ネパール評論 Nepal Review

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真実和解委員会の構成と機能(3)

3.真実和解委員会の職務
真実和解委員会(TRC)の具体的な職務については,上述の「合意」や法令に細々と詳細に規定されている。記述が錯綜し,わかりにくいところもあるが,要点をまとめると以下の通り。

(1)重大な人権侵害の調査と結果報告
重大な人権侵害事件を調査し,加害者と犠牲者を特定。犠牲者には調査結果を通知し,「犠牲者証明書」を発行する。調査結果報告書は公表する。

(2)損害賠償および被害救済の勧告
委員会は,加害者に対し妥当な損害賠償を勧告する。財産被害については,当該財産の返却または損害相当額の賠償の勧告。

また,政府に対しては,必要な被害者救済の実施を勧告する。
 ・犠牲者への損害賠償。上限30万ルピー。
 ・無償教育。大学まで。
 ・医療支援。上限10万ルピー。
 ・リハビリ支援。
 ・雇用保障,職業訓練。
 ・失業者への無利子貸与金。上限50万ルピー。
 ・無利子事業資金貸与
 ・住居支援。上限50万ルピー。
 ・その他,必要な措置

(3)和解の勧告
委員会は,被害者または加害者が和解を申し出,和解が合法である場合は,和解を勧告する。
 ・加害者は,人権侵害を反省し,損害を賠償し,謝罪をする。

(4)罪の赦し(アムネスティ)
委員会は,加害者の申し出と被害者の同意がある場合,調査のうえ,罪の赦免(アムネスティ)を勧告する。罪の赦免には,次のことが必要:
 ・加害者が,重大な人権侵害を犯した事実を認めること,
 ・加害者が,加害行為に関する事実をすべて委員会に申し出ること,
 ・加害者が,加害行為を反省し,犠牲者に謝罪し,それを犠牲者に受け入れられていること,
 ・委員会は,被害者への妥当な損害賠償を勧告すること。

(5)訴追の勧告
加害者に対し罪の赦免(アムネスティ)が認められない事件の場合,または被害者との和解が不可能な場合は,委員会は,加害者の訴追を勧告する。

「重大な人権侵害」の場合,和解手続きに入っている者,および罪の赦免の勧告を受けた者を除き,委員会は,政府(法務長官)に対し,加害者の訴追を勧告する。

 160622

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/06/22 at 14:38

元国王,元内相らの戦時人権侵害,告発

人民戦争期の被害者による加害者告発が続いている。いま注目を集めているのが,ドランバ虐殺(ハチャカンダ)事件。

1.ドランバ虐殺
2003年8月17日,ラメチャプ郡ドランバ村の教師宅でマオイスト30人余が地域委員会を開いていた。このころ,休戦が成立し,ダン郡では和平交渉中であった。そのためマオイスト側は警戒を緩めていた(非武装だったともいわれている)。

そこを,ラム・マニ・ポカレル隊長率いる治安部隊(王国軍と警察)が急襲,会議中の民家を包囲し,その場で2人(1人?)を射殺,女性4人を含む20人(19人?)を捕らえた。捕らえられた20人は,ダンダガテリに連行され,そこで全員が後ろ手で縛られたまま,至近距離から射殺された。いわゆる「ドランバ・ハチャカンダ」だ。

160616b■ドランバ村

2.TRCへの告発
この事件の被害者家族は,犠牲者一人当たり12万5千ルピーの補償金を受け取っているが,それ以上の保障はなく,また虐殺事件責任者の処罰も行われていない。そこで,これを不当として,4家族が「真実和解委員会(TRC)」に責任者を告発し,また他の家族も地方平和委員会を通して告発する準備を進めている。さらに「拉致不明者調査委員会(CIEDP)」への告発も予定されている。

告発されたか告発されることになっているのは,ドランバ・ハチャカンダ事件に責任があるとされる次の人々(肩書は事件当時のもの)。
 ・ギャネンドラ国王
 ・カマル・タパ内相
 ・AR・シャルマ内務省事務局長
 ・PJ・タパ軍総監
 ・SB・タパ警察総監
 ・ラム・マニ・ポカレル王国軍少佐(Major)
 ・チュダマニ・バシュヤル ラメチャプ郡事務所長
 ・RP・シュレスタ副警視
 ・その他,事件関係者

160616c■TRC

3.問題解決の難しさ 
こうした告発は,告発される側にとっては脅威であり,そのため告発関係者を脅したり,告発期間を短縮し幕引きを図ろうと画策したりしている。人民戦争期の加害者と被害者は,政府とマオイストの双方におり,しかも特に加害者には有力者が少なくないため,問題解決は複雑かつ難しいものになっている。

[参照]
*1 DEWAN RAI, “Transitional justice: Plaint against former king, DPM Thapa,” Kathmandu Post, Jun 10, 2016
*2 “Doramba victims move TRC against ex-king, security officials,” Republica, 09 Jun 2016
*3 “Conflict victims call for protection,” Kathmandu Post, Jun 9, 2016

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/06/16 at 17:56