ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

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謹賀新年

新年あけまして,おめでとうございます。
2019年が世界の平和・人権・民主主義実現への飛躍の年となりますように。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2019/01/01 at 06:51

カテゴリー: 平和

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ネパール共産党,ごり押し政党登録

予想されたことだが,ネパール共産党(NCP)が,憲法も政党登録法も無視し政党登録をすることを選挙管理委員会(EC)に認めさせた。選管6月6日,NCPの政党登録を決定し,NCPへ通知。
【参照】ネパール共産党の発足と課題

1.女性党役員不足
政党登録法15(4)条によれば,政党の中央レベル各委員会委員の1/3以上は女性でなければならない。ところが,NCPはこの基準をはるかに下回っている。
・書記局(9)・・・・女性0(0%)
・常任委員会(45)・・・・女性2(4%)
・中央委員会(441)・・・・女性72(16%)[6月7日現在]

選挙管理委員会(EC)が,自らの主要任務の一つを定めた政党登録法の明文規定を完全に無視してまで,どうしてNCPの政党登録を認めたのか?

最大の理由は,いうまでもなく強大政権党NCPからの圧力。オリ首相(首相)ら党幹部は,女性党員に対し,第1回党大会(2年以内開催目途)まで女性党役員不足を問題にするなと説得し,ECに対しては第1回党大会で女性役員1/3要件を満たすので政党登録を認めよと迫った。

一方,選管(EC)や他党の側にも弱味はあった。ECは,女性党役員1/3要件を満たしていない他の諸政党にも,これまで政党登録を認めてきたからである。ナレンドラ・ダハルEC委員長は,こう述べている。

「EC政党登録済みのどの政党も中央委員会女性33%の法規定を満たしていないが,ECはこれらの政党がいずれその政党要件を満たしてくれることと信じている。」(*3)
「ECは,今後,同じようなことがあれば,それぞれ個別ケースごとに審査し決定する。」(*6)

こうしてECは,NCPの政党登録を認めたが,これは明白な法無視。憲法9条がありながら,巨大軍隊を持ち海外派兵している日本政府よりはましだが,それでもヒドイ!

このNCP政党登録に対し,弁護士ら14人が6月13日,登録取り消しを求め,最高裁に提訴した。現在の力関係からして登録取り消し判決は考えにくいが,それでも,ネパール最高裁は,これまでに議会首相指名の無効判決など,日本では考えられないような大胆判決を下したことが幾度かあり,今回の件についても無効判決の可能性が全く無いわけではない。注目していたい。

2.党名
ネパール共産党(NCP)の政党登録にあたってもう一つ問題となっていたのが,党名。NCPとすれば,ネパール全国民を代表するに相応しい党名「ネパール共産党(Nepal Communist Party)」を名乗りたいのだが,この党名はすでに他の共産党に登録され使用されている。

そこで,当初,党名の下にアンダーラインを引き「Nepal Communist Party」とすることが検討されたが,これは実際的ではないとして取りやめとなった。そのかわり,党名に(NCP)を追加し「Nepal Communist Party(NCP)」とすることにし,これがどうやら選管に認められたらしい。略称はNCP(NCP)!!

もしそうだとすると,これは強大政権党NCPによる「Nepal Communist Party」という党名の,事実上の強奪である。だれも(NCP)の有無など意に介さず,Nepal Communist Partyといえばオリ=プラチャンダのNCPを思い浮かべるはずだ。共産党乱立のネパールではやむを得ないといえなくもないが,法は弱者の権利を守るべきものだとすれば,少々引っかかるのもまた事実である。

追加(6月26日)】
ネパール共産党(NCP)政党登録の取消しを求める訴えを受理した最高裁は6月17日,選挙管理委員会に対し,NCPを政党登録した理由を文書をもって開示するよう命令した。

弁護士ら14名は,他の諸政党の政党登録更新をも求めているが,この訴えについての最高裁の判断は今のところ不明。(*9,10)

  ■NCP FB

*1 “EC prepares to register NCP without 33 pc women representation,” Republica, June 6, 2018
*2 “EC decides to register NCP, ignoring law,” Republica, June 7, 2018
*3 “Nepal Communist Party (NCP) registered at EC,” Himalayan, June 07, 2018
*4 “NCP registered with EC,” Republica, June 8, 2018
*5 “NCP acquires EC registration,”KathmanduPost, Jun 8, 2018
*6 “NCP Finally Gets Legal Party Status,” New Spotlight, June 7, 2018,
*7 “The ruling Nepal Communist Party, among others, break the law to exclude women,” The Record, June 10, 2018
*8 “Nepal’s NCP faces legal challenge for violating constitutional provision,” Millennium Post, 16 Jun 2018
*9 Kamat, Ram Kumar, “EC gets show cause for registering NCP(NCP),” Himalayan, 18 Jun 2018
*10 “SC tells poll body to clarify over NCP,” Kathmandu Post, 18 Jun 2018

