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京都の米軍基地(115):子供に銃!
経ヶ岬の米軍通信所フェイスブック(FB)が,戦闘服を着て銃を持つ子供の無修正写真を掲載している(6月2日付&12日付)。
このFB写真だけでは子供とは断定できないが,体形・容姿からは,どう見ても子供である。また,子供だとしても,米軍関係者の子供の可能性もあるが,状況からみて,日本の子供の可能性が高い。
そうした子供たちの写真が他にも何枚かある。戦闘服姿で写真を撮ってもらう少女,拳銃付きガンベルトを着けてもらう少年,迷彩服の少年など。
▼戦闘服姿で写真を撮ってもらう少女/ガンベルトを着けてもらう少年/迷彩服の少年(修正=引用者)
これらの写真が撮られたのは,自衛隊が5月26日,経ヶ岬分屯基地62周年を記念し京丹後市後援をえて網野町八丁浜で開催した「エアーフェスタ経ヶ岬2019」において。このフェスタでは,自衛隊の装備展示,広報イベントに加え,F4戦闘機やUHヘリのデモ飛行も行われた。
ここに米軍も参加,キャンプ座間の陸軍軍楽隊が音楽演奏,第14ミサイル防衛中隊は軍装備展示,経ヶ岬通信所はアメリカンフードを提供した。主催は自衛隊(空自分屯基地)だが,米軍側も全面的に協力したとみてよいであろう。
このフェスタを見に来たのは,FBによれば,約4千人。地元・網野町の人口は1万数千人。会場の八丁浜からは遠い地域も多く,しかも高齢化が進んでいるので,4千人も来たのは驚異的だ。
その会場で,これらの写真は撮られた。子供に戦闘服を着せ銃を持たせたのが自衛隊か米軍かは,FBからだけではわからない。が,子供たちの写真をFBに掲載し,世界中に拡散しているのは,紛れもなく米軍である。
米軍のこのような行為は,平和(積極的平和)の理念に反し,また子供自身の人権の侵害になるのではないだろうか。
谷川昌幸(C)
京都の米軍基地(113): 軍機への恐れ
軍機(軍事秘密)への警戒は,外国では,身を守るため必要不可欠なことだ。軍隊や軍事施設をうっかり撮ってしまったり,それらに不用意に近づいたりすると,カメラを没収されたり,スパイ容疑で拘束されたりする恐れがある。万が一,スパイ容疑で起訴されると,反証は難しく,重罰を覚悟せざるを得ない場合が少なくない。
幸い日本は,非武装平和憲法を持ち,建前としては軍隊を保持してこなかったので,日常生活で軍機を気にする必要はほとんどなかった。戦前日本のような,あるいは多くの諸外国にみられるような軍機の息苦しさ,重苦しさから,戦後日本の人々は解放されていたのである。
ところが,ここにきて雲行きが怪しくなってきた。2013年12月には特定秘密保護法が成立。日本でも,軍隊や軍事施設に不用意に近づくと,拘束され,処罰されかねない状況になってきた。いまのところ,望遠レンズ付カメラで自衛隊基地や米軍基地を撮影しても,それだけでは,とがめられたり拘束されたりすることはない。しかし,この状態がいつまで続くか?
皮肉なのは,軍機と言いつつも,他方ではグーグルなど,先端技術で,軍隊や軍事施設のかなりの部分が丸裸になっていること。日本三大秘境の一つ,丹後半島も,グーグルはバッチリ撮影し,世界に向け広く公開している。解像度,革命的に向上。
■これらは2013年9月撮影のグーグル・ストリートビュー。上が空自用地,下が米軍用地。このビューは現在も使用されており,新旧の比較に便利。
(2)グーグル航空写真(11月13日閲覧)
■空自「司令部地区」・九品寺(穴文殊)・米軍基地
(3)空自「岳山レーダー地区」
■グーグル航空写真(11月13日閲覧)/九品寺からの遠望(11月6日撮影)
(4)九品寺(穴文殊)参道入口の異物
■監視装置?(11月6日撮影)
谷川昌幸(C)
京都の米軍基地(112):空自の便乗拡大?
