ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

Posts Tagged ‘平和構築

軍学連携――軍民分離から軍民協力へ

長崎大学
講演会「日本の平和を守る自衛隊の使命とは」

 教育学部中庭の講演会案内

大阪大学
自衛隊大阪地方協力本部と大阪大学大学院国際公共政策研究科(OSIPP)との共催により実施している「国際安全保障ワークショップ」

 参加院生・自衛官(自衛隊HPより)

 豊中キャンパス(自衛隊HPより)

神戸大学
大学と自衛隊(神戸新聞 2002.12.6)
神戸大学の学生と自衛隊員が十一月、安全保障をテーマに「共同研究」を行った。講義は大学の外で、学生にさえ事前に場所を知らせることなく開かれた。「自衛官が同席することで現実的で緊張感のある議論ができる」と、大学の担当教官は教育的な意義を強調する。一方、市民グループや一部の学生は抗議を表明、評価は大きく分かれた。

慶応大学
自衛隊が大学で「講義」(しんぶん赤旗2002.8.8)
東京の慶応大学では六月十六日、総合政策学部の小島朋之教授(学部長)の研究会、同阿川尚之教授の研究会、同草野厚教授の研究会、経済学部の島田晴雄教授の研究会に属する学生五十六人が小島、阿川、島田の三教授と海上自衛隊・厚木基地で「大学生と自衛官の安全保障ゼミ」を開催。P3C哨戒機に体験搭乗し、安全保障に関する討論会を行いました。

SDM特別講義 日本の国家安全保障の体系(2011年度春学期)
[講師]大谷康雄 航空自衛隊幹部学校戦略教官,1等空佐,SDM研究所研究員
     千川一司 航空自衛隊幹部学校戦略教官,2等空佐 

九州大学
人工降雨実験

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2011/12/17 at 12:54

ルンビニと国連と憲法,プラチャンダの凄腕

1.ルンビニ国際会議,3月開催
プラチャンダ(マオイスト議長,ルンビニ開発国家調整委員会議長)は,ルンビニ開発国際会議を2012年3月,ルンビニで開催することにした。招待予定は,16仏教国元首と仏教高僧,そしてパン・ギムン国連事務総長。日本は招待されるのかな?

2.憲法制定と国連関与の高等戦術
ここで興味深いのが,パン事務総長が憲法制定を出席の条件にしていること。ルンビニ会議までに憲法草案が成立していなければ出席しない,成立しておれば出席する。つまり,パン事務総長としては,国連関与で新憲法制定・平和再建にめどをつけたという実績をルンビニで世界に向け誇示したいわけだ。

【憲法制定予定日程】
  憲法第1草案完成 2月13-27日
  憲法案完成    4月20日-5月20日
  新憲法可決・公布 5月21-27日

これだけ見ると,いかにも国連が主導権を握っているようだが,しかしもう少し子細に見ると,イニシアチブはむしろプラチャンダの方にあるように思われる。プラチャンダは,対内的にはルンビニ開発の巨大利権をエサに,マオイスト主導による新憲法制定を認めなければ,国連事務総長が訪ネせず,ルンビニ開発もパーになる,と圧力をかけている。そして,対外的には,国連が新憲法制定・ルンビニ開発に協力しないと,これまでの平和構築努力が全部パーになり,責任は免れないと脅す。弱者の強みだ。

プラチャンダは,国連と国内諸党を手玉に取っている,あるいは,取ろうとしている。恐るべき凄腕だ。

 札束踊るルンビニのプラチャンダ(Telegraph,Dec7)

3.プラチャンダの掌中の仏教
いや,そればかりではない。プラチャンダは,ヒンドゥー教最高位カーストのブラーマン(バラモン)であるにもかかわらず,仏教を賛美し,そうすることにより仏教を手玉に取り,政治的・経済的に仏教を利用し尽くそうとしている。

来年3月のルンビニ国際会議には,16仏教国元首と仏教高僧を招き,仏教を称え,キリスト教徒の国連事務総長さえも仏様に拝跪させようとたくらんでいるのだ。

もちろん,国連にも中印韓米にも,それぞれの思惑があるのだろう。中国は,反チベット派仏教高僧を送り込めば大成功。またラサ=加徳満都=ルンビニ鉄道利権もある。韓国には,パン事務総長と連携したルンビニ大開発利権がある。米印には,ルンビニ開発関与による中国牽制,等々。

