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京都の米軍基地(35):片刃の環境影響調査
Xバンドレーダー設置前の環境影響調査は,よくて両刃の剣だ。たしかに,設置前の電磁界強度,騒音,水質などを調査しておけば,設置後,もし問題が起これば,調査結果を根拠に是正を要求できる。しかし,実際には,そんなことは,まずない。原発などと同様,長期的影響などは無視し,受忍限度を高く設定しているからだ。
▼電磁界強度調査・水質調査/騒音調査
これに対し,調査の政治目的は,はっきりしている。地元要望を聞き,調査をしましたよ,というアリバイつくりだ。官僚制にとって,「法による支配」ないし「手続遵守」は,鉄則だ。が,これは主権者たる人民=住民が厳しい監視をおこたると,たちまち,所定の手続さえ踏めば,それでよい,という官僚主義に転化する。
環境影響調査は,まさしくその官僚主義的「手続遵守」そのものであり,Xバンドレーダー設置のためのアリバイつくりといわざるをえない。
その証拠に,電磁界強度調査は,三菱電機が実施する。三菱系は,米産軍共同体の下請けにして,日本産軍官共同体のドン。その一角を占める日本有数の軍事企業,三菱電機に,公平な調査を期待するのは,あまりにもおめでたい話しだ。
もしかりに住民側が,独自に,研究者や専門家に調査を依頼しようとしても,政府や京都府や京丹後市は,調査費負担はむろんのこと,調査そのものさえ決して許可しないだろう。特にXバンドレーダー設置後は。いうまでもなく,それは「特別防衛秘密」ないし「防衛秘密」であろうし,おそらく何らかの形で「特定秘密」に指定されるであろうからである。
もしそうであるなら,お上の環境影響調査は,両刃にすらなりえない。むしろ,それは,反対運動を切って捨てるための,片刃の剣でしかないのではないか?
■水質調査(3月19日)ユニチカ/騒音調査(2月25日)防衛省
[参照]防衛省→三菱電機144人天下り
「水増し請求の背景に 兵器製造で癒着 中距離地対空誘導ミサイルや情報収集衛星(スパイ衛星)など、航空宇宙・防衛事業をめぐって防衛省などへの経費の水増し請求が問題になっている三菱電機への「天下り」が、防衛省からは「陸上幕僚長」はじめ144人にのぼることが明らかになりました。防衛省以外の国家公務員の天下りは3人。軍事産業2位の三菱電機と防衛省との特殊な関係が浮かび上がりました。」(しんぶん赤旗2012年3月19日)
谷川昌幸(C)
韓国取材班,罰金支払い釈放
パシュパテ寺院地区を撮影し逮捕されていた韓国TV取材班の韓国人4人とネパール人1人が,3月21日,罰金1人9500ルピーを支払い,釈放された。
韓国TV取材班は,リモコン小型ヘリを使い,ポカラやビルガンジを空撮し,最後にパシュパテ寺院の空撮をしたらしい。容疑は,公安法(Public Offense Act)違反であり,2年以下の禁固または1万ルピー以下の罰金。
当初,彼らの容疑は,空軍施設の無断撮影であり,これが認定されれば,公安法違反に留まらず,重大な事態となる危険性があった。韓国大使館は,おそらくこれを危惧したからであろうが,迅速な手を打ったようだ。その結果,5人は,パシュパテ寺院聖域の無許可撮影の罪だけを認定され,罰金の支払いで釈放された。
今回は大事に至ることなく決着してよかったが,ネパールの軍施設は人民戦争により急増しており,また中印関係も緊張してきた。ネパールは,観光客にとっても,いまやかなり危険な国だといわざるをえない。
*Himalayan, 21 Mar; Yonhap News, 20 Mar; 新華社,3月20日
谷川昌幸(C)
軍施設撮影で韓国人逮捕
