ネパール評論 Nepal Review

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監視カメラ設置,先進国ネパールから学ぶな

伊丹市が,監視カメラ1000台の設置を決めた。24時間稼働で,映像は記録し,警察に提供される(運用基準は同市「ガイドライン」等参照)。1平方キロあたり40台の集中設置とのこと(朝日2月14日)。

これは,恐るべき密度で,住民は市内どこにいても,いや場合によっては,自宅敷地内や窓際にいても,その挙動をカメラ監視される恐れがある。伊丹市民は,こんな監視を苦痛とは感じないのだろうか? もし感じないとすれば,世も末,もはや何も申し上げることはない。

監視カメラについては,ネパールが猛烈な勢いで設置を進めていることを,最近,何回か紹介した。前近代的共同体監視社会から超近代的カメラ監視社会への一足飛びの飛躍である。そのネパールを,伊丹市は,そして政府音頭取りで他の多くの自治体も,いま後追いしようとしているのだ。(参照「前近代的共同体監視社会から超近代的カメラ監視社会へ」)

たしかに,現在のネパールは,最新の理論や制度や機器の実験国であり,そこから学ぶべきものは少なくない。先に紹介したジェンダー平等などがそうだ。

しかし,いくらなんでも,プライバシー無視のカメラ監視社会化まで,学ぶ必要はない。日本は,曲がりなりにも天賦人権の不可侵を原則とする近代市民社会を成熟させてきたのではなかったのか?

▼カトマンズの監視カメラ

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 ■ネパール国旗・監視カメラ・太陽光発電/Study in Nepal?

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 ■信号機死すともカメラ死せず(マイティガル)

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 ■カトマンズ郡裁判所前/官庁街南入口前

150215g ■シンハダルバール(中央官庁)正面入口前

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 ■ラトナ公園東側/バドラプル(ジャパ郡)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/02/17 at 15:57

前近代的共同体監視社会から超近代的カメラ監視社会へ

通俗憲法論によれば,近代憲法は国家権力を縛るものだそうだが,近代超克国家ネパールでは,そんな通俗近代憲法論など,全く気にもかけていない。制憲議会では憲法制定の目途さえ立たないのに,現実社会ではSF的超近代的万人監視体制づくりが着々と進んでいる。前近代的な共同体監視社会から,ハイテク・カメラによる超近代的万人監視社会への一足飛びの跳躍だ。

カトマンズに来てビックリ仰天したのは,いたるところに監視カメラが設置され,しかも驚くべきことに,多くがちゃんと稼働していること。数日前の新聞によれば,監視カメラは今後さらに増設される予定だ。

これらの監視カメラは,表向きは,交通管制が目的だが,カメラには車だけでなく人間も牛も犬も写る。交通管制が名目でも,その気になれば,いつでも犬や牛や人間の行動の監視に活用できる。犬が人にかみついていないか? 牛が路上に寝そべっていないか? そして,不逞の輩がデモや挙動不審の行動をしていないか? こんなことが,すべて監視カメラで常時監視できる。超近代国家の指導者なら,誰しも,喉から手が出るほど欲しがる統治の必須アイテムだ。その監視カメラが,いまやカトマンズの街中,いたるところに設置されており,しかも今後さらに増設されるというのだ。

たとえば,インドラチョークの近くの人通りの多い狭い十字路。その交差点とは到底呼べないほどの狭い十字路の上にも,監視カメラがあり,レンズの方向を不気味に動かしつつ,四方八方を監視している。

こんなところで,いったい何を監視しているのか! 監視カメラをしつこく激写していた私も,当然,監視カメラで監視され,一挙手一投足を記録され,おそらく不審者リストに掲載されているであろう。無事,出国できるだろうか? ちょっと,心配になってきた。

150207a■上:ソーラー照明,右:信号機,下:監視カメラ

150207b■消灯信号機と稼働監視カメラ

150207c■二種の監視カメラで厳重監視中

150207d■「仏陀の目」より強力な「監視カメラの目」

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/02/07 at 12:23

秘密法のためのパノプチコン社会に向けて

特定秘密保護法(秘密法)が施行(2014年12月10日)されて1か月,指定「特定秘密」ははや382件に達した(2015年1月9日現在,朝日新聞1月9日)。⇒各行政機関における特定秘密の指定状況一覧表(平成26年末現在)

