ネパール評論

ネパール研究会

霧と排ガスの東タライ

東ネパールのビラトナガル,ダマク,バラトプル付近を見てきた。広大な平原(タライ)で,まるで別の国のようだ。

この時期の朝,東タライは濃霧に包まれる。カトマンズにも朝霧が出るが,東タライはけた違い,数メートル先も見えないほど濃い霧が立ち込め,昼ころまで残る。

ヤシやバナナの林が点在する広い田畑は,黄色の菜の花や赤のソバの花で一面におおわれ,まるでおとぎの国。霧の東タライは,ロマンチックで情緒がある。

一方,東タライは広い平原で水も豊かなので,あちこちに大きな工場ができている。停電はほとんどなく,道路もかなり整備されている。貧富格差は大きそうだが,産業開発は相当程度すすんでいるようだ。

そこで興ざめなのが,排ガス。一面を覆う濃霧は排ガスの臭いがする。伝統的な薪を焚く煙の匂いなら,それはそれなりに情緒があり好ましい。が,東タライの濃霧の臭いは,そうではない。工場排ガス,ゴミ野焼き,車の排気ガスなどの混ざった臭いなのだ。特に調査したわけではないので濃度や範囲は正確にはわからないが,東タライは広い平原なので,この排ガス公害は相当程度広がっていると見ざるをえないだろう。

伝統と霧のロマンか,経済発展とその代償としての排ガスか? 東タライは岐路に差し掛かっているようだ。

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谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/02/04 @ 11:46