ネパール評論

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ジリ貧新聞の校正不足

部数減でジリ貧の新聞に,このところ木材パルプ浪費・自然環境破壊の巨大全面広告が増加しているのに加え,伝統的な言語文化環境の破壊と思われるような記事も目立ち始めた。

たとえば,この新聞の1面トップ記事。これを目にしたとたん,どこか居心地の悪いような,むずかゆいような,感じがするのを禁じえない。政官財界の英語帝国主義拝跪の時流に棹さすなら,いっそのこと,こう校正すべきではないか?

むろん,以上は,あくまでも日本語表記の問題であって,記事内容にかかわることでは一切ない。念のため。(参照:英語帝国主義

追補】3月25日付朝日新聞朝刊の場合,大阪本社兵庫版は,全28頁のうち8頁が全面広告。これらに加え,紙面下部1/3~1/5程度の広告もほぼ全頁に掲載されている。まるで広告を購読しているみたいだ。
ちなみに,東京本社ネットビューアー版では,全24頁のうち全面広告は4頁のみ。環境保護と精神衛生のため,宅配新聞はやめ,ネット版に切り替えた方がよいかもしれない。
ネット版は,PDFなので目に優しく,読みやすい。印刷すれば,紙面は宅配版とほぼ同じで,しかも広告面は自在にカットできる。
さらに加えて,購読料も,宅配より,実質的には,はるかに安い。宅配新聞は,存在意義を失いつつある。

【追補2】朝日4月1日朝刊は,全26頁のうち5頁が全面広告。特に,新聞広告としてスゴイのが,この見開き2頁全面広告。衝撃的!

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2024/03/21 at 10:20

京都の米軍基地(110):米軍の英語帝国主義

先日,好天に誘われ,久しぶりに経ケ岬米軍基地の見学に行ってきた。いくつか見られた変化の一つが,米軍英語帝国主義の顕在化。

日本軍もそうだったが,軍は,外国に進駐すると,軍事制圧と並行して文化制圧を図る。特に言語。「はじめに言葉があり,言葉は神であった。」その言葉を進駐軍が重視するのは当然だろう。

経ケ岬米軍は,硬軟様々な言語政策を使い分けている。軟の方の典型は,繰り返し批判してきた,軍人・軍属がおやつ付きで遊んでくれる子供向け行事。少し硬くなると,“生きた英語が話せる”が売りの様々な日米交流事業。そして,さらに硬くなると,地域社会に英語(米語)を事実上強要する強権的駐留政策。

たとえば交通標識の英語表記。丹後では,米軍関係事故がすでに51件も発生している(憂う会「現地報告」11月5日)。日本の交通事情に疎く日本語も解さない米軍関係者に,特権的に車の運転を認めているからだ。事故の場合も,補償交渉は圧倒的に住民不利。こうした状況では,被害を受ける住民としては,せめて基本的な交通標識だけでも英語表記にしてほしいと要望せざるをえなくなる。事実上の英語使用強要への不本意な屈伏である。

むろんグローバル化の進展とともに諸外国との交流が深まり,様々な言語が日本にも入ってきているが,これはいわば自然な多言語化・多文化化であり,権力的に強要されたものではない。

これに対し,丹後半島の標識の英語化は,米軍駐留により半強制的に選択させられたとみるべきである。主権国家の国民として,これは甘受しがたい屈辱である。われわれは,このような米軍英語帝国主義に屈することなく,米軍と日本政府に対し,日本で車を運転する者には,運転に最低限必要な日本語と,日本の交通法規および交通慣行を学ばせよ,と要求し続けるべきであろう。


 ■「横断歩道注意」標識/標識前の丹後半島


 ■基地反対フェスタ看板と「注意」標識/標識付近から望む米軍基地

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2017/11/08 at 08:08

イタリアの旅(4):英語はしゃべらない

イタリア北部では,英語はほとんど通用しなかった(南部不明)。日本以上!! 

