ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

Posts Tagged ‘象徴

安倍首相の靖国参拝と天皇誕生日・クリスマス・毛沢東生誕記念日

1.天皇・キリスト・毛沢東・安倍首相
安倍首相が,政権誕生1周年の12月26日,靖国神社を参拝した。同じ26日,中国では,毛沢東生誕120周年が大々的に祝われた。3日前の23日は天皇誕生日であり,国民は天皇傘寿を心から祝った。そして,前日の24-25日はクリスマス,世界の何億という人々が,こぞってイエス・キリストの降誕を祝い祈りを捧げた。12月の23日,24-25日,26日は,世界中の多くの人々にとって,特別の日である。

その大切な日々の最中,安倍首相は靖国神社を参拝した。安倍氏の首相就任は,天皇(23日),イエス・キリスト(24-25日),毛沢東(26日)といった特別の人や神や偉人の生誕に相当する歴史上の出来事なのだ。

2.靖国参拝歓迎
日本国民の多くは,安倍首相の靖国参拝を歓迎した。街にもネットにも喜びの声が満ちあふれているが,ここではネパールと関係が深い野口健氏のツイッターを紹介しよう。氏の意見は,大多数の日本人の気持ちを代表しているし,またツイッターは公開されており,世界中への拡散が自明なものとされ期待されてもいるからである。

—-(以下引用)—————–
野口健 Twitter
@kennoguchi0821 2013年12月26日 – 11:33
総理の靖国参拝はあるべき姿でいちいち大騒ぎする話でもなく。日本のメディアもいちいち煽るからいけない。
@kennoguchi0821 2013年12月26日 – 11:39
特攻隊員もそうですが多くの兵士が「靖国で会おう」と言いながら出撃していった。僕もよく靖国参拝しますけれどその度に戦争を繰り返してはいけないと心底に感じるもの。戦争を美化したり正当化するものでもない。
@kennoguchi0821 2013年12月26日 – 11:41
本当にそう RT@8robinaru4:靖国神社は、戊辰戦争以後に日本のために命を懸けて戦ってくださった方々が祀られてる神社なのに、マスコミはまるでファシスト礼賛神社のように報じますよね。故人に対して大変失礼ですよね。
@kennoguchi0821 2013年12月26日 – 13:30
総理の靖国神社参拝の度に大騒ぎするこの状況に対し英霊たちは何を感じているのだろうか。国が始めた戦争であり多くの兵士は赤紙一枚で戦場に派兵され散っていった。僕が遺骨収集を続けているのも国の為に戦い亡くなった方々に対し冷たい国は、そんな国はいずれ滅びると感じているからだ。
—-(以上引用)—————–

3.毛沢東生誕120周年日の靖国参拝
しかし,26日の靖国参拝は,お隣の中国にとっては,衝撃であったにちがいない。あまりにも危険なので中国側は自制しているが,それでも新華社や中国日報の記事を見ると,その衝撃は十二分に察知できる。

131226a 
 ■「毛沢東氏の一生の印象深い微笑みの写真」/「日本の安倍晋三首相、第二次世界大戦のA級戦犯が祀られている靖国神社を参拝」(新華網日本語版12月26日,写真キャプション原文)

131226b131226c
 ■新華網表紙掲載写真(Xinhuanet, 26 Dec)

131226d
 ■中国日報風刺画「歴史偽装(リ・フェン)」。アジア史の真実・安倍首相・クリスマスの組合せ (China Daily, 26 Dec)

この取り合わせの写真を見て,中国の人々は平静でいられるだろうか? 26日の靖国参拝が,隣国でこのように見られることを予期できないような人には,想像力のかけらもないといわざるをえない。

さらに憂慮すべきは,中国は情報戦略に長けていること。極東の島国で国内しか見ようとしない内弁慶日本とは,スケールが違う。

たとえば,ネパールでは,先述のように,中国日報はおまけとして配布されているし,新華社ニュースも広く参照され転載されている。事情は,アジアの他の地域でも同じであろう。安倍首相が国内向けに何を言おうが,アジアでは,中国発の情報の方が,ますます広く流通し,共感を得ていくことは明白である。

