ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

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ガディマイ祭:動物供犠と人間の業(2)

3.ガディマイ祭縁起
ガディマイ祭の由来については,いくつか説があるが,よく知られているのは,900年前始原説と260年前始原説。

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 ■ガディマイ寺院:グーグル地図(=寺院)/グーグルアース

(1)900年前始原説
ラヴィ・M・シンは,シヴァ・チョーダリ・タルーから聞き取りしたとして,900年前起源説を次のように説明している。Ravi M Singh, “The Five-Year Animal Sacrifice,” ECS Nepal,Sep.25.2013(http://ecs.com.np/features/the-five-year-animal-sacrifice)

シヴァ・チョーダリ・タルーは,バグワン・チョーダリの直系子孫で,ガディマイ寺院の祭司長。そのチョーダリによれば,ガディマイ祭は約900年前に始まった。

900年ほど前のある日,バリヤルプルのバグワン・チョーダリの家に泥棒一味が侵入したが,すぐ捕まり,怒った村人たちにより皆殺しにされた。バグワンは,村人たちが罪に問われるのを恐れ,すべての罪を自ら引き受け,カトマンズのナクー監獄に投獄された。

ある夜,マクワンプル要塞(गदी,Gadhi)の女神が夢に現れ,以来,毎夜夢に現れるので,バグワンは,自分を殺害事件のあったバリヤルプルに連れ戻してほしい,と頼んだ。(最後の部分,文意不明瞭。「女神は,殺害事件のあったバリヤルプルに連れて行ってほしい,とバグワンに頼んだ」とも読めるが,これはやや不自然。)

141101a ■現在のナクー刑務所(Nakku Jail, Khabartime.com)

女神はバグワンの願いを聞き入れ,その偉大な呪力によりバグワンをナクー監獄から解放した。女神の足下から土が流れ出しバグワンのターバンにまで届き,そこから道ができ,バグワンは村に戻ることが出来たのである。(ちなみに,ガディマイ寺院の土は神聖で,持ち帰り田畑に撒くと,土地が肥え作物がよく育つとされている。)

バグワン解放の見返りとして,ガディマイは,毎年,人間5人を生贄として捧げよと求めた。バグワンは,自分の生命は喜んで差し出すが,人間5人の生贄は捧げられないと応えた。そして,その代わり,5年ごとに,動物パンチャバリ(पञ्चबाली,5種動物供犠)を行うと誓った。ネズミ,ブタ,ニワトリ,ヤギ,水牛の5動物の生贄である。

こうして,力と繁栄と土地守護の女神ガディマイのためのパンチャバリが始まったが,バリヤルプルの人々の願いは聞き届けられず,子供や若者が病気になり死に始めた。仕方なく,バグワンが再びガディマイにお伺いを立てると,女神は動物パンチャバリだけでなく人間の生贄も捧げよと求めた。そこで,やむなく人間の生贄探しを始めたが,これはうまくいかなかった。

そこに幸いにも,ラウタハトのシムリから一人の村人が助けにやってきて,自分の身体の5カ所――胸,舌,目の下,あご,腕――からそれぞれ血を採り,その血を女神に捧げた。いわゆるナラバリ(नरबलि,人間供犠)の一種である。女神はこれを喜び,村は破滅から救われた。こうして,バリヤルプルでは,以後,動物パンチャバリと人間ナラバリが行われるようになり,今日に至っている。

141103c ■最高裁へのガディマイ祭反対請願(Sante Secchiイタリア,Change.org)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/11/03 at 11:40

ガディマイ祭:動物供犠と人間の業(1)

5年に1度のガディマイ祭(गढ़िमाई पर्ब, गढ़िमाई मेला)が,11月下旬,バラ郡バリヤルプルで開催される。この祭は世界最大の動物供犠祭として知られており,今年も,動物の愛護や権利擁護を唱える世界中の人々から,「非人道的」などと激しい非難攻撃を浴びている。私の考えはすでに何回か表明したが,今年は前回(2009年)以上に議論が激昂しており,また新しい論点もいくつか明らかになってきたので,ここで改めて,ネット上の議論を参考にしつつ,考察してみることにする。
 [参照]動物の「人道的」供犠:動物愛護の偽善と倒錯; 動物供犠祭への政治介入:動物権利擁護派の偽善性; 血みどろのゴルカ王宮; インドラ祭と動物供犠と政教分離; ケネディ大使,ジュゴン保護を!; イルカ漁非難,その反キリスト教的含意と政治的戦略性

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■ガディマイ祭反対キャンペーン: People for the Ethical Treatment of Animal-US / Compassion in World Farming-UK)

1.ガティマイ祭の概要
 (1)開催日:5年に1度,11月下旬2~4週間。動物供犠はमंसीर月の第二 सप्तमी。前回2009年11月24-25日,今回2014年11月28-29日。
 (2)開催場所:バラ郡バリヤルプルのガティマイ寺院(現寺院1993年建立)とその周辺。バリヤルプルはタルー民族の村。住民7033人(1991)。
 (3)祭事:ガディマイ(ガディ女神)への動物供犠。供犠動物総数25~50万。
 (4)供犠動物:水牛,ヤギ,ヒツジ,ブタ,ニワトリ,アヒル,ハト,ヘビ,ネズミなど。
 (5)参拝者:約500万人,その60~70%はインドから(2009年)。
 (6)ネパール政府拠出金: 450万ルピー(2009年)

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 ■ガディマイ寺院(ECS Nepal)/バリヤルプル(UN-Nepal)

2.ガディマイ
ガディマイ(ガディ女神,गदीमाई, गादी माई)はドゥルガー(दुर्गा)の娘で,カーリー((काली )の姉妹。あるいは,カーリーと同様,ドゥルガー自身の別の姿(別の相のドゥルガー)ともいわれている。

ドゥルガーは,戦いと勝利の女神で,恐ろしい水牛の姿をした大魔神と血みどろの戦いを戦い,これを殺し,世界を救った。ガティマイはその娘ないし別の相であり,「力の女神」。このガティマイに生贄(特に水牛)を捧げると,その恐るべき力(シャクティ)による加護が得られると信じられてきた。

141101d ■ドゥルガー,下方は退治した水牛魔神の生首(Education Blog)

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■カーリー(WIKI)/ガディマイ(FB,Gadhimai5)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/11/01 at 21:19