ネパール評論 Nepal Review

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自衛隊員の「つぶやき」:万人監視社会への警鐘

朝日新聞(1月6日)が連載「ビリオメディア」で、ツイッターやフェイスブックの危険性を指摘している。私のようなネット素人にとっても、この程度のことなら常識だが、その常識ですら度外視して無防備無警戒、丸裸でツイッターやフェイスブックを利用している人が少なくないらしい。

1.海自隊員の「つぶやき」
朝日記事によれば、記者はツイッターとフェイスブックに海上自衛隊員が投稿しているのを見かけた。そこには、実名で、制服姿の自分の写真ケイタイ電話番号が記載されている。第13護衛隊「あさゆき」乗り組み隊員らしい。

その彼が、外洋航海日程をフェイスブックに記載し、またツイッターでは、2012年12月10日13時5分に、北朝鮮「ミサイル」発射警戒作戦に関する自艦の情報をつぶやいた。

われわれ善良なる国民にとっては、24万自衛隊員が、フェイスブックやツイッターで自衛隊の作戦や日々の行動をつぶさに報告してくれれば、これほど有り難いことはない。暴力装置たる自衛隊が丸裸になり、文民統制も可能となるからだ。(もっとも、私自身は、文民統制はあまり信用していない。プロの自衛隊よりも、むしろド素人の文民(国民)の方が好戦的となりやすく、危険な場合が少なくないからである。)

しかし、それはそれとして、海自隊員の幼児なみの情報管理能力には、正直、たまげた。こうしたことは、情報重視の米軍が見過ごすはずはなく、自衛隊はますます信用を失い、米軍から重要情報は得られなくなる。情報ジャジャ漏れ自衛隊は、われら善良なる国民にとっては好ましいが、自衛隊自身にとっては深刻な由々しき事態であろう。

海自隊員のツイッターとフェイスブックへの記載は、朝日記者が防衛省取材を始めるとすぐ、消去されたという。おそらく上官から厳しく叱責され、あわてて削除したのだろう。

2.消去しても消去されないネット情報
しかし、ツイッターやフェイスブックの危険性は、本人は消去したつもりでも、実際には消去されていないことだ。事実、朝日記者は、本人の承諾なく、下図のような「つぶやき」を新聞紙面に転載している。おそらく、ツイッターとフェイスブックの記事をコピーし保存しているのだろう。この程度のことは、ネット素人の私にでも、簡単にできる。

130105 ■自衛官「つぶやき」転載記事(朝日新聞2013-1-6)

そして、これは素人にはよくわからないことだが、おそらくツイッターにせよフェイスブックにせよ、たとえ本人が削除しても、記載情報は何らかの形で運営者側に残されており、利用しようと思えば利用できるのではないか、ということ。もしそうであれば、第三者によるコピー配布に加え、こうした形でも、記載情報は利用される。ネット情報は、投稿の瞬間、自分の手を離れ、コントロール不能となる。そう覚悟すべきであろう。

3.権力と企業による利用
そして、もう一つの危険は、ツイッターやフェイスブックは、内外の権力機関や企業により監視され、分析されているということ。朝日記事は、北九州市の「つぶやき」監視や、経産省資源エネルギー庁の「つぶやき」収集を紹介しているが、これも常識といってよいだろう。

むろん、多くの人は、そんなことは自分には無関係と思っているに違いない。たしかに、もし特殊な情報機関や秘密機関などだけであれば、監視のターゲットとなるのは、テロリストや過激派など「特殊な」少数の人々だけであろうが、もし省庁や市役所、あるいは警察、学校、町内会などが日常的に「ネット監視サービス」を利用し始めると、もはや誰一人として無関係といってはおれなくなる。それは、万人が万人を監視する清潔安全なユートピアの到来である。

4.ネット情報 + 盗撮カメラ + IC免許証
フェイスブックの写真やツイッターの「つぶやき」は、街中にあふれる盗撮(防犯)カメラ映像と組み合わされると、さらに具体的、正確となる。あるいは、それらにIC免許証を組み合わせると、ほぼ完璧といってよいだろう。誰が何を考え、どこで、何をしているかが、丸見えだ。

