ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

Posts Tagged ‘鉄道

中ネ交通インフラ建設,印がますます警戒

中国が,チベットからネパールに向けての交通インフラ建設を加速させている。9月15日には,シガツェ和平空港(軍民共用)からシガツェ市内までの高規格道路が完成した。ラサからシガツェに至るG318号線の一部で幅員25m,イザというときには軍用機の離発着が可能だそうだ。

 ■シガツェ和平空港~シガツェ市(Google)

鉄道は,ラサからシガツェまではすでに完成しており,2020年までにその先の吉隆鎮(Kyrong, Gyirong, Kerung)まで延伸の予定。吉隆鎮からネパール側のラスワガディまでは30㎞ほど,カトマンズまででも120㎞余り。山岳地で難工事が予想されるが,すでに中国企業数社が事業化をネパール側に打診している。

この9月6~11日に公式訪中したKB・マハラ副首相兼外相も,このルートでの鉄道建設につき,中国側とかなり突っ込んだ話し合いをした模様だ。「一帯一路」のネパール経由ルートは,ラサ~シガツェ~ラスワガディ~カトマンズが本命となったとみてよいであろう。

 ▼シガツェから鉄道3線延伸,2030年までに(中国日報*3)
 

この中国南進に神経をとがらせているのが,インド。たとえば,国際政治学者のA・ルフ(*1)は,次のように指摘している。

「パキスタン,バングラデシュ,スリランカ,ネパールはいまや北京の衛星国家である。」
「ネパールは,旧シルクロードを今日に再生し名実ともに超大国になろうとする中国の大きな野望から最大の利益を得ている国の一つであり,これこそが,対印関係悪化を警戒しつつも,ネパールをしてインドをいら立たせても構わないという態度をとらせている理由である。」
「中国と南アジアとの経済関係は,『一帯一路』によりさらに強化され,これが安全保障関係強化にもつながるものとみられている。これを,インドは危惧しているのである。」(*1)

ネパールなどを「衛星国家」と呼ぶのはいささか言いすぎだが,「一帯一路」の旗を翻し,着々と南下する中国をインドが警戒するのは当然といえよう。

 ■吉隆鎮~ラスワがディ(Google)

*1 ABDUL RUFF, “China, Nepal to focus on cross-border Railway,” Modern Diplomacy, SEP 19, 2017
*2 Ramesh Bhushal, “Nepal dreams of railway linking China to India,” 中外対話,22.09.2017
*3 Cui Jia and Hou Liqiang, “Himalayan rail route endorsed,” China Daily, 2016-08-05
*4 Om Astha Rai, “The Tibet Train: China’s railway arrives in Kerung in 4 years, Nepal should get its border infrastructure in place by then,” https://nepalitimes.atavist.com/the-tibet-train
*5 “Feasibility study for railway projects in Nepal under way,” Himalayan Times, June 10, 2016

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2017/09/25 at 14:10

中国の「シルクロード経済圏」,ネパールも参加

ネパール政府は,中国が提唱する「シルクロード経済圏(経済ベルト)」への参加を決め,北京において12月16日,合意書に調印した。これは,ネパールにとって,経済的のみならず政治的にも,大きな意味を持つ決定である(k)。 
141224b ■接近するネ中(k)

中国の習近平主席は,最近,「新シルクロード」構想を中央アジア・南アジア・欧州に向け,さかんにアピールしている。
  (1)海の新シルクロード=中国~南アジア~アフリカ~欧州
  (2)陸の新シルクロード=中国~中央アジア~欧州
この「新シルクロード」に,鉄道,道路,港湾,空港,通信・送電網,パイプライン等のインフラを整備し,「シルクロード経済圏」を形成しようという,いかにも中国らしい壮大な大計画だ。(h,i,j)

141224c ■新シルクロード構想(i)