カトマンズの軍施設撮影容疑で,3月18日,韓国人4人が逮捕された。
逮捕されたのは韓国放送局のスタッフ4人とネパール人ガイド1人。パシュパティ寺院を無人ヘリで空撮していた。この寺院はトリブバン国際空港の西隣にあり,空港内空軍施設に近接している。そのため,空撮に軍施設が写ってしまったらしい。
最近,ネパールは善良な観光客にとって,ますます危険な国になってきた。カトマンズのど真ん中,アメリカンクラブ付近のことについては,何度か報告した。今度は,空港やパシュパティ寺院だ。
それにしても,この情報化時代,このような秘密主義はアナクロではないか。たとえば,グーグルでも,トリブバン空港内軍施設はよく見える。隠しようもない。それでも隠そうとするのが,軍の抜きがたい習性。軍事機密,防衛秘密,特定秘密などの恐ろしさは,そこにある。
これからネパールに行く人には,カメラにくれぐれもご用心いただきたい。最近のカメラは高性能だ。私の初心者用ズーム(55~250mm)付カメラでも,スワヤンブーあたりから市内の軍関係施設を撮ることは十分に可能だ。一つ上の400~800mmレンズをつけ,市内の高台かビル上層階に行けば,どの軍施設であれ,丸見えだろう。
ネパールに行って無邪気にバシャバシャ写真を撮っていると,いつしょっ引かれるか分からない。たまたま軍施設が写っていようものなら,面倒なことになる。桑原くわばら。
■パシュパティ寺院(P)とトリブバン空港(TIA)/空港内軍施設付近(Google)
谷川昌幸(C)
京都の米軍基地(31):MBS「見えない基地」再放送を
毎日放送(MBS)「見えない基地~京丹後・米軍レーダー計画を追う」(2014年1月19日放送)を録画で見た。関係者や地域社会への細心の配慮をしつつも,問題の本質に多角的観点から肉迫していく。本格的ドキュメンタリーの傑作といってよいだろう。
番組の制作意図と概略は,MBSホームページ「取材ディレクターより」に簡潔に述べられているので,ご覧いただきたい。なお,MBSにはラジオ番組「どこへ行く自衛隊」(2013-11-10)もある。
1.地域分断
このドキュメンタリは,それ自体,決して難解なものではないが,扱われている主題は,複雑で重苦しく,難しい。
過疎の村,京丹後市宇川に,昨年早春,突然,米軍Xバンドレーダー基地建設が告げられる。そして,地元住民に対しては,説明らしい説明をせぬまま,一方的に,強引に基地建設計画が進められていく。
その過程で,衝撃的であったのは,やはり地域社会の分断である。原発とまったく同じ構造。権力による脅しや,カネによる直接的・間接的懐柔で,たちまち地域社会は分断され,隣近所はおろか家族ですらいがみ合い争う。過疎とはいえ,美しく平和であった地域社会が,猜疑と憎悪の底なし沼に引きずり込まれつつある。
もはや丹後は元へは戻れまい。表立っては怒るに怒れない忍従,救われようもない重苦しさと悲哀。
2.「国益」優先の市長
ところが,驚くべきことに,地元・京丹後市の中山市長は,当初から一貫して,地元住民ではなく,はるか海の向こうのアメリカや山の彼方の東京(政府・防衛省)に,目を向けてきた。いかにも総務庁-内閣府出身,上意下達の官僚主義的役人根性が抜けないらしい。
MBSは,むろん,この中山市長の卑屈な役人根性を見逃しはしない。番組では,中山市長が「住民益」「市民益」ではなく,「国益」を引き合いに出す場面を,いやらしいまでにリアルに描写している。
「国益」とは,要するに「お国のために」「滅私奉公」ということ。憲法第92条「地方自治の本旨」を無視し,地元の住民・市民ではなく国家権力の側に立つ中山市長! MBSは,そんな無様な,卑屈な場面を撮りたくはなかったにちがいない。しかし,そこはドキュメンタリーのMBS,心を鬼にし,涙を呑んで,カメラを回した。MBSの覚悟,プロ根性が偲ばれる迫真の画面からは,保身のため住民を売り渡した中山市長の虚勢とオドオドした内心が透けて見て取れる。