4.クリスマスと靖国参拝
26日の靖国参拝は,アメリカをはじめ西洋諸国にも深甚な衝撃を与えていることは間違いない。靖国神社は「神社(宗教施設)」であり,そこには第二次大戦のA級戦犯も合祀されている。その靖国神社への首相参拝は憲法の政教分離原則違反。それは,大東亜戦争の政治的正当化であるばかりか,さらには宗教的神聖化(聖戦化)でもある。

このような性格を持つ靖国参拝が,クリスマスを祝い祈りを捧げている人々に衝撃を与えないはずがない。宗教はあまりにも危険なので表には出さないであろうが,それがアメリカをはじめ西洋諸国の警戒心を一層高めることは間違いない。彼らは,日本国元首の靖国神社(Yasukuni Shrine)参拝を,政治的に,決して許容しないであろう。

5.天皇と安倍首相と靖国参拝
23日に天皇誕生日を祝っていた人々の中にも,安倍首相の直後の靖国参拝には衝撃を受けた人がいるにちがいない。

昭和天皇も今の天皇も,日本国憲法の遵守を幾度も明言されてきた。23日にも天皇は「おことば」で,こう語られた。

—-(以下引用)—————
戦後,連合国軍の占領下にあった日本は,平和と民主主義を,守るべき大切なものとして,日本国憲法を作り,様々な改革を行って,今日の日本を築きました。戦争で荒廃した国土を立て直し,かつ,改善していくために当時の我が国の人々の払った努力に対し,深い感謝の気持ちを抱いています。
After the war, Japan was occupied by the allied forces, and based on peace and democracy as values to be upheld, established the Constitution of Japan, undertook various reforms and built the foundation of Japan that we know today. I have profound gratitude for the efforts made by the Japanese people at the time who helped reconstruct and improve the country devastated by the war. (http://www.kunaicho.go.jp/okotoba/01/kaiken/kaiken-h25e.html)
ーーーー(以上引用)ーーーーーーーーーーーーーーーー

日本国憲法遵守のお立場から,昭和天皇は,A級戦犯合祀をきっかけとして,靖国神社参拝をやめられた。(一部異論については関係文献参照。)今の天皇も,靖国神社には決して参拝されない。

日本国の「象徴」の天皇が,憲法を遵守されるが故に靖国神社に参拝されないのに,日本国の「元首」であり他の誰よりも厳しい憲法遵守の法的義務を負う安倍首相が,靖国神社を参拝するのは,なぜか?

これは,近隣アジアの人々にも他の世界中の人々にも説明できない。いや,日本国民により選ばれ,日本国民を代表しているにもかかわらず,その日本国民自身にさえ,それは合理的には説明できないであろう。

谷川昌幸(C)

*********************************
【米政府声明】

Statement on Prime Minister Abe’s December 26 Visit to Yasukuni Shrine

December 26, 2013

Japan is a valued ally and friend. Nevertheless, the United States is disappointed that Japan’s leadership has taken an action that will exacerbate tensions with Japan’s neighbors.
The United States hopes that both Japan and its neighbors will find constructive ways to deal with sensitive issues from the past, to improve their relations, and to promote cooperation in advancing our shared goals of regional peace and stability.
We take note of the Prime Minister’s expression of remorse for the past and his reaffirmation of Japan’s commitment to peace.

