ネパール評論

ネパール研究会

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ネパールの国際空港,二つとも中国企業が建設

1.ポカラ国際空港
ポカラ国際空港の起工式が8月2日,催行された。新空港は2500m滑走路を備え,ボーイング757,エアバス320クラスが離着陸できる。2021年7月完成予定。

中国輸出入銀行が2億2千万ドル融資。全融資額の25%が無利子,75%が年2%の利子で,期限20年。空港工事も,中国のCAMCエンジニアリングが2014年5月,受注している。

 
■ポカラ国際空港建設予定地(右下)/CAMLエンジニアリング

2.ゴータマ・ブッダ国際空港
ゴータマ・ブッダ国際空港は,既存のバイラワ空港を拡張し国際空港に格上げするもの。2017年12月完成予定であった。

この工事は2014年10月,中国のNorthwest Civil Aviation Airport Constructionが受注し,2015年6月15日に工事を開始したが,地震や経済封鎖があったため工事が遅延し,開港予定は2018年6月に延期されていた。

ところが,ここにきてまた別の問題が生じた。建設元受けの中国企業が,ネパール政府に無断でネパール企業と下請け契約を結び工事をさせていたが,代金の支払いをめぐって争いとなり,この春から工事が止まってしまった。そのため2018年6月の開港も危ぶまれている。

■ゴータマ・ブッダ空港FB

3.元気な中国企業
中国企業のネパールでの仕事は,カトマンズの道路建設のように,信じられないほど荒っぽいものが目に付く。ブッダ空港のトラブルも,地元政治家の介入があったにせよ,中国企業の大雑把な事業の進め方にそのそもの原因があるのだろう。別の会社だが,ポカラ国際空港の建設工事の方も気がかりだ。

しかし,それはそれとして,社会の現状との適合性という点では,大きく見ると,中国企業のようなやり方の方が,いまのネパールには案外適しているのかもしれない。

これと対照的に,日本企業は日本流に固執しすぎてきたような気がする。たとえば,タパタリのバグマティ川に架かっている橋は,日本企業が建設したものだが,竣工当時,あまりにも立派・豪華で,本当にこんなものが必要かなぁ,と疑問に思ったものだ。橋の手前の複雑精緻を極める交通信号システムもしかり。

これから先当分は,ネパールでは,多少のゴタゴタはものともせず,蛮勇をもって前進する中国企業がますます事業を拡大していくであろう。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2017/09/01 at 18:54

カテゴリー: ネパール, 経済, 旅行, 中国

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仏陀と印中の三角関係

仏陀をめぐる印中の三角関係がこのところ怪しくなってきた。信仰というよりは,カネと政治の思惑から。

インド側は,釈迦が育ったとされるカピラバストゥ城はネパール側のティラウラコートではなく印側のピプラワにあると主張し,ブッダガヤを目玉とするインド仏教遺跡巡りを宣伝し,そこに釈迦生誕地ルンビニを組み込もうとしている。

これに対し,中国側はネパール政府に急接近し,ルンビニ空港建設やチベット鉄道延伸により中国人旅行客をルンビニ付近に大量に送り込もうとしている,といわれている。ネパール=中国主導のルンビニ仏教遺跡巡りだ。

この仏教遺跡をめぐる印とネ中の争いは,直接的には観光開発の主導権争いだが,それは同時にネ印国境付近への中国進出をめぐる地政学的な争いでもある。

仏様の「現世利益」利用。バチ当たりなことだ。

160607■The Upper Ganges Valley(http://www.buddhanet.net/)

*1 ELLEN BARRY, “India and Nepal in Not-Very-Enlightened Spat Over Buddha’s Childhood Home,” New York Times, JUNE 1, 2016
*2 “Trans-national route from India to Nepal on the anvil: Buddhist circuit,” Kathmandu Post, Jun 1, 2016

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/06/07 at 16:37

平和のハトと,ハトを食うヒト

1.「平和の象徴」としてのハト
ハト(鳩)は,欧米でも日本でも,一般に「平和の象徴」と見られている。旧約聖書では,ハトがオリーブの小枝をくわえて箱舟に戻り,新約聖書では,聖霊がハトの姿でイエスのもとに降りてくる。

