ネパール評論 Nepal Review

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SSBを告発,CIAA(5)

5.カンチプル社説「学界恐喝」
CIAAによるSSB告発については,カンチプルも9月27日付社説「学界恐喝」において,厳しく批判した。この社説は,9月28日付ネパリタイムズに英訳転載されている。要旨は以下のとおり。

▼「学界恐喝」(ネパリタイムズ9月28日*1)
CIAAが,またもや権限を逸脱した。今回は,「社会科学バハ(SSB)」と「社会的対話アソシエーション(ASD)」に対する,根拠なき「不正」告発だ。

それは,CIAAが他の組織や個人を狩り立ててきたやり方と同じだ。今回の告発目的は,あたかも彼らが学界において獲得してきた信用や尊敬を傷つけること,それ自体であるかのようだ。

CIAAには,私的機関や非政府組織を調査する権限は与えられていない。憲法がCIAAに認めているのは,官憲の腐敗を調査する権限だけだ。NGOの調査が必要なら,それを行う機関は「社会福祉委員会(SWC)」である。

ところが,CIAAは,憲法を平然と無視し,NGOや銀行や他の私的機関の活動を調査してきた。それは,SSBやASDに対する糾弾に見られるように,偏見に満ちたものである。CIAAには,援助を得て学術振興を図る学術機関の活動に介入する権限は,ない。

CIAAは,ASDやSSBの文書を恣意的に解釈し,告発した。重要な国家機関たるCIAAが,このような民主主義に反する行為をしていることは問題だ。CIAAは謝罪し,そうした行為を繰り返さないことを約束すべきである。

161011■CIAA・FB

*1 “Blackmailing academia(Editorial in Kantipur, 27 September),” Nepali Times, September 28th, 2016

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/10/11 at 19:37

カテゴリー: 政治, 文化, 民主主義

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SSBを告発,CIAA(4)

4.英国ネパール学術会議の抗議声明
CIAAによるSSB告発については,「英国ネパール学術会議(Britain-Nepal Academic Council: BNAC)」も,これを厳しく批判する抗議声明(*1)を出している。

BNACは,2000年5月2日,ロンドンで設立された。歴代議長は,Surya Subedi(2000-2009), Michael Hutt(2009-2014),David Gellner(2014-現在)。比較的新しい組織だが,会員には著名なネパール・南アジア研究者が多数名を連ね,講演会,ワークショップ,出版など活発に活動しており,この4月にも「CIAAによるジャーナリスト,カナク・マニ・デグジト逮捕に関する声明」(2016年4月27日)を出している(*2)。そのBNACが今回発表した抗議声明の概要は,以下の通り。

▼「CIAAと,そのSSBおよびASD調査報告に関する声明」2016年10月1日(*1)
CIAAが,社会福祉委員会(Social Welfare Council)に対し,SSBとASDの調査を要請したこと(Himalayan Times, 25 Sep. 2016)につき,BNACは,世界各地のネパール研究者とともに,深い憂慮の念を表明する。

(1)SSBは,学術交流をはじめとするその優れた諸活動によりネパールの社会科学の発展に大きく寄与してきた。国際的研究諸機関も,SSBとの連携を求めてきた。
(2)SSBの活動目的は,内外の研究者の連携・協力関係の促進であり,貧困救済など具体的な事業実施を目的とする他のNGOとは異なる。支出の多くが研究費や会議費となるのは,当然。しかも,SSB収入の多くは,参加者や連携組織からの寄付金である。
(3)ASDは,SSBの活動の一つであり,別個のNGOではない。
(4)CIAAは,カンチプル社説(9月28日)などでも,管轄権逸脱を批判されている。
(5)SSBと協力し様々なプログラムを実施してきたが,SSBの経費支出には何の不正もなかった。SSB会計は,十分に信頼できるものである。

[署名/賛同]
Executive Committee members of the Britain-Nepal Academic Council:
David Gellner (Chair), Michael Huttほか12名
Other members of the BNAC, and non-members based in the UK:
Louise Brown, Lionel Caplan ほか15名
Other academics, not members of the BNAC and not based in the UK, who wish to have
their names associated with this statement:

