ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

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牛乳値上げ,1リットル68ルピー

ネパールで牛乳がまた値上げされる。市場占有率40%の国有企業「乳業開発公社(Dairy Development Co.)」が発表した。1割以上の大幅値上げ(以下,1リットル当たり価格)。
 ・非スキム牛乳:60ルピー → 68ルピー
 ・スキム牛乳: 50ルピー → 56ルピー
 *農家からの買い取り価格:35~38ルピー (Republica, 12 Mar)

値上げ理由は,(1)生産・加工・流通の経費増大。(2)供給不足(ekantipur, 27 Jan)。
 ・牛乳需要:80万トン/日
 ・国内生産:60万トン/日
 ・輸  入:6万トン/日(インドより輸入,ネパール産より高価)        

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牛乳1リットル68ルピー(約70円)は,かなり高い。アメリカでは約100円。保護政策により割高の日本でも,ほんの数ヶ月前までは,140~200円であった。アベノミックス物価上昇により,現在は,180~270円。ネパールの68ルピーは,酪農国にしては,高いといわざるをえない。

これが深刻なのは,このインフレが今後も進行しそうなこと。牛乳需要は,世界的に,特に中国で増大しており,しかもグローバル化(世界市場化)により,それは直接ネパール国内市場にも影響を与える。ネパール国内での需要増もあって,牛乳価格の値上がりは避けられないだろう。

日本でも,生活必需品価格は,食糧を中心に急騰している。「狂乱物価」の前兆といっても過言ではない。私のような年金生活者や非正規労働者など,インフレ弱者は,お先真っ暗,生活を切り詰める以外に対策はない。

日本にしてそうだとするなら,ネパール,特に現金収入の少ない地方は,比較にならないほど深刻だ。自由市場社会化は,結局,世界中の相対的弱者から自由に搾取するための,強国の強者の巧妙な奸計といわざるをえない。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/03/13 at 17:05

カテゴリー: 経済

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伝統農法と電力の自給自足:シュールなネパール

日本は柔らかい全体主義、電力も水道も地域独占となっている。福島原発事故で発送電分離が叫ばれているが、自由化は難しいであろう。

これと対照的に、ネパールは自由競争の国。電力も水も自由に調達してよく、自給自足が進行している。

水は、水道不足分を給水タンクローリーから買ったり、町の水商売屋さんから買う。水は普通の商品の一つとして自由に取引されている。

電力も、自主独立のネパール人はお上依存から脱却している。まかなえるだけの余裕のある人や企業は、それぞれ自家発電装置を備え、停電時には必要なだけ発電して使用する。

ネパールが電力自由化超先進国であることを実感させられるのは、最近めざましい高層マンション建設。カトマンズ盆地のあちこちにニョキニョキと建ち始めた。

周囲の水田では農民が昔ながらの農法で稲作をしている。手で稲を刈り、人力脱穀機で脱穀し、自然の風を利用し米を選別している。その背後には、高層ビル群。この超現実的な、シュールな風景のあまりのコントラストに目がくらくらするほどだ。

 ■稲刈りと高層マンション


 ■人力脱穀と風利用籾選別

こんなところに、こんな高層ビルを建てて本当に大丈夫なのか? 停電になったらエレベータも水も止まり、生活できないではないか?

友人に聞くと、心配ないという。高層ビルはそれぞれ自給自足であり、イザというときには自前の電力と水で十分生活できるのだそうだ。

自給自足の前近代的農民のとなりに、自給自足の世界最先端未来型高層マンション。国家依存の近代を超克して勇猛果敢に前進するネパール! 自生的秩序とは、こんなものなのか?

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/11/05 at 12:31

プラチャンダ中国利権vsバブラム印度利権

トリブバン国際空港(TIA)の管理運営をインドの開発投資会社IL&FSに委託するという話は,バブラム・バタライ首相が昨年10月訪印したとき出てきたという(ekantipur, 4 Jul)。

また,このときIL&FSは,カトマンズ-タライ高速鉄道やバイラワ国際空港の建設にも関心を示したという。

このようなインド側のアプローチに対し,バタライ首相がどう対応したのか分からないが,少なくともインド側が親印派バブラム首相を介してネパール開発利権を得ようとしていることは明白である。

これと対照的に,プラチャンダ議長はこのところ目立った動きをしていない。つい数ヶ月前までは,中国系NGO「アジア太平洋交流協力基金(APECF)」によるルンビニ開発の大風呂敷を広げていたのが嘘のようだ。国連事務総長や韓国政府まで取り込み,得るべきものは得たので一休み,といったところか。

ネパールでは,1990年の民主化以降,経済自由化が進められ,公営事業の多くが民営化された。国家財産,国民財産の払い下げ,たたき売りである。そこには当然,巨大利権が生じ,政治家らが介入する。プラチャンダのルンビニ開発やバブラムのTIA民間委託もその一環である。(注:プラチャンダとバブラムはマルクス・レーニン・毛沢東主義を党是とするUCPNの議長と副議長。)

たしか昨年,カトマンズの水道事業の払い下げが議論された。西欧のどこかの会社が買うという話だったが,これはどうなったのだろう? 貧乏人向けの水道管よりも金満階級向けのタンクローリーに投資した方が儲かるということで,立ち消えになったのかな?

