ネパール評論

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京都の米軍基地(64):兵器と兵員のプレゼンス強化

1.兵器プレゼンスの強化
B・マクガリー「日本におけるミサイル防衛プレゼンスの強化」によれば,経ケ岬は米軍にとって理想的な位置にある。なぜなら――

「ハワイやグアムを標的とする北朝鮮の短距離・中距離ミサイルは,この地域の上を飛ぶであろうからだ。」

京丹後へのXバンドレーダ(TPY-2)配備の目的が,ハワイ・グアム防衛であることは常識だが,こうあっけらかんと説明されると,拍子抜けしてしまう。まちがいなくハワイ・グアム以前に,某国ミサイルは,ミサイル防衛プレゼンスを強化された京丹後に降り注ぐ。が,そんなことは,米軍は眼中にはない。

2.兵員プレゼンスの強化
レーダー配備が兵器プレゼンス強化の手段だとすれば,米軍人・軍属配備は,人的プレゼンス強化のためだ。地元・京丹後は,プレゼント付きのプレゼンスは大歓迎,官民あげて,米軍人・軍属のプレゼンス強化に協力している。

これもまた,北の某国に向けたプレゼンテーションであることは,いうまでもない。プレゼント付きのプレゼンスのプレゼンテーション! 見るも微笑ましい光景だ。ささいな物損事故の二つや三つ,プレゼンなしでも,どうということはない。めでたし,めでたし。

150120■第14中隊FB

[参照]
Brendan McGarry,”U.S. Bolsters Missile-Defense Presence in Japan,” Dod Buzz Com, 2014-12-26
米軍交通事故を少なく公表 防衛省、京都のレーダー基地周辺」京都新聞1月20日

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/01/20 at 16:38

京都の米軍基地(57):レーダー極秘搬入

米軍が21日未明,極秘裏に,Xバンドレーダー本体を経ケ岬米軍基地に搬入した。時間,経路とも一般には全く知らされなかった。軍事秘密だから,当然だろう。軍機とはそういうものだ。
 [参照]TBS News-i, 米軍「Xバンドレーダー」、京都・京丹後の通信所に搬入

ところが,われらが京都新聞は21日朝刊で,早々と搬入経路と時間を,ほぼ正確に報道した。レーダーはトレーラーに載せられ,20日夜,空自小松基地を出発し,陸路を通り,21日早朝経ケ岬に着く,と(同紙1面)。

むろん,陸路を,多数の警官を動員して警戒させ,パトカー先導で,信号を全部青に変えさせ,運搬するのだから,米軍から防衛省,防衛省から京都府や京丹後市に事前通告(17日午後)があったのは,当然だ。が,防衛省は米軍の御用聞き,京都府はその孫御用聞き,京丹後市はそのまた曽孫御用聞きだから,大親分の命令「保安上の理由により,装備の移動方法や予定日時を公表することはできない」(米軍報道官,京都新聞21日)に背くことなど,できはしない。お説ごもっとも,ハチ公以上の忠実さ。

では,京都新聞は,この極秘情報を,いつ,どのようにして入手したのか? レーダー到着は「21日午前4時半ごろ」(京都新聞22日)だから,それ以前に府や市が搬入を公表したとは考えにくい。とすれば,京都新聞は,小松基地出発か経路途中で運搬情報をつかんだか,あるいは府か市から情報リークを受け,21日朝刊で報道したに違いない。もしそうなら,さすが反骨京都新聞,エライ!

が,もし仮にそうなら,この報道は「特定秘密」か「特別秘密」か「防衛秘密」の暴露に当たるのではないか?

あるいは,さらに深刻なことに,これは一般住民自身とも無関係ではありえない。警官厳重警戒の中をパトカー先導で大名行列すれば,だれでも気づく。ましてや丹後の村々は道の狭いところも少なくないから,文字通り軒先,いや枕元を,武装集団護衛の巨大武器が通行したのだ。気付いて当然。そして,もし気づいた人が,“あれは何だ” と不審に思い,ツイッターやフェイスブックで,見聞きしたことを世界中にばら撒いたらどうなるか? 下手をすると,軍事機密に関する何らかの法令違反の嫌疑で取り調べを受けることになるかもしれない。

まさか,この現代日本で,そのようなことはあるまい,とたいていの人は思うであろう。たしかに実際には,Xバンドレーダー関係の報道をしても,あるいは写真を撮ってツイートしても,よほどのことがなければ,取り調べを受けたり逮捕されたりすることは,ただちには無いであろう。

が,「まさか」や「よほどのこと」や「ただちに」は,その恐れがあると,うすうす感じていることに他ならない。そして,権力側には,そう感じさせれば,それで十分なのだ。

Xバンドレーダーは,秘密の塊。武装した米兵や,兵隊より怖い軍属(民間戦争会社職員)により厳重警戒されている。「住民の安全・安心」のために増派される警官が,銃口や警棒を住民の方に向け,やはり厳重警戒につく。Xバンドレーダーは,タブー中のタブーなのだ。

タブーは,さわれば祟りがある。少々近づいても,「よほどのこと」がなければ,「まさか」「ただちに」撃ち殺されることはあるまいが,その恐れがまったく無いということではないし,取り調べや逮捕の恐れであれば,もっともっと現実的なものとして確かに存在する。

このXバンドレーダーの威嚇効果は絶大であり,住民は「安全・安心」を考えるなら,タブーについては「見ざる,聞かざる,言わざる」の自己規制に向かう。当然のことだ。

最後に,中山市長のお言葉を拝聴しよう。文中の「住民」を「米軍」と置き換えて読むと,お言葉の真意がよく判る。

防衛省から17日の午後,搬入期日の情報提供があったが,住民の安全を確保,保全する観点から公表は控えていた。」(京都新聞10月22日,赤色=引用者)

141022a 141022c

141022b
 ■京都新聞:上左から21日1面,22日社会面,22日1面

【参考資料】中山京丹後市長のコメント 26.10.21(京丹後市HP)
 本日、8時前に防衛省から、経ケ岬通信所へのレーダー本体機材の搬入が完了した旨連絡を受けました。
 引き続き、工事施工において、通学・通勤などの安全をはじめ各般の安全確保・不安解消の対策に万全を尽くし、万一にも不測の事故等のないよう万般の配慮と施工上の管理をお願いする。併せて、改めて、万般にわたる住民の皆さんの安全・安心の確保の引き続きの確実な履行を重ねて要請する。
 (なお、防衛省からは17日の午後、搬入期日についての情報提供がありましたが、京丹後市長としてこれまで申し上げていますとおり、搬入のための輸送過程を含め住民の安全を確保、保全する観点から、当該情報の公表は控えさしていただいておりましたので、ご理解をよろしくお願いいたします。)

[追加2014/10/29]「危険が生じる場合は公開しない」配備情報をめぐって京都府議会で応酬(産経WEST,2014.10.25)
府議会決算特別委員会の総括質疑[10月24日」で、・・・・山田知事は、「防衛省の要請に応じた」と公表を控えた理由を説明。「住民の安心安全が守られることが基準になる。運び込まれる日時がわからないからといって、混乱が起きたのか。情報を公開することで危険が生じる場合には公開しない」と語った。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/10/22 at 12:29