安倍首相の靖国神社参拝(12月26日)についての声明

2013年12月26日

 日本は大切な同盟国であり、友好国である。しかしながら、日本の指導者が近隣諸国との緊張を悪化させるような行動を取ったことに、米国政府は失望している。
 米国は、日本と近隣諸国が過去からの微妙な問題に対応する建設的な方策を見いだし、関係を改善させ、地域の平和と安定という共通の目標を発展させるための協力を推進することを希望する。
 米国は、首相の過去への反省と日本の平和への決意を再確認する表現に注目する。
(http://japan.usembassy.gov/e/p/tp-20131226-01.html) (http://japanese.japan.usembassy.gov/j/p/tpj-20131226-01.html)
―――――――――――

【中国政府の抗議】

程永華大使,安倍晋三首相の靖国神社参拝に強く抗議

2013/12/262013年12月26日

 12月26日午後、程永華大使は日本の斎木昭隆外務事務次官と緊急に会い、安倍首相の靖国神社参拝について厳重な申し入れと強い抗議を行った。
 程大使は、きょう、安倍晋三首相が中国などアジアの隣国の激しい反対を顧みず、強硬に靖国神社を参拝したことに中国は極めて大きな憤りを感じ、強く抗議すると表明した。
 程大使は次のように述べた。靖国神社は戦前、日本軍国主義の対外侵略拡張の精神的道具であり、象徴だった。現在もアジアの被害国人民に対してこの上ない罪を犯した第二次世界大戦のA級戦犯を祀っている。彼らは日本軍国主義の対外侵略発動、実行の画策者、指揮者であり、近代史上、アジアと世界に非常に大きな災難をもたらした張本人である。安倍首相が国際社会やアジアの隣国、中国人民の強い関心と反対を無視し、あくまでも靖国神社を参拝したことは国際正義に対する挑戦であり、人類の良識を踏みにじるもので、日本の今後の進む方向に対するアジアの近隣国と国際社会の高度の警戒と強い懸念を引き起こさざるを得ない。
 程大使は次のように強調した。中国は日本軍国主義による対外侵略戦争の最大の被害国で、中国人民は日本の侵略戦争の中で深く重い災難を受けた。この歴史を正しく認識し、対処することが戦後の中日関係の回復と発展の政治基盤である。中日の四つの政治文書はこれについて明確に規定している。今回の安倍首相の参拝は中日の四つの政治文書の原則に重大に反し、日本側の約束に重大に反し、中日関係の政治基盤を重大に損ない、中国人民の感情を重大に傷つけた。
 程大使は次のように指摘した。現在、中日関係は依然として深刻な困難に直面しており、安倍首相の靖国神社参拝は歴史問題で再び重大なトラブルを引き起こし、両国関係の改善・発展に重大な政治的障害をもたらした。これによって引き起こされるすべての結果に日本は責任を負わなければならない。
 斎木次官は、日本は日中関係を重視しており、今回のことが両国関係に影響を与えることのないよう希望すると述べた。また斎木次官は安倍首相の靖国神社参拝について弁明した。程大使はこれに対し厳しく反論した。(http://www.china-embassy.or.jp/jpn/sgxw/t1112233.htm)

制憲議会選挙2013(24):卍とハーケンクロイツ

ネパールの選挙を初めて見学し驚くことばかりだが,一目見て,一瞬,ギョッとし,凍りついたのは,選管の選挙啓発ポスターやカンチプルの選挙報道に使用されている「ハーケンクロイツ(鈎十字)」そっくりのデザイン。

131204a 131204b
 ■選挙啓発ポスター(アムリトキャンパス壁貼付)

131204c 131204d
 ■Kathmandu Post: Nov.24 / Nov.20

選管の選挙啓発ポスターは,街中いたるところに貼られている。いやでも目に入る。これには驚いたが,もっとびっくりしたのが,カンチプル(カトマンズポスト)の選挙報道宣伝。右側の緑の方が多かったが,左の赤の投票箱もかなり目についた。これは,形はナチス・ドイツの「ハーケンクロイツ」と全く同じ,配色も少し違うだけ。日本人の私ですらギョッとするくらいだから,西洋人,とくにドイツやその周辺の国々の人が見たら,本当に凍りつき,しばらくは動けなくなってしまうだろう。