フェイスブックやツイッターは、いったん投稿したら、もはや取り返しがつかない。写真や記事を誰がどう使おうが、投稿者には、どうすることもできない。朝日記事を見ても、それは明白である。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/01/06 at 18:32

落日の日本,選挙報道も新華社に負け

ナショナリストの私としては,近年の秋の陽のような落日は,まことに残念至極,切歯扼腕するも,いかんともしがたい。

この情況に対し,内弁慶軍国主義者は,「固有の領土」を守るため軍艦を派遣せよとか,戦闘機を出撃させよとか,勇ましいことを言っているが,日本の衰退は別の要因によるものであり,軍事力ではどうしようもない。

たとえば,昨日の選挙について,ネパールがどう報道しているか,ネットで見ると,ほとんどのメディアがたいした扱いをしていない(日本時間16時現在)。日本の選挙など,ネパールにはどうでもよいことなのだ。

この扱いは,わからないではないが,それよりも,ショックだったのは,ネパール二大メディアの一つであるマーカンタイル(nepalnews.com)が,日本の選挙記事として,「新華社」配信記事を掲載していること。カンチプールはロイター,リパブリカはAFP。日本の選挙なのに,なぜKyodo, Jiji, Asahi, Yomiuri, Mainichiなどではないのか?

新華社配信記事そのものは,客観的なように見える。「平和憲法改正には衆参両院の三分の二が必要なので,自民党は維新との協力を目指す,と安倍は語った。」「外交については,自民党は日中関係の緊張を高めるつもりはなく,早急に両国関係の改善を図るつもりだ,と安倍は語った。」

しかし,ニュース記事などの情報源を外国に握られていることが,いかに危険かはいうまでもない。どの国も見え見えの幼稚な情報操作などやるはずがない。英米の世界支配は,英米語を世界語とすることによって可能となった。知は力なり。

もしそうだとすると,日本の出来事が新華社など外国通信社の配信記事により報道されることが,日本国益にとって,長期的に見ていかに深刻な事態を招くかは,容易に理解できるであろう。

グローバル情報化時代にあっては,軍艦や戦闘機ではなく,情報こそが,国家・国民の利益と安全の必須条件なのだ。戦艦大和の巨艦巨砲主義のアナクロニズムを,またまた繰り返してはならない。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/12/17 at 16:46

権力監視下のネット社会:原子力安全規制情報

ツイッターに教えられ,「平成23年度原子力安全規制情報広聴・広報事業報告書」を覗いてみた。経産省資源エネルギー庁の事業報告なのに,報告書表紙にはなぜか事業主の名はなく,「株式会社アサツーディ・ケイ」が前面に出ている。本文中にも,「経産省」や「資源エネルギー庁」はほとんど出てこない。これだけで,十分に怪しい。

事業目的は,要するに「風評被害」防止。

「(2) 事業の目的 インターネット上に掲載される原子力や放射線等に関する情報を調査し、そこから国民の不安や疑問がどのようなところにあるのかを分析して質問(以下Q)を作成した。そのQをもとに回答(以下A)を作成し、そのQ&Aを活用することで、風評被害を防止することを目的とした。」(1-2頁)

この報告書は,「科学的な根拠に基づく、客観的な視点でAを作成すること」(2頁)をさかんに強調しているが,人々はもはやその「(原発関連)科学」を信じていない。その基本事実を見ることなく,旧態依然たる「科学信仰」で「国民の不安や疑問」を取り除くことなど不可能なのだ。

いまでは,原発科学者の「科学」よりも庶民の原発「風評」の方が,基本的には従って安全であることを国民は知ってしまっている。したがって,税金によるこんな調査や広報が何の役にも立たないことは明白である。しかし,それはそれ,ここでいいたいのは,別のこと。

この「報告書」は,国家権力によるネット監視の具体例としては,なかなか面白い。全体のフロー図はこうなっている。

(3頁)

