ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

Posts Tagged ‘CIAA

SSBを告発,CIAA(2)

2.CIAAによる告発
CIAAの9月25日発表によれば,SSBとその傘下のASDの不正・不法行為は,以下の通り。

[不正の概要](CIAA発表)
 ・SSBには,2002年設立以降,4億7千910万ルピーの収入があった。
 ・SSBとASDは,この5年間で,2億9千万ルピーを支出。
 ・この支出の多くは,SSB・ASD関係者への報酬,旅費,ホテル使用料,ピクニック経費,飲食代などに当てられた。
 ・「社会福祉委員会」は,SSBのこうした事業活動を適切に監査していない。
 ・ASDは無登録で,不法にNGO事業を実施。

CIAAは,これらの不正・不法行為につき,ラリトプル郡役所,社会福祉委員会等の関係当局に文書をもって通告し,調査を要請した。

以上が,メディアの伝えるCIAA発表の概要だが,それは,要するに,多額の支援金や寄付金を集めながら,それを本来の目的に使わず,お手盛り報酬や飲み食い,遊興に浪費してきた,という告発である。

ネパールにおいて,こうした告発は世間の受けが良い。途上国のネパールには,外国援助が大量に流れ込み,さまざまな事業が実施されているが,一般にアカウンタビリティや経済合理性に甘く,不正や腐敗がはびこってきた。ネパール庶民は,利権化した様々な援助事業を,日々,目の当たりにしているので,CIAAのような監査機関が大胆にそこに切り込めば,拍手喝采,頑張れ,ということになりがちなのである。

では,今回のCIAAによるSSB告発は,どうか? SSBやASDは,自己目的化した利権組織なのであろうか?

161008a■MCレグミ・レクチャー案内

1 “CIAA seeks action against Social Science Baha, Alliance for Social Dialogue,” The Himalayan Times, September 25, 2016
*2 “Social Science Baha claims CIAA misinterpreted facts,” Republica, October 1, 2016

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/10/08 at 16:42

カテゴリー: 団体, 教育, 文化

Tagged with ,

SSBを告発,CIAA(1)

CIAA(職権乱用調査委員会)が,今度は「社会科学バハ(Social Science Baha: SSB)」と,その傘下組織とされる「社会対話アライアンス(Alliance for Social Dialogue: ASD)」の調査・告発に着手した。

161007a■SSB(同FBより)

1.社会科学バハ(SSB)
SSB(社会科学バハ)は,バハHPによると,2002年1月1日,社会科学図書館の開設を主目的として,ヒマール・アソシエーションの支援の下に設置された。その後,事業を以下の分野にも拡大した。
 ・SSB図書館:蔵書約2万冊,オンラインデータベース提供
 ・現代社会問題集中研究コース(大学院レベル)開設:2009年で終了
 ・講義,討論会,ワークショップ等の開催:「MCレグミ・レクチャー」,「バハ・レクチャー」など
 ・社会科学関係書籍の刊行
 ・調査研究の実施

SSBは2007年1月15日,独立の組織(NGO)として政府(ラリトプル郡役所)に登録し,「社会福祉委員会(Social Welfare Council)がそれを認可した。以後,毎年,登録は更新されている。

[SSB役員](SSB HP)
General Members: Ajaya Dixit, Dr Bandita Sijapati, Basanta Thapa, Deepak Thapa, Dipak Gyawali, Dyuti Baral, Dr George Varughese, Hari Sharma, Kanak Mani Dixit, Mohan Mainali, Prof Nirmal Man Tuladhar, Prakriti KC, Dr Pratyoush Onta, Dr Rajendra Pradhan, Dr Sudhindra Sharma,
Executive Committee: Prof Nirmal Man Tuladhar(Chair), Basanta Thapa(Vice-Chair), Dr Sudhindra Sharma(General Secretary), Mohan Mainali(Treasurer), Dipak Gyawali (Member), Kanak Mani Dixit(Member)

