ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

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ネパールにおける米軍プレゼンス

ネパールにおける米軍プレゼンスが高まっている。ネット広報のせいでそう感じるのかもしれないが,プレゼンスを感じさせるのも軍事作戦の一つ。

この4月12日にも,米大使が,軍事協力の一環として,河川用ボート2艘をネパール国軍に引き渡した。米太平洋軍からの贈与。これらのボートは,一応,救援用とされているが,もちろん軍事用でもある。ネパールでも軍民協力が拡大し,そこに米軍が積極的に参加し始めているのだ。

自衛隊の海外展開も,おそらく,このような軍と民の間のグレーゾーンたる軍民協力の部分が当面の主戦場となるであろう。白から黒への切れ目のないシームレス展開,自衛隊の前途は洋々,活動範囲は理論上無際限といっても過言ではあるまい。

160423a■贈呈式の米大使と国軍参謀総長(米大使館FB,4月15日)

160423b■贈呈されたボート(ネパール国軍FB,4月12日)

160423c■贈呈式出席米ネ要人(ラジェンドラ・チェットリ国軍参謀総長FB,4月12日)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/04/23 at 11:26

カテゴリー: 軍事

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米太平洋軍の対ネ支援活動

在ネ米大使館が,米太平洋軍のネパール支援活動の宣伝をしている。”Multinational Planning Augmentation Team (MPAT) Tempest Express-28″, Radisson Hotel, 10-18 March 2016.

MPATは2000年設立,アジア太平洋地域の多国籍軍による戦争以外の緊急時における非軍事的作戦の立案・執行を目的とするという。それ以上のことは,軍事のことであり,私にはよくわからない。

今回の「テンペスト・エクスプレス‐28」は,ネ国軍と米太平洋軍の共催。ワークショップでは,極西部バジャン郡で巨大地震発生を想定し,図上訓練が行われたらしいが,詳細は不明。

いずれにせよ,この図上訓練にもみられるように,ネパールにおいて米軍のプレゼンスがこのところ目立ち始めているように思われる。非軍事作戦ないし軍民協力活動とはいえ,国境近くの微妙な地域における米軍参加の「作戦」であることに変わりはない。

160319■在ネ米大使館ツイッター(3月18日)

▼「うそ発見器」支援,米司法省(米大使館ツイッター3月20日)(3月20日追加)
160320■軍民協力や治安対策が目立つ最近の米支援活動

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/03/19 at 19:37

カテゴリー: ネパール, 軍事

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軍事化の兆し、日ネ関係

1.秋爛漫に水を差す陸自幹部派遣
キルティプール付近は、いま桜が満開、他に菜の花、ブーゲンビリア、ラルパテ、マリーゴールド、カンナ、朝顔(といっても一日中開花)等々、百花繚乱、まるで東北の5月のようだ。

■ラルパテ■八重ブーゲンビリア(?)


 ■稲の刈り入れと満開の桜(右端)

そんな平和で、のどかな「秋爛漫」に水を差すような、物騒なニュースを各紙が伝えている。日本政府は、カワセ・マサトシ陸将補を団長とする3人のネパール軍事訪問団を派遣した。11月8日着、10日発の3日間の訪ネだ。

2.史上最高レベルの日本軍事訪問団
報道によれば、訪ネ軍人としては、カワセ陸将補は史上最高レベルであり、新聞やネットニュースの見出しも、勇ましい。

「日本国軍事団の異例の訪ネ」(ranabhola.blogspot,9 Nov)
「日本国安全保障チームの訪ネ」(Zeenews, 10 Nov)
「軍事協力を協議」(Himalayan Times, 7 Nov)
「日本国自衛隊幹部、首都へ」(nepalnews.com)

カワセ陸将補ら日本国陸自(陸軍)幹部は、プサン・チャンド国軍CGSと会見し、相互軍事協力や自然災害時の人的協力について協議した。また、国軍幹部学校や国軍司令部を訪問し、各部隊の幹部とも会見した。