プラチャンダは,それら全部を計算に入れた上で,目的合理的に動いている。いまや世界的政治家だ。

4.カヤの外の日本
この華やかなプラチャンダ外交・国連政治のカヤの外に置かれ,悲哀を託つのが,落日のわが日本国。

ルンビニ開発国家調整委員会は12月2日,関係諸国・諸機関と協議したが,報道によると,招かれたのはインド・中国・韓国の大使と,世界銀行・ユネスコの代表だけ。日本は,国家としては,完全に無視され,カヤの外。

来年3月のルンビニ国際会議に招かれる16仏教国の中にも,ひょっとしたら日本は入れてもらえないかもしれない。世界に冠たる仏教大国なのに。

もちろん,仏教の政治的利用に反対し,日本自ら毅然として参加拒否するのであれば,それは潔く立派な態度である。それであれば,私は,仏教徒として,日本国政府を断固支持する。

* ekantipur, Dec.6.

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2011/12/07 at 11:34

和平7項目合意成立,プラチャンダの決断

1.プラチャンダの決断
最終的和平のための「7項目合意」が11月1日,マオイスト,コングレス,統一共産党,マデシ連合の間で成立し,和平交渉は大きく前進した。決断したのは,やはりわれらが英雄プラチャンダ議長であった。マオイスト内強硬派の反対を押し切り,大幅譲歩で,合意に達したのだ。

2.7項目合意
(1)人民解放軍(PLA)戦闘員の統合と社会復帰
 ・戦闘員の現況確認。
 ・国軍統合は,6500人以内。
 ・PLAを統合する部隊(Directrate)の兵員は,65%が国軍,35%がPLA。
 ・部隊は,開発建設,森林保全,産業保安,災害危機管理を担当。
 ・国軍統合PLA戦闘員は,治安要員資格基準を満たすこと。ただし,年齢(3歳以内),教育(1年以内),婚姻については柔軟に適用。
 ・国軍統合後の地位は,治安機関基準による。ただし,国軍将兵の昇進の不利とならないようにする。(ポストを増やすということか?)
 ・国軍統合期日は,UNMIN資格審査日とする。
 ・保管庫の武器は,政府所有となる。

(2)社会復帰
 ・社会復帰希望者には,1人当たり60-90万ルピー相当の復帰支援。教育,職業訓練など。
 ・復帰支援プログラムではなく現金希望者には,現金を支給。
   第1ランク:80万ルピー
   第2ランク:70万ルピー
   第3ランク:60万ルピー
   第4ランク:50万ルピー

(3)国軍統合と社会復帰への振り分け
 ・国軍統合組と社会復帰組への振り分けは,特別委員会の下で,11月23日までに完了。

(4)各種委員会
 ・真実和解委員会(TRC)と行方不明者調査委員会を1月以内に設立。
 ・紛争時の係争事件の審査。

(5)紛争被害者の救済
 ・被害者救済パッケージの提供。

(6)過去の諸協定の実行と信頼構築
 ・マオイストは没収財産を11月23日までに返却。損害は賠償。
 ・農民の権利保障。科学的土地改革の実行。
 ・YCLの軍事組織の解体。YCL没収財産は,11月23日までに返却。
 ・交通省登録のマオイスト使用車両は,11月23日までに再審査。無登録車は没収。
 ・地方行政機関が,没収財産返却を監視。政党はこれに協力する。

(7)憲法起草と挙国政府の組織
 ・平和プロセス完成のため,高レベル政治機構を設置。
 ・新憲法の早期起草。国家再構築のための専門家委員会を直ちに制憲議会内に設置。
 ・以上のプロセス開始後,直ちに挙国政府の組織に着手。

3.プラチャンダの譲歩とマオイスト分裂の危機
以上の「7項目合意」は,なかなか意欲的なものである。バイダ副議長らの強硬派の激しい反対を抑え,大幅譲歩をプラチャンダ議長が決断することによって,この合意は実現した。

むろん大幅譲歩といっても,宿営所収容の正規戦闘員は,まだよい。切り捨てられたのは,YCLや地方の活動家らである。YCLは組織の民主化(戦闘組織の解体)を迫られ,地方活動家らは没収財産返却と損害賠償を要求されている。こんなことが,本当にできるのであろうか?

バイダ副議長やRB・タパ書記長らの強硬派は,これに大反対である。バイダ副議長によれば,「この合意は,人民と国家への裏切りである」。

こうした革命の上前ハネは,歴史の常だし,ネパールでも何回も繰り返されてきたことだ。既視感をぬぐえない。

マオイストは,この合意が実行されれば,おそらく分裂する。バイダ派は,革命の成果を食い逃げされた大多数の貧困農民・労働者と共に,新人民戦争に向かうであろう。

* ekantipur, Nov2; Nepali Times, Nov2; Himalayan Times, Nov2; Republica, Nov2.