いうまでもないことだが,「秘密」は「監視」の対概念であり,秘密を守ろうとすればするほど,監視は厳しくなる。秘密法を施行するには,万人の常時監視は不可欠だ。監視により怪しい気配をいち早く察知し,秘密漏洩を防止する。それでも万が一,漏洩してしまったら,犯人を可及的速やかに捕らえ,白状させ,漏洩被害を最小限にとどめる。これは必須。国民監視なしの秘密法は張り子の虎,実用にはならない。

おそらく,こうした要請からであろう,このところ政府は,あの手この手を駆使し,日本国中に「防犯カメラ」という名の「監視カメラ」を設置させようと,躍起になっている。

すでに平々凡々たるわが住宅地にも,路上監視の「防犯カメラ」が,はっきりそれと分かるものだけでも,約300mおきに設置されている。私も毎日,無断撮影されているが,その映像がどう利用されているか,皆目,見当もつかない。いまですらそうなのに,元旦の市広報を開くと,なんと,次のような公告が出ている。ギョとし,お目出たさも吹っ飛び,背筋が寒くなった。

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防犯カメラの設置を支援します  受け付け中
安全・安心なまちづくりを進めるため、犯罪の予防を目的とした防犯カメラを設置する地域団体に対し、設置費用の一部を補助します
対象団体=次のすべての要件を満たす自治会やまちづくり協議会などの地域団体。 ▽一定の地域を基盤とし、地域に根ざした活動をしている▽活動を行う地域の多数の世帯住民で構成されている▽活動を行う地域の世帯・住民が自由に加入できる▽規約や代表者を決めている―団体
補助要件= ▽防犯カメラを設置する地域の合意が形成されている▽設置場所の所有者などの承諾・許可を得る▽市の定める「防犯カメラの設置及び運用に関するガイドライン」に適合する管理運用規程を定める▽設置に対し、他の法令等により国・県などから同種の補助金を受けていない。
対象経費=公道等(不特定多数の人が通行する私道等を含む)に常設する防犯カメラの購入および取り付け工事に要する費用。
補助額=防犯カメラ1台につき上限8万円
申し込み=防犯交通安全課、市民相談課
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150109b 150109a 150109c 150109d ■住民監視中の「防犯カメラ」

これは,わが市が独自にやっているのではない。日本に地方自治はない。号令をかけ,補助金を付け,各自治体にやらせているのは,むろん中央政府だ。たとえば―

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▼平成26年度G空間関連政府予算(GIS) 警察庁 予算額39百万円
犯罪情勢の時間的・空間的変化の分析手法及び犯罪抑止対策の評価手法の開発
犯罪情勢や地域環境の変化を的確に把握する時空間分析手法と、街頭防犯カメラの設置など地区単位で実施される犯罪抑止対策の評価手法を開発する。
▼経済産業省 まちづくり補助金
以下のような、地域商店街の積極的な取組に使える補助金です
①安心・安全な街をつくりたい
例)夜間も安全で安心に利用できる商店街を実現するため、街路灯や防犯カメラを設置したい。
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補助金は取らねば損が,自治体の習い性。かくて,全国津々浦々,「防犯カメラ」が普及しつつある。そして,設置された「防犯カメラ」の使用方法も,おそらく国家指導に基づき,各自治体が同じような規則を定めている。たとえば,大阪市―

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▼防犯カメラの設置及び運用に関するガイドライン 大阪市
画像の利用制限
 (1)画像の利用は、犯罪の抑制及び防止目的の範囲で行い、画像から知り得た情報は、外部に漏らさない。
 (2)画像は、次のいずれかに該当する場合を除き、外部に提供しない。
  ア 法令に基づく請求があった場合
  イ 捜査機関から犯罪捜査の目的により要請を受けた場合(ただし、捜査機関が画像の提出を求める場合は文書によるものとする。)
  ウ 個人の生命・身体又は財産の安全を守るため、緊急かつ止むを得ないと認められる場合
  エ 本人の同意がある場合又は本人に提供する場合
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この大阪市のガイドラインは厳格な方だが,それでも,捜査機関による利用は当然の前提とされ,それ以外でも,必要とあらば使用は可能だ。