観光地のアオスタ地方で切符を買おうとしたが,駅窓口係も路線バス運転手(兼切符販売)も,一言も,料金の数字でさえ,英語は口にしなかった。もちろん英語で説明してくれる係員もいるにはいたが,多くはない。ここでは英語は通用しないと覚悟した。

イタリアは多言語社会だし,英語は小学校から学んでいる。だから少なくとも日本人と同程度,あるいはそれ以上に英語力はあるはず。それなのに頑として,しゃべらない。外国人が多く宿泊するホテルでも,テレビチャンネルは何百もあるのに,英語はBBCとCNNくらい。それらも,1,2チャンネルからはるかに遠い400チャンネルあたりに隠されている。

これらのことは偶然とは思われない。英語は,少なくとも日本人程度には話せるのに話さない,使えるのに使わない。日本のように,国家元首たる首相までも,公式の場ですら,へらへらかつての敵性言語たる英語をしゃべり,英語帝国主義に自らこび,へつらうのとは対照的。さすが文化の国イタリアだ。

旅行者が旅行先の文化を尊重するのは当たり前。旅先でのことなど,身振り・手ぶりや数字・地図筆記などで,たいてい用は足りる。外人客のためにカタコト英語を話す必要など,さらさらないのだ。


 ▼トリノ:ポー河畔交差点/分別式ごみ箱

▼クールマイユール:トレッキングルート案内板

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2017/07/20 at 20:22

カテゴリー: 言語, 文化, 旅行

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ネパール社会科学の英語偏重

カトマンズ法科大学(Kathmandu School of Law)の准教授が2名連名で,ネパールの社会科学における英語偏重を手厳しく批判している。以下,補足説明を加えつつ,要旨を紹介する。
▼Pranab Kharel & Gaurab KC, “Beyond English,” Republica, 11 Jun 2017

ネパールの社会科学は,学校教育においても専門研究においても,使用言語は英語が主となっている。学生は,母語では受験対策本はあっても良い教科書はなく学習に苦しみ,たとえ十分な知識を持っていても英語発表を要求されるためその能力を十分に発揮できず悩んでいる。研究者・専門家向けの社会科学雑誌や,セミナー,シンポジュウムなども,多くが英語。

その結果,ネパールでは,社会科学の基本諸概念が十分に習得されず,創造的構想力が欠如し,英語文献をなぞるだけとなりがちである。そしてまた,これは英語文献の諸概念に相当する諸概念がネパール語にはないという状況をもたらすことにもなっている。

ネパールにおける英語偏重⇒創造的構想力育成不全⇒母語貧困化⇒さらなる英語偏重⇒・・・・

この英語支配への転落の悪循環をどう断つべきか? ネパール人学者には「ネパール語や他のネパール母語による学術論文の執筆を勧めるべきだ」。また,ネパール母語による良質の教科書の作成・使用も不可欠だ。

外国人学者にも責任はある。外国人学者には,ネパール母語の十分な知識を持たず,英語文献を選好するきらいがある。「これは,非英語文献を蔑視する尊大な態度といってもよいだろう。英語圏大学で英語が必須なら,ネパールで社会科学に携わる者にはネパール諸言語の知識が必要不可欠のはずだ。」

――以上が記事要旨。これは,ネパール語はおろか英語ですらおぼつかない私には耳の痛い批判だが,非英語圏の言語問題の核心を突く指摘であり,むろん日本も例外ではない。

日本の政府・財界はいま,金儲けファースト,浅薄なグローバリズムにとりつかれ,英米語を世界共通語と妄信し,小学校英語必修化や大学入試英語外部丸投げ,あるいは英語の会社公用語化などを進めている。

日本はこれまで,初等教育から高等教育まで,いや世界最先端学術研究でさえ,母語で行うことのできる世界でも稀な非英語圏国家の一つであった。わが先人たちは,舶来知識を参考にしつつも,日本語を工夫して必要な諸概念を日本語で構築し,洗練し,高度化させてきた。この努力は世界に誇り得るものである。