資本主義は,このように命の水ですら商売にする。命を売り買いし,あぶく銭を稼ぐ。命も金次第。いじましく,醜い。

ネパールは,他ならぬ世界最強マオイストが率先して経済自由化を推し進めている点において,世界最先端を行くといってよいであろう。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/07/05 at 11:27

スラム住民粉砕,マオイストの無慈悲

こんな極悪非道なことは,王政はむろんのこと,NC・UMLブルジョア政権ですら,決してやらなかった。ブルジョア新聞リパブリカですら,怒り心頭,写真付きの大きな記事を掲載,マオイスト政府を激しく厳しく非難・告発している。

5月8日朝,開発関係当局(カトマンズ開発局,バグマティ総合開発委員会)は,ブルトーザーと作業員,武装警官隊1800人,警官多数を動員し,タパタリ近くのバグマティ河岸のスクォター「不法居住」地区を急襲,バラックを一気に踏みつぶし,スクラップにしてしまった。

うかつにも気がつかなかったのだが,この「不法占拠」スラムには,小学校(生徒150人)や教会もあったそうだ。それらのすべてが,マオイストのブルにより踏みつぶされてしまった。

スクォター(不法占拠者,無権利居住者)たちは,もちろん抵抗した。女性や子供も「人間の盾」になった。しかし,彼らには,人民政府の催涙弾とゴム弾が浴びせられ,警棒で滅多打ちされ,容赦なく「革命」に屈服させられた。

「土地なしスクォター闘争委員会」がいうように,「革命政府は,スクォター問題をブルトーザーと銃弾により解決することにした」のである。たしかに,教祖・毛沢東が言うように「革命は銃口から生まれる」。

そもそもカトマンズの「不法占拠」河岸スラムは,マオイスト人民戦争とNC=UML自由化政策に起因する。王制下であれば,たしかに差別・貧困は甚だしかったが,最低限度の前近代的「社会保障」制度がギリギリ機能していた。グティや寺院など。

ところが,それらが自由化と民主化と革命により破壊され,下層人民には「飢える自由」が恵与された。人民戦争が村から追い出した人々,経済的・社会的自由化が「豊かな社会」からはじき出した人々,そうした最下層の人々が最後にたどり着き身を寄せ合って生きていた「不法占拠」河岸バラックを,マオイスト政府はブルとガンにより粉砕してしまったのだ。

河岸スラムは,たしかに見苦しい。日本援助の豪華橋&ピカピカ最新信号システムのすぐ下にあるスラム。豪華超高級マンション宣伝大看板の借景をなす河岸スラム。古都パタンに向かう金満観光客,超豪華ヒマラヤホテル連日開催のアゴ・アシ付きセミナー参加の内外名士たち,ピカピカ四駆でお仕事の国連関係諸氏,そして豪華国際催事場で高禄を食む最大政党マオイスト議員たち――こういった人々にとって,河岸スラムは実に見苦しい。ブルとガンとゲバ棒で一気に粉砕,更地に戻し,美しい河岸公園としたくなるのも,もっともだ。

駐屯地バラックの人民解放軍兵卒は,実力部隊として幹部を議員に押し上げたあと,「過激派」として特権議員から駐屯地バラックを追われた。スラム住民は,最底辺肉体労働者としてマンション建設に動員されながら,マンション住民からは見苦しい不法占拠者としてバラックを追われた。

しかし,そもそも土地は誰のものか? 河岸スラムにすむ人々は,ヒト以下なのか? 野良犬ですら,河岸に憩う。イヌには自然の自由(自然権としての犬権)がある。河岸スラムの人々には,ヒトの自由も,したがって当然,人権もない。


  ■ヒュンダイ・ブルでバラック粉砕(Republica, May9)


  ■がれきと化した河岸スラム(Republica, May9)

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谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/05/10 at 12:18

カテゴリー: マオイスト, 社会, 経済, 人権

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ネパール投資年2012

ネパール政府は,2012年を「ネパール投資年」とすることとし,「ネパール投資促進委員会(NBI)」を設立,銀行協会のラデシュ・パント会長を事務局長に選任した。(NBIは,バブラム首相を議長とする「ネパール投資年国家委員会」の下位執行機関。)

「世界投資レポート(WIR)」によると,ネパールの投資環境は下から8番目。この状況を改善するため,ネパール政府は,会社法,労働法,外国人投資法などを改正し,また知的財産法,経済特区法などを制定するという。

パントNBI事務局長:「内外資本を問わず,投資を保護し,労働問題も解決する。」

このような投資促進策は,どの国でも多かれ少なかれやっているが,ネパールが特に注目されるのは,マオイスト政権だからである。マオイストは,外国資本や国内買弁資本を徹底的に攻撃し,民族資本や国内産業(特に小規模事業)を守ると繰り返し約束してきた。特に労働者・農民の権利保護は党是中の党是。そのマオイスト党公約からすれば,「ネパール投資年」など,到底是認できない反人民的・反民族的政策であるはずなのだ。

ところが,そのマオイスト政府が経団連などネパール財界と結託し,自ら「ネパール投資年2012」を提唱,経済学者にして首相のバブラム博士がそれを主導している。もうマオイストはもたないのではないか? バブラム派とバイダ派への分裂は,避けられないのではないか? 政治家プラチャンダ議長は,どちらにつくのだろうか?

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/01/03 at 09:37

カテゴリー: 社会, 経済

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