すでに重慶~デュイスブルク(独)間は「渝新欧鉄道(Yuxinou Railway)」で結ばれ直通列車が月3回ほど運行されているし,この11月には400億ドルの「シルクロード基金」も発足させている。中国はやる気満々,この調子では,いずれすべての道は中国へ通ずということになりそうだ。

141224a ■渝新欧鉄道(AsiaBiz,2013-03-13)

ネパールが中国との間で合意したのは,この「新シルクロード」構想のネパールに関わる部分についてだ。12月16日調印の合意書の詳細は不明だが,旧シルクロードは「ラサ~カトマンズ~パトナ」とされているそうだから,この部分の開発による「経済圏(経済ベルト)」形成が,当面の具体的な目標となるだろう。すでに鉄道も道路もネパール国境近くまで延伸されているので,着手されれば,開発にそれほど時間はかかるまい。
 [参照]青蔵鉄道:シガツェ10月開通,ネパール延伸へ  ラサ-カトマンズ,道路も鉄道も  中国の周辺外交

中国とネパールの経済関係は,この数年,飛躍的に緊密化し拡大している。対ネパール直接投資は,すでに昨年から中国がインドをぬき最大となっている。貿易全体ではまだインドが最大の相手国だが,中国の伸びは目覚ましい。(a,b,e)
  ネパール貿易に占める印の割合:60%(2006)→ 53%(2013)
  ネパール貿易に占める中の割合: 3%(2006)→ 31%82013)
  ネパールの対中輸出(2014年7月中旬~11月中旬):対前年比81.9%増
  ネパールの対印輸出(2014年7月中旬~11月中旬):対前年比4.9%減
これを見ても,中国がネパールを「新シルクロード」に参加させたのも,もっともだといえよう。

しかし,その一方,この「新シルクロード」は,インドを刺激せざるをえない。ブルームバーグ(a)も,こう指摘している。
「インドと中国に挟まれたネパールでは、これまでインドが強い影響力を持っていた。4500万ドル(約53億円)が投じられるカトマンズを囲む環状道路の整備計画は、そうしたインドの存在感に対する挑戦の一つだ。」

鉄道と高規格道路のカトマンズ延伸は,ネパールの地政学的な立ち位置を激変させずにはいないだろう。(g)

[参照資料]
(a)「中国、インド独占のネパール市場への食い込み狙う-投資急増」ブルームバーグ,2014/12/15
(b)「中国、ネパール市場へ攻勢 インド抜き投資額最大、貿易急増」ブルームバーグ=Sankeibiz,2014-12-18
(c)遠藤誉「いま、ドイツと北京を直通列車が走っている 中国とEUつなぐ、習金平の新シルクロード構想」日経ビジネス,2014-4-10
(d)「『渝新欧鉄道』国際聯運の路線が全線開通」重慶市人民政府,2011-04-14
(e)”Export To China Up 81.9 Pc In Four Months,” Republica, 2014-12-18
(f)”Wang to speak in Kathmandu on China’s foreign policy,” Kathmandu Post,2014-12-21
(g)「日本紙:中国はアジア新秩序を構築 日越印連携も阻止できない」チャイナネット,2014-11-23
(h)「習主席の新シルクロード構想、「経済の起爆剤」期待も海に領有権、陸にイスラムの難題」サンケイ,2014-9-17
(i)「中国の「シルクロード構想」、周辺地域への影響力を強める狙い」ロイター,2014-11-11
(j)「中国の外交、「西進」という選択肢」チャイナネット,2014-09-14
(k)”Nepal-China IETC Meeting Reviews Bilateral Trade,” Republica,2014-12-20

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/12/24 at 14:25

中国は軍事援助,インドは鉄道建設

中印が,ネパールに対し,援助合戦を繰り広げている。

1.中国の軍事援助
2月21日,中国人民解放軍の王冠中(Wan Guanzhong)副総参謀長が,コイララ首相,SBJ・ラナ国軍総参謀長を訪問し,中ネ軍事協力の拡大で合意した。すでに援助が決まっていた国軍向け野戦病院2セット(8億2千万ルピー)は,まもなくカトマンズに到着する。今回,中国側は,来年度の軍事援助(国軍支援)として5億ルピーを提示した。
140222a ■王副総参謀長(military.people.com.cn)