「旧約聖書」創世記:8-11
ノアはまた地のおもてから、水がひいたかどうかを見ようと、彼の所から、はとを放ったが、はとは足の裏をとどめる所が見つからなかったので、箱舟のノアのもとに帰ってきた。水がまだ全地のおもてにあったからである。・・・・それから七日待って再びはとを箱舟から放った。はとは夕方になって彼のもとに帰ってきた。見ると、そのくちばしには、オリブの若葉があった。ノアは地から水がひいたのを知った。さらに七日待ってまた、はとを放ったところ、もはや彼のもとには帰ってこなかった。
「新約聖書」マタイ3:16
イエスはバプテスマを受けるとすぐ、水から上がられた。すると、見よ、天が開け、神の御霊がはとのように自分の上に下ってくるのを、ごらんになった。
同上,10:16
へびのように賢く、はとのように素直であれ。

日本では,たばこの「ピース」がハトのデザイン。紫煙をくゆらせ,ハトの平和を嗜むわけだ。

150222d150222f ■UN/UNODA

150222e150222a ■ドン・ボスコ社刊/ピース

2.食用としてのハト
しかし,ハトにとって,人間社会は平和なところばかりではない。ハトは,ヒトによって食用として飼われ,殺され,食われてしまうこともある。なんて野蛮,残酷! そんな悲鳴が聞こえてきそうである。

しかしながら,ハトを食べる文化は,決して珍しくはない。中近東では一般的だそうだし,ネパールでも食用にハトを飼っているところはある。私自身,山麓トレッキングのとき,小さなハト小屋のある農家をあちこちで何軒も見ている。

食用鳩のことは,したがって私も知ってはいたが,その一方,長年にわたる西洋キリスト教文明の刷り込みにより,私の心の中には,「ハト=神聖=平和」という心象イメージができあがってしまっていた。だから,ルンビニの近くのタルー民族の村で,ハトが食用として広く飼育されているのを見て,少なからぬショックを受けた。

この村のハト小屋は,大きな立派な粘土製で,小屋というよりはマンション。そんな豪華なハト小屋マンションが,各農家の庭先にデーンと据えられ,ハトが頻繁に出入りしている。平和といえば平和な風景だが,「ハト=神聖=平和」の心象イメージが強いだけに,殺され食われるためかと思うと,「残酷,かわいそう!」という感情に捕らわれるのをどうしても禁じえなかった。

食は性と同様,文化の基底にあり,食生活の相違は,知識としては理解していても,感情としては,なかなか納得できるものではない。聖牛文化圏の人であれば,神戸牛を見てよだれを垂らすようなことは,けっしてないだろう。クジラ高等動物信者は,牛を殺して食っても,捕鯨は生理的に嫌悪するだろう。

150222b ■ハト小屋

3.異文化の実地学習
私自身,今回,イタハリの食堂で昼食中,たまたま朝食で残したゆで玉子があったので食べていたら,店員が血相を変えて飛んできた。全く気づかなかったのだが,そこは菜食主義(ベジタリアン)食堂だったのだ。

不注意を平謝りし,何とか許してもらった。内心,ゆで玉子くらい,と思わないでもなかったが,これは,インド国境付近を旅しているにもかかわらず,地元食文化に鈍感だった私の誤りである。よい勉強になった。

人類を救ったハトは,救った人間に食われることもある。不殺生の聖地ルンビニで,そんなことも実地学習した。

150222c ■巨大な保存壺

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/02/23 at 13:36

中華街,ますます拡大

カトマンズの中華街の拡大に拍車がかかっている。中国式道路建設と似て,乱暴とも思えるほどド派手だから,とにかく目立つ。

これほどの急進出だと反発を招きそうなものだが,道路工事や高層ビル建設についてと同様,さしたる反対の声は聞かれない。カネ以上に口を出す欧米とは異なり,自由チベット運動を除けば,中国は実利優先だからだろう。

観光客も激増。街を歩いていると,まず中国語で声をかけられる。中国人から同胞と見られ道を聞かれることも少なくない。

ルンビニでは,同じ宿に中国人女子大生3人が泊まっていた。食堂で話しかけられたので,カタコト英語で小一時間おしゃべりした。北京から列車でラサまで行き,バスに乗り換え,カトマンズをへてルンビニまで来たという。そんな時代になったのだ!