ネパールにおける英語偏重批判――日本も謙虚に耳を傾けるべきであろう。


■英語学校大繁盛(バグバザール)/カトマンズ法科大学HP

【参照】
1) 英語帝国主義による英米文化の刷り込み
2) 英語帝国主義にひれ伏す公立学校
3) 英語帝国主義とネパール
4) 内田樹【複雑化の教育論(中編)】 イノベーションは、共同体のアーカイブから浮かび上がってくる 「母語のアーカイブに深く広くアクセスできる能力を高めてゆくこと、それが言語集団の知的生命にとって死活的に重要である」

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2017/06/12 at 16:13

京都の米軍基地(106):文化侵略尖兵としての米語道路表示

京都新聞(1月13日)によれば,京都府庁は,米軍人・軍属のために,アメリカ語の道路情報表示を始めた。
  Beware Icy Road(路面凍結注意,凍結注意)
  Caution Heavy Snow(大雪注意)
植民地根性丸出し,卑屈この上なし! 米国人がやってきて運転するのなら,日本語表示を学んでからにすべきだ。

そもそも,アメリカ語より日本語(中国渡来漢字)の方が,はるかにわかりやすい。「Beware Icy Road」は13文字もあるのに,「路面凍結注意」は半分の6文字,「凍結注意」なら1/3の4文字。「Caution Heavy Snow」となると,16文字もあり,だらだらと,しまりがない。日本語なら,「大雪注意」,わずか4文字,1/4ですむ。断然,日本語(中国渡来漢字)表記の方が合理的だ。

このわずか4ないし6文字の日本語が覚えられないはずがない。もし,どうしても覚えられないなら,そんな人物に車運転の資格はない。日本政府は,もし独立主権国家の政府であるのなら,彼らの運転を断固拒否すべきである。

▼基地交付金で設置された住民監視カメラ
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 ■経ケ岬バス停/京丹後大宮IC入口

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2017/01/14 at 18:45

京都の米軍基地(97):軍服と英語で子供洗脳

京丹後進駐米軍が住民馴致作戦をますます強化している。第一の攻撃目標は,繰り返し指摘してきたように,子供たち。

米側は,子供たちに対し,たいてい軍服ないし戦闘服で接している。これは「公務」だし(たぶん),また軍服=軍隊に馴れさせるのが目的だからだ。

米(英)会話のときも,教師役の米軍人は軍服か戦闘服。一流世界言語たる米語のごく初歩を,世界最強米軍が,二流地域言語しか話せない現地住民の子供たちに教えてやる。米語支配は,最終的には,米軍の軍事力により担保されているのだ。

▼経ケ岬米軍基地解放イベント(同基地FB7月10日,モザイク=引用者)
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▼英会話支援(同上FB7月18&30日,モザイク=引用者)
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谷川昌幸(C)

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2016/08/04 at 16:49

京都の米軍基地(95):怒涛の米軍文化攻勢

京丹後駐留米軍(経ケ岬通信所第14ミサイル防衛中隊)の文化攻勢が,ますます激しくなってきた。ターゲットは,子供,老人,一般住民,自治会役員,議会議員,官公庁職員など。洗脳(brainwashing)といっても過言ではない。下掲写真はその一部(子供の顔削除)。

▼「網野幼稚園」京丹後米軍&在日米陸軍軍楽隊演奏会(4月19日)
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▼「かぶと山こども園」京丹後米軍&在日米陸軍軍楽隊演奏会(4月20日)
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▼「袖志農民研修所」在日米陸軍軍楽隊演奏会(4月20日)
160611f(京丹後米軍FB4月28日)

▼「袖志文化交流会」米語教育(6月1日)
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(京丹後米軍FB6月3日/在日米軍司令部FB6月6日)

▼京丹後市議会有志の基地訪問(6月6日)
160611c(京丹後米軍FB6月8日)

