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駐日大使にカドガ・KC氏推薦
オリ内閣は4月19日の閣議において,次期駐日大使にカドガ・KC氏を推薦することを決定した。カドガ氏は現在,トリブバン大学人文社会科学部国際関係論大学院プログラム(MIRD)主任(コーディネーター)。専門は国際関係論,日本政治。以下参照。
・カドガ・KC著「丸山真男と近代日本の政治思想」
・ポカレル前副首相講演: 憲法政治学研究会
・長崎原爆展,カトマンズ開催
・カドガ・KC氏フェイスブック
・MIRD, TU
・Rise and Shine interview with Khadga K.C 21 Feb(カンチプルTV)
【次期大使推薦閣議決定】(Republica, 19 Apr)
Dubasu Chhetri(Britain), Khadga KC(Japan), Khagendra Basnet(Bangladesh), (Narad Bharadwaj(Sri Lanka), Tara Prasad Pokharel(Brazil), Ramesh Khanal(Germany), Jhabindra Aryal(Egypt), Padam Sundas(Bahrain), Ali Akhtar Mikrani( Saudi Arabia), Mahendra Singh(Qatar), Bharat Bahadur Rayamajhi(UAE), Lucky Sherpa(Australia), Sewa Adhikari(Pakistan), Yubraj Karki(South Korea), Niranjan Thapa(Russia), Yubanath Lamshal(Denmark), Prakash Subedi(Austria), Lok Bahadur Thapa( Belgium), Rishi Adhikari(Myanmar), Dr Mahendra Pandey(China), Shiva Maya Thumbahamphe(Israel)
谷川昌幸(C)
カドガ・KC著「丸山真男と近代日本の政治思想」
Khadga K.C.,”MARUYAMA MASAO AND MODERN JAPANESE POLITICAL THOUGHT,” International Journal of East Asian Studies, Vol.4, No.1,2015,pp.27-34.
Maruyama Masao is one of Japan’s influential political thinkers of the twentieth-century. This article attempts to briefly discuss Maruyama Masao’s thoughts on Japanese political engagement by focusing on the intellectual and psychological causes of Japan’s political ambitions over the years. Maruyama Masao commented on numerous issues like the intellectual history of Tokugawa Japan, theory and psychology of ultra-nationalism and reflections on Article IX of the Japanese Constitution. Maruyama’s modern thought helped the Japanese understand their role in nation building and the importance of preserving peace at all cost. The paper concludes that Maruyama’s political thoughts are still relevant in this day and age.
丸山真男が,急激な近現代化の諸矛盾に苦しむネパールにおいて注目され始めた。
「近現代化」とは,文字通り「近代化」と「現代化」の二重の課題を同時に遂行せざるを得ないということ。つまり,一つは,前近代的封建社会を解体して自由・平等・独立の諸個人を析出し,その諸個人から民主的な主権的国民国家を構築するという近代化の課題。もう一つは,理論的仮設としては可能であっても実際には解体しきれない文化的諸集団(民族集団,言語集団,宗教集団など)の諸要求を国家社会に取り入れるべきだという現代的な包摂民主主義の課題。
この「近代化」と「現代化」は,欧米では数世紀かけて,日本でも百数十年かけて,段階的に進行してきた。ところが,ネパールでは,これら相矛盾するところの多い「近代化」と「現代化」の二つが,ほぼ同時に,急激に,進行し始めた。これがいかに困難であり,多くの深刻な軋轢を生み出すかは,想像に難くない。
そうしたネパールの苦しみについて,欧米諸国は極めて鈍感であり,「近代化」をすっ飛ばし,一気に「現代化」をせよと無理難題を押し付け,様々な圧力をかけている。無責任極まりない。(単線的歴史発展論は,いまどき流行らないが,ここではあえて近代化抜きの現代化の危険性を強調しておきたい。)
むろん,ネパールにとっても「現代化」は避けられないし望ましくもあるが,しかし,ネパールにはネパール固有の事情がある。「近代化」は欧米にとっては過去のことかもしれないが,ネパールにとってはまだまだ追求し実現されるべき課題である。ネパールは,「現代化」を受け入れるためにも,その前提となる「近代化」について,もっと注目し,研究し,少なくともその最も基本的な諸原理だけは社会においてある程度実現しておく必要がある。
こうした観点からすると,カドガ・KC氏のこの論文は,大いに注目に値する。丸山真男こそ,欧米に遅れて近現代化した――その意味でネパールの近現代化の参考になり得る――日本を理論的に鋭く分析し,その問題点と課題を最も明晰に示してくれた20世紀日本の政治学者だからである。
カドガ氏の論文は,おそらくネパール初の学術的な丸山研究であろう。これを契機に,丸山がネパールにおいて注目され,さらに研究が進められていくことを期待している。
▼論文抜粋(pp.33-34, 改行追加引用者)
「戦前日本のファシズムないし超国家主義を厳しく批判した丸山のような自由主義思想家たちが育成した社会意識こそが,憲法第9条の擁護を可能としたのだ。
ところが,残念なことに,安倍首相の指導の下に,第9条の解釈が今年半ばに変更されてしまった。
日本国憲法そのものは何ら改正も変更もされていないのに,第9条の解釈変更により,日本はいまでは集団的自衛権を行使できるようになり,武力紛争当事国を積極的に支援できることになった。
換言するなら,安倍首相は,丸山が生涯をかけて反対し闘ってきたこと,すなわち日本の軍事防衛政策を正常化することに,成功したのである。」
■カドガ・KC氏(同氏FB)
谷川昌幸(C)
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