しかも,巧妙なのは,中央政府が「防犯カメラ」を上から押しつけるのではなく,地域の自治会や他の団体等が自発的に「防犯カメラ」を設置するのを補助金により助成する,という形を取っていること。つまり,住民の自発的相互監視であり,しかし同時に,その映像記録は国家が事実上自由に使える,という形をとっている。実に巧い。

わが地域の「防犯カメラ」は,まだ300mおきだが,補助金の魅力により追加設置は必定。もし100mおきに「防犯カメラ」ともなると,もはや生活はあらかた権力の監視下におかれることになってしまう。蟻の這い出る隙間もない。

これこそ,近現代の理想としてのパノプチコン社会,すなわち万人監視社会の到来である。秘密法は,そのような社会の完成を要請している。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/01/09 at 20:17

京都の米軍基地(62):レーダー稼働と秘密指定とイエスマン首長

米軍が12月26日,Xバンドレーダーの運用を開始した(公表同日午後9時)。警察庁の特定秘密指定発表と同時ないし直後の,絶妙のタイミングだ!

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 ■Xバンドレーダー(京丹後市HP)

1.特定秘密の指定
特定秘密保護法(秘密法)は,すでに2013年12月6日,自公強行採決により成立していたが,施行は2014年12月10日から。

このスケジュールにあわせ,政府は指定されるべき秘密の選定作業を進め,朝日新聞(12月27日)によれば,すでに政府10機関が約370件を特定秘密に指定しているという。いかにも秘密法らしいのは,機関自ら発表したのは今回の警察庁が初めてで,他の諸機関は自ら積極的には発表はしていないこと。秘密は秘密にしておきたいというのが本音であろう。

警察庁発表の主な秘密は,情報収集衛星,テロ,外国政府などとの協力,スパイ活動,部隊の戦術・運用,情報提供者などの人的情報源。これらの秘密は秘密であって具体的なことは皆目見当もつかないが,Xバンドレーダーに関することは何でも,この秘密の網のどこかに引っかかりそうだ。

秘密指定は,警察庁のものだけではない。朝日新聞(12月27日)調べでは,他にも多数ある。
  防衛省 244件
  内閣官房(内閣情報調査室など) 49件
  海上保安庁 15件
  経産省 45件
  総務省 2件
  法務省 1件
  国家安全保障会議 1件

2.Xバンドレーダーの稼働
京丹後のXバンドレーダーは,この秘密法体制(国民監視体制)発足と同時に運用を開始した。単なる偶然の一致ではあるまい。

Xバンドレーダーは最先端の監視装置であり,北朝鮮はむろんのこと,中国をも常時監視する。この監視装置には,それを守る最先端の強力な秘密防衛体制=住民監視体制が不可欠だ。特定秘密保護法は,まさしくその要請に応えるもの。京丹後市は,Xバンドレーダーを受け入れることにより,かつての日本三大秘境の一つから,一躍,日本最先端の秘密法モデル地域に向かって,大きく前進したのである。

Xバンドレーダーは,単なる機械ではない。Xバンドレーダーは,それを支える社会体制の中でのみ機能する。その体制を,「Xバンドレーダー体制」と呼ぶ。

3.仲井真前知事と中山市長と基地利権
「Xバンドレーダー体制」は,中に入ってしまえば,とりわけ有力者にとっては居心地がよい。中山京丹後市長は,運用開始に関するコメント(12月26日)で,こう語っている。

「施設の本格開始に当たり、我が国の平和と安全という尊い国益への貢献を真摯に願うとともに、自治体としては、同時に、様々な面での住民の安全、安心の確保が大前提であるとして、この間、このための準備や対策に国、米軍、京都府、地元住民はじめ関係者の皆さんとともに、万全に取り組んできました。・・・・」(赤字=引用者)