丹後半島には以前から空自基地があった。穴文殊(九品寺)に向かって左側のこじんまりした「経ヶ岬分屯基地」。
ところが,米軍Xバンドレーダー基地が穴文殊に向かって右側に設置されることになって以降,空自基地施設の新増設がはじまった。国道178号線沿い(米軍基地の並び)に大きな3階建ての「第35警備隊」庁舎ビル,その隣には巨大パラボラアンテナをつけた高い鉄塔2基。他にも新しい施設がいくつか見られる。(岳山「レーダー地区」の施設も増強されているようだが,進入禁止のため,詳細不明。)
軍機につきはっきりしないが,米軍基地受け入れを機に,空自基地も増強されつつあるとみてよいのではあるまいか。
■米軍基地(国道沿い)/レーダードーム(手前米軍,山頂空自)
谷川昌幸(C)
京都の米軍基地(111):いたるところで土木工事
米軍Xバンドレーダー基地を受け入れた丹後半島で目立つのは,土木工事。いたるところで大小様々な工事が行われている。
これらの土木工事のうち,いずれが基地関連かは,ちょっと見ただけでは分からないが,他の地域と比べ工事が相対的に多いことは明らかだ。
たとえば,米軍基地のある丹後町袖志と東隣の伊根町蒲入の間は,丹後半島一周道路(国道178号線)の中でも最難所であり,多くの工事が行われてきた。すでにトンネルや断崖絶壁中腹の難工事はほぼ完了しているが,まだ蒲入漁港付近など狭かったり急カーブだったりする部分がかなり残っており,現在は,それらの改良工事が行われている。
あるいは米軍基地の地元の尾和地区では,農業用水路工事が急ピッチで進められている。また間人付近では,川沿いにバイパスを通す工事が始まっている。平坦な美田だが,そのど真ん中に広い直線道路ができるようだ。
以上のような土木工事のうち,いずれが米軍基地関連かは,前述のように部外者にはよく分からないが,他地域と比べ目立って多いという印象は否めない。丹後半島も,いわゆる「基地依存経済」に向かうのであろうか?
谷川昌幸(C)
京都の米軍基地(82): 強者の権利
経ヶ岬進駐米軍は,地元住民にとって圧倒的な強者であり,早くも「強者の権利」を享受し始めた。「強者の権利」とは,平たくいえば,弱者に対し強者が行使する自由,つまり「Might is Right(力は正義,力は権利)」という考え方である。
現代民主国家は「法治国家」であり,国民も政府もすべて「法の支配」に服する。いかなる政治的,経済的,社会的,文化的強者といえども,自分のもつ「力」ないし「実力」を法を無視して行使することは許されない。法は,事実として様々な不平等が存在する国家社会において,弱者の自由と権利を守るためのものである。現代法治国家では,「強者の権利」は認められない。
ところが,経ヶ岬進駐米軍には,地元住民には認められていない様々な特権が認められている。米軍人・軍属は,形式的にはともあれ,実質的には地元住民の服する日本の法には完全には服さず,その限りで「治外法権」を享受している。
法が弱者を守るためのものだとするなら,「治外法権」は,そこでは弱者が法により守られず,「強者の権利」が容認されていることを意味する。京丹後では,米軍人・軍属は「強者の権利」を行使することが出来る。
たとえば,これらは経ヶ岬米軍FB掲載写真。士官使用と思われる車のナンバーが完全に消されている。推測にすぎないが,おそらく掲載に当たり,米軍側が自分たちのプライバシーか何かに配慮したのであろう。もしそうなら,この車をたまたま地元住民が撮っており,ナンバーを消さずフェイスブックか何かに掲載したらどうなるか? すぐ秘密保護法などが持ち出されることはないであろうが,米軍関係情報を無断で収集し,世界にばらまく要注意人物としてマークされるといったことは十分に考えられる。米軍側は,自分たちが権利だと思うものを,弱者たる地元住民に対し一方的に主張し,それを自分たちの力で守ろうとする。「強者の権利」である。
■丹後半島ラリー(8月28-29日)米軍士官使用車ナンバーは消去。(米軍FB9月22日)
経ヶ岬米軍FBは,このように士官使用車のナンバーを消す一方,地元の子供や老人の写真は,顔が写ったものも含め,無修正で多数掲載している。米軍宣伝への利用である。
しかし,この場合,そのような写真の利用を,子供たちが米軍に対し承認しているとは到底考えられない。米軍人・軍属などが,お菓子や鳴り物を携え,子ども園(保育園・幼稚園)などにやってくれば,子供たちは無邪気にはしゃぎ,喜んで写真を撮らせるであろう。が,そこには写真撮影・利用への「インフォームド・コンセント(理解を得た上での同意)」はない。米軍は,地元関係諸機関に対する強者の立場を利用し,子供たちのプライバシーの自由や肖像権をほしいままに強奪している。日本の子供たちという最も弱い立場の弱者に対する「強者の権利」の行使である。
