ネパール評論 Nepal Review

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王制復古を,カマル・タパRPP議長

このところ国民民主党(RPP)が元気だ。6月9日には,カトマンズ・クーラマンチに数千人を集め,決起集会を開いた。

RPPのカマル・タパ議長は,弁舌さわやかな魅力的な政治家だ。確信的王党派であり,もしRPPが党勢回復すれば,プラチャンダ・マオイスト議長のよきライバルとなるであろう。

9日の決起集会で,タパ議長はこう檄を飛ばした。5月27日の制憲議会解散で,マオイスト,NC,UML,マデシ連合は国民の信認を完全に失い,1990年憲法と王制に復帰したとみてよい。あるいは,もしそれが認められないなら,バタライ首相は辞職し,最高裁長官(現または元)の責任の下に暫定政府を設立し制憲議会選挙を実施,そこで新憲法を制定すべきだ。国民の多くは既成政党に失望し王制支持に復帰しているので,新憲法には当然王制が規定される。「国王にはしばしの自重をお願いしてきた。いずれ人民が国王にナガルジュンからナラヤンヒティへのご帰還をお願いすることになろう。」

9日のRPP決起集会では,DS.ラナ副議長も「4党の唱えた連邦制と世俗制が誤りであったことが明白となった」とのべ,また来賓のディベンドラ・ネパリ(NC)も「王制復古となっても,国王の復讐など心配する必要はない」と演説している。

RPPの再興がなるかどうかまだ分からないが,風向きが多少変わり始めたことはたしかだ。タパ議長は,目下もっとも正統性の高い最高裁に目をつけ,また大統領も利用しようとしている。うまい。そして,もし要求が通らなければ,街頭に出て実力で1990年憲法を回復する,とすごんでいる。したたかでもある。

メディアでは,「人民評論」など,まだ王党派系は元気がないが,メディアの動向も含め,これからどうなるか,注目していたい。

 Kamal Thapa (ekantipur)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/06/10 at 21:24

カテゴリー: 国王, 憲法, 政党

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大統領制,プラチャンダ提唱

プラチャンダ議長が,また大統領制を唱え始めた。人民直接選挙による大統領制は反民主的ではないし,人民主権と国民統合の維持には議院内閣制よりも適切だという。

たしかに議院内閣制は,政党政治が熟していないと,不安定となりやすい。ネパールの場合,1990年憲法時代以来,政党内閣はいつまでも安定せず,1年前後で交代するのがほぼ慣例となっていた。政党の組み合わせも,権力ほしさのあまり党是も何も無視し,ありとあらゆる可能性が試みられたが,いずれもダメであった。野合,無節操の極みだ。

それでも90年憲法体制では,最後の拠り所として国王がいた。さんざん悪口を言われ,事実,芳しくない行為も多々あったが,少なくとも国家統合の最後の切り札としての国王(制度としての王制)の存在は大きかった。(「王制」アレルギーの方々には,朝日新聞の2012年正月特集をご覧いただきたい。王制(君主制)による民主主義批判が展開されています。)

ところが,「民主革命Ⅱ」により王制は廃止され,しかも西洋押しつけ包摂民主主義により議会は多党乱立となり,行政も何もかも各種利益集団の割拠となった。議会は何も決められず,行政はコネ・ゴネがさらにひどくなった。

これはイカンと思ったのは,われらがプラチャンダ議長だけではない。ネルー大卒で駐印大使も務めたロックラジ・バラールらも,政治的安定と経済発展には大統領制が必要だと唱え始めた。

大統領制は,いわば「選挙王制」。いま破竹の勢いの橋下大阪市長が,なぜ大胆な政策を打ち出し実行できるかといえば,直接人民(市民)により選挙された一種の「国王(君主)」だからである。「選挙」王制だから,血統世襲王制ほどの安定継続性はないが,変節朝日新聞が正月早々賞賛した王制の他の非民主的特徴の多くは,備えている。それを橋本市長はうまく利用しているのだ。

プラチャンダ議長の大統領制提唱には,おそらく自分が大統領となり,マオイスト人民独裁を達成しようとの野望もあるだろう。しかし,ネパールの現状を見ると,議院内閣制の未来は暗い。

私自身は,いまのネパールには完全な儀式的象徴君主制が望ましいと思うが,それが無理なら,やはり大統領制がよいだろう。正月の朝日新聞を読み,その思いをますます強くした。プラチャンダ議長,頑張れ!

ネパール王制と天皇制:苅部直「新・皇室制度論」をめぐって
Unitary State, Ceremonial Head and Japan’s Role in Peace Process (2007.9)

* Rising Nepal, 2012-01-23,25.

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/01/31 at 11:29

パラス元皇太子,存在誇示

天下の朝日(12/15)が外報面で「ネパール元皇太子を逮捕」と大々的に報道している。本当かなぁ?

記事によると,パラス氏はチトワン公園内ホテルで「酒に酔ってスジャータ・コイララ副首相の娘婿と口論となり,短銃を発砲した」容疑で「逮捕」されたそうだ。

しかし,パラス氏は,畏れ多くも日本国の天皇陛下,皇后陛下,皇太子殿下,秋篠宮殿下・妃殿下に大歓迎された,立派な方だ。そんな高貴な方が,下世話な卑俗・単純な動機で,酔っ払ってピストルをぶっ放すなどといったことをなさるはずがない。

そもそも王族は法の上にあるものであり,下々のできないことを自在にやることをもって本質とする。人気歌手を轢き殺すのも平気だ。轢き殺されたのは雷に打たれたようなものであり,運が悪かっただけ。だから,副首相娘婿にピストルをぶっ放したのも,もし事実なら,パラス氏がまだまだ貴種であり法の上にあることを天下に知らしめるためであろう。

さて,パラス元皇太子は,本当に逮捕・起訴されるのか? 日本国天皇家と長年の親交がある名家であり,ピストルをぶっ放したくらいで,天皇家(とその応援団)が冷淡・冷血に見捨てるはずがない。チトワンで優雅な避寒別荘生活でも始めるのではないかな。

■皇室に大歓迎されるパラス皇太子殿下

ID Photo (Rising Nepal, Jul.11)

【参考】自衛隊派遣,皇太子歓迎以上の愚策

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2010/12/15 at 11:57

カテゴリー: 国王, 外交

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