このコメントを目にしてすぐ思い浮かんだのが,安倍首相との会談後の仲井真・前沖縄県知事のことである。前知事はこう語った。

「安倍総理大臣、菅官房長官にはこのような機会を私どもに与えていただきまして、心から感謝申し上げます。また、今、総理大臣自らご自身で、我々がお願いした事に対する回答の内容をご説明いただきまして、ありがとうございました。いろいろ驚くべき、立派な内容をご提示いただきました。沖縄県民を代表して、心から御礼を申し上げます。本当にありがとうございました。」(首相官邸「仲井眞沖縄県知事との面談」平成25年12月25日,赤字=引用者)

141227a ■安倍・仲井真会談(2013年12月25日,官邸HP)

この二人の基地自治体首長の姿勢は,中央政府の基地利権による懐柔にオドオドしながら追従する,という点でよく似通っている。自治体(地域政府)は,本来,国家に先在し,「地方自治の本旨」(憲法92条)に則り統治されるべきなのに,彼らはその誇りと責務を忘れ,自ら国家の下請け機関に甘んじてしまっている。

だから,「尊い国益への貢献」の前提条件として繰り返し強調される「住民の安全安心」も,住民自身のための「住民の安全安心」と錯覚してはならない。それは,正しくは米軍と日本政府のための「住民の安全安心」であり,より正確には「お上のための住民監視」にほならない。

4.米軍基地と秘密法の威嚇効果
下掲文書は,レーダー運用開始後,京丹後市が公表したもの。この赤字警告を無視して,故意に,あるいは何かの弾みで,誰かに事前にこの内容を漏らしてしまったらどうなるか? あるいは,何気なくしゃべったことが,結果的に,この文書の内容と同じだったとすると,どうなるか? 

秘密法施行以前であっても,職務秘密の漏洩は多かれ少なかれ処罰される場合があるが,秘密法施行後は,はるかに重罰であり,その威嚇効果は絶大となる。

米軍やXバンドレーダーについても,「見ざる,聞かざる,言わざる」となることは避けられず,かくして京丹後はG・オーウェルも真っ青の住民監視管理社会となってしまうであろう。

 ▼防衛省文書(京丹後市HP)
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谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/12/27 at 19:12

京都の米軍基地(53):軍機を暴けるかストリートビュー

グーグルのストリートビューやアースは,両刃の剣だ。個人私生活(プライバシー)が暴かれ世界中にばらまかれ取消不能となる危険性がある反面,軍事秘密の端々も暴いてくれる可能性があるからだ。

下掲写真は2013年9月撮影のストリートビュー。米軍基地調査らしい写真もある反面,地元の人々の写真も容赦なく無断撮影され,世界中に公開されている。取消不能。

すさまじい時代になったものだ。Xバンドレーダーの電磁波より恐ろしい。

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 ■基地ボウリング調査(?)/右:米軍用地,左:反対立看

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 ■袖志村内/尾和バス停

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 ■尾和国道側/上野国道側

【参考】Google マップ/Earth 利用の追加規約(2012年3月1日)
「2. 使用の制限: ユーザーは、事前に Googleから書面による許可を得ることなく、次のことを行ってはなりません: (a)コンテンツまたはその一部を複製、翻訳、変更、または派生物を作成すること、・・・・」

あれあれ,Googleは,市民から,写真撮影の「書面による許可」をいつ得たのかな? 私には,自分の身体や日常生活や自宅などの写真を撮り世界中にばらまくことを,Googleに「書面」をもって許可した覚えはないのだが。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/08/01 at 11:23

京都の米軍基地(51):関所の監視カメラ

京丹後市の出入口=関所の一つに,監視カメラらしきものが設置されている。監視カメラ(スパイ盗撮カメラ)には詳しくないので,ひょっとすると違うかもしれないが,少なくとも外見からは監視カメラのように見える。