中国の進出については下記参照:
中国人観光客と国際線の乗り入れ(2015年2月11日)(ネパール政経ニューズ)
中国人がやってくる:ネパリ・タイムズ記事
初夢は鉄路カトマンズ延伸?
援助と建前逆手どり,対ネ中国外交の冴え

▼タメルの中華街
150214b

150214c150214d

▼中国製駄菓子
150214e ■パシュパティナガル(イラム/ダージリン国境の町)の茶店の駄菓子も,よく見ると中国製が多い。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/02/19 at 11:09

カテゴリー: 経済, 旅行, 中国

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菜の花とレイプフラワーとトリコフル

1.タライの菜の花
タライの1~2月は,菜の花満開。広い田畑が,一面見渡す限り,黄色の菜の花で埋め尽くされている。

朝は濃い霧がかかり,地平線の彼方から大きな,大きな太陽がゆっくりと昇ってくる。昼間は,ぽかぽか春の真っ盛り。霞たなびく黄色の大海原を,頭に小篭を乗せた村人らが行きかう。夕には,のんびり草をはみ続ける牛たちの向こうに,赤い大きな太陽が沈んでいく。
150216b■朝日(ルンビニ)

150216c■菜の花(ルンビニ)

2.原風景としての「菜の花♫」
このタライの悠然たる風景は,古き良き時代の私の村の春の日々を思い起こさせる。私の村も,春になると彼方の山の端まで菜の花畑が広がり,蝶々が飛び交い,小川にはメダカが群れ,時間はゆっくり,ゆっくり流れていた。

 朧月夜 (詞)高野辰之,(曲)岡野貞一,文部省唱歌
 菜の花畠に 入日薄れ
 見わたす山の端 霞ふかし。
 春風そよふく 空を見れば
 夕月かかりて にほひ淡し

1学年1学級24人の村の小さな小学校で,春になり菜の花が咲くころになると,この童謡をよく歌った。これこそ,まさしく私の忘れえぬ原体験。菜の花を見るたびに,そしてまた,この歌を聴くたびに,うずくような懐かしさにとらわれずにはいられない。

150216d菜の花(ルンビニ)

3.レイプフラワー
ところが,タライの菜の花畑のことをあるところで話していたら,菜の花は,英語では「レイプ(rape, rape flower)」と呼ぶのだと教えられた。エェッ,まさか? そんな,それはあんまりだ! 

そんなはずはないと願い,帰宅し辞書を見たら,たしかに「レイプ(rape)」だった。ヒドイ! ちなみに,「朧月夜」の英訳(http://lyricstranslate.com/en/oborozukiyo)は――

  The Hazy Moon
  The light red sun is setting beyond the field of rape blossoms.
  Thick fogs spread over the distant mountains
  The soft winds blow over my head.
  The hazy twilight moon hangs in the faint color.

気を取り直し,語源を見ると,厳密には別の言葉であった。
 (1)カブ ⇒ ナタネ
 (2)強奪 ⇒ 女性の獲得,女性への性暴力・強姦

しかし,たとえ語源が別であっても,レイプはレイプ。いま現在,「レイプ」と聞いて「強姦」をイメージするな,といわれてもそれは無理。「レイプ」には忌まわしい含意がまとわりついている。ギリシャ語やラテン語を語源とする言葉をもつ人々には,意味の切り替えが出来るのかもしれないが,日本人の私には,どうしてもできない。菜の花は,「レイプ」とは無縁の,「やさしさ」と「浪漫」にふんわりと包まれた「のどかさ」の象徴でなければならない。

4.トリコフル
では,ネパール語はどうか? 菜の花に相当するのは,トリフラ(तोरिफुला )ないしトリコ・フル(तोरीको फूल),つまり「トリ(アブラナ,カラシナ)の花」。

辞書には,見た限りでは,これ以上の説明はない。サンスクリットか何かの語源をさかのぼれば,いわれがわかるかもしれないが,この方面には疎く,私には困難。また,「トリの花」をみて,ネパールの人々がどのような感情を抱くかは,それこそ民族ごとに調査してみなければわからず,これもすぐには難しい。

