ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

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ネパール人労働者,韓国で自殺

韓国紙『ハンギョレ』が8月15日,社説「移住労働者の死を呼んだ「雇用許可制」、廃止を議論すべき」において,ネパール人労働者ケシャブ・シュレスタさん(27歳)の自殺問題を取り上げ,韓国の「雇用許可制(Employment Permit System)」を厳しく批判している。

韓国は,労働力不足に迫られ1993年,「産業研修生制度」を制定したが,これは劣悪な「研修労働」をはびこらせ,内外から「現代版奴隷制度」と非難されることになった。そのため,これに代わる「雇用許可制」を制定し,2004年8月から施行している。

「雇用許可制」は,政府が送り出し国との間で二国間協定を結び,その国からの労働者の受け入れを入国から出国まで一元的に管理する制度。企業は,政府から雇用許可書を取得し,受け入れ外国人労働者の中から必要人数を雇用する(EPSホームページ参照)。

外国人労働者の待遇
 ・雇用期間は4年10か月。再雇用は,3か月の出国後,さらに4年10か月可能。(EPSホームページでは,雇用期間3年,6か月の出国後,再雇用3年となっている。)
   *合法滞在が連続5年以上となると永住権取得申請が可能。
 ・労働条件は韓国人労働者と同等。労働三権,最低賃金,健康保険,雇用保険,産業災害保険など。
 ・転職は3回まで可能。

韓国の「雇用許可制」は,このように政府が外国人労働者の受け入れにつき全般的な管理責任を持ち,しかも外国人労働者の権利を広く認めるものと思われたので,当初,国際社会の評価はきわめて高かった。国連は「公共行政大賞」を授与したし,ILOや国際移住機構(IMO)も先進的なモデルと称賛した。

EPS HP(ネパール語版あり)

しかしながら,この「雇用許可制」も,韓国人が嫌がる危険で過酷な仕事を低コストで雇用期間限定の外国人労働者にやらせることを目的とする点では,「研修生制度」と本質的には変わりはない。外国人労働者は家族の呼び寄せはできないし,雇用主の同意がなければ,事実上,転職もできない。万が一,解雇され,無登録滞在ともなれば,巨額の保証金を没収されてしまう。そのため,たとえ低賃金や過酷労働であっても一人で耐え忍ぶほかない。外国人労働者の処遇は,事実上,雇用主が握っているからだ。

『ハンギョレ』社説が取り上げたケシャブ・シュレスタさんも,このような「雇用許可制」の犠牲者の一人である。ケシャブさんは,部品製造工場で昼夜12時間・2交代制で働かされたため,不眠症となった。転職は困難だし,一時帰国しての治療も許されない。追い詰められ,結局,彼は自殺してしまった。

同様のネパール人労働者の死が,この数年で数件あるという。転職できずに自殺2人,夜間心臓麻痺で死亡1人,養豚場浄化槽で中毒死2人,工場4階から転落死1人など。

「日経新聞」(2017年3月22日)によれば,韓国の「雇用許可制」による外国人労働者は26万人,日本の外国人技能実習生は21万人。人口比では,韓国の方が倍以上,多いことになる。

外国人労働者を受け入れるための制度としては,韓国の「雇用許可制」の方が優れていると思うが,たとえそうだとしても,自国労働者不足の穴埋めのための安上がりの一時的労働力として外国人労働者を受け入れるなら,それも結局は「使い捨て労働者制度」(アムネスティ)と非難されても仕方ないことになってしまうだろう。

 ■梁山市外国人労働者の家FB

【参照】
*1 ネパール人雇用,公平高給の韓国
*2 韓国,ネパール人労働者5700人受け入れ
*3 韓国語検定に受検者殺到
*4 佐野孝治「韓国の「雇用許可制」と外国人労働者の現況」,『福島大学地域創造』第26巻第1号,2014.9
*5 「[社説]移住労働者の死を呼んだ「雇用許可制」、廃止を議論すべき」,『ハンギョレ』2017.08.15
*6 「「通帳に残った31万円は妻と妹に…」あるネパール移住労働者の死」,『ハンギョレ』 2017.08.10
*7 「外国人の雇用許可制 曲がり角の「韓国モデル」 」,『日本経済新聞』,2017/3/22
*8 「韓国「雇用許可制」が半数 留学生バイト少なく」,『日本経済新聞』2017/3/22
*9 チョン・ヨンソプ(移住労働者運動後援会事務局長)「移住労働者雇用許可制10年、奴隷許可制だった」,『レイバーネット』,2014.08.14