Tatsuro Fujikura, Katsuo Nawa ほか64名

161010

*1 “Statement on the CIAA and reports on investigation of Social Science Baha (SSB) and Alliance for Social Dialogue (ASD),” The Britain-Nepal Academic Council (BNAC), 1st October 2016, http://bnac.ac.uk/statements/
*2 “Statement on the arrest by Nepal’s Commission for the Investigation of the Abuse of
Authority of Journalist Kanak Mani Dixit,” The Britain-Nepal Academic Council (BNAC), 27th April 2016, http://bnac.ac.uk/statements/

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/10/10 at 19:18

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SSBを告発,CIAA(3)

3.SSBの反論
CIAAによる告発報道発表に対し,SSBは全面否定の反論声明を発表した。「職権乱用調査委員会の報道発表に関する社会科学バハの声明」(日付なし,2016年10月8日閲覧 *1)。要旨は以下の通り。

(1)正規のNGO登録
 ・SSBは,2007年1月15日ラリトプル郡役所登録,以後,毎年更新。また,社会福祉委員会にも登録し,毎年更新。国税局には2007年1月28日登録。
 ・ASDは独立組織ではなく,SSBが2007年以降運営してきたSSBの事業。これについても,あらかじめ法令に基づき認可を得ており,それを証明する社会福祉委員会の諸文書も取得している。

(2)裏付けなしの曲解発表
 ・CIAAは,一度もSSBから聴取していない。もっぱら社会福祉委員会提出のSSB文書を利用し,支出等について誤った解釈をして,これを発表した。

(3)管轄権の逸脱
 ・CIAAは,あたかも裁判所であるかのように裁決し,報道発表をした。これは,憲法や他の法令に違反する。こうしたCIAAの悪意と偏見による行為は,管轄権の逸脱である。

(4)SSB事業の合法性と正当性
 ・SSBは法に基づき設置・運営されており,法に基づく調査であれば,協力を惜しまない。
 ・SSBの事業目的:1)内外の諸機関と協力しネパール人研究者の能力向上を図ること,2)整備された社会科学図書館の設置・運営,3)シンクタンクとして社会科学の調査・研究・教育や学術交流を促進,4)討論,対話,交流を通して政策立案・分析に寄与。
 ・SSBは,学術機関として,多元社会における法の支配,立憲主義,民主主義,良い統治,包摂,説明責任の向上を図っている。

161009

*1 “Statement by Social Science Baha on the press release issued by the Commission for Investigation of Abuse of Authority,” http://www.soscbaha.org/news/news-blog/878-statement.html

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/10/09 at 19:24

カテゴリー: 教育, 文化, 民主主義

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SSBを告発,CIAA(2)

2.CIAAによる告発
CIAAの9月25日発表によれば,SSBとその傘下のASDの不正・不法行為は,以下の通り。

[不正の概要](CIAA発表)
 ・SSBには,2002年設立以降,4億7千910万ルピーの収入があった。
 ・SSBとASDは,この5年間で,2億9千万ルピーを支出。
 ・この支出の多くは,SSB・ASD関係者への報酬,旅費,ホテル使用料,ピクニック経費,飲食代などに当てられた。
 ・「社会福祉委員会」は,SSBのこうした事業活動を適切に監査していない。
 ・ASDは無登録で,不法にNGO事業を実施。

CIAAは,これらの不正・不法行為につき,ラリトプル郡役所,社会福祉委員会等の関係当局に文書をもって通告し,調査を要請した。

以上が,メディアの伝えるCIAA発表の概要だが,それは,要するに,多額の支援金や寄付金を集めながら,それを本来の目的に使わず,お手盛り報酬や飲み食い,遊興に浪費してきた,という告発である。

ネパールにおいて,こうした告発は世間の受けが良い。途上国のネパールには,外国援助が大量に流れ込み,さまざまな事業が実施されているが,一般にアカウンタビリティや経済合理性に甘く,不正や腐敗がはびこってきた。ネパール庶民は,利権化した様々な援助事業を,日々,目の当たりにしているので,CIAAのような監査機関が大胆にそこに切り込めば,拍手喝采,頑張れ,ということになりがちなのである。

では,今回のCIAAによるSSB告発は,どうか? SSBやASDは,自己目的化した利権組織なのであろうか?