ただ,それでも,「トリの花」をみてネパールの人々が抱く感情と,「トリの花」を「菜の花」とみて日本人が抱く感情とでは,相当に異なるのではないか,ということだけは十分に推測することができる。

150216e■麦と菜の花(ルンビニ)

5.旅の醍醐味
同じものを見ても,文化により,見方が大きく異なる。難しくもあり,面白くもある。このことを実地体験してみるだけでも,旅はしてみるだけの価値はある。

150216a■夕日(マドゥマッラ,ジャパ郡ダマック)

【補足訂正(2015年2月18日)】 「トリコフル」については,ウプレティ美樹さんから,ひどく殴られたり頭をぶつけたりしたとき「トリコフル」が見えたという,と教えていただいた。ありがとうございました。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/02/18 at 14:20

バイラワ空港から仏陀空港へ

バイラワ空港は地方の小さな空港だが,開発機運が盛り上がり,一躍,国際便が飛び交う巨大な「仏陀空港」となりそうな予感がする。めでたい。

150201c150201b

150201a

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/02/03 at 22:13

カテゴリー: 経済, 旅行, 中国

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仏陀空港工事も中国企業優勢

バイラワの「仏陀(ゴータマ・ブッダ)空港」の拡張・国際化工事も,受注は中国企業が優勢だ。

仏陀空港の拡張は,3000mの滑走路をもつ本格的な国際空港化が目標。ネパール政府は,もっぱらルンビニ観光のためと宣伝しているが,実際には,タライ地方の産業化のためと見るべきだろう。タライは,中央諸勢力による長年の支配搾取により貧しかったが,ネパールには珍しい広大な平地であり,開発余地は大きい。国境を接して巨大なインド市場もあり,産業化には最適だ。中国資本はさずが目の付け所がよい。(参照:タライの豊かさと貧しさタライの魚釣り少年

[工事予定]
 第1期(2017年完成?) 76万人/年
 第2期(10年後)    200万人/年
 第3期(--)     600万人/年

乗降客600万人/年の多くが国際線利用だとすると,いまの中部国際空港なみ。野心的だが,絶好の立地を考えると,決して夢ではない。

融資は,ADBアジア開発銀行5850万ドル,OPEC国際開発基金(OFID)1500万ドル。OFIDは他の案件でもときどき目にする。最近は,産油国の経済進出もめざましい。

140917a ■バイラワ空港(nepaldomesticflights.com,文字追加)

この仏陀空港拡張工事の第1期入札は,2月26日実施され,7社が応札した。
 (1)西北民航機場建設 Northwest Civil Aviation Airport Co.
 (2)中国交通建設 China Harbour Engineering Co.
 (3)ネパール=スペインJV Sanjose-Kalika
 (-)中国水力発電建設 Sinohydro Co.
 (-)中国海外工程 Overseas Engineering Group Co.
 (-)Isolux-Carsan(スペイン)
 (-)不明1社 

応札7社のうち,4社が中国企業であり,最低価格応札は中国企業。おそらく,この企業が落札するであろう。

朝日新聞の新連載「攻防日中」(9月17日)をみても,このところ他国でもインフラ受注は中国圧勝だ。斜陽日本とは,勢いが違う。インド台頭まで,しばらくは中国の時代――この現実は誰しも認めざるをえないだろう。

140917 ■朝日新聞9月17日

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/09/17 at 10:07

カテゴリー: 経済, 旅行, 中国

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中国と韓国,ネパールでも元気

報道によれば,2013年の訪ネ中国人が11万3千人に達した(Ekantipur,26 Aug)。「文化・旅行・航空省」の統計とあわせて比較すると,次のようになる。

 ネパール入国外国人(空欄はデータなし)

  2001  2012  2013 
 印 64,320(17.8%)  165,815(20.6%)   180,974
 中  8,738(2.4%)  71,861(8.9%)  113,173
 米  32,052(8.9%)  48,985(6.1%)  47,355
 英  33,533(9.3%)  41,294(5.1%)  35,668
 日  28,830(8.0%)  28,642(3.6%)   —
 韓  —  26,004   —