3.車力基地の実情
番組では,Xバンドレーダー基地ができたらどうなるかを見るため,つがる市の車力基地を取材している。この部分を見ると,防衛省や,その下請け・中山市長の説明がいかに無責任かが,よくわかる。
車力米軍基地は軍事機密,ピリピリした厳戒態勢下にある。こんなものに不用意に近づいたり写真でも撮ろうものなら,しょっ引かれたり,下手をするとテロリストかスパイとみなされ,射殺されるかもしれない。相手は「治外法権」の米軍。何をされるか分からない。
また,米軍関係者の犯罪や交通事故も少なくない。さらに,補助金漬けについては,余計なコメントはつけず,淡々と事実だけを描いているが,それだけにかえって,考えさせられ胸にこたえる。
4.「見えない基地」の再放送を
この番組「見えない基地」は,同局の「映像’14」シリーズの一つだ。「映像’14」は関西地域放送番組だが,レベルの高いドキュメンタリーで知られている。「見えない基地」も秀作。
しかし,残念なことに,この番組は日曜日の深夜(24:50~25:50)に放送された。見逃した人も少なくなかろう。実に,惜しい。何とかならないか。
手っ取り早いのは,録画番組をネットで公開するという手。たとえばーー
▼LunaticEclipseYokosu「見えない基地」YouTube
しかし,これは海賊版ではないか? もしそうだとすると,権利を守るための闘いが権利侵害を犯すことになってしまう。
やはり,一番望ましいのは,制作した毎日放送自身が,もう少し見やすい時間に再放送したり,ネットで公開することだ。有料でもよい。これほど優れたドキュメンタリーなら,料金を払ってもみたいと思う人も少なくないはず。ぜひ検討していただきたい。
5.特定秘密保護法の恐怖
蛇足ながら最後に一言,特定秘密保護法との関係について。周知のように,特定秘密保護法はすでに成立し,年内には施行される。
この特定秘密保護法が施行されると,おそらくMBS「見えない基地」のような番組は制作できないであろう。あるいは,それどころか,地元民や観光客がうっかり写真を撮っても,「おい,こら!」と,しょっ引かれる恐れがある。そんなことはない,と政府やその出先機関の市長は反論するかもしれないが,危ないと思わせるだけでも,威嚇効果は十分なのだ。
MBS「見えない基地」の描く車力米軍Xハンドレーダー基地。厳戒態勢にあり,触れば祟り必定の「タブー」そのものだ。そんな恐ろしいものが,車力とは異なり丹後では一般道路・住宅地・観光名所のすぐ側にできる。名所・穴文殊からだと,子供が石を投げても当たる距離だろう。
Xバンドレーダーについては,電磁波や騒音が主に問題にされてきたが,政府にとってはこれは想定内。議論がここに集中するのをみて,政府はほくそ笑んでいたにちがいない。
Xバンドレーダー基地の最大の危険性は,軍事機密,特定秘密にある。見せないで見るXバンドレーダー。ブラックホールのように,近づくものを片っ端から吸い取り破滅させる。そんなものが住宅地の目の前,観光名所のど真ん中にできる。
番組「見えない基地」の最初と最後は,経ヶ岬展望台からの分屯基地遠望であった。この展望台は,以前,私が分屯基地監視の名所として推薦したところだ。しかし,Xバンドレーダーが設置されたら,このような撮影はできなくなるだろう。たとえ,撮影禁止の立て札が立てられなくても,撮影には公安や警察やその他諸々の監視をつねに意識せざるをえない。何となく不気味だから自主規制,となるにちがいない。