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2011/11/02 at 17:51

朝日社説の陸自スーダン派兵論

1.陸自スーダン派兵
政府は11月1日,南スーダンへの陸上自衛隊(日本国陸軍Japanese Army)の派兵を決めた。実施計画を11月下旬に決定し,2012年1月から陸自「中央即応連隊」200人を派兵,5月頃には本隊300人規模とする。ネパールへの陸自6名派兵とは比較にならない大部隊の本格派兵だ。

 世界展開に備える即応連隊

2.軍国主義に傾く朝日新聞
朝日新聞は,敗戦後,ハト派・良識派・平和主義者に転向したが,2007年5月3日の「地球貢献国家」(社説21)提唱により,内に秘めてきた軍国主義への信仰を告白し,一躍,海外派兵の旗手に躍り出た。時流に乗り遅れるな,イケイケドンドン,産経も読売も蹴飛ばし,向かうところ敵なしである。

今回のスーダン派兵についても,11月2日付朝日社説は,お国のために戦果を,と全面支持の構えだ。社説はこう戦意高揚を煽っている。

「この派遣を,私たちは基本的に支持する。」
「自衛隊のPKO参加は1992年のカンボジア以来、9件目になる。規律の高さや仕事の手堅さには定評があり、とくに施設部隊などの後方支援は『日本のお家芸』とも評される。アフリカでの厳しい条件のもと、確かな仕事を期待する。」

この朝日社説が,産経や読売のようなまともなタカ派の派兵論よりも危険なのは,現実をみず,リアリティに欠けるからである。朝日社説は,大和魂で鬼畜米英の物量を圧倒し,竹槍で戦車を撃破せよと命令し,忠良なる臣民ばかりか自分自身にもそれを信じ込ませてしまった,あのあまりにも観念的な軍国主義指導者たちと相通じる精神構造をもっている。朝日社説の欺瞞は次の通り。

そもそも社説タイトルの「PKO,慎重に丁寧に」と,上掲の「基本的に支持する」「確かな仕事を期待する」のアジ演説が,ニュアンスにおいて矛盾している。

政情不安なスーダンへ大軍を送る。その危険性は,たとえば「治安が不安定な地域でのこれほどの長距離輸送は経験がない」と 朝日自身も認めている。このような危険なところに軍隊を出せば,当然,自他を守るための武器使用が問題になる。ところが,社説はーー

「武器使用問題は、日本の国際協力のあり方を根本から変えるほど重要なテーマだ。今回の派遣とは切り離して、時間をかけて議論するのが筋だ。」

と逃げてしまう。「時間をかけて議論する」あいだに,陸自隊員は現地で危険に直面する可能性が極めて高い。どうするのか? 結局,朝日は根性論,大和魂作戦なのだ。

これに対し,はるかに合理的・現実的なのが,自衛隊である。2日付朝日の関連記事によれば,自衛隊自身は,「自衛隊内では『出口作戦も大義名分も見えない』との不満もくすぶる」「自衛隊幹部は『ジュバ周辺もいつ治安が悪くなるかわからない』」と,批判的だ。もし自衛隊員が朝日社説を読んだら,きっとかんかんになって怒るにちがいない。――堂々たる日本国正規軍を危険な紛争地に派遣しながら,武器を使わせないとは,一体全体,どういう了見だ,大和魂で立ち向かえとでもいうのか。奇襲や特攻を「日本のお家芸」と自画自賛した大日本帝国と,丸腰平和貢献を「日本のお家芸」と賞賛する大朝日は,その精神において,同じではないか,と。

現代の自衛隊は,大和魂や竹槍,あるいは奇襲作戦・特攻作戦などは,はなから信じていない。朝日が大和魂平和貢献をいうのなら,朝日社員を一時入隊させ,スーダンに派遣してやろうか,といったところだろう。自衛隊の方が,朝日よりもはるかに合理的・現実的である。
  参照:スーダン派兵で権益確保:朝日社説の含意

3.自衛隊の世界展開とPKO5原則
朝日新聞は,自衛隊(Japanese Army)の本格的世界展開を煽っている。そもそも朝日には,「PKO参加5原則」ですら,守らせるつもりはない。