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2017/08/16 at 13:39

カテゴリー: 経済, 人権

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ネパール人労働者激増,福岡県

西日本新聞(3月1日)と毎日新聞(3月2日)の記事によれば,福岡県における外国人労働者は26,323人で,過去最高。国別最多は中国の9,459人(全体の35.9%)。

二番目に多いのはネパール人で,5,353人(全体の20.3%)。前年比70.8%増だというから,すさまじい。

これで,ネパールにおける日本語学校人気復活の理由が,よくわかった。一時,日本語は人気を失い,宣伝看板も次々と韓国語などに書き換えられていた。ところが,数年前から徐々に復活,いまや少なくとも看板では英米語の次くらいの人気だ。

日本は少子高齢化。日本政府の「外国人労働者」積極的受け入れへの政策転換もあり,ネパール人労働者は今後もさらに増加していくだろう。日本において,彼ら,彼女らが,労働者として公正に処遇されることを願ってやまない。

【参照】
ネパール人研修労働者の大量採用:日ネ関係は新時代へ 
ネパール人労働者の対日輸出 
3 teenagers arrested for hurling eggs at Nepalese student 
搾取・虐待される出稼ぎ労働者 
研修生仲介業ガイドラインの改定,ネパール労働省 
外国人研修生の過労死,朝日社説が告発 
韓国語検定に受検者殺到 
外国人研修実習制は奴隷制:国連調査報告 
⇒⇒外国人研修労働
外国人労働者受け入れを問う (岩波ブックレット)
外国人実習生―差別・抑圧・搾取のシステム(学習の友社 2013/01)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/03/04 at 19:29

ネパール人労働者の対日輸出

輸出(export)」とはあまりにも即物的だが,これは私自身の用語ではなく,リパブリカ紙記事「ネパール人労働者対日輸出に向け,政府は努力」(a)のもの。

記事によれば,ネパール政府は,日本を,ネパール人労働者にとって「最も儲かる国(the most lucrative destinations)」の一つに加えた。政府が儲かるというのだから儲かるのだろうが,実際に儲かるのは労働者本人というよりはむしろ,政府や業者。しかし,このような人間の輸出で金儲けをして,本当によいのだろうか? あるいはまた,日本も安価な人間の輸入を必要としており,それで儲けるわけだが,これは国として本当に名誉なことであろうか?

ネパール政府筋によれば,老齢化大国・日本が求めているのは,「半熟練(semi-skilled)労働者」。JITCO(国際研修協力機構)経由で日本企業や事業主に雇用される。外国労働推進局ラグー・カフレ局長は,「日本政府の担当官によれば,ネパール人が日本で働くのに,言葉は障害とはならない。ネパール政府が少し準備さえすれば,この事業の実施は可能である」と語っている。ただし,日本政府からは,研修労働期間満了後,ネパール人労働者は日本に居残るな,ときつく言われており,それを日本政府に保証するのが難題だという(a)。

ネパールの海外出稼ぎは多い。毎日,1700~2000人の青年労働者が,マレーシアや湾岸諸国に向け出国しているという。まさか(!)と思われるかもしれないが,空港に行けば,ウソでも誇張でもないことが,すぐわかる。飛行機はおろか,列車にすら乗ったことのなさそうな青年たちが,長蛇の列をなし,搭乗を待っている。「人材」という言葉がある,たしかに彼ら青年たちは,便利で安上がりな雇用人間「材」であり,また仲介取引で儲けるための人間「財」でもあり,だからこそ,こうして輸出され,輸入されるのだ。