あるいは,それどころか国道沿いの民家の庭先や二階からカメラを向けても,危ない。「軍事機密」「特定秘密」が写る可能性があるからだ。
こうして,京丹後は「Xバンドレーダー体制」に組み替えられていく。
■米軍基地の位置関係:車力/経ヶ岬(京都民報)
谷川昌幸(C)
京都の米軍基地(23):特定秘密としてのXバンドレーダー
米軍Xバンドレーダーは,原発と同等,いや見方によれば原発以上に危険である。すでに「京都の米軍基地(13):「Xバンドレーダー体制」の危険性」において指摘したように,Xバンドレーダーは軍事機密の塊であり,特定秘密保護法が制定されれば,その出力など,つまりはXバンドレーダーに関することが「特定秘密」に指定されることは,まず間違いない。
特定秘密保護法(案)は,こう定めている。
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特定秘密保護法(案)
第二十二条 特定秘密の取扱いの業務に従事する者がその業務により知得した特定秘密を漏らしたときは、十年以下の懲役に処し、又は情状により十年以下の懲役及び千万円以下の罰金に処する。特定秘密の取扱いの業務に従事しなくなった後においても、同様とする。
(2~5略)
第二十三条 人を欺き、人に暴行を加え、若しくは人を脅迫する行為により、又は財物の窃取若しくは損壊、施設への侵入、有線電気通信の傍受、不正アクセス行為(・・・・)その他の特定秘密を保有する者の管理を害する行為により、特定秘密を取得した者は、十年以下の懲役に処し、又は情状により十年以下の懲役及び千万円以下の罰金に処する。
(2~3略)
第二十四条 第二十二条第一項又は前条第一項に規定する行為の遂行を共謀し、教唆し、又は煽動した者は、五年以下の懲役に処する。
2 第二十二条第二項に規定する行為の遂行を共謀し、教唆し、又は煽動した者は、三年以下の懲役に処する。
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この特定秘密保護法の危険性については,すでに多くの批判がなされている。要するに,秘密は秘密であって,何が秘密かを示せば,秘密ではなくなってしまうということ。だから,国民は何が秘密か明確に知らされることなく,その秘密を理由として処罰される恐れがある。罪刑法定主義の原理的否定である。朝日新聞(10月26日夕刊)素粒子のいうとおりだ。
「お前は秘密を漏らした。逮捕する」
「何の秘密を」
「それは秘密だ。私は知らぬ」。
特定秘密保護法が成立すれば,丹後は間違いなく「Xバンドレダー体制」になる。米軍関係者は,軍人・軍属160人,関係者全部を含めるとその何倍にもなる。当然,飲み屋で一緒になったり,友人になったり,あるいは結婚し家庭を持つかもしれない。そんなとき,ついうっかり,あるいは酔っぱらって,Xバンドレーダーの出力や使い方などを聞こうものなら,しょっ引かれ,取り調べられ,下手をすると懲役刑になるかもしれない。たとえ日本人妻であれ,義理の父母や隣人であれ,同じこと。恐ろしい。たとえ処罰までは行かなくても,警察に事情聴取されるかもしれないということだけでも,威嚇効果は十分だ。
それも,Xバンドレーダーの出力といった,いかにも秘密らしい「秘密」だけではない。たとえば,このレーダーは,大量の冷却用水を必要とする。となれば,地域の谷間の取水口付近も「特定秘密」とされるかもしれない。そんなこんなで,Xバンドレーダーと直接・間接に関係するあらゆる事が「特定秘密」とされる可能性がある。いや,たとえそうでなくても,何が秘密か分からないところでは,そう考えて行動したほうが安全だ。疑心暗鬼,住民にとっては「見ざる,聞かざる,言わざる」以外に,自分を守る手だてはなくなる。
