ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

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西セティ・ダム,さらに紛糾

西セティ・ダム問題がますます紛糾し,わけが分からなくなってきた。西セティダム建設は,2月29日,エネルギー省が競争入札なしで中国三峡公司と事業覚書(MoU)を締結した。これに対し,非難噴出。
  ・このダムはネパールが自力で建設できる。
  ・財務省もネパール投資銀行(NIB)も事前に知らされていなかった。
  ・エネルギー省カルキ事務局長には協定締結権限がない。
  ・競争入札ではなく,中国企業を特別扱いした。
議会調査委員会は,5月28日まで期間延長し,調査するという(ekantipur, Mar25)。

この記事通りだとすると,ネパール政府は,ほとんど当事者能力を失っている。協定署名者の職務権限が怪しいようでは,もはや外国からは相手にされない。

中国や韓国のように果敢にリスクを取る覚悟があれば別だが,そうでなければ,日本などは手を引くのが賢明だろう。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/03/27 at 14:46

カテゴリー: 経済, 中国

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カトマンズ鉄道建設も韓国

カトマンズ首都鉄道5路線の建設計画が,発表された。環状道路内4路線,環状道路沿1路線。ラトナ公園が中央駅となり,一部地上,一部地下路線となる。

建設計画の中心は,もちろん日本ではなく,韓国。アジアにおける開発援助の中心は,日本から,韓国や中国に移り始めたようだ。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/03/22 at 09:47

カテゴリー: 経済

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中国首相の訪ネと自由チベット弾圧

さすが中国,外交がうまい。たった5時間足らずの立ち寄り訪ネで,1つの中国確認,自由チベット弾圧,経済権益拡大を一挙に実現してしまう。

1.サプライズ訪ネ
温家宝首相の訪ネは,昨年12月20日に予定されていたが,ネパール側要人らが「オレがオレが」と訪ネ実現の手柄を吹聴し,情報じゃじゃ漏れだったため,怒った中国が突然キャンセルし,ネパール側を震え上がらせた。

これに対し,今日の訪ネは完全なサプライズ。午前11時着(1時間遅延で間もなく到着予定),バブラム首相,ヤダブ大統領,そしてもちろんプラチャンダ議長とも会ってやり,午後5時には,本来の訪問先,湾岸諸国に向かって飛び去る。

イラン危機の最中,湾岸諸国訪問がいかに重要かはいうまでもない。そこに行くついでに,ちょっとカトマンズに立ち寄り,ネパールに中国の偉大を見せつけてやるわけだ。

神にせよ仏にせよ,偉大なものは隠されてある。温家宝首相の訪ネも,今回は完全なマル秘。政府高官も,政党やメディアも,何も知らされていなかった。

政府御用紙ライジングネパールによれば,9日の時点でも,NK.シュレスタ副首相兼外相は,議会委員会で中国首相の訪ネ実現に努力する,と答えている。隠していたのではなく,本当に知らなかったのだろう。

2.自由チベット弾圧
一方,偉大な中国首相の来訪を仰ぐネパールは,最大限の貢ぎ物を差し出す。

第一に,自由チベットの弾圧。1月13日,インドからネパールに戻ったチベット人207人(女性81人)が警察に拘束された。詳細は不明だが,いずれにせよ,これが温首相歓迎のための貢ぎ物であることは明らかである。また,自由チベット弾圧と同時に,ネパール政府が「1つの中国」を繰り返し唱え,中国政府に忠誠を誓っていることはいうまでもない。

暫定憲法に民族自治,包摂参加を高らかに書き込んでいることなど,全く意に介さない。憲法も人権もそっちのけ,自由チベットを弾圧し,「1つの中国」の呪文を唱えなければ,偉大な中国首相にはおいでいただけないのだ。

 拘束されたチベット人(Republica2012-1-14)

3.経済権益の提供
またネパールは,温首相の訪ネを歓迎し,中国の要求する経済権益も,大幅に容認するだろう。
  ・ポカラ空港を国際空港に拡張・・・・1.5億ドル(事業総額,以下同様)
  ・リング道路改良・・・・5千5百万ドル
  ・大規模ダム・水力発電所(3カ所)・・・・37億ドル
  ・パンチカール経済特区設置
  ・ルンビニ開発

