ネパール評論 Nepal Review

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ダリット結婚祝儀,10万ルピー

小さいが興味深い記事が,nepalnews.com(Feb8)に掲載されている。政府が,ダリットと他カーストとの結婚に10万ルピーを支給するという政策の継続を決定したのだ。

10万ルピーは大金だ。それほどの大金を結婚祝いとして国家が支給する。目的は,ダリットと他カーストとの結婚の促進。これは革命的政策だと感心する一方,そうせざるをえないほど厳しい差別の下に,いまなお置かれているダリットの境遇が思いやられる。

たとえば,革命後の2010年6月,サプタリのダリット家族が,他カーストとの結婚を理由に,村から追放された。ダリット家族の男性が,チョーダリの娘と結婚したところ,娘の家族から殺すと脅迫され,上位カーストの人々からは暴行を受け,村を追い出され,マオイスト事務所に保護されたという。

もっとも,この件では,いささか引っかかる点もある。結婚相手のチョーダリさんが,ダリット男性の第二夫人だということ。ダリット男性には第一夫人がありながら,若いチョーダリさんを第二夫人とし,しかも郡裁判所がそれを正式に認めた。2010年のことだ。ネパールでは,革命後も,第二夫人が実際には合法なのだ! (ネパール男性との結婚を考えている女性の皆さんは,その辺の事情をよく考え,行動していただきたい。)

しかし,それはそれ。ダリットと他カーストとの結婚が上位カーストから忌み嫌われ,迫害されていることは事実である。だからこそ,ダリットとの結婚には奨励祝い金が支給されているのだ。

こうした革命的な積極的格差是正措置には,もちろん他カーストからの嫉妬が絶えない。たとえば,バフン(ブラーマン)やチェットリ(クシャトリア)は,政府の逆差別により今では自分たちがダリットないし不可触民のような境遇に貶められている,といって不満を募らせている。

たしかに,革命後政府の少数民族・被差別カースト優遇策を見ると,彼らが非難するような側面が一部あることはたしかだ。しかし,長年の過酷な差別を解消して行くには,想像を絶するエネルギーが必要である。どの革命も,「行き過ぎ」なしには達成されなかった。

それが歴史だとすれば,ダリットと他カーストとの結婚祝い金10万ルピーは,歴史の必要としての「行き過ぎ」といってよいだろう。ダリットとの結婚祝い金10万ルピーは,支給されてしかるべきである。

* nepalnews.com, 8 Feb 2012;27 Jan 2010.

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/02/09 at 14:57

マオイストの憲法案(11)

4(4)平等権
マオイスト憲法案第24条は,「法の前の平等」を保障している。同様の平等権規定は90年憲法にも現行暫定憲法にもあるが,マオイスト案は差別禁止理由をさらに詳細に列挙している点に特徴がある。

[禁止される差別]
90年憲法:宗教,人種,性,カースト,部族または信条による差別,不可触民差別,男女賃金差別
暫定憲法:上記に加え,出自または言語による差別,男女の社会保障差別
マオイスト案:上記2者に加え,性的指向,生物学的特質,心身障害,健康,婚姻関係,妊婦,経済状態または出身地による差別,遺産相続の男女差別

[特別措置理由]
90年憲法:女性,子供,老人,心身障害者または経済的・社会的・教育的低開発層
暫定憲法:上記に加え,ダリット,先住ジャナジャーティ,マデシ,農民または労働者
マオイスト憲法案:上記2者に加え,被抑圧地域,ムスリム,後進階級,少数派共同体,周縁的共同体,存続の危機にある共同体,貧困線以下の人々,青年,老人,性的少数派,経済的・社会的・文化的に低開発の孤立した人々。

以上のように,マオイスト案では,これまで以上に多くの理由を挙げ,差別が禁止され,また格差是正のための特別措置が認められている。

これを見ると,ネパールで今どのような差別が問題になっているかがよく分かるが,しかし,憲法にこれほど詳細に描き込む必要があるかどうかについては疑問の余地が残る。

マオイストの憲法案(10) (9) (8) (7) (6) (5) (4) (3) (2) (1)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2011/04/08 at 16:34

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