▼PKO参加5原則(外務省)
 1.紛争当事者の間で停戦合意が成立していること。
 2.当該平和維持隊が活動する地域の属する国を含む紛争当事者が当該平和維持隊の活動及び当該平和維持隊への我が国の参加に同意していること。
 3.当該平和維持隊が特定の紛争当事者に偏ることなく、中立的立場を厳守すること。
 4.上記の基本方針のいずれかが満たされない状況が生じた場合には、我が国から参加した部隊は、撤収することが出来ること。
 5.武器の使用は、要員の生命等の防護のために必要な最小限のものに限られること。

朝日社説はこんな表現をしている。「武力衝突の現場と派遣先は離れているものの、ここは派遣直前まで、5原則を守れるかどうかを見極める必要がある。」

イケイケドンドンと煽っておきながら,「5原則を守れるかどうかを見極める必要がある」とごまかし,武器使用は「時間をかけて議論するのが筋だ」という。それはないだろう。参加5原則など,朝日には守らせる意思はないのだ。スーダン派遣を先行させ,自衛隊員に犠牲が出るか,武器使用が現実に行われてしまったら,その事実に合わせ社説を修正する。大日本帝国の世界に冠たる「お家芸」であった,あの既成事実への追従の古き良き伝統を,朝日は正統的に継承するつもりなのだ。近代的な合理主義・現実主義の立場に立つ自衛隊が怒るのは,もっともだ。

4.「良心的兵役拒否国家」の原点に立ち戻れ
いまさらこんなことを言っても朝日は聞く耳を持たないだろうが,それでもあえていいたい。朝日は,「地球貢献国家」(社説21,2007年5月)を撤回し,それ以前の「良心的兵役拒否国家」の原点に立ち戻るべきだ。

朝日が煽動する「地球貢献国家」が危険なのは,軍民協力が前提であり,その結果,必然的に軍と民が融合し,日本社会がじわじわと軍事化されていくこと。しかも,世界展開する米軍の代替補完として,世界から,つまりアメリカから,期待されており,時流にも乗っている。

日本が朝日の提唱する「地球貢献国家」になれば,たとえば日本の巨大な政府開発援助(ODA)が平和維持作戦(PKO)と融合し,見分けがつかなくなる。そうなれば,紛争地や政情不安地帯で活動する多くの非軍事機関やNGOなども,当然,軍事攻撃の対象となる。

そして,危なくなれば,NGOなどは,軍隊に警護を依頼するか,撤退するかのいずれかを選択せざるをえなくなる。 こうして,また開発援助や非軍事的平和貢献活動が軍事化され,それがまた軍事攻撃を招く。悪循環だ。

もしスーダン派遣自衛隊員に犠牲者が出たら,朝日新聞はどのような責任を取るつもりか? 靖国神社に御霊を祭り,その「お国のための名誉の戦死」を永遠に称えるつもりなのだろうか?

■スーダン派兵で権益確保:朝日社説の含意
■海外派兵を煽る朝日社説
■良心的兵役拒否国家から地球貢献国家へ:朝日の変節
■丸山眞男の自衛隊合憲論・海外派兵論

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2011/11/02 at 14:11

制憲議会任期切れと軍統合問題

制憲議会の任期が,11月30日で満了する。それまでに人民解放軍の処遇を決め,憲法改正案を作成しないと,またまた制憲議会の任期延長となる。

これ以上の任期延長が難しいことは皆わかっているので,このところ,交渉がかなり煮詰まってきた。憲法案は,その気になれば,明日にでもできる。問題は,その気になるかどうかだ。(日本でも,マッカーサー草案提示後,2ヶ月程度で憲法改正案が作成された。)

人民解放軍の処遇についても,双方の要求がかなり接近してきた。

            マオイスト      NC・UML
国軍統合兵員数     7千人       5千人
社会復帰給付金(1人) 60-90万ルピー   30-60万ルピー

人民解放軍の本来の兵力は,せいぜい5~7千人。これはプラチャンダ議長も認めている。国軍統合兵員数では,合意は近いといってよい。

社会復帰する残りの1万3千~1万5千人への給付金も,1人あたり90万ルピー以内であり,これも十分妥協可能な数字だ。

バブラム首相やプラチャンダ議長は,ほぼ上記の線で手を打ちたいと考えているのだろうが,問題はバイダ副議長らの急進派。1万数千人もが,一時金で社会復帰に納得するかどうか? 