 ■日ネ軍人協議(Himalayan Times)

3.米軍訪問団の訪ネ
さらに驚くべきことに、上記ヒマラヤンタイムズによれば、日本国軍事訪ネ団の翌日、やはり3日の日程で、アメリカ「近東南アジア」担当チームが訪ネ、チャンド国軍CGSと会見し米ネ軍事協力を協議、また軍幹部学校を訪問しているのだ。

4.日米の対ネ軍事協力作戦か?
軍事関係だから、報道はごく限られており推測せざるをえないのだが、日米軍事同盟の現状からして、日本の対ネ軍事協力・準軍事協力が日本単独で計画されるわけがない。

中国の軍事大国化、チベット問題、尖閣諸島問題などをにらみながら、日米が協力して、ネパールへの何らかの軍事的働きかけを始めたのではないか、と疑わざるをえない。

5.海外派兵への呼び水
日本では、2006年、自衛隊法が改悪され、自衛隊の海外活動が「本来任務」に格上げされた。そのための軍民協力精鋭部隊として「中央即応部隊」も設立された。「平和協力」の名目さえつけば、いまや自衛隊は世界のどこへでも、もちろんネパールへも、部隊を派遣できるのである。むろん日本独自ではなく、アメリカの下働き、あるいは尻ぬぐいとして、

ネパールへの自衛隊派遣は、2007年3月のUNMIN(国連ネパール政治ミッション)への陸自隊員6名の派遣から始まる。停戦監視のための非武装隊員派遣だったので、ネパール関係者の間では、支持こそあれ、反対はなかった。

しかし私は、これは日本の自衛隊海外派遣の本格化の呼び水になると考え、当初から反対してきた。今回の「対ネ日米軍事協力作戦」ともとれる動きは、その傍証の一つといえよう。

6.危険な軍民協力
今回の史上最高レベルでの日ネ軍事協議において、自然災害時の人的協力が話し合われたことも、看過しえない事態だ。

ネパールではマオイスト紛争は終結し、紛争がらみでの自衛隊派遣の理由は今のところはない。ところが、自然災害は頻発し、規模もますます大きくなっている。地震でもあれば、大惨事だ。自然災害時の自衛隊派遣は、そうした事態を想定している。

ネパールの災害時に救援隊を最大限派遣するのは当然だが、自衛隊派遣には反対である。

先のUNMIN派遣で自衛隊はネパール国軍との関係を一気に強化した。もし災害派遣が想定されるなら、平時から自衛隊とネパール国軍は関係を緊密化させ、そこには当然、民間・文民部門も深く関与する。日ネ軍民協力である。

自衛隊が、日ネ軍民協力を手がかりとしてネパールに関与していけば、自衛隊がらみの複雑な既得権益が生じ、もはやそこからは抜け出せなくなる。ネパールには、自然災害の危険は山ほどある。紛争の種もある。チベット問題も深刻だ。暗に中国の脅威をも想定しつつ自衛隊をネパールに出せば、引っ込みがつかなくなる。

ネパール関係者は、日本ODAが大幅削減され、あせり、防衛予算に目を向け始めたのだろうが、これは禁じ手、絶対に手を出してはならない。

某大学、某々大学などは、平和貢献を名目に、自衛隊関係者やその筋の某財団などとの共同研究に前のめりだが、こんな軍民協力、軍学協力こそが、国を誤らせることになるのである。

「太って満足した豚よりも、痩せたソクラテスになりたい」 J.S. ミル

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/11/12 at 02:04

人間の安全保障と国際平和貢献

小論「人間の安全保障と国際平和貢献」を発表しました。憲法研究所・上田勝美編『平和憲法と人権・民主主義』(法律文化社,2012年)290-304頁。以下,結論部分のみ紹介します。