▼日米交流音楽会(6月13日)
160611b■主催:防衛省/後援:京丹後市国際交流協会/出演:米空軍太平洋音楽隊&京丹後米軍

これらの写真を見るとわかるように,米軍は子供や老人あるいは一般市民向けの文化行事においても,たいてい軍服ないし制服を着ている。これは,米軍の作戦(operation)の一環だからであり,地域住民に米軍の存在を知らしめ,慣れさせ,馴染ませることが目的だ。米軍文化への洗脳。したがって,第一のターゲットとなるのは,当然,最も洗脳しやすい子供たちということになる。

洗脳には,理屈よりも情の方が手っ取り早く効果的だ。米兵が,かっこよい軍服や制服姿で遊んでくれたり,おやつをくれたり,軽快な音楽を奏でてくれたら,子供などたちまち米軍の虜になってしまうだろう。

物心がつき始めた子供や大人たちには,米語(英語)やキリスト教なども,米軍の格好の情宣手段となる。米語は世界共通語だと教え,日本語劣等感を植え付け,そして,そのうえで軍服着用の米兵が米語を教える,あるいは制服米兵がうろちょろする会場で軍人家族や軍属が米語を教える。米語(英語)帝国主義。お見事!

キリスト教も極めて有効。米軍には従軍司祭(従軍牧師・神父など)がいる。その直接的・間接的な監督の下,クリスマス,イースターなどの宗教行事が執り行われ,その一環として地元住民――とくに子供たち――が招かれる。あるいは,日本側主催のクリスマスなどに米軍人・軍属らが参加し,催しを軍事化・宗教化する。かくして,キリスト教の神は米軍駐留を祝福し,その場に集う日本人もその祝福のおこぼれにあずかる。お見事!

米軍からすれば,このような地元向け文化活動は当然のことだ。地元住民を洗脳し米軍の文化的優位を刷り込んでしまえば,米国益のための基地の維持・使用も容易となる。しかしながら,ここは京丹後,米軍文化に洗脳されるべきいわれはみじんもない。

とくに守られるべきは子供たち。米軍は,子供たちを洗脳するばかりか,行事参加の子供たちの写真や動画を撮りまくり,高画質・無修正のまま,それらを世界中にばらまいている。原住民の無邪気な子供たちを見守り育む慈父のような米軍!

子供たちの,このような政治利用,軍事利用は,断じて許されてはならない。

[参照]児童の権利に関する条約(1989年国連採択)
「児童は特別な保護及び援助についての権利を享有することができる」(前文)
「児童に関するすべての措置をとるに当たっては、・・・・児童の最善の利益が主として考慮されるものとする。」(第3条)
「締約国は、思想、良心及び宗教の自由についての児童の権利を尊重する。」(第14条)
「いかなる児童も、その私生活、家族、住居若しくは通信に対して恣意的に若しくは不法に干渉され又は名誉及び信用を不法に攻撃されない。」(第16条)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/06/11 at 10:08

京都の米軍基地(94):米語文化攻勢

京丹後駐留米軍が本格的な文化攻勢を始めた。軍楽隊ないし軍人・軍属バンドの音楽やキリスト教の祭礼に加え,いよいよ文化侵略の最強手段たる米語(イギリス語アメリカ方言)教育の登場だ。

京丹後の子供たちは,おやつを与えられ,米軍人・軍属から米語を習い始めた。「習う」とは,お手本をならい(倣い),お手本通りできるようになることだから,京丹後の子供たちは米軍人・軍属をお手本とし,彼らの言葉をまね,彼らのように考え,振舞うようになろうとし始めたわけだ。

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 ■お菓子付き米語学習(京丹後米軍FB4月12&14日,子供の顔と名前は引用者削除)