Xバンドレーダー基地は,電磁波の健康被害,温排水の影響,軍人・軍属の交通事故や犯罪などよりも,実際には,それが軍事機密ないし「特定秘密」となるということの方が,住民全体の日常生活には,はるかに深甚な影響を及ぼす。Xバンドレーダーは,数千キロ先を常時監視するため,自分を隠す必要がある。見られないで見る。丹後は,見えない「秘密」に脅え,住民の自主規制,相互監視に向かう。「Xバンドレーダー体制」による住民監視社会の到来だ。
このような事態は,市議会審議においては,ほとんど考慮されてこなかった。いま,当初想定していなかった特定秘密保護法をめぐる新しい状況も生まれつつあるわけだから,市議会は改めてXバンドレーダー配備受け入れの是非を再審議すべきではないか? 「Xバンドレーダー体制」が成立すれば,もはや抵抗は出来なくなってしまうだろう。
【追加】(2014-1-16)
安倍政権は,2013年12月6日「特定秘密保護法」を成立させ,12月13日公布した。さらに2014年1月14日には,秘密指定基準を検討する「情報保全諮問会議(秘密法諮問会議)」の座長に,読売新聞社の渡辺恒雄会長・主筆を選任した。この人事をみても,この法律がどのように運用されるかは,明白といってよいであろう。
谷川昌幸(C)
京都の米軍基地(8):基地反対集会
1.「6・15丹後集会」
「京都に米軍基地はいらない! 6・15丹後集会」に参加した。雨天にもかかわらず,参加者約500名。
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▼集会次第
13時30分~ 司会 丹後連絡会事務局長 近江裕之
主催者あいさつ 丹後連絡会副代表 三野みつる
会の代表などを紹介、メッセージの紹介
13時38分~ 経ケ岬米軍基地設置 徹底質問 軍事と法律の専門家に聞く
質問者 府民の会 小林さん
回答者
府民の会事務局長・京都平和委員会理事長 戸田昌基
自由法曹団京都支部事務局長・弁護士 渡辺輝人
京丹後市議会、京都府議会での質疑・協議について
会場のみなさんからの質問時間もとります
カンパの訴え
14時10分~ 私も一言
集会アピール
閉会あいさつ 府民の会代表 京都総評・吉岡徹議長
14時35分閉会
▼京都に米軍基地いらない6・15丹後集会アピール
日米両政府は、京丹後市経ケ岬に米軍基地を設置しようとしています。
私たちは丹後の美しい自然を生かした地域の振興を願っており、米軍基地の設置は、このことを真っ向からふみにじるものです。米軍基地の設置をやめるよう、私たちは強く求めます。
新たにつくられようとしている米軍基地は、アメリカ本土のミサイル防衛のための「目」となるXバンドレーダーを設置するものです。これは、核戦争の最前線基地が京丹後市につくられるということです。米軍基地の設置は、この地域の軍事的な危険を高め、住民のくらしと自然を脅かします。
Xバンドレーダーは、住宅地から数百メートルしか離れていないところに置かれます。日本政府は安全だと主張していますが、強力な電磁波を出すため、レーダー周辺は150メートルの立ち入り禁止区域と半径6キロ、高度6キロの飛行禁止区域が設定されます。海難事故の救援や、ドクターヘリの運行にも支障が出ます。そのため住民は強い不安を抱いています。
今、全国に132の米軍基地があります。どこでも米軍と軍属による犯罪、不祥事、交通事故が問題となっています。そして、安保条約にもとづく取り決めによって、米軍と軍属が日本で問題を起こしても、日本の警察が調査・逮捕できない事例が、あいかわらず多発しています。経ケ岬には米兵と軍属が160名配備されようとしています。この不安も拭い去ることはできません。
京都に米軍基地はいりません!