そして,ここでは「隠語」がキーワードとして有効とされている。身に覚えがある人も少なくなかろう。

(4頁)

収集先は,ツイッターが多いが,他にも掲示板や検索エンジンからも情報収集されている。

(9頁)

むろん,この程度のことは,ネット素人の私でも時間さえあれば可能だが,問題はこれはほんの序の口で,実際にはもっと高度なネット監視が権力によって行われているのではないかということ。たとえば,個人メール。企業が従業員のメールを監視していることは常識だが,同じことを国家も国民のメールについてやっているのではないか? これからは,メールも含め電子情報はすべて監視され,検閲されていると考えて,行動すべきだろう。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/08/23 at 20:27

カテゴリー: 情報 IT, 人権

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フェイスブックとツイッター:現代の神の地上における代理人

おくればせながら,この7月,フェイスブックとツイッターに登録した(下欄リンクボタン参照)。もちろん偽名,偽アドレス。まだ使い方(情報処理の仕組み)がよく分からないが,いまの段階での感想を一言。

フェイスブックもツイッターも,伝言板としては大変便利だ。安上がりの電子チラシといったところ。しかし,両者とも,利用者にとっては,それ以上ではないようだ。

ツイッターは,短文,言いっ放し。私が見ているのは、比較的堅い発信者ばかりだが,それでも言葉遣いが必要以上に攻撃的なものがときとしてみられる。

内容的には,ツイッターは,やはり短文,言いっ放しのため,議論が画一化し,レッテル貼りに陥り,深まらない傾向がある。通知や問題提起にはよいが,議論には向かないシステムだ。

これに対し、フェイスブックは,発信情報をかなり多くすることもできるので,使い方次第では,議論の場として利用することができるかもしれない。しかし,フェイスブックは,その仕組み(情報処理・情報利用の方法)が複雑であり,まだよく分からない。

そこで,社会メディアとしての危険性だが,感覚的には,やはりフェイスブックの方がツイッターよりはるかに危険な感じがする。いったんここに書き込むと,その情報がどう処理され,将来どう利用されるかが,皆目見当もつかない。

すでにAmazonは,私の読書傾向を私自身よりもよく知っている。はじめの頃は,薄気味が悪く警戒していたが,便利さに負け使い始めると,慣れてしまい,いまでは自覚的に努力しなければ,恐ろしさを意識しなくなってしまった。Amazon情報を利用すれば,この数年,私がテロ関係本を検索したり購入したりしていることが分かる。もしかりにCIAや日本公安に何らかの形でAmazon情報が漏れていると仮定するなら(そんなことは絶対にあり得ないはずだが),私はごく下っ端の要注意人物の一人とされている可能性がないではない。その場合,「ネパール」「テロ」「日本人」で検索すれば,私もリストアップされるわけだ。

フェイスブックは,図書購入中心のAmazonや短文のツイッターとは比較にならないほど多くの情報を集め,関連づけ,蓄積している。誰が,いつ,誰と,どこで,何をしたかを,本人以上によく記憶し,保存している可能性がある。これは,実に恐ろしい事態だ。

しかも,さらに恐ろしいことに、フェイスブックも,Amazonと同様,使い始めると慣れてしまい,危険を危険と感じなくなってしまう。すでに私たちは,グーグルに自宅を覗かれても,Amazonに思想調査をされても,何も感じなくなっている。フェイスブックは,それを「タイムライン」などにより,人の人生全体についてやり遂げることを目標にしている。

もちろん,フェイスブックには非公開の設定もあるのだろうが,設定が間に合わない場合や,設定に気づかない人など,非公開設定にできない場合が無数あると思われる。しかし,そんなことはお構いなく,そうした場合でも全部,公開されてしまうらしい(不慣れなため,詳しくは分からないが)。

グーグルは家を覗き,フェイスブックは人生を覗く。隠されてあることは知りたいことであり,そこに商機がある。

しかし,こうしたことは,フェイスブックやグーグルなどに限られたことではなく,ネットを中心とする情報化社会そのもののもつ特性であり,危険である。情報化社会には,もはやプライバシーはない。