言葉は,それ自体がイデオロギーの塊といってもよい。米軍米語の場合,それは米国と米軍のイデオロギーだ。京丹後の子供たちは,それらを倣い,習うことになる。

といっても,最初からイデオロギー丸出し,ということはない。かっこよい戦闘機や勇ましい軍艦などが,もろ見えということはない。そんな下策は,戦略大国たる米国はつかわない。さりげなく軍楽隊が「星条旗よ永遠なれ」を演奏したり,テキストのところどころに,それとなく米軍関係のことが出てきたり,あるいは先生役の軍人・軍属が口頭でそうしたことに触れることになろう。

たとえば,子供たちが米語単語を習っているこの写真。「d」のところは,イヌの「dog」ではなく,「dolphin」つまりイルカだ。たまたまかもしれないし,テキストも日本製かもしれないが,いずれにせよイルカといえば,すぐ思い浮かぶのが,ケネディ駐日大使。熱心なイルカ人権主義者であり,「イルカが殺される追い込み漁の非人道性」を非難し,日本沿岸漁民に対しイルカ漁をやめよと高飛車に要求した。

もし私が米軍人・軍属なら,「dolphin」を教えるとき,自国の著名な超大物大使ケネディさんがいかにイルカを大切にしているかを紹介し,「日本の皆さんも,アメリカやヨーロッパの先進文明国の人たちと同じように,かわいくて知能の高いイルカをかわいがりましょうネ」と,やさしく諭してあげることになるだろう。(参照:イルカ漁非難,その反キリスト教的含意と政治的戦略性

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 ■米語でイルカ学習(京丹後米軍FB4月14日)/ケネディ大使ツイッター2014年1月18日

これは,ほんの一例。そもそも母語習得――人格形成――途上の子供たちに外国人が外国語を教えるのは,その外国の価値観を子供たちに刷り込み,文化的従属に馴れさせることに他ならない。しかもこの場合,教師=お手本は,米国軍人・軍属だ。こんなことが,真の日米友好に寄与するはずがない。

160421d■米陸軍軍楽隊演奏会(京丹後米軍FB4月12日)

[参照]
ケネディ大使,ジュゴン保護を!
京都の米軍基地(34):イルカ軍団,丹後半島近海来襲

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/04/22 at 08:35

英語帝国主義による英米文化の刷り込み

いやはや,在ネ英米大使館による英米語攻勢はすさまじい。連日連夜,英米語を宣伝しまくっている。

言語は,文化的・政治的に無色透明ではない。英米語宣伝には,英米が世界普及を目指す文化的・政治的価値観が仕組まれていることは,当然だ。言葉を支配する者こそが,結局は世界を支配する。

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これは,「英国の価値観と利益を推進すること」(BカウンシルHP)を目的とするブリティシュカウンシル・ネパールの2月24日付フェイスブック&ツイッター記事。「クジラ愛護」が内陸国ネパールの子供たちにすら刷り込まれてしまうわけだ。日本漁民に勝ち目なし。

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これは,在ネ米大使館の2月22日付ツイッター。とくにイラストが意味深。レーダーないし監視カメラの普及・日常化は当然,というアメリカ的価値観をそれとなく刷り込もうとしている。

牽強付会? そうかもしれないが,すでにネパールの首都カトマンズは世界有数のカメラ監視社会だ。とくに米国関係施設付近は異常に厳重。そうした情況では,このイラスト付き米語宣伝には特有のリアリティがある。それは米国好みの途上国カメラ監視体制を暗に追認し助長するのでは,と危惧しても,あながち全くの杞憂ではあるまい。(参照:前近代的共同体監視社会から超近代的カメラ監視社会へ監視カメラ設置,先進国ネパールから学ぶな

英米お得意の超長期的戦略的観点からの言語宣伝には,それくらいの警戒はあってしかるべきであろう。

【参照】英語による授業への賛否(3月4日追加)
高野敦志@lebleudeciel38 ツイッター3月3日
今後は大学授業の多くが英語でされるようになるでしょう。会社の中も楽天のように英語が公用語に。放送の多くも英語になります。英語がうまく使えない国民は、単純労働しか出来なくなります。日本語は将来、フィリピンのタガログ語、中国のチベット語のように、家庭で使うだけの言語になるでしょう。

