分離から軍民協力へ,参照。

しかし,NGOや大学が軍隊と共同作戦を展開し,国益を追求するのは,あまりにも危険ではないか? カネと権限をもつのは国家である。そして,「暴力装置としての国家」の暴力の中核はいうまでもなく軍隊=自衛隊である。そのような軍隊との「協力」や「連携」など,本当にあり得るのか? 「民軍協力」「民軍連携」などという甘言に釣られ,協力を始めると,いずれ「軍民協力」となり,結局は軍隊の下働きとなってしまうのではないだろうか?

NGOは非政府(非国家)組織であり,定義上からも,政府や国家と一線を画するところに存在意義がある。大学も,もともと独立した学問共同体であり,国家や企業の下働きではない。即戦力養成,役に立つ授業ほど,大学の理念から遠いものはない。

そうしたものであるはずのNGOや大学が,たとえ背に腹は代えられぬという切実な事情があるにせよ,よりにもよって軍隊と協力をするのは,少し長い目で見ると,自殺行為であるといわざるをえない。

【参照】 
2011/11/02 朝日社説の陸自スーダン派兵論
2009/09/22 自衛隊海外派遣:「民軍協力」から「軍民協力」へ

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/07/20 at 19:16

カテゴリー: 平和

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人民解放軍,除隊開始

1.人民解放軍の除隊手続開始
全国の駐屯地(cantonment)に収容されている人民解放軍(PLA)戦闘員の除隊手続が,2月3日から始まった。平和構築への一歩前進である。

今回の除隊は,社会復帰希望者7365人が対象。(国軍統合希望者は9705人。) 除隊手当として,1人当たり50~80万ルピーと帰郷旅費が支給される。ただし,今回支給は半額で,残りは次年度支給となる。

2.ネパール式交渉術の妙
この除隊開始は,高く評価できる。いかにもネパールらしく,駐屯地収容から5年もかかったが,その間,ネパール式交渉術で少しずつ利害を摺り合わせていき,3日の除隊開始にこぎつけた。PLA戦闘員たちは,劣悪な駐屯地で5年間もよく頑張ったものだ。

3.除隊後の不安
しかし,その一方,心配も尽きない。除隊マオイストの多くはとりあえず故郷に帰るのだろうが,果たして受け容れられるだろうか? もっぱら他の村で「外人部隊」として暴れていたのなら比較的安全だが,もし出身地で闘っていたのなら,敵も多いはずだ。

また,除隊給付金50~80万ルピーは大金だが,村に仕事があるわけはない。もし10年前後も人民戦争に明け暮れていたのなら,戦争以外の知識も技能もないわけで,そのような人々が社会生活にすんなり適応できるはずがない。支給金など,すぐ使い果たし,生活できなくなってしまうだろう。

もっと不安なのが,かなりいるとされる傷痍軍人。特別プログラムでも組まないと,除隊後,たちまち生活に困る。その不安から,彼らは駐屯地内で特別プログラム要求闘争を始めた。しかし,弱者ゆえ,彼らの要求は無視されてしまいそうである。

4.国軍統合への展望
国軍統合を希望している残りの9705人についても,展望ははっきりしない。11月1日の「7項目合意」では6500人統合となっており,3千人もあぶれる。

いずれにせよ,特別部隊を編成しての統合になるのだろうが,指揮系統もPLA出身者の処遇もまだはっきりしていない。国軍統合には,もう少し時間がかかりそうだ。

5.PLA兵卒は利用されただけか?
いまマオイストが,政官財で「美味しい果実」を手に入れた勝ち組と,わずかな支給金でお払い箱になったり「国土建設警備隊」のような部隊に兵卒として組み込まれたりする負け組とに,二分化しつつあることは確かだ。負け組は,当然,勝ち組を非難する。

「われらの犠牲は金に換えられた。この日のために革命に参加したのではない」(チトワン除隊戦闘員)
「多くの同志が戦いの中で生命を犠牲にし手足を失った。そして,いま私たちは家畜のように売られていく」(Nabin BC)

多くのPLA戦闘員にとって,これは偽らざる心境であろう。英雄は,兵卒の血と汗と涙を糧に名声を高め,地位と富を得,死後に像を残す。歴史とは,結局,そのようなものなのだ。
* ekantipur, 2-4 Feb.

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/02/05 at 22:15