以上が,SSBの概要。CIAAは,このSSBに多数の不正があるとして告発したことを,9月25日発表した。この告発発表は,内外に波紋を広げ,特に学術研究やNGO活動の分野で危惧の念が高まっている。

161007■最近警告が付けられたSSBのHP

*1 “CIAA seeks action against Social Science Baha, Alliance for Social Dialogue,” The Himalayan Times, September 25, 2016
*2 “Social Science Baha accuses CIAA of breaching jurisdiction,” The Himalayan Times, September 30, 2016
*3 “Social Science Baha refutes CIAA charges,” Kathmandu Post, Sep 30, 2016
*4 “Social Science Baha claims CIAA misinterpreted facts,” Republica, October 1, 2016

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/10/07 at 18:27

カテゴリー: 政治, 教育, 文化, 民主主義

Tagged with , , , , ,

アジア調査報道会議,クンダ・デグジト不在の皮肉

「第2回アジア調査報道会議」が9月23-25日,カトマンズで開催された。The Centre for Investigative Journalism, Nepal(CIJ-N), The Global Investigative Journalism Network(GIJN), The Konrad-Adenauer-Stiftung(KAS)の共催で,世界50か国から著名なジャーナリストやメディア研究者ら約350人が参加した。

160930a

中心となっている「世界調査報道ネットワーク(GIJN)」は,世界各国のジャーナリスト約300人により,2003年コペンハーゲンで設立された国際NGO。会長は,著書「Yakuza」でも知られているDavid Kaplan。また,コンラート・アデナウアー財団は,ドイツのキリスト教民主同盟系の政治財団で,法治主義、民主主義、社会的市場経済のための活動を世界各地で展開している。

これら2団体との共催で「第2回アジア調査報道会議」の開催を引き受けたのが,「調査報道センター・ネパール(CIJ-N)」。このCIJ-Nは,クンダ・デグジトを中心とするヒマール・アソシエーション関係ジャーナリストにより1996年,設立された。以来,ネパールにおけるジャーナリスト研修機関として調査報道の発展に寄与してきた。今回,GIJNが第2回アジア会議をネパールで開催することにしたのも,おそらくCIJ-Nのそうした活動を評価し,さらにそれを支援しようと考えたからだと思われる。

160930c

ところが,その「第2回アジア調査報道会議」に,肝心かなめのホスト役,クンダ・デグジトが出席しなかった。いや,出席できなかったのだ。

カプランGIJN会長:「クンダはわれわれの最善の同志の一人であり,われわれがここに来たのも彼がいたからだ。」「クンダは,この会議の数週間前に,ネパールから逃れた。もしここに戻れば,彼は魔女狩りにより拘束され投獄される恐れがあるのだ。」(*2)

クンダがどこに避難したかは不明。おそらく国外のどこかに脱出したのだろう。そこから,彼は「第2回アジア調査報道会議」にあてビデオ・メッセージを寄せている。

クンダ・デグジト:「わが官憲は手法を改めた。彼らは,ジャーナリストの投獄のような荒っぽい方法はもはや採らない。今日の検閲は,裏からの脅しにより行われる。これは,より狡猾で邪悪とさえ言ってよいであろう。」(*2)

ここでクンダは,投獄のような荒っぽい方法は採らないだろうと語っているが,しかしCIAAによる弟カナク・デグジト逮捕投獄のこともあり,やはりそれを警戒し避難したとみるべきであろう。

カナク・デグジト:「(カルキCIAA委員長は)国家の二重権力の一つを握っている」。「(CIAAは)悪意の権力センター」である。「私のネパールにおける積極的な活動,たとえば腐敗防止委員会委員長へのカルキ任命に反対したこと・・・・などが,雑誌(Himal Southasian)休刊をもたらした主な原因である。」「ネパールの有力な新聞の多くが,カルキについて批判的な報道をすることを恐れていたし,いまも恐れている。」(*1)