131204e ■ドイツ第三帝国・国旗

むろん,卍(まんじ)は,逆向きの「右まんじ」も含め,ヒンドゥー教や仏教では,吉祥印である。西洋でも幸運を意味し,ヒトラー以前は,あちこちで使用されていた。

ネパール選管は,投票用紙に投票者が押す印を選ぶとき,おそらく,ネパールでなじみの吉祥印である卍(まんじ)が最適と考え,選択したのだろう。制憲議会選挙は国内選挙であり,それはそれでよい。

が,このグローバル情報化時代,ネパールの選挙も世界中で報道されている。西洋を中心に,多くの人々にとって,「ハーケンクロイツ」は言うまでもなく,卍にせよ逆卍にせよ,多かれ少なかれ忌避されていることも事実だ。詳細は確かめていないが,西洋では独仏など少なからぬ国で,それらの使用は法律で禁止さえされているそうだ。「ハーケンクロイツ」の使用は,犯罪というわけだ。

ここで疑問となるのは,西洋から派遣されている多くの選挙専門家や選挙監視団が,卍はさておき,「ハーケンクロイツ(鈎十字)」そっくりのデザインの使用に,どのような態度をとったか,ということ。反対しても賛成してもやっかいなことになるので,見なかったことにしてきたのだろうか?

ここに「文化」を政治の場で扱うことの難しさ,危険性が如実に表れている。ネパール文化――ネパール人アイデンティティ――においては,「ハーケンクロイツ」型デザインは,その使用に何ら問題がないどころか,逆に,吉祥印として積極的に使用すべきものとされる。だからこそ,投票を呼びかけるため,選挙啓発ポスターや投票箱に「ハーケンクロイツ」型デザインをつけたのだ。ところが,これをドイツやその近隣諸国でやれば,ネオナチか何かへの投票扇動と見られ,囂々たる非難を浴び,場合によっては逮捕されるかもしれない。

ことさように,文化はやっかいで危険だ。政党や政治家は,手っ取り早く支持を集めるのにいくら便利であっても,安易に文化やアイデンティティを政治の場に持ち込むべきではあるまい。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/12/04 at 20:11

皇室利用と日本語放棄で五輪を買った安倍首相:”under control”のウソ公言

安倍首相は,皇室の政治的利用と日本語の放棄により,オリンピック開催の興行権を買った。「美しい国」である「日本を取り戻す」どころか,金儲けのためであれば,憲法も伝統文化も顧みない「醜い日本」を世界にさらけ出したのだ。

1.政治としてのオリンピック招致活動
オリンピック招致活動が「政治」であることはいうまでもない。オリンピック開催により,(1)経済界の景気浮揚要求に応える,(2)ヒノマル・ニッポン挙国一致ナショナリズムの高揚を図る。いずれも安倍政権の維持強化のためであり,いま現在,これをもって「政治」といわずして,何を政治というのか? 安倍首相自身,これを最も重要な政治課題の一つと考えるからこそ,わざわざブエノスアイレスまで出かけ,招致活動に参加したのだ。

2.高円宮妃のロビー活動
その政治そのものといってもよいオリンピック招致のため,安倍内閣は高円宮妃を利用した。本音報道のスポニチ(9月7日)は,記事に「会場にIOC委員続々到着,高円宮妃久子さま,積極的ロビー活動」というタイトルをつけ,高円宮妃が「積極的に動き」,IOC委員らに声を掛けていたと伝えた。親皇室の産経や報知(9月7日)にも同様の記事が出ているから,高円宮妃が「積極的ロビー活動」をしたことは間違いないであろう。

ロビー活動をする人は,「ロビイスト」である。広辞苑(第5版)はこう定義している。「ロビイスト(lobbyist): 圧力団体の代理人として,政党や議員や官僚,さらには世論に働きかけて,その団体に有利な政治的決定を行わせようとする者。」

高円宮妃は,まさに,このようなロビイストの1人として,積極的にIOC委員に働きかけ,東京招致という「政治的決定」に大きな政治力を発揮したのだ。しかし,このロビー活動に高円宮妃の政治責任は,むろん一切ない。

