ネパール評論 Nepal Review

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ネパール共産党の発足と課題(2)

2.党名強奪?
このように,議会第1党のUMLと第3党のMCが合併して議会絶対多数を占める「ネパール共産党」が成立したが,これですんなりと長期安定政権となるかどうかは,必ずしもはっきりしない。そもそも党名の「ネパール共産党」からして,もめている。

周知のように,ネパールは世界に冠たる共産党天国。大中小さまざまな共産党が無数にある。そのため党名選びも大変,どう工夫しようが既成政党と重なってしまう。ましてや「ネパール共産党」のような,歴史的に由緒のある名称となれば,すでに他党が選挙管理委員会に登録し使用していても何ら不思議ではない。

事実,「ネパール共産党」の名称も,すでに選管登録され,同党は昨年の連邦議会選挙にも出ている(当選者なし)。「ネパール共産党」は既に存在し,その党名使用は憲法で認められた同党の権利なのである。

憲法269条(2) 政党は,・・・・法に定める手続きに従い,選挙管理委員会に党名を登録しなければならない。

ところが,UMLとMCは,合併後の新党にこの「ネパール共産党」という,一国全体を代表する党たるにふさわしい―UMLとかMCといった限定のない――党名をどうしても使用したかったらしく,既存の「ネパール共産党」に党名の譲渡を申し入れた。が,この申し入れは,経緯は不明だが,断られてしまった(*1)。

そこで,これも詳細は不明だが,UMLとMCは,彼らのネパール共産党の党名の下に下線を引くことにして,選管に政党登録を申請したらしい。これに対し,既存の「ネパール共産党」のリシラム・カテル議長は激怒し,UMLとMCによる新党名登録を憲法違反として訴えることにしたという(*1)。

 ■NCP文書ロゴ(アンダーライン必須?)

たしかに,下線の有無で党を区別するのは,無理だ。新聞やネットでも,Nepal Communist Partyと下線を引いている記事は,見た限りでは皆無だ。たとえ選管が下線付き党名の登録を認めたとしても,「ネパール共産党」の名称は,巨大な新党が既成事実をつくり上げ,結局は乗っ取ってしまうことになるのだろう。

 ■ネパール共産党FB(5月18日)

*1 “Fringe party raps ruling party for copying its name,” Republica, 21 May 2018

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2018/06/03 at 10:51

カテゴリー: マオイスト, 政党

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ネパール共産党の発足と課題(1)

1.ネパール共産党の発足
ネパール共産党(NCP)が5月17日,ネパール共産党統一マルクスレーニン主義派(CPN-UML)とネパール共産党マオイストセンター(CPN-MC)の合併により,正式に成立,発足した。

UMLとMCは2017年10月3日,合併への意向を共同発表,年末の連邦議会・州議会ダブル選挙を合併前提の選挙協力により戦い,勝利した。といっても大勝したのは相対的に大きなUMLであって,MCの方は期待したほどの成果は得られなかった。

そうしたこともあって,UML=MC連立政権は選挙後成立・発足したものの,両党合併の方は難航し,紆余曲折の末,ようやく半年近くかかって合意に達し,この5月17日正式に合併となったのである。

ネパール共産党 नेपाल कम्युनिष्ट पार्टी (नेकपा) Nepal Communist Party (NCP)
設立:2018年5月17日[CPN-UMLとCPN-MCが合併し設立]
イデオロギー:暫定的にマルクス・レーニン主義を党イデオロギー,人民多党制民主主義を党是とする。毛沢東主義の扱いは不明。正式には第一回党大会で決定。
党旗  選挙シンボル180602c
共同議長:KP・オリ[UML],PK・ダハル(プラチャンダ)[MC]
書記長:BP・パウデル[UML]
書記局:9[UML6,MC3]
常任委員会:45[UML26,MC19]
政治局:135
中央委員会:441[UML241,MC200]
大統領:BD・バンダリ[UML]
首相:KP・オリ[UML]
代議院議長:KB・マハラ[MC]
参議院[国民院]議長:GP・ティミルシナ[UML]
代議院(定数275)議員:174[UML121,MC53]
参議院[国民院](定数59)議員:39[UML27,MC12]
州議会:7州のうち第2州を除く6州で議会第1党
[*5月26日現在]

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2018/06/02 at 17:55

マデシとUMLが衝突,3人死亡

ネパール各紙によれば,モランで22日,警官隊が統一民主マデシ戦線(UDMF[SLMM])デモ隊に発砲,3人が死亡し,十数人が負傷した。

モランでは22日,UML(共産党統一マルクス・レーニン派)の青年組織YAN(ネパール青年会)が集会を開いていた。UDMFはこれに反対,デモ隊をYAN集会場に向け行進させ,警官隊と衝突した。警察側は,UDMFデモ隊は刀剣,弓矢,棍棒などで武装しており,発砲はやむを得なかった,と説明している。