160930b■クンダのビデオメッセージ上映

*1 “The target was Kanak Mani Dixit but the axe fell on ‘Himal Southasian’ in Nepal,” Scroll, September 25 2016
*2 “Kunda Dixit’s exile shows concern over Nepal’s press freedom,” The Himalayan Times=AP, September 25, 2016
*3 “Prominent Journalist Kunda Dixit who Founded “Nepal Center for Investigative Journalism” now in Self-exile to Avoid Arrest,” 26 September 2016 (http://dbsjeyaraj.com/dbsj/archives/48669)
*4 “Journalist’s exile shows concern over Nepal’s press freedom,” (http://www.newdelhitimes.com/journalists-exile-shows-concern-over-nepals-press-freedom123/)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/09/30 at 19:05

ゴビンダ・KC医師,ハンスト再開

トリブバン大学教育病院(TUTH)のゴビンダ・KC医師が9月26日,前回ハンスト時の諸要求の確実な実現を図るため,第9回目のハンストに入った。彼は,こう主張している。

(1)医科教育の改革:「医科教育法案の上程は歓迎すべき第一歩だ。しかし,上程だけでは不十分。法案は今会期において可決成立させられなければならない。さらに,それよりも大切なのは,われわれの諸提案がこの法案に組み込まれたうえで,可決されるべきことだ。」(*2)

(2)カルキCIAA委員長の弾劾:「CIAAは長きにわたり,医科教育に介入してきた。政府は少なくとも[カルキ委員長の]弾劾手続きを始めるべきである。」(*1) 「カルキ委員長に不利な証拠が次々と表面化しているのに,主権をもつわが議会は彼の様々な不当行為について審議しようともしない。これをみても,カルキの下のもう一つの政府が,いかに強力か明白であろう。」(*2)

160927Solidarity for Prof. Govinda KC(FB)

*1 “Dr KC on ninth hunger strike,” Kathmandu Post, Sep 27, 2016
*2 “KC’s ninth hunger strike,” Nepali Times, Sep 26th, 2016
*3 “Govinda KC begins 9th fast-unto-death,” The Himalayan Times, Sep 26, 2016

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/09/27 at 18:55

カテゴリー: 教育, 民主主義

Tagged with , ,

ゴビンダ・KC医師のハンスト闘争(5)

4.CIAA報道官インタビュー,BBCネパリ記者
ゴビンダ・KC医師ハンストに対するCIAA(職権乱用調査委員会)の対応については,「BBCネパリ」によるCIAA報道官インタビュー記事が大変参考になる。
 *“Dr KC is mentally ill: CIAA,” Nepali Times, June 27th, 2016

このインタビューは,6月26日のCIAA声明発表後,BBCネパリ記者(氏名不明)が,クリシュナ・ハリ・プシュカルCIAA報道官を相手に行ったもの。かなり長い一問一答インタビューだ。(同報道官は現在,在印ネ大使館勤務。)

このインタビューについては,CIAA声明発表後,他の記者もいる場で行われたのか,それとも単独インタビューであったのかは不明。また,掲載以前にCIAA報道官が原稿チェックをしたのか否かも不明。

このように,このインタビュー記事は取材・掲載の経緯に不明な点があるが,そこに留意さえしておけば,記事自体は具体的にして詳細であり興味深い。また,不倶戴天の敵ともいえる「ネパリタイムズ」が,なぜこれを掲載したのかという点でも,この記事は注目される。(以下,意訳)