住民のくらしと自然を守るため、「京都に米軍基地はいらない」の声を一層大きくしましょう。
2013年6月15日
京都に米軍基地いらない6・15丹後集会参加者一同
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1時間あまりの集会では,米軍Xバンドレーダー基地の概要が説明され,いくつもの危険性が厳しく指摘された。現地で,現場を前にした説明は,やはりリアリティがある。とくに,地元の平と袖志の方,そして「宇川有志の会」の方の発言は,具体的であり,地元の切実さがひしひしと感じられた。
2.組織主導と運動の広がり
この集会には500人ほど参加しており成功と言えなくはないが,私のように横から参加した者から見ると,労組など団体が目立ち,やや広がりに欠けるように見えた。運動には,それを担う様々な実行組織が不可欠であり,労組などが重要な役割を果たすのは当然だ。しかし,それが前面に出すぎると,運動は一般へと拡大しにくくなるのではないだろうか。
米軍基地は,地元の人びとの日常生活を大きく変えてしまう恐れがある。米軍の事故・犯罪,電磁波被害,騒音,水不足などから,攻撃目標にされる不安と恐怖,そして軍事機密とそれにつきものの住民の思想・信条・行動監視。まさに平穏な日常生活の破壊である。その現実の危険を,地域の人びとに,どう説明し訴えていくのか? これは難しい課題だが,その危険の十分な理解なくして,地元の反対運動は広がらないだろう。
3.平の海岸美と公害被害
ところで,「6・15丹後集会」が開かれたのは,米軍基地予定地の西方,平海岸駐車場においてである。平は,白砂青松の美しい海岸で,夏には多くの海水浴客でにぎわう。そのため,広い駐車場もつくられている。
しかし,この海岸にもプラスチックなど,廃棄物が無数流れついている。特に驚いたのが,砂浜の可憐な野草の上に黄色い網がかかっていたこと。はじめ遠くから見たときは,てっきり黄色い花が一面に咲いているのだと思った。ところが,浜に出てみると,それは花ではなく,捨てられ流れ着いた黄色の網だった。これはヒドイ。無残だ。
米軍基地問題とは無関係と思われるかもしれないが,決してそうではない。このような自然破壊についても,真剣に取り組み,漁業,観光など,地元産業を守り発展させていかないと,基地依存経済への誘惑を断ち切れないだろう。
4.廃校と道路建設
平の半島内陸側は,急峻な山地で平地はほとんどない。しかも日本有数の豪雪地帯。かつては小さな集落が点々とあったが,離村で無人となったところも少なくない。
平から車で20~30分登った三山地区もそのような集落。家や畑の世話はされているが,住んでいる人はいないようだ。谷間にひっそりとカトリック教会の集会所とマリア像があった。信者が多かったのだろう。別の険しい山道をさらに登ると,ごく小さな集落があったが,ここは完全な廃村となっていた。
このように,丹後半島の内陸部の生活は厳しい。当然,道路建設への要望は切実だ。そうした強い要望もあり,いま丹後半島の各地で大規模な道路建設が始まっている。
米軍基地反対運動が難しいのは,一つには,こうした地域開発への切実な要望があること。アメリカは日本を,日本の都市部は地方を,地方は僻地を,文字通り「周縁化」し,搾取してきた。しかも,この問題は,ひとり1票の多数決民主主義では解決できない。
このような構造的暴力を温存し,そこから利益を得ている限り,都市住民には地方開発を云々する資格はない。原発と同様,地域住民は危険覚悟で米軍基地を受け入れるつもりかもしれないからだ。背に腹はかえられない。
これも難しい問題だが,目を背けていては,反対運動は地域への広がりを期待できないであろう。
谷川昌幸(C)
京都の米軍基地(4):俯瞰スポット「山頂展望所」
経ヶ岬航空自衛隊分屯基地とその周辺の米軍基地用地を上から覗き見る最適スポットが,経ヶ岬山頂展望所だ。