140709a 140709b ■設置監視カメラ/カメラ部分

1.監視の可能性の不気味さ
カメラ付近には,説明も標識も何もない。設置主体,設置目的不明。どこかにあるかもしれないが,ガードレールを乗り越え敷地内に入ると,侵入者とされ,頭上のカメラでバッチリ撮られ,逮捕されてしまうだろう。盗撮カメラを盗撮して逮捕されては,号泣兵庫県議以上にみっともない。

設置場所は峠なので,降雨・積雪監視用かもしてないが,そうしたことは,たいした問題ではない。設置目的が何であれ,盗撮された映像は,イザというとき,動かぬ証拠として何にでも利用できる。事実,おびただしい監視映像が,そのように利用され始めている。

この峠の監視カメラは,電話線で通信網に接続されているようだ(赤線表示)。つまり,誰かが,どこかで,ここを通るすべての人々の映像を見ている,監視=盗み見している,ということ。あるいは,いまはそうではなくても,そうしようと思えば,いつでもそうできる状態にあるということ。

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 ■通信網接続の監視カメラ

2.自衛隊の活発化
そして,さらに注目すべきは,先にも指摘したように,この地域では自衛隊の活動が活発化している。監視カメラを盗撮していたときも,自衛隊ジープが数台通過した。関連事業用のダンプも急増した。

140709d ■監視カメラ下通過の自衛隊ジープ

3.撮ると撃たれる恐れ:米軍
そして,忘れてならないのが,これからは自衛隊だけでなく米軍の車両も通行するということ。これは,恐ろしい。

日本は,国民も自衛隊も平和ボケ。国民は何にでも平気でカメラを向ける。自衛隊だって,格好の被写体にすぎない。事実,私も自衛隊ジープを激写したわけだ。自衛隊も自衛隊で,若い女性がカメラを向けたら,ピースサインさえしかねない。実戦経験ゼロ,緊張感なし。

ところが,米軍(や他の軍隊)はそうではない。カメラを向けようものなら,「撃たれる!」と判断し,反射的に撃ちかねない。キャノンは銃(キャノン)であり,撮る(シュート)は撃つ(シュート)。これは世界の常識だ。

Xバンドレーダー基地(米軍専用施設区域)付近は,特に危険だ。そのことは毎日放送(TBS)「見えない基地~京丹後・米軍レーダー計画を追う」(2014年1月19日放送)のなかの車力米軍基地レポートの部分を見れば,明らかだ。(参照:京都の米軍基地(31):MBS「見えない基地」再放送を米軍事会社 日本でも米レーダー警備、特権適用 青森・車力基地

基地外ではそれほどではないにせよ,不用意にカメラを向けると,連行されたり,すごまれたり,あるいは状況によっては撃たれてしまうかもしれない。それが,撃たれる前に撃たなければ生き残れない軍隊というものだ。実戦や訓練において,米軍の軍人や軍属(戦争引受会社被傭者)は,その戦場での生存術を身体化してしまっている。

米軍は見てはならないもの。見てはならないものを見るかもしれない住民は見張り監視すべきもの。見る-見られるのこの逆転こそが,Xバンドレーダー基地のブラックホール的恐ろしさだといってよいであろう。

【参照1】JR乗降客映像を無断流用 オムロンが「不審行動」解析(7月12日追加)
 電子機器大手オムロンが、JR東日本の4駅で撮影した乗降客の映像を、JR東に無断で別の研究に流用していたことが朝日新聞社の調べでわかった。不審行動を割り出すセンサー技術の研究に使い、総務省の外郭団体から約2億5千万円を受け取っていた。・・・・
 140712■オムロンの無断流用の流れ(朝日デジタル7月12日)

【参照2】撮影禁止:車力と経ヶ岬(7月15日追加)
京都平和委員会FBの写真によれば,車力では「当基地又はその活動を写真,図画,グラフ等に記録すること」が禁止されている。このうち,「活動(activities)」の部分はどうにでも解釈でき,特に危険。
 140715 ■車力米軍基地の警告(同FB写真の警告部分)
経ヶ岬米軍基地の場合,独立の「米軍専用施設区域」であり,車力以上に危険な治外法権のブラックホールとなりかねない。もしそうなれば,周辺のものは,吸い込まれ,呑み込まれて行くであろう。基地外からの望遠撮影はむろんのこと,たまたま写ってしまった場合であれ,米兵,あるいはもっと怖い軍属(戦争請負会社)警備員がすっ飛んでくるのではないか? グアムのように。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/07/09 at 10:41