3.皇室政治利用の責任
高円宮妃のロビー活動やプレゼン冒頭挨拶の責任は,すべて安倍首相にある。朝日新聞稲垣編集委員によれば,川渕・サッカー協会最高顧問は,こう語ったという。「4日にブエノスアイレス入りした久子様の出席に熱心だったのは,猪瀬さん,安倍さん,森さんだよね。なかでも猪瀬さんは,本当に熱心だった。」(朝日デジタル,9月6日)

安倍,森,猪瀬は,いずれも政治家だが,行政権の長は安倍首相だから,高円宮妃の招致活動の全責任は,天皇への「助言と承認」(憲法第3,7条)に準ずる何らかの“助言と承認”を与えたはずの首相にある。

では,今回の高円宮妃の招致活動への“助言と承認”は適切であったのか? 憲法は第1条で天皇を日本国と日本国民統合の「象徴」と定め,第4条で「国政に関する権能を有しない」と明記している。象徴としての天皇,したがってそれに準ずる皇族は,権力行使や政治的意思決定に関わるナマグサイ行為は一切してはならない。これは,天皇象徴制の根本原理であり,現在の日本国家はこの原則の上に成り立っている。

高円宮妃のオリンピック招致活動は,この憲法原理の枠を完全に逸脱している。「ロビー活動」は,広辞苑の定義のように,政治そのものであり,高円宮妃は,ブエノスアイレスで政治活動を繰り広げていたのだ。それは,たとえ日本国家のためであっても許されない,違憲の政治的行為である。

4.皇室政治利用の危険性
今回はたまたま招致が成功したから,高円宮妃も安倍首相もいまのところあまり批判はされていない。しかし,もし失敗していたら,政治活動をした皇室の権威は失墜し,安倍首相は皇室政治利用の責任を追及され,退陣は免れなかったであろう。

しかし,この件に関しては,成功は失敗よりもむしろ恐ろしい。絶大な効果に味を占めた政治家たちが,天皇や皇室の政治的利用に飛びつき,国民もこれを歓迎するからだ。天皇制ファシズム(超国家主義)への先祖返りである。天皇を大切と思うなら,天皇や皇族の政治的利用は絶対に許してはならない。

130913a ■皇室利用と英語ウソ公言(朝日9月8日)

5.日本語放棄の安倍首相
安倍首相がオリンピック招致プレゼンを英語で行ったことも,見過ごせない。「日本を取り戻す」はずなのに,実際には,日本文化の魂たる日本語を放棄してしまったのだ。

そもそも各言語はすべて平等であり,本来なら,それぞれが母語で話し理解し合うべきだ。しかし,現状は,かつての植民地大国が文化侵略により英仏語やスペイン語などを普及させてしまったため,現在,多くの地域で使用されているそれらの言語を便宜的に使用するのは,次善の策として,ある程度はやむを得ない。

しかし,公式の場での公人の話となると,そうはいかない。天皇は「日本国の象徴」だから,公式の場では英語やフランス語をしゃべるべきではない。ましてや首相は,日本国の元首だから,たとえペラペラであっても,外国語を使うことは許されない。それなのに,安倍首相は嬉々としてカタカナ英語でプレゼンを行った。国家元首失格である。(注: 天皇は「象徴」,首相は「元首」)

6.外国語での国家公約の危険性
私には英語はほとんど分からないが,安倍首相の英語は発音がぎこちなく,いかにも不自然だ。おそらく英米やフィリピンなどの小学生レベル以下であろう。そんな英語で,安倍首相はIOC総会において日本国民を代表しプレゼンをした。He said―

Some may have concerns about Fukushima. Let me assure you, the situation is under control. It has never done and will never do any damage to Tokyo.