そのネパール「人材」が,本格的に日本に輸入され始める。日本では,安倍政権の円安(日本たたき売り)政策により,中国や東南アジアの労働コストが急上昇した。その結果,まだ相対的に割安のネパール人労働者が,日本の企業や事業者にとって魅力的となってきた。したがってこれから先,ネパール人労働者の輸入が大幅に増加すると見て,まず間違いはあるまい。

しかもその際,必要とされるのは,文句を言わず3K業務を担う単純労働者。「半熟練労働者」とは,要するに,そういうことだ。しかも,日本語能力も事実上不問となるらしい。これからやってくるのは,そうした満足な事前準備・事前学習なしのネパール人労働者なのだ。

彼らを輸入する日本。それは世界に冠たる排外的閉鎖社会であり,人種差別が最も激しい国の一つだ。そこに大量のネパール人単純労働者がやってくれば,いったい何が起こるか? 考えたくもないが,目をふさいでいることは許されないだろう。

150113b(JITCO HP)
150113a(JITCO HP)

[参照]
(a)”Govt Working To Export Nepali Workers To Japan,” Republica,2015-01-12
(b)谷川「研修生仲介業ガイドラインの改定,ネパール労働省
(c)関連記事:JITCO研修労働実習生

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/01/13 at 15:02

カテゴリー: 経済, 人権

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ネパール人雇用,公平高給の韓国

韓国外国人雇用制度(EPS)にもとづく韓国語能力試験が,8月13-14日実施され,4万人が受験した。9月26-27日にも実施され,総計5万5千人が受験の見込み。女性は約10%(ekantipur,2014/8/15)。

韓国EPSは,好評だ。受験料24ドル。学歴不問,39歳以下。選考は公明公正で,コネ不要。非熟練労働で,月給10万ルピー。だから大学新卒や有職者が多数応募する。採用数は,2013年度5234人,2014年度5700人。

韓国は,この外国人雇用問題でも,日本のはるか先を行っている。狡くて卑怯で時代遅れなのが,日本の外国人研修実習制度。こんな公告をこの記事の横に出さざるを得ないのは,そのためではないか?

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谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/08/16 at 14:04

カテゴリー: 経済

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3 teenagers arrested for hurling eggs at Nepalese student

TOSU, Saga — Three teenagers have been arrested for allegedly hurling eggs at a Nepalese student studying at a Japanese-language school here earlier this month, police said.

The three youths….stand accused of assault. Officials of the Japanese-language school say 19 of its students from Nepal, Vietnam and Sri Lanka, have been targeted in similar attacks since December last year….(May 27,2014, Mainichi Japan)

これは,5月20日夜のネパール人留学生襲撃事件を伝える英字新聞だ。生々しい。

佐賀県鳥栖市では,昨年末頃から外国人留学生に生卵を投げつけたり,マヨネーズをかけたり,さらにはエアガンで撃ったりする事件が,続発していた。被害学生は,ネパール人,ベトナム人,スリランカ人ら19人で,なかには国籍を確認してから襲撃した事件もあったというから,悪質だ。

鳥栖署は5月26日,ネパール人留学生襲撃容疑で少年3人(18-19歳)を逮捕し,6月13日,佐賀地裁に送致した。

このアジア人留学生襲撃事件の背後には,嫌韓,嫌中などアジア人蔑視,アジア人差別の風潮の蔓延があると見てよいであろう。自分もアジア人のくせに,日本人は別格,「名誉白人」らしい。

この風潮を暗黙裏に応援しているのが「外国人実習(研修)制度」。外国人を安上がりの使い捨て労働者として酷使し,しかも国内に居着かれると困るので数年で国外に追い返す。

日本政府が公正な扱いをしようとしないので,当然,いわゆる「不法就労」が増える。そこで,たとえば,このような警告が出されることになる。

     外国人の不正就労防止にご協力ください [佐賀県警]
不法就労活動とは 在留資格を持って在留する外国人が資格外活動許可を得ることなく行う活動です。・・・・
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むろん佐賀県警は,規則に則り善意で作成し掲示しているのだろうが,情緒的排外主義の高まりの中で,このような広報が愛国青少年の愛国心を刺激することは避けられまい。

また,鳥栖市の方も,どこまで本気で外国人差別問題と取り組むつもりか疑わしい。ネパール人襲撃事件を受け作成され配布されたとされるチラシが,これ。(⇒原本pdf)