人民解放軍の処遇が決まらないと,新憲法もできず,制憲議会をまた延長せざるをえない。11月30日まで,後一ヶ月。またまた危機がやってくる。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2011/10/29 at 18:31

カテゴリー: その他, マオイスト, 平和

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武器引き渡しは「自殺行為」,バイダ派

1.武器庫鍵引き渡し
9月1日,マオイストは常任委員会決定に基づき,武器保管庫の鍵を「軍統合特別委員会」に引き渡すことにし,各PLA宿営地(Cantonment)では,武器の点検確認後,鍵が特別委員会側(国軍,警察,武装警察,PLA各2名,計8名)に渡された。(7宿営地で実施。ロルパ方面部隊などは未完。)

2.プラチャンダ派とバイダ派の衝突
これに対し,モハン・バイダ(キラン)副議長は声明を出し,「これは自殺的だ」と非難した。そして,9月2日,全国チャッカ・ジャムを実施し,今後,松明行進など,反対運動をさらに拡大していくと宣言した。すでに,カブレ・パンチカールではプラチャンダ派とバイダ派が衝突し負傷者が出た。

この動きを見て,プラチャンダ議長は9月2日付けで声明を出し,鍵引き渡しの正当性を強調し,キラン同志の言動に対し「「憂慮」を表明,党の公式決定を一致団結して支持するよう要請した。党公式文書による真正面からのバイダ派非難である。

3.実力闘争再開か?
人民解放軍(PLA)は,いうまでもなくマオイストの中核だ。そして,軍の生命線は武器にある。その武器を,PLA国軍統合も決まらないのに政府に引き渡すのは,人民戦争を戦ってきた人々にとっては、たしかに「自殺行為」と見えるだろう。バイダ副議長の怒りはよく分かる。

しかし,マオイストはいまや政府与党だ。プラチャンダ議長が、首相としてのバタライ副議長(軍統合特別委員会委員長)に武器庫の鍵を引き渡したにすぎない。

それでも,バイダ派からは,それは革命への裏切りと見える。武器庫鍵の引き渡しには,さっそく米駐ネ大使が歓迎を表明した。プラチャンダ=バタライ派が米印と手を組み革命をつぶしにかかっている,と急進派は見るわけだ。

ネパールの市場社会化は,目もくらむ格差をもたらしている。この状況では,バイダ派支持はむしろ拡大していく。そして,それをバネにマオイスト左派が分離し,再び実力闘争を始める可能性は十分にある。予断を許さない状況だ。

* ekantipur, Sep2; Nepalnewscom, Sep2; Republica, Sep3

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2011/09/03 at 13:55

人民解放軍統合,与党3党首合意

カナル首相(UML)が,マオイスト,マデシ人権フォーラム(MPRF)両党首と,平和構築への最大課題である人民解放軍(PLA)の処遇について,ほぼ合意した(Republica,2011-05-22)。実行できるかどうか微妙だが,なかなか大胆な提案だ。

PLAについては,すでに国軍(NA)が,NA指揮下に新たな部隊をつくり,そこにPLA戦闘員と政府治安要員(NAなど)を組み込む,という提案をしていた。3与党合意は,このNA提案を受け入れ,人員についてはPLAからは6~8千人とした。

PLAの本来のハードコア戦闘員は,もともと4~8千人と見られており,これはプラチャンダ議長もオフレコでは認めていた。したがって,6~8千人統合は妥当な数字といってよいだろう。

NA統合戦闘員以外の宿営所(cantonment)収用戦闘員は,除隊・社会復帰となる。宿営所収用戦闘員は約2万人(19,602人)だから,1万2千人~1万4千人が社会復帰。これら社会復帰戦闘員には,1人あたり50~100万ルピーが支払われる。かなりの額だ。

しかし,この提案については,マオイスト急進派が猛反対している。たとえば,モハン・バイダ(キラン)副議長は,これはパルンタール党大会決定違反だとして,反対意見を常任委員会に提出した(Republica,2011-05-22)。

しかしながら,このところマオイスト党内では,バイダ副議長らの急進派は劣勢となっている。バブラム・バタライ派(穏健派)とバイダ派(急進派)を両天秤にかけ,操縦していくプラチャンダ議長の政治的手腕は,たいしたものだ。このままいけば,PLAは二分され,6~8千人の中核部分がNAに吸収され,和平成立となる。

しかし,それで社会復帰を迫られる他の1万2~6千人が納得するか? また,毛沢東が言うように,「人民解放軍なくして人民なし」 を体験的に思い知らされてきたマオイスト支持「人民」大衆が,人民解放軍の解体を受け入れるか?

人民解放軍の国軍統合による和平実現,新憲法の制定となるかどうか? 難しいところである。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2011/05/24 at 11:22