CIAA報道官インタビュー
BBC(BBCネパリ記者):一個人にすぎないゴビンダ・KC医師に対して,憲法設置機関たるCIAAが,なぜ,そんなに怒っているのか?
CIAA(クリシュナ・ハリ・プシカル報道官):理由は2つ。1つは,KCは精神病だということ。
BBC:あなたは,精神病と診断しうる機関の報道官なのですか?
CIAA:KC医師は,マフィアや犯罪組織に示唆され,ハンストを行い,国家や政府を混乱させてきたのだ。
BBC:それなら,なぜそれに対する適切な措置をとらないのか?
CIAA:CIAAは,KC医師の治療を勧告した。憲法設置機関たるCIAAに対し,あのような糾弾ができるのは,精神病患者だけだ。
BBC:それが,憲法設置機関たるCIAAの採るべき適切な措置なのだろうか?
CIAA:KC医師は整形外科医だが,この4年間に何例の手術をしたのか? TUTH(トリブバン大学教育研究病院)がいかに不潔か! 彼は為すべきこともせず,不当なハンストをするだけ。公務員でありながら,政府の妨害をするだけ。彼は精神病だ。
BBC:憲法設置機関が,ある個人について,そのような無責任な発言をしてもよいのか?
CIAA:精神病の者が,国中に恐怖をまき散らし,他の人々を根拠なく糾弾し,問題を引き起こすのは,許されないことだ。KC医師は,CIAAが捜査している人々に唆され,新聞にナンセンスなことを書いているのだ。
BBC:声明で挙げられている組織的犯罪者とか汚職行為者とは,いったい誰なのか?
CIAA:何人かは特別法廷で有罪が確定した。それ以外は,CIAAが捜査中。KC医師は,彼らの代弁をしているのだ。
BBC:捜査中の人々に,組織的犯罪者とか汚職行為者といったレッテルを張ってよいのか?
CIAA:有罪判決を受けたものは犯罪者であり汚職行為者。KC医師の発言は,CIAA捜査対象者の発言とそっくりだ。彼はハンストを繰り返し,TUTHを荒廃させた。患者は治療を受けられず死んでいっている。
BBC:CIAAは,声明で,KC医師の行動に注目している,と述べた。これは脅しか?
CIAA:KC医師については,これまでも注視してきた。彼は,TUTHだけでなく医療分野全体について,混乱と無秩序をもたらした。
BBC:KC医師とカルキCIAA委員長とでは,より清潔だと一般に見られているのは,いずれか?
CIAA:カルキ委員長の決定や行為は,法に則っている。KC医師は村々を訪れ,薬を配ったりしたので清潔だと思われているが,そのようなことは補助ヘルスワーカーの仕事だ。自分の病院の惨状を放置して,改革を説く。彼には,憲法設置機関とその名誉ある委員長を非難中傷し,政府を難詰する権利はない。
(“Dr KC is mentally ill: CIAA,” Nepali Times, June 27th, 2016)

[参照]上記インタビュー記事へのコメント(Sarojna on July 26th, 2016 at 4:14 am Says:)
It is sad that we have journalist representing BBC in such a unprofessional way. I have been listening to BBC since I was a child and BBC is a brand but I did not expect such interview skills from a journalist of BBC. I think you should brush up your skill and also very important that you are a media personal who is providing us with news and not verdict. The whole interview was so flawed, so farce, so one sided in fact you came with predetermined mind set that Dr. KC is right and CIAA chief is wrong which was so clearly reflected in the way you conducted your interview. When you go for an interview it is very important that you keep your personal agenda aside, that will give you a clear picture and mind it you will grow with such skills rather than making it so obvious that you like this side or that and for us we will also get some interesting reading news. In fact just give us fact and we will judge who is what. As for BBC, I hope such poor work will not be repeated otherwise BBC will loose its credibility.
(http://www.nepalitimes.com/blogs/thebrief/2016/06/27/dr-kc-is-mentally-ill-ciaa/)

160906■KH・プシュカル氏FBより

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/09/06 at 08:50

カテゴリー: 社会, 行政, 教育

Tagged with , , ,

ゴビンダ・KC医師のハンスト闘争(4)

3.CIAAの反論
ゴビンダ・KC医師の諸要求のうち,今回特に注目されているのが,CIAA(職権乱用調査委員会)カルキ委員長の弾劾要求である。CIAAは,このところ非公然たる第二権力(第二政府)のような存在になっており,ヒマール・メディア関係先捜査など,あちこちで強権的とも見えるような権力行使を行っている。ゴビンダ医師は,そのCIAAと真っ向から対決し,カルキ委員長らの弾劾を議会ないし政府に対し要求しているのである。