プライバシー(privacy)とは,もともと「(世間,公的世界から)引き離された,孤独な,私的な,秘密の(private)」という意味だ。「情報化」は「プライバシー」の反対概念であり,本質的に,両者は相容れない。情報産業が,プライバシー暴露をメシの種とするのは,当然といえば当然だ。

情報化の現代において,もはやプライバシーはない。われわれは,全世界の人々に見られながら丸裸で歩き回っていることを自覚すべきだ。

かつては,教会(神)が誕生から死まで,人の人生を記録し管理した。これからは,普遍的情報システムがすべての人の人生を記録し管理する。神の前にプライバシーは無いように,現代の神としての情報システムの前にプライバシーは無い。

もちろん,人として可能な限り抵抗はしてもよいし,すべきである。神を裏切ったときから「人」は始まり,「プライバシー」を享受した。「イチジクの葉」は,人が人となり,プライバシーを得たことの象徴である。

情報化社会においては,われわれは,意図的に自己に関する偽情報を書き込み,この「イチジクの葉」により,隠されてあるべき人間としての自己のプライバシーを守るべきである。それしか,もはや人間が「人間としての尊厳」を守る方法はない。

しかし,偽情報の書き込みにより,現代の神の地上における代理人たるフェイスブックやツイッター,あるいは「マイナンバー制(共通番号制)」等は欺けても,全体を統括する「隠されてある現代の全能の神」は,おそらく欺ききれないだろう。見えない神がすべてを見通す。

人は神への反逆から始まり,反逆により破滅させられる。情報化社会への反逆も,人としては,希望なき戦いとなるであろう。

(参照) Facebookの恐怖

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/08/12 at 12:35

IC免許証と住基カード

運転免許証がハイテクIC化され便利になったおかげで,本人証明(アイデンティティ証明)が,いたるところで免許証に移行し始めた。この流れはもはや止められないだろう。

たとえば,たまたま目にしたのだが,大田区の住基カード申請。申請と受取のときの本人確認のため,免許証提示が必要だ。もちろん,パスポート,健康保険証,年金手帳などでもよいのだが,パスポートは滅多に使わないし,そもそも住所記載はない。とくに受取時には免許証がないと実際上,困ることになる。次のように説明されている。

本人が、次に掲げるいずれかの本人確認書類をお持ちの場合、それに加えてもう1点、健康保険証や年金手帳等をお持ちいただき、区役所本庁舎1階北側10番窓口で申請しますと、即日で住民基本台帳カードを受け取る事が可能です。
 ・運転免許証
 ・パスポート
 ・身体障害者手帳
 ・療育手帳
 ・精神障がい者保健福祉手帳

(注1)略
(注2)ICチップ型運転免許証の場合は、運転免許証の交付時に設定した暗証番号(数字8桁)を入力していただきます。暗証番号が不明な場合はあらかじめ警察署で確認してからお越しください。」(大田区役所HP

大部分の住民にとって,住基カード即日受取には,免許証と8桁の暗証番号が必要なのだ。

いまやお役所は,本人確認は面倒なので,予算潤沢な警察に丸投げし始めたらしい。そして警察の方も,これを好機と捉え,IC免許証は身分証明に便利だと宣伝し,あるいはウワサでは,免許証を返上しようとする高齢者に対してすら更新し身分証明用に持ち続けたらよいと勧めているそうだ。

これは,警察が個人情報収集の中核となるということではないだろうか? グーグルが様々なネットサービスを統合し集中管理し始めたのと同じようなことを,警察もIC免許証でひそかにやろうとしているのではないか?