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日本国憲法は、先述のように、前文で人間安全保障への積極的貢献を義務づけているが、その手段については、いうまでもなく第九条により武力によることを一切禁じている。日本国民は、非軍事的手段による平和貢献に徹することを自ら選択したのである。

この憲法理念からすると、日本政府の人間安全保障政策は、「国益」優先と自衛隊動員の二点において、誤りである。

そもそも非軍事的平和貢献の中心を占めるべき政府開発援助が、日本の場合きわめて貧弱である。日本のODA(2011年度)は、援助総額では英独仏とほぼ同じだが、国民一人当たり負担額はノルウェーの10分の1以下であり、一般会計予算に占める割合もわずか1.1%でしかない。さらに驚くべきことに、ODA予算は、1997年度を100とすると、2011年度は49であり、半減されている。ほぼ総額維持の防衛関係費と比較して、その落差は極端だ。

これは、人間安全保障への非軍事的貢献を義務づけている憲法に反する政策である。たしかに、従来のODAには事業目的の不明確さや不効率があったことは事実である。しかし、だからといってODAを大幅削減したり、自衛隊海外派遣のための草刈り場とするのは誤りである。また、ODA関係者が、根拠なき批判や予算削減におびえ、右傾化世論に迎合し、一見明快な「国益」貢献に飛びつき、自衛隊との軍民協力に走るのは、ODAの自殺行為に他ならない。

日本国民は、非戦非武装の憲法理念に立ち返り、「国家」ではなく「人間」の安全を保障するための平和的手段による平和貢献を改めて選択し直すべきであろう。(302-303頁)
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Written by Tanigawa

2012/10/18 at 21:16

軍民協力に前のめり,PWJ

朝日新聞(7月20日)耕論「PKOあれから20年」に,ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)の石川雄史氏のインタビュー記事が出ている。石川氏は,JICA専門家等を経てPWJ南スーダン現地事業責任者。(他のインタビューは,川端清隆国連政務官(安保理担当)と高村正彦元外相・防衛相)

この耕論インタビューにおいて,石川氏は自衛隊南スーダン派遣を高く評価し,自衛隊とNGOとの協力,つまり軍民協力(民軍協力)の積極的推進を提唱されている。

「今年初め、自衛隊の施設部隊が首都のジュバに入りました。少人数で活動する私たちNGOと違い、300人以上の部隊はやはり存在感があります。彼らは情報を求め、現地で活動してきた日本のNGOと、積極的に交流しています。・・・・様々な制約を抱える自衛隊が、さらに地域に根ざした活動をしようとする際には、私たちNGOとの連携もぜひ、前向きに模索していただきたい。今後のPKOでは、NGOとの連携で国益確保する道もあると思うのです。」

これは驚くべき発言だ。自衛隊南スーダン派遣は,憲法違反であり,自衛隊自身も消極的であった。内陸深くの南スーダンに,はるばる日本から軍隊を送り込み,道路や橋などを建設することに,何の意味があるのか? 補給をどうするのか? 戦死者が出たら,どうするのか?

自衛隊南スーダン派遣は,当事者の自衛隊のこのもっともな合理的な反対を無視し,外務省が「安全保障の素人」一川防衛大臣や迷走田中防衛大臣を利用し,ゴリ押ししたのだ。

その自衛隊南スーダン派遣を,PWJは積極的に評価し,しかもNGOとの連携で自衛隊は「国益確保」を目指せという。かつては日本政府を厳しく批判したこともあるPWJ=平和の風・日本だが,最近は,風向きがかなり変わったようだ。