これに対し,CIAAは6月26日,声明を出し,ゴビンダ医師の要求を全面否定した(*1,2)。ゴビンダ医師は,「医療マフィア,犯罪・腐敗組織」と親密だ。「KC医師は,腐敗の罠にはまっている。本委員会は,彼には,そのような悪人仲間を離れ,ひもつき闘争を止めるよう忠告したい。」

「KC医師による本委員会メンバー糾弾は,彼のこれらの疑わしい活動と関連づけて見られるべきだ,と本委員会は考えている。」

カトマンズ大学医学部入試については,「CIAAが,関係者らから多くの苦情申し立てを受けたので,医科委員会(Medical Council)に指示し,入試調査を行わせた」のが事実だ。

「皆さんには,このような空想的で何の根拠もない糾弾の幻想に欺かれないよう,本委員会はお願いしたい。」

声明は,このように述べ,さらにゴビンダ医師は「偏狭で頭が混乱しており不健康な精神状態」にあると述べ,精神科治療の必要性さえ示唆した。これは憲法設置機関の声明とは信じがたいほど,感情的な,どぎつい内容である。

141215b160905■CIAA本部棟/カルキ委員長

*1 “CIAA condemns Dr KC’s demand seeking impeachment motion against Karki; Suggests mental health treatment to Dr KC,” Kathmandu Post, Jun 26, 2016
*2 “CIAA hits back at Dr KC, asks govt for his “treatment”,” The Himalayan Times, June 26, 2016

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/09/05 at 07:50

カテゴリー: 社会, 教育

Tagged with , , ,

ゴビンダ・KC医師のハンスト闘争(3)

2.ゴビンダ医師の改革要求
ゴビンダ・KC医師は2016年7月10日,トリブバン大学教育研究病院(TUTH)前で,決死の無期限ハンストに入った。政府に対する要求は,広範多岐にわたるが,ここではカサン・ディキ・シェルパ(在米?)による支援署名キャンペーン(*1)や各紙報道をまとめ,紹介する。なお,以下はあくまでもゴビンダ医師側(同医師と支援者)の言い分である。

[ゴビンダ医師側の要求]
(1)医科教育関係法の制定・施行
・医学教育・医療施設の地方充実。各州に1校以上,医科大学設置。ただしカトマンズ盆地には当面,新設は認めない。
・医学部授業料の上限設定。
・医大入試の公平化・厳正化。
・医大幹部の年功に基づく公平な人事。
・医科教育・医療分野への政治介入の禁止。運営の透明化,民主化。
・医大病院に一定数の無料ベッド設定。
(2)医科教育に関する「マテマ委員会報告」の尊重
トリブバン大学KB・マテマ学長を長とする「マテマ委員会」は2014年11月17日,ゴビンダ医師の要求により設置されたもので,「報告」(2015年6月29日)では,ここに挙げた諸改革の多くが提言されている。
(3)カトマンズにおける「組合立(cooperative)医科大学」設立の禁止
(4)マンモハン・アディカリ記念病院の国家管理
政党利権(特にUML)の多いマンモハン・アディカリ記念病院は,「国家医学アカデミー(ビル病院)」の管轄下に置く。
(5)カルキCIAA委員長の弾劾
職権乱用調査委員会(CIAA)のカルキ委員長は,医療分野でコネ利権をむさぼり,学費規制に反対し,また管轄外の医学部入試(カトマンズ大学医学部など)にも介入した。彼の弾劾は,ネパールの医科教育・医療改革にとって不可避。

160904■マンモハン記念保健科学インスティテュート

*1 Kasang Dikki Sherpa, “Fulfill Dr. Govinda KC’s Demands for Accountability and Reform in Medical Education, Nepal,” change org[9月4日現在継続中]
*2 Yubaraj Ghimire, “Nepal’s fasting doctor has a new demand,” Indian Express, July 9, 2016
*3 “Dr KC sits for 8th round of indefinite hunger-strike,” Kathmandu Post, Jul 10, 2016
*4 “Dr Govinda KC begins fast-unto-death for 8th time,” The Himalayan Times, July 10, 2016
*5 “Four-point agreement forged, Dr KC to end hunger strike,” The Himalayan Times,
July 24, 2016