国道178号線から分岐し経ヶ岬灯台道路を少し上ると,駐車場がある。物騒な米軍基地の話など影も形もなかった頃,観光客を当て込み造成された,だだっ広い駐車場だ。
■経ヶ岬バス停前(5/31) / 経ヶ岬バス停と分屯基地(5/31)
この経ヶ岬駐車場から急な山道を三分の二ほど登り,分岐点から日本海側に回ると,経ヶ岬灯台(明治31年開設)がある。灯台はどこでもそうだが,どことなく哀愁がありロマンチック。丹後の秘境デートスポットだ。
■駐車場内の案内看板(5/31) / 灯台・展望所分岐点(5/31)
しかし,このコースは,途中からも灯台からも,米軍基地用地はまったく見えない。米軍基地用地を覗くには,分岐点から山頂展望所へのコースをとり,岬の頂上まで登る。
頂上には,俗趣味な東屋がある。周囲を高い樹木に囲まれているが,1カ所だけ切り払われている。おそらく日本有数の美しい海岸,「丹後松島」が展望できるよう,邪魔な樹木を切り倒したのだろう。
米軍基地は,この国定公園の景勝地「丹後松島」の一角につくられる。したがって,「丹後松島」展望名所は,自動的に,米軍基地監視の名所となるわけだ。私が登った5月31日は,梅雨の曇天でかすんでいたが,普段なら,スミズミまでバッチリ俯瞰できるはずだ。
しかし,こんな監視最適地を,米軍が放置するわけがない。軍事機密の塊のようなXバンドレーダーの秘密を「某国」スパイや協力者から守るため,山頂展望所はおそらく立ち入り禁止にされてしまうであろう。あるいは,そこまでエゲツナイことはできないとしても,切り払ったところに木を植え,あるいは自然生育を放置し,米軍基地を見えなくしてしまうにちがいない。
それでも見てやろうと山頂に登る人は,Xバンドレーダー稼働後は,決死の覚悟が求められる。このレーダーは超強力電磁波を放射しており,上方に位置する山頂展望所は,下手をすると電子レンジ庫内状態となる。「人間の丸焼き」だ。
防衛省や「専門家」は,Xバンドレーダーの電磁波は人体に危険なレベルではない,と繰り返し説明している。しかし,こんな説明には,確たる根拠はない。なぜなら,データはすべて米軍が握っており,彼らには肝心なことは何も知らされていないから。原子力村のいわゆる「専門家」より,信用がならない。
Xバンドレーダーが稼働したら,何かのハズミで,近辺の誰かが「人間の丸焼き」になる危険性があると考えても,決して警戒のしすぎではない。いくら非科学的といわれようとも,大げさ,騒ぎすぎといわれようとも,分からないものについては最大限の警戒をするのが,人間の合理的な態度だからである。
経ヶ岬山頂展望所に登るのは,今のうち。山頂から国定公園「丹後松島」の軍事基地を,ぜひご覧いただきたい。
谷川昌幸(C)
京都の米軍基地(2):撮り撮られ
京都・経ヶ岬の航空自衛隊経ヶ岬分屯基地を見てきた。といっても,外からの,覗き見にすぎない。梅雨・多湿で遠望には向かなかったが,それでも百聞は一見にしかず,基地の立地がよく分かった。
米軍Xバンドレーダー基地は,この空自基地を大幅拡張し,そこに同居する。というより自衛隊基地の共用,より正確には米軍基地化である。
経ヶ岬に行ったのは平日昼間であり,よそ者は一目瞭然,よく目立つ。こんなところで写真を撮っているのは,不逞の輩に決まっている。撮る以上に撮られ,ファイルに納められているだろう。
薄気味悪いが,米軍が来たら,この付近の撮影は「軍事機密」により制限され,困難なるに決まっている。軍,特に情報部隊は,そのようなものだ。
撮るなら今のうち。美男・美女モデルを雇い,バスを連ね,経ヶ岬撮影会を挙行するのも乙だ。歴史に残る傑作が撮れるかもしれない。
■基地のビルとレーダー(Google) / 岳山のレーダー(Google)
谷川昌幸(C)
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