そうなれば,たしかに便利ではある。IC免許証1枚で買い物ができ,ATMが使え,電車に乗れ,コンサートチケットが予約でき,・・・・そして,車も運転できる。そうなれば,住基カードなど不要だ。

IC免許証と8桁暗証番号さえあれば,何でもできる。そんな便利な素晴らしき新世界がまもなく実現するかもしれない。IC免許証は,まさしくIdentity-Card免許証なのだ。

危険なIC免許証,暗証番号の無効化を

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/06/06 at 19:40

IT企業に丸裸にされる市民

グーグルの新サービスに対し批判が高まっている。アクセス情報の一元管理により,たとえば○○が過激派サイトを見た後,△△にメールを送った,といったことが簡単にわかるらしい。これは世界規模の市民総背番号制であり,スマホなどのGIS情報とも組み合わせると,世界中の人がすべて丸裸にされる。

これはたまらん,ということでグーグルが攻撃されているわけだが,技術的には可能なわけで,たとえグーグルがやらなくても,他のIT企業がやるにちがいない。ネットやスマホを使う以上,プライバシーは放棄したものと観念せざるをえないだろう。

早い話が,たとえば,このブログ。無料なのに,なかなかサービスがよい。アクセス情報もかなり詳しく,検索用語からリンク元,それに最近はアクセス地域まで教えてくれる。これを見ると,日本が一番多いが,この日はネパール23,米国4,フランス2,タイとカナダ各1となっている。

IT素人でよくは分からないが,知識さえあれば,国内のどの地域からか,あるいはアクセス元は誰かまで,分かるのだろう。いやはや,すごい時代になってきた。素人でも日常的にこんなことができるのだから,グーグルが世界中の市民を丸裸にすることは,もはや止めようがないだろう。

 ■このブログへのアクセス情報

上から「アクセス国」「検索/リンク元」「検索キーワード」(3月15日)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/03/16 at 09:50

危険なIC免許証,暗証番号の無効化を

現状報告(2016年12月21日追加)
免許証暗証番号制は,事実上破綻,すでに暗証番号入力は不要とされている。参照:免許証暗証番号,百害あって一利なし(2016/11/09)

——–≪以下,2011年12月28日投稿記事≫——–

1.暗証番号の無効化
運転免許証を更新したら,IC免許証となり,8桁の暗証番号の設定を要求された。なぜこんなものが必要なのか,まったくもって不可解?! 直ちに,暗証番号を無効化した。方法はカンタン。誤番号を3回入力すればよい――  

  (例)1100 1100  3回入力 →→ 無効化完了

これで,少なくとも,8桁もの暗証番号を5年間も記憶する精神的負担からは解除される。

 IC免許証見本(石川県警HP)

2.IC免許証の導入理由
こんな市民にとって何の利益にもならないIC免許証を,なぜ採用したのか? 警察は次のように説明している。

・偽造防止  「ICカード免許証は、偽変造免許証の作成が極めて困難であり、不正使用を防止できます」(警視庁HP)
・身分証明用  「将来、金融機関等でIC免許証を身分証明書として利用する際に、ICチップに登録された内容を確認するため、暗証番号の入力を求められることが考えられます」(新潟県警HP)  

この2つが,IC免許証に切り替え,しかも暗証番号まで設定する理由。警察でいくら尋ねても,これ以上の説明はない。完全にマニュアル化され,身分証明用としていかに安全・便利かが,繰り返されるだけ。まるで銀行かサラ金の代理店のようだ。

3.立証責任の転換
このIC免許証の危険性は,まず第一に,立証責任の企業から顧客への転換に認められる。免許証は,これまでも身分証明用として利用されてきたが,本人確認の責任は銀行など確認する側にあった。不注意で騙されたら,その責任は銀行などにある。

ところが,IC免許証となり,暗証番号入力で本人確認ということになれば,悪用されても,本人の暗証番号管理責任がまず問われることになり,よほどの落ち度がない限り,銀行などは免責されてしまう。

一方,市民の側は,8桁もの暗証番号の記憶はおよそ不可能だから,手帳に書いて持ち歩くか,メモに書き通帳などと一緒に保管することになる。これがいかに危険かは,いうまでもない。