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/09/04 at 11:19

カテゴリー: 社会, 教育

Tagged with , , ,

ゴビンダ・KC医師のハンスト闘争(1)

コビンダ・KC医師が7月10日,医学教育・医療制度の抜本的改革をもとめ決死の無期限ハンストを開始した。8回目のハンストであり,支援も拡大したため,UML=マオイスト連立政権(オリ首相)はゴビンダ医師に歩み寄り,「4項目合意」を締結,ゴビンダ医師は7月24日,ハンストを終えた(*2,3,4)。(「4項目合意」の内容については後述。)

しかし,この「4項目合意」は広範な約束を含み,その中にはカルキCIAA委員長弾劾も含まれている。政府にとって,履行は極めて困難だ。

さらに,ゴビンダ医師ハンストの終了後間もない8月11日,今度は,ガンガ・マヤ・アディカリが戦時犯罪裁判を求め,決死の無期限ハンストを始めた(継続中*1)。人民戦争期の戦時犯罪には,官民,与野党を問わず,有力者が多数かかわっており,それらの調査,裁判,処罰は,これまた極めて困難だ。

この間,政権は,UML=マオイスト連立(オリ首相)からNC=マオイスト連立(プラチャンダ首相)に交代した(8月3日)。しかし,交代後の現政権のプラチャンダ首相は8月26日,ゴビンダ・KC医師らと会い,前政権と彼らとの約束は守ると明言した(*5,6)。

しかしながら,その約束の中には,前述のように,カルキCIAA委員長弾劾を始め難しい課題が多い。そこで,ゴビンダ医師も,こう念押ししている。

「もしこれらの要求が実現されなければ,次のハンストを始めるに何ら躊躇しない,と彼(プラチャンダ首相)には告げておいた。」(*6)

プラチャンダ首相にとって,ゴビンダ医師ハンストは,潜在的には継続しており,いつでも再開されうる強力な闘争なのである。

このように,プラチャンダ首相はいま,ゴビンダ医師とガンガ・マヤ・アディカリによる,いずれ劣らず対処の難しいハンスト闘争に直面している。後者についてはすでに概説したので,以下,ゴビンダ医師ハンストについて見ていくことにする。

160831b■ハンスト連帯FB(8月30日)

【参照】
*1 戦時犯罪裁判要求,プラチャンダ首相の覚悟は?(1
*2 “Four-point agreement forged, Dr KC to end hunger strike,” The Himalayan Times,
July 24, 2016
*3 “Dr Govinda KC breaks hunger strike,” Republica, July 25, 2016
*4 Manish Gautam, “Dr KC to call off fast after govt agrees to meet some demands,” Kathmandu Post, Jul 25, 2016
*5 “Will address your demands as far as possible, PM assures Dr Govinda KC,” The Himalayan Times, August 26, 2016
*6 “PM to ‘take initiatives’ to address Dr KC’s demands,” Kathmandu Post, Aug 27, 2016

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/09/01 at 13:27

日本の報道危機,ネパールでも危惧

最近の日本における「報道の自由」の危機が,ネパールでも危惧されている。

1.クンダ・デクシト氏の日本記事リツイート
たとえば,ネパリタイムズ編集長クンダ・デクシト氏によるロスアンゼルスタイムズ記事「日本の報道の自由はどうしてタンザニア以下になったのか」(4月20日)のリツイート。

クンダ・デクシト氏は,CIAAにより逮捕・勾留されているカナク・マニ・デクシト氏の兄。もしこの逮捕・勾留が,カナク氏側の言うように,彼のカルキCIAA委員長批判に対する仕返し,ないしそれを黙らせることが目的なら,それはヒマール・メディアにとどまらず,ネパール全体の「言論・報道・出版の自由」にとっても,大きな脅威となるであろう。クンダ氏は,それが念頭にあって,日本の報道危機に警鐘を鳴らすロスアンゼルスタイムズ記事をリツイートしたものと思われる。
 *Jake Adelstein, “How Japan came to rank worse than Tanzania on press freedom,” Los Angels Times, 20 Apr. 2016.