YAN集会には,ポカレルUML書記長,マンデル青年スポーツ相(UML)などUML幹部多数が参加しており,オリ首相(UML)も参加予定だったが,結局,取りやめになった。要人参加のため,警官多数が動員され,付近は厳重警戒されていた。

この状況から見て,これは首相を出しているUMLとUDMFとの正面衝突と考えざるをえない。UDMFないしマデシ住民側は3人の死者,十数人の負傷者を出しており,他方,UML側は車や家を焼かれたりしている。

UMLは,実力によるマデシ反政府運動の抑え込みに,さらに傾きつつある。先行きが懸念される。

 160122■モラン(タライ東部)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/01/22 at 19:04

カテゴリー: 政党, 民族

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オリ首相選出とその包摂的政治算術

1.首相選挙
ネパール立法議会において10月11日,新憲法に基づく初の首相選挙が行われ,ネパール共産党統一マルクス・レーニン主義派(CPN-UML/UML)のオリ議長が第38代首相に選出された。

[投票結果](投票総数587)
 KP・オリ(UML) 338
   UML,UCPN-M,RPP-N,MJF-D,RPP,サドバーバナ党,CPN-MLなど計15党ほか
 スシル・コイララ(NC) 249
   NC,統一民主マデシ戦線(UDMF)など計10党ほか
   *議長,欠席議員を除く。
   *主要政党議席数:NC196,UML175,UCPN-M80,RPP-N24,MJF-D14,RPP13,MJF10,TMLP11

 151023a■KP・オリ(UML第9回党大会)

2.NC: 禅譲から対立候補擁立・落選へ
このように,今回,新首相は選挙で選出されたが,新憲法制定のころまでは,NCはコイララ首相の下で新憲法を制定すれば,次はUMLへと政権を禅譲するとみられていた。

ところが,9月16日制定,20日公布の新憲法について,タライ地方のマデシ,タルー,ジャナジャーティ諸勢力が激しく反発し,インドもその支援に回ったため,NCは主要3党体制の継続を放棄し,急遽,スシル・コイララ党首(前首相)を対立候補として立て,UMLのオリ議長と首相選挙を戦うことになったのである。

NCには,タライの反憲法諸勢力やそれを暗黙裡に支援するインドへの期待があったのであろう。事実,首相選挙では,マデシ系諸党の多くは,コイララ候補に投票した。が,MJF-D(マデシ人民権利フォーラム‐民主,ガッチャダル議長)の,土壇場での寝返りもあって,支持は広がらず,大差で落選となってしまった。

151023b■スシル・コイララ(NC HP)

3.UML: 左派・右派・民族派の大包摂
禅譲が期待できなくなった議会第2党のUMLは,左派のマオイストと右派の国民民主党(RPP-N)と民族派のMJF-Dを囲い込む大包摂作戦にでた。反包摂主義と非難攻撃されてきたUMLの,アッと驚くような素早い転進・変身。

UCPN-M(統一ネパール共産党マオイスト)は,議会政党化し柔らかくなったとはいえ,極左過激分子をまだたくさん抱えている。一方,カマル・タパ議長の率いるRPP-Nは,いわずとしれた王制復古,ヒンドゥー教国家復帰を唱える筋金入りの右派政党。そして,ガッチャダル議長のMJF-Dは,タライのマデシ民族主義政党だ。そんな三勢力を,マルクス・レーニン主義の共産党たるCPN-UMLが,寛容に包摂したのだ。お見事!

 151023c 151023d■カマル・タパ(同氏FB)/ガッチャダル(同氏FB)

4.包摂の政治算術
包摂は,現実政治においては,理念ではなく,力学ないし算術である。首相選挙にあたって,議会第2党のUMLは投票前日の10月10日,第3党のUCPNと「14項目協定」を締結した。
[主な合意事項]
 ・新憲法の施行。
 ・ただし,タライ紛争には,必要な場合には憲法を改正し,対処する。
 ・国家主権と領土の保全,外国介入阻止。
 ・包摂民主主義の推進。
 ・包括和平協定の遵守。
 ・震災復興の推進。

この協定を結んだUMLは,UCPNとともに,MJF-Dと連立交渉をし,投票直前,わずか30分前に,「8項目合意」を締結することに成功した。
[主な合意事項]
 ・社会諸集団のあらゆる分野での比例的包摂。
 ・州区画の見直し
 ・人口に基づく選挙区見直し

こうしてUMLは,UCPN,RPP-N,MJF-Dの支持を取り付け,オリ議長を首相に当選させることができた。そして,その当然の見返りとして,協力3党には,内閣の要職を配分することになった。

まず,80議席を擁する第3党のUCPNには,副首相兼エネルギー大臣(TB・ラヤマジ)と,内務大臣など7大臣を割り当てた。UMLがオリ首相と3大臣だけなので,大臣配分ではUCPNに大きく譲歩している。

