ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

Posts Tagged ‘監視社会

万人監視国家,ニッポン

『世界』5月号の公募グラビア,佐藤淳平「監視」が不気味だ。監視カメラが,駅でも,団地でも,歩道でも,店先でも,ベンチの上からも,公園の木陰からも,そして,どこかわからないが,そこからも,人々を常時監視している。

東京都内には,街頭「防犯カメラ」が,警察設置195台,自治体設置4959台もあるそうだ。市民は,プライバシーより「安心,安全」を重視し,もはや慣れっこになっている。が,「防犯カメラ」の防犯効果は,実際には,まだ実証されていないという(p.303)。人々は,漠たる不安に駆られ,効果も定かでない「防犯カメラ」設置に走っているのだ。

プライバシー(privacy)とは,「自由な私生活」ないし「私生活の自由」のことであり,public,つまり「公開」「公共」の反対概念だ。換言するなら,私生活の自由(見られない権利)があってはじめて,公的領域(見る権利,見せる権利)があるのであり,公共は公共だけでは存立しえない。

そもそも,人間にとって本当に大切なものは,隠されてある。信仰もストリップショーも,隠されてある「」や「秘所」がなければ,存立しえない。隠すために見せ,見せるために隠す。隠すもののない者は,もはや人間ではない。カミかヒトだ。

それにもかかわらず,いまや日本の国家や社会は,監視カメラ設置で住民の「私生活の自由」を根こそぎ剥奪しようとしている。愚かなことだ。自らの存立根拠を,自ら取り除こうとしている。

そもそも「防犯カメラ」が欺瞞的だ。正しくは,「監視カメラ」,あるいは「スパイカメラ」または「盗撮カメラ」と表現すべきだ。日本は,古来,言霊の国。人間らしい「見られない自由」「隠れる自由」を取り戻すためにも,ことばは,それ本来の意味で誠実に用いられるべきであろう。

▼巷にあふれる「防犯カメラ」(Google)
140513b140513a

谷川昌幸(C)

京都の米軍基地(41):住民監視の現状

米軍Xバンドレーダー配備に伴い住民監視が強化徹底されることは間違いないが,そのまえに,現状がどうか調べてみた。といっても,プロが監視を気づかれるようなヘマはしない。素人にできることは,ネットで調べることくらい。それでも,ビックリ仰天した。ネット公開のライブカメラだけでも,すでに,こんなにも普及している。

京丹後市のライブカメラ 2014年5月9日現在

ライブカメラは,いまでは小学生でも簡単に設置・運用できるから,実際には,これよりはるかに多く設置されているとみてよいであろう。といっても,むろん,これらは住民監視が直接の目的ではない。しかし,善意の「防犯カメラ」「防災カメラ」「情報提供カメラ」「顧客調査カメラ」等々であっても,その気になれば,いつでも「監視カメラ」「スパイカメラ」「のぞきカメラ」となりうる。事実,犯罪捜査では,すでに日常的にそのような使われ方をしている。京丹後でも,住民は,いたるところで見られている,と覚悟すべきだろう。

不気味な世の中になったものだが,米軍基地ができると,こんなものでは済まない。本人に気づかれない形で,徹底的に個人情報が収集され,イザとなれば,お国の「国益」のために活用される。だれしも後ろめたいことの一つや二つはある。つまり,権力は,その気になれば,いつでも,だれでもお縄にできるわけだ。

丹後観光には,丸裸覚悟で,おいでいただきたい。岩陰でこっそり水着に着替えても,あなたは見られている(かもしれない)!

140509a 140509b
 ■宮津市・国道178号線/経ヶ岬・国道178号線

140509c 140509d
 ■平・宇川/久僧・よしの里

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/05/09 at 19:59

京都の米軍基地(37):丸裸の監視社会

グーグル写真を見てビックリ,また一段と精細になった。こんなものが見られるなら,わざわざ丹後の秘境に行くまでもない。論より証拠――

140416b140416c140416x
 ■空自分屯基地入り口/米軍用地/空自レーダー

140416k140416g140416h140416j
 ■尾和の国道沿い民家/同左,拡大/尾和村内バス停/右壁面,拡大

140416o140416p140416s
 ■袖志の商店と民家/同左,民家前拡大/久僧:共産党・自衛隊・自民党共生ポスター

140416t140416y140416m
 ■中浜民家/同左,拡大/袖志を無断撮影中のグーグル車

これらは,はるかに鮮明なグーグル画像を,素人が無料映像ソフトで縮小したもの。それでも,十分に判別できる。一応,人の顔や文字にはボカシを入れているが,申し訳程度,アリバイつくりにすぎず,誰が,どこで,何をしていたか,丸見え。丸裸に近いといってよい。

たとえば,袖志の女性や中浜の男性。あるいは,尾和の国道178号線沿い民家やバス停付近の民家,久僧の共産党・自衛隊・自民党共生ポスター掲示など。ポスターは見てもらうためだからよいとしても,自宅敷地内の無防備女性や男性を一方的に無断撮影し――その意味では盗撮し――世界にばらまき,永久保存・利用を可能とし,それでもって金儲けをしている。こんなことを,本当に,してもよいのだろうか?