IC免許証は,銀行などの立証責任を免除ないし軽減し,それを本人に押しつけるためのものに他ならない。こんな反人民的,反庶民的な悪巧みを容認してはならない。

4.身分証明機関としての警察と営利企業の連携
次に注意すべきは,身分証明業務が事実上,市役所等から警察に移行すること。あっけらかんと警察自身が認めているように,IC免許証採用の理由の1つは,身分証明用としての利用拡大である。換言するなら,警察が市民の身分証明機関へと大変身するためである。

暗証番号照合機に入力すると,免許証情報(顔写真・本籍など)が,このようにバッチリ表示される。

 (警視庁HP)

暗証番号照合機は,今後,銀行など各所に設置されるそうだから,免許証を紛失したら大変なことになる。

いや,それどころではない。こんな企業にとって好都合なものを,目ざとい企業が見過ごすはずがない。すでに,恐ろしいことが始まっている。

IC運転免許証を活用した本人確認サービス(NTT)
 “株式会社NTTデータは、2010年9月27日より、IC運転免許証を活用した本人確認サービス「BizPICOTM(ビズピコ)」の提供を開始します。/「BizPICO」は、IC運転免許証のICチップ内の情報を利用して、免許証の改ざん確認や証跡情報の保管など、企業における本人確認業務に必要な機能をクラウドサービスで提供します。/NTTデータでは、本サービスの提供を通じて、行政機関での手続き、銀行口座の開設、携帯電話の契約など、確実な本人確認が求められる業務をサポートします。”(http://www.nttdata.co.jp/release/2010/092700.html)

 (NTTデータHP)

このビズピコが普及すれば,本人の情報が雲中(クラウド)に召し上げられ,企業が自在に利用し尽くすことになる。これをみると,警察=NTT(営利企業)が連携してIC免許証事業を推進しているのでは,と邪推したくもなる。

5.警察監視社会
そして,絶対に見落としてはならないのが,IC免許証は非接触式であり,離れたところからでも,その記載情報を読み取れるということ。これは警察自身が堂々と(平然と)認めている。

「暗証番号を設定しなかった場合は、ICカード読み取り装置を持っている人が、至近距離(約10㎝)まで近づくとICチップ内の個人情報が読み取られるおそれがあります」(新潟県警HP)。

すでに現在でも,IT技術さえあれば,電車内などで他人の免許証情報を盗み取りすることは可能なのだ。しかし,本当に10cm以内なのか? 専門家によれば,すでに10m先くらいまでは可能だそうだし,ちょっと頑張れば,100m先でも可能になるのではないだろうか?

もしそのようなことになれば,本籍・顔写真付きの免許証情報を,本人に全く気づかれることなく,密かに収集,蓄積し,行動の一部始終を監視し,分析することも可能となる。

さらにそれがGPSと組み合わせられると,もう万全,市民は丸裸だ。人々の行動が,地図上で完全に捕捉され,いつ,どこで,誰が,誰と会ったかまで,バッチリ記録され管理される。

アメリカなどでは,性犯罪者にGPS監視装置がつけられ,その行動が四六時中監視されている。顔写真や経歴も公開されているそうだ。日本のIC免許証は,その種のGPS市民監視装置となる恐れがある。

6.素晴らしき新世界へ
IC免許証に切り替わり,暗証番号照合機やビズピコが普及していけば,21世紀の「素晴らしき新世界」が実現するかもしれない。

  警察監視管理社会,万歳!

これは,IT素人・文系人間の根拠なき邪推,突拍子もない杞憂にすぎないのだろうか?

谷川昌幸(C)

——– 【追加 2011.12.29】 ————————————————————————————– 

[1] ICカード免許証チップ記載内容確認パッケージ(NECネッツエスアイ)
 “ICカード免許証ICチップ記載内容確認パッケージでは、既存のPCに周辺機器を接続し、アプリケーションをインストールすることで、免許証のICチップ内に記載された内容を読み取ることができます。/本籍を確認したいが、ICカード免許証の所有者が本籍を忘れている。また、申請した本籍が正しいか確認したい。→ICチップの情報を確認することで住民票を取り直して頂く必要がありません。”