161008a■MCレグミ・レクチャー案内

1 “CIAA seeks action against Social Science Baha, Alliance for Social Dialogue,” The Himalayan Times, September 25, 2016
*2 “Social Science Baha claims CIAA misinterpreted facts,” Republica, October 1, 2016

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/10/08 at 16:42

カテゴリー: 団体, 教育, 文化

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SSBを告発,CIAA(1)

CIAA(職権乱用調査委員会)が,今度は「社会科学バハ(Social Science Baha: SSB)」と,その傘下組織とされる「社会対話アライアンス(Alliance for Social Dialogue: ASD)」の調査・告発に着手した。

161007a■SSB(同FBより)

1.社会科学バハ(SSB)
SSB(社会科学バハ)は,バハHPによると,2002年1月1日,社会科学図書館の開設を主目的として,ヒマール・アソシエーションの支援の下に設置された。その後,事業を以下の分野にも拡大した。
 ・SSB図書館:蔵書約2万冊,オンラインデータベース提供
 ・現代社会問題集中研究コース(大学院レベル)開設:2009年で終了
 ・講義,討論会,ワークショップ等の開催:「MCレグミ・レクチャー」,「バハ・レクチャー」など
 ・社会科学関係書籍の刊行
 ・調査研究の実施

SSBは2007年1月15日,独立の組織(NGO)として政府(ラリトプル郡役所)に登録し,「社会福祉委員会(Social Welfare Council)がそれを認可した。以後,毎年,登録は更新されている。

[SSB役員](SSB HP)
General Members: Ajaya Dixit, Dr Bandita Sijapati, Basanta Thapa, Deepak Thapa, Dipak Gyawali, Dyuti Baral, Dr George Varughese, Hari Sharma, Kanak Mani Dixit, Mohan Mainali, Prof Nirmal Man Tuladhar, Prakriti KC, Dr Pratyoush Onta, Dr Rajendra Pradhan, Dr Sudhindra Sharma,
Executive Committee: Prof Nirmal Man Tuladhar(Chair), Basanta Thapa(Vice-Chair), Dr Sudhindra Sharma(General Secretary), Mohan Mainali(Treasurer), Dipak Gyawali (Member), Kanak Mani Dixit(Member)

以上が,SSBの概要。CIAAは,このSSBに多数の不正があるとして告発したことを,9月25日発表した。この告発発表は,内外に波紋を広げ,特に学術研究やNGO活動の分野で危惧の念が高まっている。

161007■最近警告が付けられたSSBのHP

*1 “CIAA seeks action against Social Science Baha, Alliance for Social Dialogue,” The Himalayan Times, September 25, 2016
*2 “Social Science Baha accuses CIAA of breaching jurisdiction,” The Himalayan Times, September 30, 2016
*3 “Social Science Baha refutes CIAA charges,” Kathmandu Post, Sep 30, 2016
*4 “Social Science Baha claims CIAA misinterpreted facts,” Republica, October 1, 2016

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/10/07 at 18:27

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アジア調査報道会議,クンダ・デグジト不在の皮肉

「第2回アジア調査報道会議」が9月23-25日,カトマンズで開催された。The Centre for Investigative Journalism, Nepal(CIJ-N), The Global Investigative Journalism Network(GIJN), The Konrad-Adenauer-Stiftung(KAS)の共催で,世界50か国から著名なジャーナリストやメディア研究者ら約350人が参加した。

160930a

中心となっている「世界調査報道ネットワーク(GIJN)」は,世界各国のジャーナリスト約300人により,2003年コペンハーゲンで設立された国際NGO。会長は,著書「Yakuza」でも知られているDavid Kaplan。また,コンラート・アデナウアー財団は,ドイツのキリスト教民主同盟系の政治財団で,法治主義、民主主義、社会的市場経済のための活動を世界各地で展開している。