どこまで信用できるか分からないが,事業総額80億ドル以上ともいわれている。目もくらむ大金だ。いまや,インフラ整備も教育文化支援も,中国にシフトしつつある。巧みな外交と,有り余る資金の中国。

ネパールは,国際会議においてイザとなれば必ず中国(またはインド)に1票を入れる。決して日本には入れない。これまでもそうだったし,これからはこれまで以上に日本は軽視され無視される。ネパールの友人は中国(またはインド)であって日本ではない。もはや,日本に出番はない。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/01/14 at 16:05

カテゴリー: 経済, 外交, 中国

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アメリカ平和部隊,再開

アメリカの平和部隊は2004年9月,アメリカンセンターやゴルカ聖ヨセフ校などが爆破されたため,ネパールから撤退していたが,情勢好転を受け,11年ぶりに再開されることになった。
 ▼米ボランティア撤退開始

米平和部隊はケネディ大統領が創設,今年50周年である。これまでに20万人以上を派遣し,現在は約9千人が活動中。2011年度予算は,3億7千4百万ドル。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2011/12/20 at 21:05

カテゴリー: 団体

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ルンビニ開発も新国際空港も韓国

昨日(8日),プラチャンダ議長はパン・ギムン国連事務総長と会見し,ルンビニ開発への協力を依頼することになっていたが,さてどうなったのだろう? その成否は別として,ルンビニ開発の根回しは,早くから想像以上に着実に行われていたらしい。

1.バン事務総長,親友をルンビニ開発特使に
ネパール政府系ライジングネパール紙によると,次のような流れになる。

5月28日: イスタンブールで,カナル首相がバン事務総長と会談。事務総長は,ルンビニ開発協力を再確認。

数ヶ月後: バン事務総長,親友の韓国建築家Kwak教授をルンビニ開発特使としてネパールに派遣。訪ネしたKwak教授は,カナル首相,プラチャンダ議長,ルンビニ開発担当政府高官らと会談。プラチャンダとは個別に2回会談。

11月2日頃: ネパール政府が,Kwak教授に,ルンビニ広域開発マスタープランの作成を依頼する書簡を送付。

この流れから,早くから根回しがあったことはわかるが,どことなく国連の私物化のような気がしないでもない。

2.第2国際空港,韓国企業提案
このルンビニ開発とおそらく連動して,Landmark Worldwide(LMW)という韓国企業が,バラ郡に第2国際空港を建設するプランをネパール政府に提出した。政府は,LMWに優先権を与えるという。

建設予定地は,チトワンに近く,ルンビニへも遠くはない。もしここに国際空港ができれば,数が限定されるヒマラヤ観光とは桁違いに多い観光客が期待できる。また,広大なタライの産業開発への玄関口ともなる。やはり,韓国は目の付け所がよい。カネにもならないヒマラヤにロマンをかけつづける日本が負けるのは,当然だ。

3.インドの逆襲?
中韓のこの猛攻に対し,インドとネパール親印派は警戒心を募らせ,インドからのルンビニ投資を唱え始めた。

また,中韓が仏教聖地ルンビニを開発するなら,印ネはヒンドゥー教聖地パシュパティにも開発費を出せと要求し始めた。これも,もっともな主張だ。

4.仏教vsヒンドゥー教
仏教を担ぐ中韓派に対し,シバ神を担ぐ印派。そんな対立関係に発展しかねない。国連は,仏様に加担して,大丈夫なのかな?

* Rising Nepal, Nov.8; ekanitpur, Nov8; Republica, Nov.9.