“ICカード免許証の表面のイメージのまま画面に表示します。/写真の情報も表示します。/ICチップ登録されている外字を組み込んで表示します。/JIS78,JIS90の文字形式の違いも正しく判断し表示します。”(NECネッツエスアイ http://www.nesic.co.jp/solution/product/ap/ic.html)

[2] 金融機関の本人確認業務の効率化を実現するシステムを販売開始(大日本印刷)
 “大日本印刷(DNP)とDNPの100%子会社で運転免許証用機器の開発・販売・保守を行う、DNPアイディーシステムは、IC運転免許証および住民基本台帳カードのICのデータを読み取り、そのカードの真贋判定を行うシステム「本人確認マルチカードスキャナ」の販売を本年6月末に開始する予定です。「本人確認マルチカードスキャナ」には、ICデータの読み取りと同時にカードの表裏券面をスキャンする機能があるため、スキャン画像を活用して業務負荷を軽減することもできます。” “DNPは試験的な取り組みとして、みずほ銀行の一部店舗へ本システムを提供・設置し、本人確認業務の効率化の効果を確認しています。また、金融機関以外の本人確認を必要とする事業者などへ本システムの販促を行い、2010年度で1億円、3年間で約5億円の売上げを目指します。”(http://www.dnp.co.jp/news/1215925_2482.html)

[3] 非接触ICカード運転免許証による認証ソリューション(オレンジタグス)
 “オレンジタグスでは既にトラック運転手の本人確認・勤怠管理、飲酒検査などで実績をもっており、今後、さらに幅広い分野での利用を想定している。企業・地方自治体や金融機関での本人確認、飲酒・タバコ、年齢、未成年などの管理、自動車や自転車の資産管理、貸出管理、盗難防止など幅広い分野での個人認証ソリューションとして考えている。”(http://www.value-press.com/pressrelease.php?article_id=86004)

——–【追加 2012.08.10】 ————————————————–

山口県警HP
IC運転免許証の「暗証番号」について
○ 暗証番号を忘れないよう暗証番号の記録紙を大切に保管しましょう。
 IC運転免許証の「暗証番号」は、ICチップ内のデータを読み取るときに必要なものです。
 市町や銀行など民間の窓口において、IC運転免許証を身分証明証として活用する場合に、「暗証番号」の入力が必要な場合があります。
 「暗証番号」を忘れないよう、IC運転免許証交付時にお渡しした「暗証番号」の記録紙を大切に保管してください。
   (ゴチック引用者追加。http://www.police.pref.yamaguchi.jp/0440/menkyo/menkyo_ansyou.html)

——–【追加2012.08.19】—————————————————-

住民基本台帳カード交付における本人確認方法等が23年2月1日から変わりました。  (東京都中央区)
偽造された運転免許証を提示し、本人になりすまして住民基本台帳カードを不正取得する事件が都内等で多発していることを踏まえ、同カードの交付の際の本人確認の徹底を図るため、その確認方法を平成23年2月1日から下記のとおり変更いたします。
本人確認書類の種類(有効期限内のものに限る)
(1)ICカード運転免許証(暗証番号を入力できる場合) 
 (注)暗証番号を入力できない場合は、下記(1)非ICカード運転免許証と同様の取扱いになります。
確認方法等
ご本人に暗証番号(4桁×2種類)を窓口で入力していただき、運転免許証の券面記載事項とICチップに記録された情報を照合いたします。(暗証番号を忘れた場合は、警察署にお問い合わせください。)
      http://www.city.chuo.lg.jp/kurasi/toroku/honninkakunin/index.html
———————————————————————————

【参照】
新しい運転免許に追跡可能なチップを埋め込こんでますが、なぜ国民は反対しない
電子タグ廃棄システムの開発に関する調査・研究報告書
勝間和代:社会保障番号の導入
デジタル・プライバシーの危機
情報支配社会における電子住民カードの意味とその危険性
共通番号及び国民IDカード制度問題検討名古屋市委員会意見書
「国民番号制度」の導入は開かれた社会の実現へ向けた第一歩

谷川昌幸(C)

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Written by Tanigawa

2011/12/28 at 16:13