■ハロウィーン(11月1日)招待は子供だけ(幼児~中学生以下)。(米軍FB9月24日)
老人たちについても,同じことがいえる。老人ホームなどに入居している老人たちは,多くの場合,役所や施設管理者に対し弱い立場にある。あるいは,老齢や病気などのため,自分では十分に自分の権利を守れない状況にあることも少なくない。米軍人・軍属は,そのような老人施設にも好んでやってきて,入居者たちの写真を撮り,ホームページなどに掲載し,世界中に進駐米軍の宣伝をする。この場合も,入居者たちが明確な「インフォームド・コンセント(理解を得た上での同意)」を与えたとは考えられない。弱者たる地元老人に対し,米軍は「強者の権利」を行使しているのである。
京丹後における米軍の「強者の権利」行使はまだ始まったばかり,いずれ地域社会の他の様々な領域にも拡大していくことは避けられない。沖縄や他の米軍基地周辺と同様に。
谷川昌幸(C)
京都の米軍基地(81):「既成事実への屈服」のきざし
京丹後市議会の9月定例会が開かれたが,一般質問で米軍基地を取り上げたのは,なんと2議員だけ! しかも,その質問にも,以前のような鋭さや迫力はみられず,はや「既成事実への屈服」の兆しが見られる。
米軍基地はすでに完成。アメリカ軍人・軍属百数十名が赴任し,Xバンドレーダーは,日夜,騒音をまき散らし,超強力電波を発射し続けている。経ヶ岬米軍基地は,すでに「既成事実」となってしまった。
日本では,いったん事実がつくられてしまうと,それが何であれ,つくられる以前に立ち戻って根本から議論をやり直すことは,多くの場合,きわめて困難である。「既成事実」を前にすると,日本人の批判精神は萎えてしまう。
「すでに出来てしまったのだから」「もうやってしまったのだから」ーーこれは,事実をつくる権力の側の常套句であり,また,そのようなつくられた「既成事実」からの緻密な論理構成は日本官僚の得意とするところである。日本では,いったんある事実がつくられると,その事実を前提として,そこから次々と官僚制的合理性をもって新しい事実が積み重ねられていく。丸山眞男のいう「既成事実への屈服」である。
京丹後の米軍基地問題も,まさしくそうした「既成事実への屈服」の典型例の一つとなり始めた。京丹後では,米軍基地はすでに「既成事実」となり,9月定例議会一般質問でも,基地問題を取り上げたのは共産党の2議員だけ。しかも,これら2議員の質問も,既成事実化の「現実」に押され,精彩を欠き,また論理破綻ではないかと思われるような部分さえみられた。
たとえば,騒音対策や交通安全対策は,改善要望にすぎず,基地への根本的批判とつねに関連づけていないと,基地存続を逆に助長することになりかねない。
あるいはまた,網野町島津での米軍住宅建設に関する質問では,軍人・軍属用住宅(ないし軍属用住宅)という根本的な事実を見据えなかったため,市長答弁にたじたじ,惨敗してしまった。
質問者は,市長の発言「島津連合区の意向調査は法制上,倫理上[あってはならないこと],あるいは人権侵害に当たる」という発言は島津住民の自治への介入だ,と問い質した。これに対し市長は,自治は大切だが,だからといって自治の名で居住の是非を問うことは許されない,これは「働く人の住居」の問題だ,と反論した。
たしかに,もしこれが一般の日本人や外国人の場合であれば,市長のいうとおりである。住民自治の名で「居住の自由」(憲法第22条)を奪うことは,許されない。しかし,島津に建設されるのは米軍住宅であり,そこに住むのは,日米地位協定で様々な特権が認められている米軍人・軍属(ないし軍属)である。いわば,一種の治外法権。彼らは,日本の法には完全には服さず,したがって彼らの居住が地域住民に危険をもたらす恐れがあることは否定できない。米軍住宅は,市長のいうような一般的な「働く人の住居」ではないのである。(参照:米軍基地建設を憂う宇川有志の会「文殊さん定期報告487」9月21日)
質問者は,このような観点から米軍住宅問題を問い質すべきだったが,なぜかそうはぜず,証拠不十分にもかかわらず,もっぱら市長の自治介入にばかり拘泥し,その結果,自治の限界としての人権尊重という市長の反撃に完敗してしまった。
質問者は,鋭い政治感覚とあふれるばかりのユーモアを兼ね備えた,卓越した魅力的な市会議員である。その議員が,なぜこのような勝ち目のない議論をすることになってしまったのか?