しかし,それはそれとして,いま確認すべきは,一私企業ですら,ここまで自在にプライバシーを暴き,保存・利用できるということ。とすれば,米軍やCIAなど,あるいは自衛隊や公安機関などは,その何倍も強力な住民調査・監視技術を持ち,おそらくすでに何らかの形で利用していると想定せざるをえないであろう。

地元住民や京丹後に出入りするよそ者は,すべてどこかでチェックされ,経歴を照合され,分類・保存され,ひょっとするとケイタイ・スマホ情報も傍受され,監視されている可能性がある。まだどう利用されているかは分からないが,すでに山間部の峠などに,監視カメラがいくつか,さりげなく設置されている。

監視社会の恐ろしさは,実際には自分は監視されていなくても,監視されているかもしれないと思わされるところにある。丹後は,間違いなく万人監視の「Xバンドレーダー体制」に向かうであろう。

 ▼京都の米軍基地(13):「Xバンドレーダー体制」の危険性

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/04/16 at 12:04

ネット選挙運動規制の大いなる錯誤と危険性

インターネットやメールはド素人。スマホもラインも未経験。それでも,ネット選挙運動規制には苦笑を禁じえない。いや,それどころか,正直,恐怖さえ感じる。

130723d
 ■総務省インターネット選挙運動HP

そもそもインターネットは,蜘蛛の巣の無法地帯。国境も大人・子供もあったものではない。NSAは覗き放題,企業は個人情報ただ取り大儲け。メールアドレス偽造など,小学生でもやっているという。そのインターネット世界を,総務省・選管は国内法で細々と規制するという。バカバカしい。

こんな時代錯誤の法規制で処罰されるのは,ネット選挙運動参加を試みる善意の市民だけ。もともと日本の選挙は,がんじがらめの「べからず選挙」。「改正公職選挙法」も同じこと。善意の市民の健全な常識では,なにが選挙違反になるのか,見当もつかない。恐ろしくて,選挙運動には関われない。

特にネット選挙運動は危険である。NSAが覗き見しているであろうし,企業は個々人の政治的意見を様々な個人データと関連づけ,記録保存し,いつでも顧客に提供できる態勢を整えているであろう。○○党支持者には白系スーツ,△△党シンパには赤かピンクのスーツ等々。

また,米英の足元にも及ばないであろうが,日本の各種「情報機関」も,国民個々人の政治的態度を知りうるのだから,こんなおいしい情報源をほおってはおくまい。自前で,あるいは企業に依頼し,市民のネット・メール選挙運動を監視し,記録保存しているにちがいない。

市民にとってネット選挙運動が危険なのは,第一に,何が違法なのかよく分からないこと,第二に,ネット世界に発信した情報は,そのまま,あるいは何者かに加工され,何者かに記録保存され,イザッというとき,動かぬ証拠として利用される恐れがあること。

たとえば,これが違法かどうかよく分からないが,選挙期間中の7月14日,The Times of India(ネット版)をみると,こんな選挙広告が出ていた。

130723c
 ■辻泰弘候補の選挙広告(The Times of India, Jul.14)

おそらく記事連動あるいは検索連動広告であろう。検索語は「Arundhati Roy」。インドのマオイスト・シンパで,超過激派。記事は2002年3月7日付の「刑務所は思ったより悪くなかった」。ロイが,最高裁の法廷侮辱罪判決によりティハール刑務所に投獄された時のことを書いたものだ。

つまり,グーグルかどこかが,おそらく民主党の辻泰弘候補をインド過激派のアルンダティ・ロイと関連づけ,ここに表示したのだろう。(そうでなくても,ここにこう表示されれば,多かれ少なかれ,読者はロイとの関連づけと感じる。)これは何を意味するか? 辻候補にとって,それは選挙にどのような影響を及ぼしたのか?

