ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

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英語帝国主義にひれ伏す公立学校

先住民族の尊厳や母語教育の権利を高らかに宣言しているネパールだが,建て前と本音は,教育においても別らしい。私立学校に続き公立学校も,母語どころかネパール語さえ放棄し,続々と英語帝国主義の軍門に降りつつある。そうした学校では,生徒は英語で挨拶し,歌い,勉強する。家でも英語で話す。

「英語が公立学校を魅了している」(Republica, 25 Mar)によれば,チトワンのある公立小中学校では,全教科を英語で教え始めた。

「3年生クラス成績3番のサンジタは,良い本を読むには英語学習は必須だと確信している。友人のカマルも同じで,英語が分かれば多くのことを学ぶことができるし,旅行者とも話すことができる,と考えている。『姉は家でも英語で話してくれるので,とても助かる』という。」

「政府は,ネパール語記述の教科書を英訳し始めた。学校は,これらの英訳された教科書を使い,授業をしている。」

ネパールは,教育でも,日本のはるか先を行っている。ネパールの教育は日本のお手本(格差大だが)。文科省はネパールに視察団を送り,謙虚に教えを請い,最先端の英語教育を学ぶべきだろう。
 [参照]水村美苗『日本語が亡びるとき』

140327

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/03/27 at 16:21

カテゴリー: 教育, 文化

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Trust me! 信じられない?

谷川昌幸(C)
日本の政治家のカタカナ英語の危険性については,これまでに繰り返し指摘してきた。たとえ英語ペラペラでも,外交では,首相や大臣は英語は使うべきではない。ましてや,半ペラでは。
 
いまいちばん危険なのは,なんといっても鳩山首相だ。昨年11月のオバマ大統領来日の時も,国家外交の鉄則を忘れ,半ペラ英語で"Trust me"とやってしまった。危ないなぁと思っていたら,案の定,これが日米間の相互不信のタネになり始めた。
 
朝日の山中季広ニューヨーク支局長によれば,鳩山首相がオバマ大統領に"Trust me"といったのは,11月会談とその後の書簡においての2回だという。2回も念押しして,「(神にかけて約束する)私を信頼して」といわれたら,敬虔なオバマ大統領やアメリカ国民が首相の言葉を信じたのは当然だ。ところが,最近の首相の言動をみて,アメリカ側は首相がその神聖な約束を反故にしようとしているのではないかと疑い始めた。当然といわざるをえない。首相の半ペラ英語のせいで,日米関係に不吉な暗雲がたち始めた。
 
ところが,それにもかかわらず,山中支局長は記事の最後を「英語はつくづく難しい」という言葉でまとめ,この問題を鳩山首相の英語力に矮小化してしまった。
 
そうではない。ここで問われるべきは,日本国民を代表する鳩山首相が相手国の言葉で外交を行うという卑屈な態度を得意満面でやってきたこと,そのことに他ならない。外交を相手国の言葉でやれば,土俵は相手国側のものとなり,最初から負けだ。もし鳩山首相が日本語で「私を信頼して」と言い,通訳がこれを"Trust me"と訳したのであれば,あぁごめん,あれはちょっと不正確でした,と弁解する余地がないわけではない。「私を信頼して」という日本語は「何も具体的なことは約束していません」という意味ですよ,と開き直ることもできる。ところが,半ペラ英語で"Trust me"と言ってしまうと,その言葉の解釈権(真の意味)はアメリカ側のものとなってしまう。
 
山中氏はニューヨーク支局長であるがゆえに,言葉の行き違いによる相互不信の拡大,日米関係の悪化を強く危惧されているのだろう。しかし,氏は鳩山首相の英語使用外交そのものを問題にせず,いやおそらくはそのこと自体は積極的に肯定しつつ,英語力の不足をもっぱら問題にし,何の疑問をも抱くことなく,"Trust me"の真の意味をアメリカ人たちに尋ねている。兵庫県で3年間英語を教えた経験のある米保険会社員,日米外交史に詳しいボストン大学教授,ノースウエスト大学の政治学教授,愛知県内で英語を教えた経験のある米弁護士。
 
日本人は,日本国首相の発言の「真意(真の意味)」をアメリカ人に尋ねざるをえない! これがいかに卑屈なことか,いかに倒錯した奴隷根性かはいうまでもあるまい。
 
*山中季広「トラスト・ミー 重い語感『守らないと破局』」朝日新聞,2010.1.7
 
 
 

Written by Tanigawa

2010/01/07 at 19:51