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マオイスト本部、突撃取材
9月13日午後、ネパール共産党毛沢東派(マオイスト)党本部への突撃ゲリラ取材を試みた。
マオイスト党本部は、市内の高台にある。リゾートホテル風の豪華な建物で、人民戦争を戦ってきたばかりの党の本部とはとても信じられない豪華さだ。玄関前にはピカピカの高級車が並び、守衛室―といっても民家3軒分はある―には、早やチャッカリの高級紳士がたむろしていた。
マオイスト党本部
相手は偉大な無産階級の党、私のような貧相プチブル―実態はともあれ、ネパールから見ればプチブル―などまったく相手にされないかと思っていたら、とりあえず中に入れてくれた。さすが、農民・労働者の党だ。
建物内は、外見と同じく高級、家具調度は渋く、ソファはふかふか。そして、壁にはもちろん農民・労働者の英雄的戦いを描いた革命的絵画が掛けてある。退廃ブルジョア抽象絵画ではない。
ヒマラヤの赤旗,血染めの憲法
待っていると、党幹部のM氏(元副首相)が会見に応じてくれた。お話には極秘情報も含まれているので、詳細は割愛。党内では左派に近いが、全体としてお話は極めて「友好平和的」「建設的」「現実的」であった。会見後、極秘資料をいくつかいただき、党本部を後にした。
マオイストは、いまやダントツのお金持ち政党といわれている。それは党本部ビルを見ただけでも、すぐ納得できる。10年余も、ジャングルで蚊やヒルや毒蛇に悩まされ、食うや食わずで苦しいゲリラ戦を戦ってきたのだ。ブルジョアどもが、無産人民から長年にわたり搾取してきた財産を取り戻し、貧困人民のため党本部として利用して、何が悪い。論理明快、さすがプラチャンダ議長の党だ。ますます好きになった。
マオイスト本部には、すでに外交官らしき西洋紳士が盛んに出入りしていた。先述のように、米帝はマオイストを「テロリスト・リスト」に掲載しつつ、バタライ政権成立を祝福した。テーブルの下で足をけりつつ、笑顔で握手する。これが本物の外交だ。
たまたまであろうが、日本人は一人もみなかった。もちろん、たまたまに決まっている。日本は世界に冠たる外交大国だからだ。
谷川昌幸(C)
司法制度もアメリカがお手本
谷川昌幸(C)
昨日,プラチャンダ議長は偉いと誉めたのに,「7人委員会」の下にはすでに部会があったらしく,そこでは司法制度について決定できなかったという。
とにかく,ネパールでは,やたらと委員会,作業部会等々ができ,それぞれの段階でカネと時間が際限なく浪費される。民主的というよりは,封建的権力多元性。こんなものを粉砕するため,一種の委任独裁としてプラチャンダ委員長が選出されたと思ったが,どうやらそうではなかったらしい。
と,そんなことを思いながら,チラッと横を見ると,そこには米最高裁礼賛広告が出ている。「ネパール司法はダメだね,アメリカ最高裁を見習いなさい」というわけだ。
いかにもアメリカらしく,いかにもネパールらしい。
eKantipur, Oct.21
プラチャンダ議長,憲法起草「7人委員会」委員長就任
谷川昌幸(C)
制憲議会ネムワン議長の提唱により諸政党が10月11日,高レベル「7人委員会(7 member taskforce)」を組織し,13日プラチャンダ議長を委員長に指名,憲法制定作業の促進を図ることになった。
■7人委員会
委員長: プラチャンダ(UCPN-M議長)
委 員: カナル(CPN-UML議長)
委 員: RC. ポウデル(NC議員会長,副党首)
委 員: NM. ビジュッチェ(労農党党首)
委 員: ウペンドラ・ヤダブ(MJF党首)
委 員: プレム・シン(民主党党首,法務大臣)
委 員: ルクミニ・チョウダリ(制憲議会議員)
(Rising Nepal, Oct.11)
憲法草案作成については,分野別専門委員会が昨年,委員会草案を作成し議論してきたが,いまのところ合意にはいたっていない。予定では,分野別専門委員会の報告書提出締切10月17日,「憲法委員会(CC)」による憲法草案作成締切11月17日である。
この草案制定作業が大幅に遅れていたので,「7人委員会」が調査し,報告書を10月24日までに提出することになったのである。
7人委員会は10月19日,争点11のうち9つで合意に達した,と発表した。残るのは,統治制度と選挙制度だという。一見,順調そうだが,実際にはそうでもない。
■大統領制か議院内閣制か?
マオイスト: 大統領が統治する大統領制
NC,UML: 議院内閣制。大統領は儀礼的元首
これは大問題である。選挙制度については報道なし。また,はしごを外され,メンツをつぶされた憲法委員会(CC)のニランバ・アチャルヤ議長は,政党有力者だけで決めた7人委員会には憲法上の権限はないと批判しているし,マオイストのアミキ・シュレチャン常任委員は,プラチャンダ議長の7人委員会委員長就任のことはまったく聞いていない,と不快感を露わにしている。
制憲過程を支援してきたUNMINの任期は2011年1月15日までであり,ネパール諸政党はいよいよ追い詰められてきた。期限までに,憲法制定と人民解放軍(PLA)問題の解決に目途をつけなければならない。
ネパールの政治家たちは,いつもてんでんばらばら,勝手なことを言い張りまとまりがないように見えるが,イザとなれば,結構うまく話をまとめる。落としどころを心得ている。7人委員会の設置にしても,たしかにボス談合,非民主的ではあるが,マオイストのプラチャンダ議長を委員長に据えたところなど,なかなかやるな,と感心する。
憲法制定やPLA問題解決には,まだまだ難問山積だが,最後の土壇場で,何とか決着をつけるのではないだろうか?
* eKantipur, Oct.13,19; Nepalnews.com,Oct.15,19
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