あるいは,うっかりコピーし損ねたが,このページの下方には,あられもない半裸女性が出ていたが,ひょっとすると辻候補はこの半裸女性と関連づけられていたのかもしれない。もしそうだとすると,このインターネット選挙広告は,辻候補の選挙運動にとって,ロイとの関連づけ以上に大きな影響を及ぼした可能性がある。

おそらく民主党・辻泰弘候補は,自分のネット選挙広告がこのような使われ方をしていることは知らなかったであろう。

ことさように,インターネットもメールも,いいかげんであり,コントロール不能であり,危険なのだ。それを総務省・選管は,日本国内法で細々と規制するという。しかし,そんなことは不可能だ。

もちろん,立法者も総務省・選管も,それは十分承知の上だ。わかった上でこのような規制をするのは,おそらく,イザッというとき,権力にとって都合の悪い人物を,瞬時に見つけ出し,しょっ引くためであろう。ネットやメールをつかえば,データは半永久的に残る。権力にとって,こんな好都合な道具はあるまい。

ネットやメールは,いったん使用すれば,あとでそのデータが誰に,どう利用されるか,まったく分からない。ほとんどの人のほとんどのデータは見過ごされるが,イザッというとき,利用記録が命取りとなる危険性は誰にでもある。善良な市民は,ネット・メール選挙運動などには手を出さない方が,賢明であろう。

谷川昌幸(C)

 

Written by Tanigawa

2013/07/23 at 15:52

フェイスブックもスカイプも情報筒抜け

ワシントンポスト(朝日6月8日朝刊)やガーディアン(6月7日)によれば,アメリカ政府(国家安全保障局,FBIなど)が,フェイスブック,スカイプ,マイクロソフト(ホットメール),グーグル(Gメール),ヤフー,ユーチューブ,アップルなどの情報を,会社側から提供され,あるいは他の方法で,収集していることが明らかになった。

朝日6月8日夕刊によれば,オバマ大統領も,議会の承認を得ているとして,これを認めた。携帯通信情報も収集している。メールは読んでいないと大統領は釈明しているが,本当だろうか? これは対外情報監視法(FISA)に基づくPRISMプログラム。つまり合法だからだ。ワシントンポストの下図参照。

画像
■Washington Post, June 6,2013

しかし,こんなことは,まぁ常識。ネット情報,携帯情報など,すべてのデジタル情報が官民どこかに収集・保存され,政治的に,あるいは金儲けや他の目的のために,利用されていることは,明白だ。それがわかった上で,どこまで利用するか,ということにつきる。

で,つい先ほど,デスクトップ・パソコンが突然こわれた。警告ビープ音が出て,全く起動しない。一大事。私のことを私以上によく知っているはずのネット世界のどなたか,そちらに蓄積されている私の情報により,パソコン内情報を回復していただけないだろうか? プライバシー侵害などと,野暮なことはいいませんから。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/06/09 at 11:13

共通番号制度法とパノプチコン社会

共通番号制度法が2013年5月24日,自民,公明,民主,みんな,維新の賛成多数で可決成立した。反対は,共産,社民,生活など。

朝日記事(5月22日)によれば,2015年10月から,全国民に11桁の番号が振られ,下記のような個人情報が,その番号で一元管理される。運用は2016年1月から。

【収入や資産】
・給料や家族の状況 ・保有する不動産やその評価額
【医療・年金・福祉など】
・かかった医療機関や医療費の金額 ・医薬品による副作用の救済 ・新型インフルエンザなど感染力が強い病気での入院 ・年金の保険料や年金額 ・確定拠出年金(日本版401k)記録 ・介護保険の保険料やサービス利用 ・身体障害者手帳の交付 ・障害者支援施設などへの入所 ・障害者に対する自立支援給付 ・公営住宅を借りた記録 ・生活福祉資金貸し付け ・生活保護に関する記録 ・被災者生活再建支援金の支給 ・石綿による健康被害救済のための遺族給付 ・中国残留孤児への支援給付 ・心神喪失の状態で重大な他害行為を行った人の診断や治療
【雇用】
・雇用保険の失業給付 ・労災保険の給付 ・未払い賃金の立て替え払い ・職業訓練を受ける人への給付金
【子育て・教育】
・母子健康手帳の交付 ・受けた予防接種の時期や種類 ・児童手当の支給 ・高校の就学支援金 ・日本学生支援機構からの奨学金 ・学校でのケガなどに支給される日本スポーツ振興センターの給付金 ・里親の認定

この共通番号制度は,住基ネットやIC免許証(下記リンク参照)などとは桁違いに使い勝手のよいシステムだ。個人情報の宝の山。こんなおいしい情報は狙われ,あるいはあまりの巨大さ・複雑さのため「不注意」や「事故」で,必ず漏れる。そして,いったん漏れたら,その悪用による被害は広範・深甚で,回復はほぼ不可能だ。