すでにPWJは,ハイチにおける自衛隊協力について,軍民協力の先駆けとなるものとして,外務省や防衛省・自衛隊から高く評価されている。

「10年12月、わが国の非政府組織(NGO)であるピースウィンズ・ジャパンと連携し、瓦礫とゴミの山となっていた地域に公園を造るため、自衛隊部隊が敷地の整地を行った。・・・・国際平和協力活動でのわが国のNGOとの連携は自衛隊にとって初めてのことであった・・・・。・・・・NGOとの連携などは新防衛大綱で示された方針にも合致しており、今後とも、ハイチでの活動をより効果的なものとすべく様々な活動に取り組んでいくこととしている。」(防衛白書2011「ハイチにおける自衛隊の活動について」

このような軍民協力は,NGOだけの問題ではない。防衛省・自衛隊がいまNGOと並んで主要ターゲットとしているのが,大学である。大阪大,神戸大,広島大,慶応大など,多くの大学が,NGOも取り込みながら,軍学協力に向かって突っ走っている。

そして,ここにはなぜか日本財団・笹川平和財団が深くコミットしている。たとえば,平和構築フォーラム参照。また,軍学協力については,【政治の動向】軍民分離から軍民協力へ,参照。

しかし,NGOや大学が軍隊と共同作戦を展開し,国益を追求するのは,あまりにも危険ではないか? カネと権限をもつのは国家である。そして,「暴力装置としての国家」の暴力の中核はいうまでもなく軍隊=自衛隊である。そのような軍隊との「協力」や「連携」など,本当にあり得るのか? 「民軍協力」「民軍連携」などという甘言に釣られ,協力を始めると,いずれ「軍民協力」となり,結局は軍隊の下働きとなってしまうのではないだろうか?

NGOは非政府(非国家)組織であり,定義上からも,政府や国家と一線を画するところに存在意義がある。大学も,もともと独立した学問共同体であり,国家や企業の下働きではない。即戦力養成,役に立つ授業ほど,大学の理念から遠いものはない。

そうしたものであるはずのNGOや大学が,たとえ背に腹は代えられぬという切実な事情があるにせよ,よりにもよって軍隊と協力をするのは,少し長い目で見ると,自殺行為であるといわざるをえない。

【参照】 
2011/11/02 朝日社説の陸自スーダン派兵論
2009/09/22 自衛隊海外派遣:「民軍協力」から「軍民協力」へ

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/07/20 at 19:16

カテゴリー: 平和

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軍学連携――軍民分離から軍民協力へ

長崎大学
講演会「日本の平和を守る自衛隊の使命とは」

 教育学部中庭の講演会案内

大阪大学
自衛隊大阪地方協力本部と大阪大学大学院国際公共政策研究科(OSIPP)との共催により実施している「国際安全保障ワークショップ」

 参加院生・自衛官(自衛隊HPより)

 豊中キャンパス(自衛隊HPより)

神戸大学
大学と自衛隊(神戸新聞 2002.12.6)
神戸大学の学生と自衛隊員が十一月、安全保障をテーマに「共同研究」を行った。講義は大学の外で、学生にさえ事前に場所を知らせることなく開かれた。「自衛官が同席することで現実的で緊張感のある議論ができる」と、大学の担当教官は教育的な意義を強調する。一方、市民グループや一部の学生は抗議を表明、評価は大きく分かれた。

慶応大学
自衛隊が大学で「講義」(しんぶん赤旗2002.8.8)
東京の慶応大学では六月十六日、総合政策学部の小島朋之教授(学部長)の研究会、同阿川尚之教授の研究会、同草野厚教授の研究会、経済学部の島田晴雄教授の研究会に属する学生五十六人が小島、阿川、島田の三教授と海上自衛隊・厚木基地で「大学生と自衛官の安全保障ゼミ」を開催。P3C哨戒機に体験搭乗し、安全保障に関する討論会を行いました。

SDM特別講義 日本の国家安全保障の体系(2011年度春学期)
[講師]大谷康雄 航空自衛隊幹部学校戦略教官,1等空佐,SDM研究所研究員
     千川一司 航空自衛隊幹部学校戦略教官,2等空佐 

九州大学
人工降雨実験

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2011/12/17 at 12:54