 160429c

2.「日本の報道の自由はどうしてタンザニア以下になったのか」(要旨)
日本の「報道の自由度」(国境なき記者団発表)は,2010年は11位だったのに,2016年は180か国中の72位に急落した。

テンプル大学ジェフ・キングストン教授によれば,転機は2011年の福島原発事故報道。日本政府は事故をできるだけ小さく見せようとし,東京電力はメルトダウンを2か月も隠し続けた。日本のメディアは,政府や東電に逆らい干されるのを恐れ,彼ら権力側の意に沿う報道をしてしまった。

この福島原発事故報道以降,日本メディアは,歴史認識,憲法改正そして安全保障に関する報道をめぐり,激しく攻撃されるようになった。

安倍内閣が発足すると,首相は2013年に特定秘密保護法を制定し,2014年にはお友だちの籾井をNHK会長にした。籾井は,NHKは「政府の立場を外れるような報道をしてはならない」と公言した。

2015年6月には,与党議員が政府に批判的なメディアには広告を出すな,と圧力をかけた。2016年には,高市総務大臣が「政治的に偏向した報道」をした放送局を閉鎖すると脅した。

そして,1週間前には,安倍首相に批判的な3人の著名なニュースキャスターがテレビ番組を降板した。田原総一朗はこう語っている――「私にとってもっとも憂うべきは,放送局幹部の自己規制です」。

また,ディビド・ケイ国連特別報告者は,日本の「記者クラブ」をこう批判している――「日本の記者クラブは,抵抗が極めて困難な同僚からの圧力をかける組織だと思われる」。

3.台湾・韓国以下の日本の「報道の自由」
日本の「報道の自由」は,先述のように危機的な状況にあり,「国境なき記者団」評価ではすでに台湾,香港,韓国以下となっている。

報道の自由度2016年(全180か国中の順位,国境なき記者団発表)
1位フィンランド,2位オランダ,3位ノルウェー,16位ドイツ,38位イギリス,41位アメリカ,46位フランス,51位台湾,69位香港,70位韓国,71位タンザニア,72位日本,77位イタリア,105位ネパール,133位インド,176位中国,179位北朝鮮

160429a■濃色ほど下位(国境なき記者団HP)

(注)ただし,フリーダムハウス「報道の自由2015」では,199か国中,日本と台湾44位,韓国66位,香港76位,インド80位,ネパール115位。

このように,最近の日本の没落・衰退・劣化は著しい。小熊英二「日本の非効率」(朝日論壇時評4月28日)のまとめによれば,次の通り。
 ・世界競争力ランキング(IMD):27位
 ・生産効率(IMD):43位
 ・労働生産性(木内康裕):製造業は対米比7割,飲食・宿泊業は対米比4分の1
 ・中学教員労働時間(大内裕和):OECD諸国中最長
 ・民主主義指標(エコノミスト):世界23位(欠点のある民主主義)

他にも,「ジェンダー・ギャップ指数2015年」(世界経済フォーラム)101位,「子供貧困率2015年」(厚労省)16.3%など,目も当てられない惨状だ。こうした日本の現状について,特に警戒すべきは,文化と政治の劣化。現実を直視しないと,貧すれば鈍する,せいぜい空威張りで憂さ晴らし,ネパールからも見限られてしまうであろう。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/04/30 at 11:05

カナク・デクシト氏逮捕の事実経過:ヒマールメディア

CIAA(職権乱用調査委員会)に逮捕されたカナク・マニ・デクシト氏側は,この逮捕の事実経過につき,次のように説明している。
 *Editors, “Fact Sheet on Kanak Mani Dixit’s Arrest,” Himal, 23 Apr. 2016