なぜ,こんなトンデモナイことを? むろん,英語を知らないからだ。

世界周知のように,福島原発事故は東京にも被害を及ぼしたし,放射性物質はいまなおじゃじゃ漏れ,止めるめども立たない。その原発について安倍首相は”under control”と,国際社会の公の場で,日本国元首として,公言した。これは日本語ではなく,英語。解釈は,当然,英語ないし欧米語文脈で行われる。

この欧米語文脈では,公式の場での政治家のウソは,絶対に許されない。建前かもしれないが,建前を本音より重視するのが,欧米政治文化。英語を知らない安倍首相は,その欧米語文脈を意識することすら出来ず,子供のように無邪気に,カタカナ英語を日本語文脈で使った。その落とし前は,いかに大きなものになるにせよ,結局は日本人自身がつけなければならない。

7.英語帝国主義にひれ伏す
英語帝国主義は,何百年にもわたる壮大な世界戦略であり,オリンピック興行権など,はした金,それで日本国首相に公式の場で英語を使わせることができるのなら,こんな安上がりの買い物はない。

安倍首相は,日本語=日本文化を売り渡し,英語文化圏の土俵に乗り,オリンピック興行権を買った。長期的に見ると,皇室の政治利用よりも,こちらの方が深刻かもしれない。

安倍首相のカタカナ英語のおかげで,日本語が二流言語であることが,国際的に公認された。日本語は,国際言語カースト制の中に下位言語(被支配言語)として組み込まれた。もはやここから逃げ出すことは出来ないであろう。

130913b ■揶揄される日本国元首発言(Canard Enchaine / Reuters, Sep.12)

[参照1]
高円宮妃プレゼン
高円宮妃久子さま IOC総会で復興支援に感謝の言葉(ANN News13/09/08)
宮内庁,新聞各紙はすべて日本語訳。一流言語たる仏語・英語オリジナルは下々には隠されている。
安倍首相プレゼン
Mister President, distinguished members of the IOC…
  It would be a tremendous honour for us to host the Games in 2020 in Tokyo ? one of the safest cities in the world, now… and in 2020.
  Some may have concerns about Fukushima. Let me assure you,the situation is under control. It has never done and will never do any damage to Tokyo. I can also say that, from a new stadium that will look like no other to confirmed financing, Tokyo 2020 will offer guaranteed delivery.
  I am here today with a message that is even more important. We in Japan are true believers in the Olympic Movement. I, myself, am just one example.
  When I entered college in 1973, I began practicing archery. Can you guess why? The year before, in Munich, archery returned as an Olympic event after a long time.
  My love of the Olympic Games was already well-established. When I close my eyes vivid scenes from the Opening Ceremony in Tokyo in 1964 come back to me. Several thousand doves, all set free at once. High up in the deep blue sky, five jet planes making the Olympic rings. All amazing to me, only 10 years old.
  We in Japan learned that sports connect the world. And sports give an equal chance to everyone. The Olympic spirit also taught us that legacy is not just about buildings, not even about national projects. It is about global vision and investment in people.
  So, the very next year, Japan made a volunteer organization and began spreading the message of sports far and wide. Young Japanese, as many as three thousand, have worked as sports instructors in over 80 countries to date. And they have touched the hearts of well over a million people through their work.
  Distinguished members of the IOC, I say that choosing Tokyo 2020 means choosing a new, powerful booster for the Olympic Movement.
    Under our new plan, “Sport for Tomorrow,” young Japanese will go out into the world in even larger numbers. They will help build schools, bring in equipment, and create sports education programs. And by the time the Olympic torch reaches Tokyo in 2020, they will bring the joy of sports directly to ten million people in over one hundred countries.
  Choose Tokyo today and you choose a nation that is a passionate,proud, and a strong believer in the Olympic Movement. And which strongly desires to work together with the IOC in order to make the world a better place through the power of sport.
  We are ready to work with you. Thank you very much.
-----------------
[参照2]
皇室と五輪招致 なし崩しのIOC総会出席 記者有論 社会部・北野隆一 (朝日新聞,2013年9月25日)
 16年夏季五輪開催地を決める09年IOC総会への皇太子さまの出席が求められた際、宮内庁は「招致運動は政治的要素が強く、(出席は)難しい」と慎重姿勢を貫いた。・・・・
 今回、安倍政権の強い意向に押し切られ、宮内庁の対応はずるずると後退した。当初「久子さまはIOC総会に出ない」としていたが、一転、出席。「招致活動と切り離すため、スピーチ後は降壇する」はずだったが、結局最後まで壇上にとどまった。
 招致競争に勝ったから結果オーライではない。安倍政権は今回、既成事実を積み重ね、なし崩し的な手法で皇族を担ぎ出したように見えた。皇室の守ってきた原則を曲げさせ、相当な覚悟を負わせたことになるのではないか。
-----------------