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【参照】毎日5月27日;朝日デジタル6月11日;朝日7月19日;読売6月14日;西日本新聞5月28日,6月17日;佐賀新聞7月15日

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/07/20 at 18:55

韓国,ネパール人労働者5700人受け入れ

韓国政府は,2014年度ネパール人労働者受け入れを,5700人と発表した。TOPIK(韓国語能力試験)合格者9700人の中から選抜される。

韓国のEPS(労働許可制度)による2014年度受け入れ外国人労働者は,15カ国5万3千人。ネパールからの受け入れは,カンボジア,インドネシア,タイの次で,第4位。ネパール人労働者は,韓国でも,評価が高いという(ekantipur,2 Mar)。

▼韓国EPS
 ・労働期間:5年  
 ・最低賃金:韓国人労働者と同じ(月108万ウォン,2014年)
 ・受験資格:40歳以下
 ・TOPIK:受験料24ドル。受験者5万1千人(2011年),合格者8051人(2013年)
 ・2013年度ネパール人労働者受け入れ:8200人(製造業4600人,農業・畜産業3600人)

外国人労働については,韓国は日本よりもはるかに先進的だ。EPSは,外国人労働者雇用方法を明確に規定し,さらに最低賃金法,産業安全保健法など労働関係諸法の適用において外国人労働者と韓国人労働者との平等を定めている(EPSホームページ)。カトマンズにもEPSセンターがあり,定期的にTOPIKなどを実施している。ネパールは,EPSの優等生として高く評価されている。

しかし,それでも,韓国での生活はきついらしく,ネパール人労働者の死者は57人(2007-2013年)にのぼり,多くは自殺と突然死だという。

また,最低賃金は同じとはいえ,ネパール人をはじめ外国人労働者が韓国人の雇用を奪っていることも否定はできまい。韓国の失業率,とくに青年層のそれはかなり高い。

▼韓国の失業率
 ・15-29歳:8.7%(2014.01)
 ・15-24歳:10.2%(2005), 9.6%(2011), 7.5%(2013.11)

140303 ■韓国の失業率(DBJレポート2013年6月)

韓国在住ネパール人は,20470人(2013年11月)。すでにかなりの数だ。日本以上に少子高齢化の進む韓国。今後韓国におけるネパール人社会がどうなるか,注目される。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/03/03 at 22:39

カテゴリー: 経済

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没収地返却拒否,マオイスト反主流派

各紙報道によると,マオイストのタパ書記長は,没収分配土地は十分な補償なしには返却しない,と語った。「土地を耕作者に!」は,人民戦争のスローガンであった。プラチャンダ議長やバブラム首相は,この革命の大義に背いているというのだ。

その一方,バイダ派は,新たに地主土地の没収も始めたらしい。ヒマラヤン(22日)によると,コングレスのカリコット郡代表の土地をバイダ派が没収したが,警察は傍観しているだけだったという。

バイダ派地区代表によると,彼らは,人民が収穫した米の半分を持ち帰った地主から,それを人民に返させただけだという。そうかもしれないが,収穫米の全部を耕作者のものとするのであれば,土地没収と結果的には同じだ。

この説明が事実だとすると,収穫米の半分を年貢として取り上げる地主に対し,マオイストが小作人の側に立ち闘っていることになる。

収穫の半分が年貢! 日本の小地主の一人としては,何ともうらやましい話しだ。わが村では,からり以前からマイナス地代(礼金を払って耕作していただく)となっている。こんなことなら,政府肝いりの「研修労働者制度」によりネパールから農民を招き,わが田畑を耕作していただいた方がはるかにましだ。年貢は10%程度でよい。50%もとられるネパールに比べたら,はるかに有利だ。今度ネパールに行ったら,「日本で農業を!」と大々的に宣伝してみるつもりだ。

いずれにせよ,バイダ派は耕作農民のために,年貢50%を取っているらしいコングレス派地主と闘っている。10数年前と同様,その限りではバイダ派に正義がある。新人民戦争が始まるかもしれない。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2011/11/23 at 12:00