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2011/11/09 at 13:41

カテゴリー: インド, 経済, 中国

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プラチャンダのルンビニ開発とバブラムのBIPPA,または中印覇権競争

1.ネパールと中印の相関図
ネパール政治は,重要なことであればあるほど,情報不足で確かなことはいいにくいが,現在の大状況を大胆に図式化すると,こうなる。

2.プラチャンダ議長と中国のルンビニ開発
プラチャンダ議長は,前述のように,「ルンビニ開発国家指導委員会」の委員長に選出される一方,中国系NGO「アジア太平洋交流協力基金(APECF)」の共同議長となっている。ネパール政府が公式にAPECFのルンビニ開発計画を承認したのかどうか,そこは例のごとく,よく分からないが,政府がプラチャンダ議長を政府の「ルンビニ開発委員会」委員長に任命し,内外援助獲得の権限を与えたのだから,APECFルンビニ開発にも暗黙のゴーサインを出したとみてよいだろう。(力関係で逆転され,取り消されることもあるが。)

これは,われらが王様の「人民評論」によれば,「中国外交の大勝利」であり,これにより「中国はタライに足場をえた」ことになる。

ルンビニは仏教の聖地。インドは,自国では仏教をほぼ絶滅させておきながら,お釈迦様の生誕地はもともとインド領だと主張し,取り戻そうとあれこれ画策してきた。

その「領土紛争の地」ルンビニは,観光地としても産業立地としても有望な,きわめて豊かな土地である。そのルンビニに,中国がAPECFを介して本格的に入ってくる。しかも,インドの獅子心中の虫,印マオイストの友党の親分プラチャンダ議長の手引きで。

もちろんプラチャンダ議長自身は百戦錬磨の強者であり,そう簡単に中国の傀儡になったりはしない。数日前から,プラチャンダは,泣く子も黙る印情報局RAWのエージェントだというリーク情報がさかんに流されている。プラチャンダ議長が中国をバックにルンビニ開発を進めようとしているのは確からしいが,もしそうだとしたら,この時期になぜRAWエージェント情報が流されるのか? 複雑怪奇,平和ぼけ日本にいては,皆目見当もつかない。

しかし,そうした複雑怪奇な事柄はとりあえず括弧に入れ,表面的な流れだけから見ると,プラチャンダ議長が,中国をバックに,政治的・経済的にインドと対抗しようとしていることは,明らかである。われらが王様――王様は親中国であった――の「人民評論」がいっているのだから,間違いない。

2.バブラム首相とインドのBIPPA
そのプラチャンダ議長に対抗するのが,バブラム首相=インド連合だ。バブラム首相は訪印し,10月21日,インドとの間で「二国間投資促進保護協定(BIPPA)」をはじめとする経済協力協定をいくつか締結した。こちらは,インドのための出血大サービス。

インド大使館の公式説明によると,インド資本はネパール資本と同等の扱いを受け,もし紛争や国有化などで損害が生じたらネパール政府がそれを補償する。

インドが狙っているのは,経済的にはネパールにおけるインド資本の自由と安全,特にダム(水利・発電),道路,鉄道などの建設や,知的財産権の保護であり,政治的にはマオイスト抑圧や中国のタライ進出阻止だ。

これをマオイスト首相が呑んだ。マオイスト首相が,党綱領の大黒柱の1つ,国内産業保護を否定し,マオイスト人民解放闘争の抑圧を受け容れ,しかもあろうことか,マオイスト運動によりインド資本に損害が発生したら,ネパール政府が損害賠償をするという。

3.バイダ派の反撃
バブラム首相のこのBIPPA締結は,当然ながら,マオイスト内急進派の激しい怒りを買った。そりゃそうだ。国内産業保護をやめ,印大国主義資本のネパール侵出を認め,さらにマオイスト急進派の弾圧も約束してきた,と受け取られたからである。

バイダ副議長ら急進派は,BIPPAは「反国家的」で党綱領違反だ,こんな売国的協定は直ちに破棄せよ,さもなければ街頭反対運動に立ち上がる,と激しく政府を攻撃し始めた。

4.プラチャンダのステーツマンシップ
ここに登場するのが,プラチャンダ議長。彼自身,ルンビニ開発の当事者でありながら,バブラム首相とバイダ副議長一派との間に入り,BIPPAについては,要検討としながらも,バブラム首相の解任には反対している。