谷川昌幸(C)

天皇の憲法遵守発言の「政治的」意味

 谷川昌幸(C)
朝日新聞(2009/4/10)が,天皇結婚50年特集で天皇の記者会見の様子を詳細に伝えている。その中で,天皇は明治・大正・昭和(敗戦以前)の歴代天皇を否定し,戦後天皇を正当化し擁護した。
 
天皇: 「なお大日本帝国憲法下の天皇のあり方と,日本国憲法下の天皇のあり方を比べれば,日本国憲法下の天皇のあり方の方が,天皇の長い歴史で見た揚合,伝統的な天皇のあり方に沿うものと思います。」
 
天皇も人間であり,言葉を発し,それは多かれ少なかれ「政治的」意味を持つ。そもそも「国政に関する権能を有しない」天皇にそうした「政治的」発言が許されるかどうか微妙なところだが,憲法は天皇に「憲法を尊重し擁護する義務」(第99条)を課しているから,天皇が大日本帝国憲法を批判し現行憲法を擁護するのは合憲であり義務であるともいえる。
 
おそらくそうした考えからであろうが,現天皇は憲法遵守を事あるごとに明確かつ大胆に宣言している。現天皇の憲法遵守発言は条件反射的であり,身体化されているとさえいってよいだろう。政府の憲法軽視・憲法無視とは対照的だ。
 
あるいはまた,天皇は日本国憲法遵守以外に天皇家の安泰はない,と確信しているようにも思える。アジアの有力王家の一つであり天皇家とも親密だったネパール・シャハ王家の国王は,象徴に甘んじることができず,政治的権力を行使したがため,議会の多数決により王制そのものまで廃止され,いまでは普通の市民の一人となってしまった。そしてタイでもまた,国王が,象徴になりきれないがため,深刻な危機に陥りかねないような状況になっている。天皇は,おそらくこうした王制の行方を見ながら,憲法遵守発言を繰り返しているのだろう。
 
しかしながら,こうした天皇の憲法遵守発言が「政治的」と感じられ始めたのは,やはり異常といってよい。もし世論や政治家たちの意見が圧倒的に憲法遵守であれば,天皇の憲法遵守発言も至極当然のことであり,「政治的」と感じられるはずがない。それがそうでないのは,世間で憲法攻撃が強まり,憲法が動揺し始めたからであろう。
 
この状況下で,護憲派は天皇の護憲(憲法遵守)発言にどう対応すべきか? それを利用しようと思えばいくらでもできるし,また相当大きな効果を持つこともまず間違いない。
 
しかし,これは禁じ手である。天皇の憲法遵守発言をいったん政治的に利用したら,天皇は政治化され,護憲派は底なしの泥沼に引き込まれる。いくら苦しくても,人民主権の日本国憲法の下では,人民は人民自身で憲法擁護の努力をすべきだろう。
 
では,ひるがえって,天皇は憲法遵守発言をすべきか否か? 天皇が「象徴」に徹すべきなら,昭和天皇のような意味不明の発言を繰り返すか,無言を通すしかない。が,天皇も人間であり,そうも行かない。そこが難しいところである。

—————————
【写真追加2013/4/30】

130430a 130430b 
  ■天皇・皇后/天皇誕生日一般参賀(2012年12月23日,宮内庁HP)

Written by Tanigawa

2009/04/10 at 19:12