いや,たとえ漏れ悪用されなくとも,この制度は権力による「善用」の方がむしろ恐ろしい。市民は,権力の前で丸裸にされ,優しく管理される。四六時中見守られ,どこにも隠れるところはない。プライバシーはない。

見えないところ,たとえば風呂場や寝室やトイレは,見えるところよりも本質的に危険である。強盗,痴漢,変質者が侵入するかもしれないし,あるいは病気や事故で生命が危うくなるかもしれない。だから,安全第一とするなら,防犯カメラや見守りカメラをつけ,誰かが,常時,見ている体制をとるべきである。

しかし,たいていの人は,そのような場所へのカメラ設置は拒絶する。なぜなら,いつも見られていることに,人は耐えられないからである。完全無影の白日の下,人は人としては生きられないと,直感的に感じ取る。人間の本性は,隠れつつ見せること,あるいは見せつつ隠すところにある。

共通番号制は,その人間本性への挑戦である。万人監視の「パノプチコン社会」への原理的転換。むろん,このパノプチコン社会でも生きられないことはないが,それは隠れることを一方の本性とする人間ではなく,生物としてのヒトにすぎない。

【参考】
ネット魚拓と「ログ保存法」
フェイスブックの恐怖(2)
フェイスブックも金次第?
フェイスブックとツイッター:現代の神の地上における代理人
Facebookの恐怖・再説
IT企業に丸裸にされる市民
危険なIC免許証,暗証番号の無効化を

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/05/26 at 10:11

フェイスブックの恐怖(2)

フェイスブックの恐ろしさについては,これまで何度か指摘してきた。(フェイスブックの恐怖) 問題の根源は,ネットのくせに,実在論原理主義をとり,本人情報を収集し,蓄積し,利用しようとするところにある。

それでも,これまでは普及優先だったのか,偽名,偽アドレスで登録できたが,かなり普及した結果,原理主義の本性を徐々に現し,本人情報のさらなる収集強化に乗り出したらしい。

130515
 ■匿名も顔写真以外もまだ可能(2013/05/15)

住所は,すでに実在住所でないと,登録できない。これは,おそらく郵便番号簿か何かと連動させ,偽住所は受け付けないようにしているのだろう。そのうち,住所入力なしでは使用禁止とされそうだ。そうかといって,実在のどこかの住所を入力すると,そこに住んでいる人に迷惑がかかる。

住所に加え,最近,強化し始めたようなのが,電話番号。登録をしつこく要求してくる。あまりにうるさいので,「9876543210」で登録しようとしたら,ちゃんと「0987-65-4321」と直し,登録してくれた。しかし,これは実在番号かもしれないので,あわてて削除した。もしこの番号にフェイスブックから電話があったら,平にお許し願いたい。フェイスブックが自動的に調整し,登録してしまったのだ。

あるいは,顔写真。こんなものを登録すると,姓名,年齢,性別,住所(ストリートビューで自宅も特定),電話番号,家族,友人,趣味,買い物履歴,読書傾向などと,本人の顔とが関連づけられ,素っ裸で銀座を歩くようなことになりかねない。テクノロジーの進歩で,機械による「顔認識」は,たしか90%以上可能となっているはずだ。本屋さんに入ったら,入口の「顧客認識装置」により本人特定され,「いらっしゃいませ。あなたがお探しの変態本が入荷しました。○○番書架でご覧ください」などと案内され,赤面することになりかねない。

そんなバカな,と疑う人は,4月26日街開きした「グランフロント大阪」に,その2,3歩手前のシステムが設置されているそうなので,見てきていただきたい。ヒマができたら,私も誰かのスマホを借り,見物に行くつもりだ。

さらに恐ろしいのが,自民党政府が推し進めている,マイナンバー制。国民総背番号により,身分関係から収入,病歴まで,全部丸見えとなる。そして,こんな情報は漏れるに決まっているから,これがフェイスブックなどに利用されたら,もうおしまい。失踪し,整形し,過去を消し,別人として出発する以外に,逃げようもなくなる。

ほんの二,三十年前までは,SFの世界と思われていたことが,いま現実のものとなりつつある。これは,むろんフェイスブックだけのことではない。いまやいたるところに設置されている「監視カメラ」。勝手に街行く人々の写真を撮り,蓄積し,分析し,分類し,特定し,他の本人情報と関連づけ,個人情報データベースを作り始めているにちがいない。たとえ,いまはまだ内密の「実験」段階であっても,電脳がプロ棋士に勝つご時世,いずれ一般化することは間違いない。

機械に丸裸にされ,スミズミまで監視され,管理されて生きる。それが,21世紀の「素晴らしい新世界」である。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/05/15 at 10:59