絶妙の立ち位置だ。RAWエージェントとのリーク情報も,ワサビのように利いている。

5.NC,UMLの日和見
情けないのが,中間派のNCとUML。NCのRS・マハト議員は,BIPPAを評価し,マオイストにインドの水力発電事業攻撃をやめよと要求しつつも,いまいそいでBIPPAを締結する必要はなかったなどと,よく分からないような批判をしている。

UMLも似たり寄ったり。落ち目で日和り,日和ってまた落ちる。

6.欲望渦巻く釈尊の地ルンビニ
釈尊は,悟りを開き,金・色から解脱し,仏陀となった。その仏陀の生誕地が,いまや印中二大国の経済的・政治的覇権争いの最前線となりつつある。バチ当たりなことだ。

プラチャンダは偉大であり,印中対立をさえ巧みに利用して動いているように見えるが,何せRAW,CIA,ISIや,各派テロリストらがうごめくネパールのこと,これから先どうなるか,全く分からない。

タライは豊饒の地。ここが,最下等の人間活動たる金儲け(経済競争)の地となり果てたら,いかなお釈迦様であってもお手上げ,ネパールは混沌に陥り,収拾がつかなくなるだろう。そして,マオイストは割れ,第二次人民戦争が始まるにちがいない。

* ekantipur, Oct26; Nepali Times, Oct25; Himalayan Times, Oct24&25; People’s Review, Oct21; PTI, Oct22; Times of India, Oct22; Embassey of India Quait, HP, Oct21.

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2011/10/26 at 19:29

カテゴリー: インド, マオイスト, 経済, 外交, 中国

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中国系NGOのルンビニ開発計画

中国が、政治,経済,文化など、あらゆる分野でネパール攻勢を強めている。

1.中国政府系チベット書店
以前,タメルに出来た中国政府系とおぼしき中国書店について書いたことがある。
 ▼中国書店 2010.09.03

妙だと思ったのは私だけではないらしく,ネットにこんな記事が出ていた。
 ▼Warring Tibetan Bookstores: A Glimpse of Nepal Between Great Powers

記事によると,この中国系チベット書店は,「自由チベット運動系チベット書店に対抗するため」,つまりダライ・ラマ=チベット自由運動「支持派を切り崩すため」,宣伝としてつくられた。

この記事の著者は,3回書店に行ってみたが,店はお役所的で,「店内には1人も旅行者はいなかった」。中国筋は本や宗教のことなどどうでもよく,本当の目的は,改革開放後中国の宣伝だというのである。

この記事は,1年前の私の記事と実によく似ている。書店があまりにもユニークなので,誰でも同じような印象を持つことになるのだろう。

2.ルンビニ開発計画
もう一つ,中国援助のルンビニ大開発計画も注目される。
 ▼In the land of the Buddha
 ▼Lumbini as geopolitical ping pong

ルンビニ開発には,丹下健三氏が関わったユネスコ計画がある。1980年完成予定だったそうだが,例のごとく完成はしていないらしい。そこに,香港のAsia Pacific Exchange Cooperation Foundation(APECF)が登場,巨額の投資話が持ち上がった。

そしてまた,ここでもやはり政治家が絡む。それも何と,われらが英雄プラチャンダ議長とそのご令息プラカシ氏だというから,あまりにも出来すぎだ。面白すぎて,今後どうなるか,ハラハラ・ドキドキ。

しかし,穏やかならぬのが,お隣のインド。ルンビニは国境のすぐそば,石を投げれば届きそうな距離だ。そこに中国が,しかもマオイストの親玉父子と組んで,大開発計画を始める。ネ印国境が,中国=マオイスト連合軍で真っ赤に染まってしまう。

中国は,これまでにもタライ方面に孔子学院などを設立し,文化攻勢をかけてきた。その目玉が,このAPECFルンビニ大開発計画になるのではないか?

心配なのは,こうした中国の政治,経済,文化にわたる大攻勢に,インド(とアメリカ)がどう対抗するかだ。ネパール政治は,つねに中印関係と連動している。首相選挙との関連にも要注意だ。
 ▼中国のネパール進出とアメリカ国益
 ▼中国のネパール介入拡大

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2011/08/19 at 20:07