24議席のRPP-Nには,副首相兼外務大臣(カマル・タパ)の要職と,大臣(所管未定)1を配分した。これも,功大なりと認めたからだろう。

さらに,MJF-Dには,副首相兼インフラ・交通大臣(ガッチャダル)の要職を割り当てた。また,他のタライ・マデシ系3小政党にも,大臣2と国務大臣(State Minister)1を配分した。(10月25日には,MJF-Dに国務大臣職1を追加配分。)

5.包摂か野合か?
包摂は,ネパールの現実政治においては,理念を棚上げにした政治算術となりがちである。むろん,算術であり打算であっても,それで「平和」が贖えるのなら,頭から否定されるべきではあるまい。政治は「妥協の術」に他ならないから。

しかし,そうはいっても,オリ内閣を構成する諸党の政治理念は,あまりにも隔絶している。さながら氷炭の如し。UML=UCPN主流派に対し,RPP-N(カマル・タパ議長)は,世俗主義を骨抜きにした新憲法第4条を死守しようとするであろうし,タライ・マデシ系諸党は,州区画の見直しや州自治権の大幅拡大を要求するだろう。

これらは政治理念の対立であり,数字合わせの政治算術では,到底,抑えきれるものではない。この情況のままでは,オリ連立政権は,理念なき野合とみられ,正統性を失い,遅かれ早かれ崩壊に向かうことは避けられないのではあるまいか。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/10/23 at 23:55

サハナ・プラダンさん,死去

サハナ・プラダン(सहाना प्रधान)さんが,2014年9月22日,亡くなられた。87歳(1927/7/11-2014/9/22)。集会で何回かお見かけしたが,直接,お話ししたことはない。それでも,亡くなられると,一方的なものとはいえ,同時代的なネパールとのつながりがまた一つなくなってしまい寂しい限りだ。

サハナさんは,ネパール共産主義運動の最初期からの女性リーダーの一人。17歳で反ラナ闘争に参加し,1947年には「ネパール女性同盟」に創立メンバーの一人として参加(議長はガネッシュマン・シンの妻マンガラデビ・シン)。また1951年頃には女性参政権運動に参加。そして,1954年,ネパール共産党結成メンバーのプシュパ・ラル・シュレスタと結婚した。

1978年のプシュパラルの死後は,プシュパラル派をバックに活動し,反パンチャヤット闘争では何回も投獄されたが,コングレス党のガネッシュマン・シンらと協力し,1990年,パンチャヤット王政を打倒し,立憲君主制の政党政治を実現した。生涯にわたって,ネパールの共産主義運動と女性運動の中で重要な役割を担い続けてきた。
  ・統一左翼戦線(ULF)議長,1990
  ・CPN-ML議長,1978-2002
  ・CPN-UML中央委員(2003-?)
  ・通産大臣(1992-03)
  ・女性・子供・福祉大臣(1996-67)
  ・外務大臣(2005,07-08)。2007年外相として訪日。

140926a ■葬儀報道(Rising Nepal, 24 Sep)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/09/26 at 16:52

UML議長にオリ,書記長にポカレル選出

統一共産党(CPN-UML)は第9回党大会において,議長にKP.オリ氏,書記長にポカレル氏を選出した。他の選出党役員は,下記の通り。オリ派は赤字,MK.ネパール派は黒字。

議長 KP Sharma Oli 140716b

副議長 Bam Dev Gautam, Bhim Rawal, Bidhya Bhandari, Astha Laxmi Shakya, Yubaraj Gyawali

書記長 Ishwar Pokharel 140716c

副書記長 Bishnu Paudel, Ghanashyam Bhusal

書記:Gokarna Bista,Yogesh Bhattarai, Bhim Acharya, Prithivi Subba Gurung, Pradeep Gyawali

140716a

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/07/16 at 19:24

カテゴリー: 政党

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ポカレル前副首相講演: 憲法政治学研究会

130127a ■会場:同志社大学

130127c ■講演会

130127b 130127d
 ■カドガ.KC氏(左)とポカレル氏(右) / バッタライ大使(左)とBN.アディカリ氏

130127p  ■京都新聞1月28日

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憲法・政治学研究会 第542回例会

日時:1月27日(日)午後1時-5時
会場:同志社大学 今出川キャンパス 寧静館5階会議室(Tel:075-251-3120)

講演1:Ishwor Pokharel(ネパール前副首相兼外相)
    「ネパールの平和と民主化への道」
講演2:上田勝美(龍谷大学名誉教授)
    「日本の平和憲法と民主主義」

コーディネート・通訳:Khadga KC
   (トリブヴァン大学政治学部准教授、京都大学ASAFAS研究フェロー)
   谷川昌幸(元長崎大学教授)

主催:憲法・政治学研究会/憲法研究所
http://www.wld-peace.com/kenpo/kenpo.htm

Written by Tanigawa

2013/01/27 at 00:43

カテゴリー: 憲法, 政党

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