推測にすぎないが,それはやはり既成事実となってしまった米軍基地の重圧であろう。正面からの基地批判は,「既成事実への屈服」文化がはびこる日本,ましてや保守的な京丹後では,もはや受け入れられそうにない。そこで,市長の島津連合区自治への介入という脇道からの米軍住宅問題追及を試みたのだろう。
が,本道あっての脇道,本道を見失うと,たちまち道に迷ってしまう。
▼京丹後市議会9月定例会 一般質問(クリック再生)
■田中邦生(日本共産党)
2 米軍基地問題について
(1)米軍基地の騒音対策について
(2)軍人・軍属の交通安全対策について
(3)Xバンドレーダーの配備は京丹後の安心・安全を損なう
■森 勝(日本共産党)
1 京丹後市国民保護協議会等と戦争法案(安全保障関連法案)について
(1)京丹後市国民保護対策本部、同協議会の役割、任務、設置の目的について
(2)戦争法案、集団的自衛権の行使との関連性について
(3)自治体、市民に何をもたらすのか
2 宇川米軍基地と米軍居住地問題について
(1)記者会見(6月26日)における発言について
(2)島津連合区から提出の要望事項に対する対応について
[参照]
▼京丹後の米軍基地問題:「住民の声、封殺するな」 集会で市長に抗議(毎日新聞2015年08月29日)
「米軍Xバンドレーダー基地反対・京都連絡会」は28日、京丹後市役所前で基地撤去を求める集会を開いた。同市網野町島津地区の米軍属居住地問題で、島津連合区が住民の意向調査を実施したところ、中山泰市長が「調査結果の公表はあってはならない。住居の問題で賛否を問うこと自体が倫理上、人権上決してあってはならない」と発言したことに対し、「住民の意見を封殺し、民主主義社会を否定するものだ」と強い批判の声が上がった。・・・・
▼米軍属居住地問題:「調査自体が人権侵害」 京丹後市長、再主張(2015年09月12日 毎日新聞)
・・・・島津連合区が住民意向調査を実施したことについて、中山泰市長は「調査自体が人権侵害になる」との考えを改めて示した。・・・・「・・・・住民自治の名の下で人権を傷つけてはならない」と表明した。
・・・・市長は「私の公言した考えを島津区長が主体的に受け止め、主体的に判断した」と強調した。
■米軍の子供利用
■峰山こども園(経ヶ岬米軍FB9月18日,子供の顔は引用者削除)
谷川昌幸(C)
京都の米軍基地(80): 子供利用の日常化
進駐米軍は,日本各地で日本の子供たちを米国益のために利用している。目的それ自体たる子供自身の権利(特にプライバシー)の無視であり,子供搾取といってもよいであろう。
Xバンドレーダー基地を設置した京丹後市でも,米軍は,基地の軍人・軍属や米軍軍楽隊を市内の子供園(幼稚園・保育園)に次々と送り込み,子供たちに米軍文化を刷り込む一方,その様子を写真に撮り,本国納税者に見せ,巨額軍事費負担を納得させようとしている。動員されている軍人・軍属個々人は「善意」かもしれないが,これは,異文化の外国にやってきて軍隊がやるべきことではない。
こうした米軍の子供利用は,たとえば途上国援助に熱心な先進国NGOが,現地の貧しい人々やかわいそうな子供たちの写真を撮りまくり,本国支援者たちに見せ寄付を募るのと,構造的には同じことである。そこでは,本来なら何よりも尊重されるべきはずの現地の人々自身の尊厳が,多かれ少なかれ,二の次とされてしまっている。
米軍の京丹後市子供園訪問も,第一に米国納税者を納得させるためであり,第二に基地周辺の住民を慰撫するためである。そのためには,無邪気に喜ぶ子供たちの笑顔は不可欠である。顔の削除は,もってのほか。米軍ホームページやフェイスブックに,子供たちの無修正写真が氾濫するのは当然といえよう。
日本人が日本人の子供に対してこんなことをすることは許されない。が,先進国たる宗主国アメリカにとって,日本原住民の子供の人権など,鴻毛よりも軽い。
▼第14ミサイル防衛中隊&在日米陸軍軍楽隊の子供園訪問