  160428 160428a

職権乱用調査委員会によるヒマール創刊編集者カナク・マニ・デクシト逮捕・勾留に関する事実経過(要旨要約)
[1] 2013年,ロックマン・シン・カルキ氏をCIAA委員長に選任する動きがあったとき,カナク・デクシト氏は,カルキ氏が人民運動弾圧容疑でラヤマジ委員会により告発されていたことを理由に,それに反対した。これは,十分に根拠のあるカルキ氏選任に対する公的な抗議であった。[しかし,それにもかかわらずカルキ氏はCIAA委員長に選任された。]  
 カルキ氏は,デクシト氏により公的に批判された人物であり,デクシト氏との関係においては個人的な利害関係をもっている。こうした場合,個人的な利害関係のある事件の捜査や審判には関与しないのが法学の根本原理だが,カルキ氏はそれを無視しデクシト氏の調査を続けている。

[2] デクシト氏逮捕は,体制派がデクシト氏を黙らせたいと願っていると思われるとき,行われた。デクシト氏は,国境封鎖に強く反対し,またマオイストや政府側の戦争犯罪を追及し紛争被害者の権利回復に努力してきた。氏の逮捕は,体制派が氏の努力を挫きたいと願っていると思われるとき,行われたのである。
 民主社会では,異なる意見や考え方とは言論の場で闘うべきであり,このような調査権限の不当使用によって相手を黙らせようとするようなことは,すべきではない。

[3] CIAAは,デクシト氏が調査に協力しなかったので,逮捕・勾留はやむを得ないと主張している。
 しかし,すでにデクシト氏はCIAAに出向き質問に答えたばかりか,資産細目を記した文書も提出した。また,デクシト氏は,CIAA調査が根拠のない悪意によるものであることを最高裁に訴え,これに対し最高裁もCIAA調査が所定の手続きなしに始められたことを認め,CIAAに対し法の支配の原理に則るよう命令していた。
 この最高裁命令を根拠に,デクシト氏は今回のCIAA出頭要請への疑問を記した文書を提出し,出頭要請には応じなかった。ところが,CIAAは,この疑問に答えることなく,デクシト氏を逮捕した。

[4] CIAA調査の目的は,デクシト氏がサジャ・ヤタヤタ交通会長としての地位を悪用して不正蓄財をしたか否かを解明することのはずだ。ところが,告発は会長就任のはるか以前の財産についてのものと思われ,したがってその告発に基づくCIAA調査も管轄権の範囲外のそうした財産が対象となっていると思われる。
 また,デクシト氏の設立したいくつかの団体への寄付金等も調査されているようだが,それらの団体の調査はCIAAの管轄ではない。それらの団体は,法に基づき会計監査され,結果は援助機関やネパール政府に報告されている。

[5] CIAAは,デクシト氏が逃亡するので自宅で逮捕したと主張している。しかし,デクシト氏は著名人であり,逮捕前の数日も,公然と,カトマンズ開催の国際セミナーに参加していた。
 しかも,逮捕されたのは自宅においてではなく,多くの客でにぎわっていたドカイマ・カフェにおいてであった。

[6] CIAAは,裁判所など役所が閉まる金曜午後にデクシト氏を逮捕,勾留した。そのため,デクシト氏は裁判所に人身保護を訴えられなかった。また,CIAAも休みとなり,取り調べもなかった。

[7] CIAAは,不正蓄財容疑でデクシト氏を逮捕したにすぎず,有罪が確定するまでは無罪が推定されなければならない。それなのに,CIAAは,立証もされていない調査情報を漏らしている。

[8] CIAAは,デクシト氏の健康状態を無視して逮捕・勾留し,氏の生命を危機に陥れた。このような逮捕・勾留の仕方を見ると,CIAA調査の真の目的は何か,疑わざるをえない。
  デクシト氏は著名人であり,逃亡したり,法の適正手続きに則ったものであれば,調査を免れようとしたりするはずがない。

160428c■ドカイマ・カフェFB。参照⇒グーグルマップ写真

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/04/28 at 11:55

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。