プライバシーと「忘れられる権利」

1.「忘れられる権利」判決
EU司法裁判所が5月13日,スペイン男性の「忘れられる権利(rights to be forgotten)」を認め,グーグルに対し,過去の新聞掲載債務関係公告へのリンク削除を命令した。問題発生時の公告掲載は適法でも,時間の経過により「忘れられる権利」が成立する,という理屈だ。

以前であれば,新聞等で報道されても,小さな問題や事件はすぐ忘れられ,よほどのことがなければ,知るのは難しい。また,知ろうとも思わない。

ところが,インターネットの普及により,ネット上の記録は半永久的となり,容易に検索・発見することができるようになった。世界の誰でも,知りたいと思う人の名前や関連用語を入力し検索すれば,記録の有無,あればその内容が瞬時に表示される。いったんネットに記録されてしまえば,世界万民監視,一生,いや死後ですら,過去の束縛から逃れられない。

それは,いくらなんでもヒドイ,というのが良識,とくに保守主義の本場ヨーロッパの常識だ。EU司法裁判所が,今回,「忘れられる権利」を認めたのは当然と言ってよいであろう。

140617 ■Google検索

2.「知る権利」との関係
一方,「忘れられる権利」の適用には,現実には,難しい問題もある。以前であれば,時間が自然に「忘れられる権利」を成立させてくれた。ところが,ネット時代になると,誰かが人為的に「忘れられる権利」の成立を認定せざるをえない。殺到するであろう消去要求をどうさばくか? 削除基準をどうするか? 有力者や有力機関の権力や金力をバックとする削減要求から市民の「知る権利」をどう守るか? いずれも難しい問題である。が,もはや,その問題との格闘を避けて通ることはできない。

3.「プライバシーの権利」との関係
この「忘れられる権利」とは別だが,実際には不可分の関係にあるのが,どこまでプライバシーをネット上に掲載できるか,という問題。たとえば,グーグルのストリートビュー。

ストリートビューについては,何度か批判した。解像度が劇的に向上し,撮影場所も路地裏にまで入り込みつつある。プライバシー侵害は,すでに許容範囲を超えているのではないか?

たとえば,自宅前で洗濯物を干している女性,玄関で誰かと話している男性,車で誰かと出かける青年等々。申し訳程度にぼかしが入れてあるが,知人,地元民なら,すぐだれか判別できる。

ストリートビューでは,まだ名前検索はできないが,地名入力すれば場所の検索は可能。地域の個々人の生活や人間関係が具体的にわかる。グーグルにプライバシーを暴かれ,半永久的に保存され,世界中にばら撒かれたくなければ,トイレにでも隠れて生活せざるをえない。

また,グーグルに許されるのなら,私たちも車にカメラを装着し,あるいは自宅軒下に監視カメラを設置し,手あたり次第撮影し,ネット上に掲載してもよいことになる。自宅トイレなど密室を一歩出たら,プライバシーなきものと覚悟せよ!

4.神の域に近づくグーグルや百度
私たちは,神の前では一切の隠し事はできない。神は,寝室も風呂もトイレも,すべて見ておられる。そして,すべてを永遠に記憶され,いつでも呼び出し現前せしめられる。グーグルや百度は,着実に神の域に近づきつつある。

140617b ■百度検索

[参照]
京都の米軍基地(41):住民監視の現状
京都の米軍基地(37):丸裸の監視社会
自衛隊員の「つぶやき」:万人監視社会への警鐘
京都の米軍基地(32):捨て石としての沖縄・グアム・京丹後
京都の米軍基地(23):特定秘密としてのXバンドレーダー

谷川昌幸(C)