<高野敦志を大野英士がリツイート,それを内田樹がリツイート>
大野英士 ‏@floressas1405 ツイッター3月3日
だいたい大学レベルの授業で「母国語」で授業が行える利点を捨てることにどれだけの意味があるのか? 慶応SFC、早稲田国際教養、教師の英語力が不足して日本語の授業なら伝えられる内容すら教えられずいずれも失敗しているというのに。

<内田樹ツイート>ツイッター3月18日
英国の大学の研究者のインタビュー。日本の翻訳事情について。日本の翻訳文化は大学教育からは消えつつあります。「英文和訳に時間を割いたのが英語教育の失敗の原因」と言う人がたくさんいます。外国語を質の高い日本語に訳すという仕事はほんとうに知的にスリリングな経験なんですけどね。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/02/24 at 11:39

英語帝国主義植民地としての「美しい国」

在ネ米大使館が今日もアメリカ語(アメリカ英語)の宣伝をしている。ほぼ毎日。今日は,”attentive” だそうだ。「拝聴せよ」ということ。

さすが世界帝国アメリカ。言葉(文化,精神,魂)を支配する者が,結局は他のすべてのもの(政治,経済,身体など)を支配することを熟知し,長期的戦略を立て,それを着々と実践している。

ネパールでは,すでにアメリカ語が初等教育必修科目となり,保育園や幼稚園でも「アメリカ語のみ使用・母語禁止」がウリとなっている。そのため,自分の子供と,母語のネパール語や他のネパール国民語では十分な意思疎通ができない家庭さえ現れ始めたという。

160210■在ネ米大使館ツイッター(2月10日)

そのネパールよりも,政府主導という意味では,もっとアメリカ語使用に前のめりなのが,「美しい国・日本」。政府が率先して日本語を放棄しアメリカ語に切り替え,国民へも政府の範に習うよう呼び掛けている。たとえば,今日の朝日記事――
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個人番号カード→「マイナンバーカード」と呼んで 総務省,普及へ呼び名統一
・・・・「個人番号カード」が、「マイナンバーカード」と呼ばれるようになる。「親しまれやすい名前」(総務省)にして、普及につなげるねらいだ。・・・・総務省は5日付で、今後は呼び名を「マイナンバーカード」で統一するよう、国の省庁や全国の自治体に要請した。(朝日2月10日朝刊)
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あまりに倒錯的にして自虐的! 日本人には日本語は親しまれない,カタカナ表記のアメリカ語は日本人に親しまれる――のだそうだ。

自国の大多数の人々が母語として日々使用している言葉を,これほどバカにし,嬉々として外国語と置き換えようとするような政府は,かつての植民地傀儡政府を除けば,どこにもない。「美しい国」の政府には,長い歴史と豊かな伝統を持つ独立国としての矜持も愛国心もないのだろうか?

160210a■カタカナ英語ばかり(総務省HP)

【追加】「美しい国」のPRキャラクター・マイナちゃん(2016年2月13日)
2月13日朝,朝日新聞を見たら,「天声人語」の左隣,「折々のことば」の真下,朝刊第1面一等地に,内閣官房・内閣府・総務省連名の政府広報が目についた。軽薄丸出し。「美しい国」の忠良なる臣民が,こんな広報を見せられる日が来るとは,まったくもって信じがたい。「美しい国」のお上は,ふたたびその民を「赤子」として慈しみ始めたらしい。

なお,「PRキャラクター マイナちゃん」の”PR“は”Poor Representation(貧弱な表現)“の「美しい国」欽定略語であり,また「マイナ」は”minor(二流の,ちっちゃな,未熟な)“の「美しい国」欽定カタカナ語訳である。

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 ■朝日1面の政府広報と「PRキャラクター マイナちゃん」

【参照】
マイナンバーはゼアナンバー,頻繁変更を
アメリカ英語の貧困
英語帝国主義

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/02/10 at 12:04