これら2団体との共催で「第2回アジア調査報道会議」の開催を引き受けたのが,「調査報道センター・ネパール(CIJ-N)」。このCIJ-Nは,クンダ・デグジトを中心とするヒマール・アソシエーション関係ジャーナリストにより1996年,設立された。以来,ネパールにおけるジャーナリスト研修機関として調査報道の発展に寄与してきた。今回,GIJNが第2回アジア会議をネパールで開催することにしたのも,おそらくCIJ-Nのそうした活動を評価し,さらにそれを支援しようと考えたからだと思われる。

160930c

ところが,その「第2回アジア調査報道会議」に,肝心かなめのホスト役,クンダ・デグジトが出席しなかった。いや,出席できなかったのだ。

カプランGIJN会長:「クンダはわれわれの最善の同志の一人であり,われわれがここに来たのも彼がいたからだ。」「クンダは,この会議の数週間前に,ネパールから逃れた。もしここに戻れば,彼は魔女狩りにより拘束され投獄される恐れがあるのだ。」(*2)

クンダがどこに避難したかは不明。おそらく国外のどこかに脱出したのだろう。そこから,彼は「第2回アジア調査報道会議」にあてビデオ・メッセージを寄せている。

クンダ・デグジト:「わが官憲は手法を改めた。彼らは,ジャーナリストの投獄のような荒っぽい方法はもはや採らない。今日の検閲は,裏からの脅しにより行われる。これは,より狡猾で邪悪とさえ言ってよいであろう。」(*2)

ここでクンダは,投獄のような荒っぽい方法は採らないだろうと語っているが,しかしCIAAによる弟カナク・デグジト逮捕投獄のこともあり,やはりそれを警戒し避難したとみるべきであろう。

カナク・デグジト:「(カルキCIAA委員長は)国家の二重権力の一つを握っている」。「(CIAAは)悪意の権力センター」である。「私のネパールにおける積極的な活動,たとえば腐敗防止委員会委員長へのカルキ任命に反対したこと・・・・などが,雑誌(Himal Southasian)休刊をもたらした主な原因である。」「ネパールの有力な新聞の多くが,カルキについて批判的な報道をすることを恐れていたし,いまも恐れている。」(*1)

160930b■クンダのビデオメッセージ上映

*1 “The target was Kanak Mani Dixit but the axe fell on ‘Himal Southasian’ in Nepal,” Scroll, September 25 2016
*2 “Kunda Dixit’s exile shows concern over Nepal’s press freedom,” The Himalayan Times=AP, September 25, 2016
*3 “Prominent Journalist Kunda Dixit who Founded “Nepal Center for Investigative Journalism” now in Self-exile to Avoid Arrest,” 26 September 2016 (http://dbsjeyaraj.com/dbsj/archives/48669)
*4 “Journalist’s exile shows concern over Nepal’s press freedom,” (http://www.newdelhitimes.com/journalists-exile-shows-concern-over-nepals-press-freedom123/)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/09/30 at 19:05

ゴビンダ・KC医師,ハンスト再開

トリブバン大学教育病院(TUTH)のゴビンダ・KC医師が9月26日,前回ハンスト時の諸要求の確実な実現を図るため,第9回目のハンストに入った。彼は,こう主張している。

(1)医科教育の改革:「医科教育法案の上程は歓迎すべき第一歩だ。しかし,上程だけでは不十分。法案は今会期において可決成立させられなければならない。さらに,それよりも大切なのは,われわれの諸提案がこの法案に組み込まれたうえで,可決されるべきことだ。」(*2)

(2)カルキCIAA委員長の弾劾:「CIAAは長きにわたり,医科教育に介入してきた。政府は少なくとも[カルキ委員長の]弾劾手続きを始めるべきである。」(*1) 「カルキ委員長に不利な証拠が次々と表面化しているのに,主権をもつわが議会は彼の様々な不当行為について審議しようともしない。これをみても,カルキの下のもう一つの政府が,いかに強力か明白であろう。」(*2)

160927Solidarity for Prof. Govinda KC(FB)

*1 “Dr KC on ninth hunger strike,” Kathmandu Post, Sep 27, 2016
*2 “KC’s ninth hunger strike,” Nepali Times, Sep 26th, 2016
*3 “Govinda KC begins 9th fast-unto-death,” The Himalayan Times, Sep 26, 2016

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/09/27 at 18:55

カテゴリー: 教育, 民主主義

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