(NEPAL TOURISM STATISTICS 2012; Ekantipur,2014-8-26)

日本や米英などは,この十年ほど,訪ネ者総数にあまり変化はないが,中国人は激増している。韓国人は2001年の数字はないが,やはり激増は間違いあるまい。もう10年前,1990年頃と比較すると,対比はさらに顕著となるであろう。その結果,日本や米英の訪ネ外国人総数に占める比率は大きく低下した。

興味深いのは,ルンビニ訪問者。中国と韓国は,堂々の上位4位,5位。特に中国人のルンビニ訪問は激増している。ルンビニに,中国がチベットからの鉄道延伸を提案し,韓国が国際空港建設を提案するのも,もっともである。

140826a140826b
 ■Travel Trend of Foreigner to Lumbini, 2013 

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/08/27 at 18:14

カテゴリー: インド, 旅行, 中国

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仏陀空港拡張工事,6月末開始予定

バイラワのゴータマ・ブッダ(仏陀)空港の拡張工事が6月末から始まりそうだ(Ekantipur, 5 May)。

事業費9千万ドル。アジア開発銀行から3千万ドル,OPEC国際開発基金から1.5千万ドルの融資を受ける予定。現行1500mの滑走路が3000mに拡張され,国際線の離発着が可能となる。2017年運用開始予定。

拡張工事への応札は,中国5社,スペイン系2社。ここでも中国は元気だ。

この空港拡張については,ルンビニまで20kmということもあり,観光振興が事業目的として強調されている。しかし,タライは広大な平地であり,しかも大市場インドのすぐ近くだ。観光よりもむしろ産業立地としての方が魅力的だ。

仏陀空港が拡張され国際線の離発着が始まれば,カトマンズ(TIA)やポカラ(国際空港新設予定)は敬遠され,タライの産業化が急速に進むのではないだろうか。

 140506 ■仏陀空港拡張予想図(Ekantipur, 10 Jul. 2013)

[参照]ルンビニ  タライ 

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/05/06 at 22:40

カテゴリー: 経済, 旅行

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ルンビニ開発、了解覚書に署名・成立

中国主導のルンビニ開発計画の了解覚書(MoU)が11月7日、署名・成立した。中国側はAPECF(アジア太平洋相互協力基金)、ネパール側はLDSC(ルンビニ開発調整委員会)[ないしLDNDC=ルンビニ開発国家指導委員会]。LDSC議長はいうまでもなく、プラチャンダ(プスパカマル・ダハール)統一共産党毛沢東派(UCPN-M)議長だ。
 ▼ルンビニ開発

計画では、ルンビニ国際平和都市建設に30億ドル投資する予定。途方もない大計画だが、政治的にも経済的にも成算はありそうだ。

政治的には、中国と、この開発計画に深く関与している米国で、インドを牽制する意味合いがある。

国際政治は複雑怪奇で、米国は中国と対立しつつも、対印では手を結ぶ。一方、対中では、米国はインドと組む。そして、そこにプラチャンダのネパールが利用されつつ、漁夫の利をねらう。おそらく各国情報機関も関与しているであろう。素人にはうかがい知れない、国際政治の伏魔殿である。

経済的には、投資が始まれば、将来性は甚大だ。ルンビニ付近は、開発余地が十二分にあり、隣にインドの巨大人口・巨大市場、中国とも道路と鉄道とで結ぶ計画がある。ここに国際空港ができると、チトワン、ポカラも含め、一大観光地、巨大商工業地が出来上がる。

そこに目をつけた中国は、さすが抜け目がない。成功すれば、プラチャンダも大富豪となり、マオイスト革命などきれいさっぱり忘却してしまうだろう。

しかし、問題はインド。国境沿いの、目と鼻の先に、中国・米国のなにやら怪しげな機関も関与していると噂の開発計画を黙認するかどうか? その気になれば、インドはいつでもこんな計画など、ぶち壊すことができるだろう。


 ■朝霧に浮かぶ摩天楼。カトマンズ開発も急ピッチ。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/11/09 at 10:30

カテゴリー: 経済, 外交, 中国

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