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2018/06/25 at 17:55

カテゴリー: 政党

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RPP党則から「ヒンドゥー国家」と「君主制」を削除,選管

ネパール選挙管理委員会(EC)が3月17日,5月地方選のための政党登録にあたって,国民民主党(RPP)の党則から,同党のもっとも根本的な基本理念たる「ヒンドゥー国家」と「立憲君主制」の部分を削除した。報道からは,具体的な削除文言や削除手続きは分からないが,RPPは長い歴史を持ち,現在議会第4党,そのれっきとした公党の党則を,選管がいわば「検閲」したのだ。大胆な,恐るべき権力行使!

選管のナレンドラ・ダハール委員長は,RPP党則からの「ヒンドゥー国家」と「立憲君主制」の文言削除につき,それらは憲法の定める「世俗国家」と「共和制」に反しているし,また憲法は政党が国民間の憎悪を煽ったり国家の安全を脅かしたりすることを禁じてもいるから,同党党則からそれらの文言を削除したのだと説明している(*4)。

たしかに,ネパール憲法は「第29編 政党に関する規定」において,次のように定めている(関係部分要旨)。
 第269条 政党の結成,登録および活動
 (2)政党は,選管に「政党名」を登録する。
 (3)政党は,党則(党規約),会計報告書,およびその他法律に定める文書を選管に提出する。
 (4)政党登録の要件。(a)政党の党則や党規約は民主的でなければならない。
 (5)政党の名称,目的,シンボルおよび旗が,この国の宗教的ないし共同体的統一を損なうか,または対立をもたらす恐れがあるときは,その政党は登録されない。
 
これらの憲法規定を見ると,もし選管が「ヒンドゥー国家」と「立憲君主制」の党則記載を理由としてRPPの政党登録を拒否したとしても,それには全く根拠がないというわけでもなさそうだ。しかしながら,報道によれば,今回,選管は政党登録拒否ではなく,RPP党則の中のそれらの文言を一方的に削除したらしい。

RPPは,この選管のやり方に猛反発,選管の行為を違憲として最高裁に訴える一方,選管本部前に押しかけ激しい抗議活動を展開した。

RPPのカマル・タパ党首は,党則からの「ヒンドゥー国家」と「立憲君主制」の削除は党から魂を抜くようなものだと述べ,もしこのような党則削除が許されるのなら,UML,マオイストなど多くの共産党系諸政党の党則からも憲法原理に反する「共産主義」の規定を削除すべきだが,選管にそんなことができるのか,と皮肉を込め鋭く反撃している。(*5)

また,モハン・シュレスタRPP広報委員も,こう批判している。「選管には政治問題を論評する権利はない。憲法は政党が政策を訴えることを禁じてはいない。憲法は表現の自由を保障している。」もし「ヒンドゥー国家」と「立憲君主制」を訴えることができないのなら,RPPが選挙に出ることは無意味だ。「選管は,地方選挙の無意味化を企んでいるのではないか。」(*4)

RPPのこのような選管批判は,もっともである。「ヒンドゥー国家」や「立憲君主制」が国益にかなうと信じる政党が,それらを党の政策理念として掲げて選挙を戦い,主権者たる国民の審判を仰ぐことは,政治的行為であり,政党に当然許されてしかるべきである。民主主義は国家理念をめぐる自由な政治闘争を認めている。もしネパール憲法がそのような政治的自由をすら許容せず,異論の行政的権力的排除を求めているのであれば,憲法のそのような規定,あるいは憲法規定のそのような解釈は,民主的とはいえないであろう。

*1 “EC removes ‘Hindu state’, ‘monarchy’ from RPP’s statute,” Republica, March 17, 2017
*2 “RPP to move SC against EC’s decision,” Kathmandu Post, Mar 18, 2017
*3 “EC’s decision may affect local poll: DPM Thapa,” Kathmandu Post,Mar 18, 2017
*4 “EC removes Hindu state, monarchy from RPP’s statute,” The Himalayan Times, March 18, 2017
*5 “Election Commission robbed us of our soul, says Kamal Thapa,” The Himalayan Times , March 18, 2017
*6 “RPP to seek “constitutional remedy” to protect charter RPP to seek “constitutional remedy” to protect charter,” The Himalayan Times, March 18, 2017
*7 “Police fire tear gas during RPP protest,” Kathmandu Post, Mar 20, 2017
*8 “DPM Thapa stages sit-in outside EC’s office, Thapa’s participation comes after police used force to clear RPP protesters,” Kathmandu Post, Mar 20, 2017

■RPP・HPより 

谷川昌幸(C)

 

Written by Tanigawa

2017/03/21 at 19:00