2.インドの鉄道建設援助
一方,インドは2月21日,大使館が印ネ鉄道建設協力の進捗を発表した。発表によれば,インド大使館員と,ネパール建設交通省事務局長,Ircon International(印建設会社)代表とが会合を持ち,印ネ鉄道の建設促進について協議した。それによれば,
 (1)ジョグバニ-ビラトナガル
   進捗状況:インド側68%完成,ネパール側20%完成
 (2)ジェイナガル-バルディバス
   進捗状況:軌道敷,駅舎,鉄橋などの建設中。
今後,ネパール側が鉄道用地の取得を進め,これをIrcon Internationalに引き渡すよう努力することになった。

140222b ■Ircon International

140222c140222d
 ■ジョグバニ-ビラトナガル/ジェイナガル-バルディバス(Google)

中印二大国の援助合戦激化で,ネパール政治の舵取りは,これから先,ますます難しくなりそうだ。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/02/22 at 20:15

カテゴリー: インド, 軍事, 中国

Tagged with , ,

鉄道建設計画,韓国主導へ

ネパール各紙報道によれば,ネパールの鉄道建設が,韓国主導事業となりそうな状況だ。7月9日,韓国鉄道省代表団(12人)がネパール国土交通省事務局長らと会談し,韓国が中心となって鉄道建設計画を立案することになったのだ。検討されているのは,つぎの2路線網。

(1)東西鉄道 945.24Km
Kakkarbhitta(Jhapa)–Itahari–Bardibas–Simara–Tamsariya–Lumbini–Butwal–Kohalpur–Attariya–Gaddachouki(Mahendranagar)

タライ平原を東から西へ順次鉄道を建設していく大計画。経済効果大。

(2)首都鉄道
詳細はまだ分からないが,カトマンズ盆地において大量輸送手段としての鉄道は不可欠。

ネパールと韓国は,政府間で早急に「了解覚書」を取り決め,「詳細事業報告」を作成し,この鉄道建設計画を進めていくという。

タライ東西鉄道については,この3月2日,ktm2day.comがインド援助による建設と伝えていたが,今回の各紙報道では,インド援助のことは全くふれられていない。

インド援助を断り,韓国に乗り換えたのだろうか? もしそうであるなら,政治的にも経済的にも興味深い選択である。

130714
 ■Mechi-Mahakali railway project(ktm2day.com, Mar2)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/07/14 at 04:05

カテゴリー: インド, 経済

Tagged with , ,

文化の保守と革新

カトマンズの近現代はすさまじく、もはや古き良き古都の面影はほとんど残っていない。これは統計局向かいにできた巨大商業ビル。およそ文化的ではない。

130104h ■統計局前の巨大ビル(2012-11-18)

こうした近現代の風景を望遠レンズで切り捨てると、たとえば、かろうじてこのような景色を拾い出すことができるにすぎない。

130104a ■旧王宮広場前の屋上喫茶より望むスワヤンブー(2012-11-6)
 

これは京都も同じ。先日、久し振りに烏丸四条~御池付近を歩いたら、近現代的ビルにほとんど建て替えられ、非文化的な無個性な街に様変わりしていた。

言い古されたことだが、日本は世界でもまれな保守思想の薄弱な国。「古いもの」を平気で破壊し、「新しいもの」に置き換えていく。日本は、時とともに流れ流されていく、根無し草の国なのだ。天皇が天壌無窮の「根」だと言う人もいるが、天皇は丸山真男が論証したように「からっぽ」であり、保守思想の「根」とははなりえない。

京都には、日本における保守思想の薄弱を実証するものが他にも無数ある。たとえば、二条駅。旧二条駅は、寺院風の巨大木造駅舎であったのに、高架複線化を錦の御旗に、あっという間に破壊され、平凡無粋な新駅にされてしまった。もし二条駅が保存されていたら、修復された東京駅の少なくとも数倍の価値があり、京都観光の目玉の一つになっていたはずだ。まことにもって、残念。

130104f 130104g
 ■二条駅・新/旧(wiki)

同じく京都北部の北京都タンゴ鉄道(旧国鉄宮津線)。かつては各村に、おそらく村民総出で建てたであろう、趣のある木造駅舎があったのに、民営化と引き替えの手切れ金で、何の変哲もない画一的な近現代的駅舎に建て替えられてしまった。

たとえば、「山椒大夫」の舞台ともなった、風光明媚な丹後由良の駅舎。これでは鴎外先生も草葉の陰で涙されているに違いない。あるいはまた、天橋立・阿蘇海と桜とトンネルの情緒豊かであった岩滝口駅。それが、この惨状、見る影もない。いま北京都タンゴ鉄道は、むなしく空気を運び、駅舎は閑散としている。

130104d 130104e
 ■丹後由良駅(2013-1-4)

130104b 130104c
 ■岩滝口駅(2013-1-4)

もしかりに、10駅ほど、いや2~3駅でも昔のままの駅舎が修復保存され、利用されていたら、全国の「鉄の男」や「鉄の女」がわんさと押しかけ、田舎の村々はにぎわっていたはずだ。九州の、偶然に残った木造駅舎の人気をみても、それはまず間違いあるまい。かえすがえすも残念だ。

この点、たとえば保守本家の英国は、偉い。原則として、古いものを修復して使う。文化は保守であり、保守が強靱であればあるほど、また強烈な革新も生まれる。ビートルズのように。文化の革新のためにも、保守に値する「古いもの」は頑固に保守されなければならないだろう。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/01/05 at 18:35

カテゴリー: 文化, 旅行, 歴史

Tagged with , , , , , ,

カトマンズ鉄道建設も韓国

カトマンズ首都鉄道5路線の建設計画が,発表された。環状道路内4路線,環状道路沿1路線。ラトナ公園が中央駅となり,一部地上,一部地下路線となる。

建設計画の中心は,もちろん日本ではなく,韓国。アジアにおける開発援助の中心は,日本から,韓国や中国に移り始めたようだ。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/03/22 at 09:47

カテゴリー: 経済

Tagged with , ,

パン国連事務総長,4月末訪ネ

パン国連事務総長が4月28日,訪ネし,4月29日現地開催の「ルンビニ開発国際会議」に出席する。

以前,パン事務総長は,新憲法制定を訪ネ条件にしていたから,訪ネ決定は,4~5月頃に新憲法が制定されるということではないかと推測される。もしそうなら,めでたいことだし,それをセットした,プラチャンダ議長は,やはり偉い。

それはそうとして,この国際会議には,16仏教国元首が招待される。さて,日本は仏教国かな? 中国-韓国-国連枢軸により憲法制定がセットされ,お祝いがルンビニで派手に催されるというのであれば,かっこわるくて,日本は出席できないだろう。

偉大なプラチャンダ議長(ルンビニ開発調整委員会委員長)は,パン総長をルンビニ開発委員会委員長に担ぎ出すらしい。もちろん,大ルンビニ(ルンビニ・ルパンデヒ・カピルバスツ・ナワルパラシ)開発構想のためだ。

たぶん,日本は外されるだろうな。カネも青写真も中国と韓国(とタイ)からくる。なんせ,115m大仏,ラサ=カトマンズ=ルンビニ鉄道,新国際空港,そして金ぴか五星ホテルと目白押しだから,落日ニッポンなんか,お呼びじゃない。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/03/10 at 17:50

カテゴリー: 経済, 文化, 旅行, 中国

Tagged with , , , , , ,