■峰山子ども園(峰山町)(子供の顔引用者削除,経ヶ岬米軍FB9月1日)
■丹後子ども園(丹後町)(子供の顔引用者削除,経ヶ岬米軍FB8月28日)
谷川昌幸(C)
京都の米軍基地(79): 「パンとサーカス」と軍事支配
京丹後にとって,8月24日の穴文珠祭は,米軍による「パンとサーカス(食事と娯楽)」饗応が軍事支配と表裏一体であることを,事実をもって示してくれた最初のまたとない機会となった。
穴文珠祭では,米軍がホットドッグとポップコーン(食事)を振る舞い,米軍軍楽隊演奏(娯楽)で地元民を楽しませた。まさしく「パンとサーカス」。ここに市長,区長等々の地元有力者,名士らが参加していたことはいうまでもない。
その一方,おそらくほぼ同時期に,隣の米軍基地では,Xバンドレーダーの能力強化作業が着々と進められていた。作業に当たったのは,米軍通信担当軍人,レイセオン社とロッキード・マーチン社の社員,そして「現地社員(日本の下請軍需産業社員?)」である(米陸軍HP,8月25日)。見方によれば,穴文珠祭での「パンとサーカス」による住民饗応は軍事基地強化のカモフラージュといってもよいかもしれない。さすが,「パンとサーカス」の先進国だ。
米軍Xバンドレーダーは,どのようなものか? はっきりそうとは明示されていないが,米陸軍HP(8月25日)によれば,経ヶ岬レーダードーム内のレーダー本体は,下図のものらしい。レーダー能力強化担当者らしき人々がレーダードームの横に立っている写真の前の写真に,このレーダーが写っているのだから,たぶん間違いないだろう。
■整備担当らしき人々とレーダードーム/ドーム内レーダー(米陸軍HP,8月25日)
これは,8月25日以前であれば,「軍事秘密」であり,たぶん「特定秘密」だ。が,宗主国が流したのだから,そのあとで従属国臣民が転載しても,よもや重罪に問われることはあるまい。
こと,さほどに従属国臣民は卑屈にして屈辱的な立場にある。「パンとサーカス」饗応に浮かれていては,気付きもしないだろうが。
谷川昌幸(C)
京都の米軍基地(78): パンとサーカス
「パンとサーカス」あるいは「酒食と見世物」は,古来,支配権力が住民を懐柔し服従させるため使用する常套手段である。
これは,古代ローマについてと同様,現代日本の京丹後についても,そのまま妥当する。現在,京丹後最強の権力は,事実上,進駐米軍。したがって,その米軍が,彼らの古き良き伝統に忠実に従い,原住民たる京丹後市民に対し,「パンとサーカス」の提供を始めたのは,至極当然の成り行きといえよう。
米軍とその奉公人たる防衛省の提供する「パンとサーカス」は,目白押し。以下,その一部を紹介する。
▼盆踊り参加
14th Missile Defense Battery participated “BON dance” at the Kyotango City hall, Mineyama, on Aug.14 and 15 and enjoyed Japanese traditional culture with the local community.
第14ミサイル防衛中隊は8/14,15に京丹後市役所で開催された盆踊り大会に参加し、地域の方と日本の伝統的文化を楽しみました。(経ヶ岬米軍FB,8月17日;赤強調引用者)
■微妙な表現の綾はむろん意図的。そこが「パンとサーカス」の巧妙さ。子供の顔は引用者消去(米軍は原住民肖像権無視)。
▼日米交流事業
■日米交流屋台+米軍軍楽隊演奏+花火+盆踊り。主催:近畿中部防衛局/会場:穴文珠。(経ヶ岬米軍FB,8月17日;京丹後市日米友好協会FB,8月18日)
▼在日米軍軍楽隊演奏会(1)
■主催:米陸軍経ヶ岬通信所/連絡先:近畿中部防衛局。(経ヶ岬米軍FB,8月13日;京丹後市日米友好協会FB,8月18日;京丹後市観光協会FB,8月18日)
▼在日米軍軍楽隊演奏会(2)
■主催:米陸軍経ヶ岬通信所/連絡先:近畿中部防衛局。(経ヶ岬米軍FB,8月13日;京丹後市日米友好協会FB,8月19日,)
谷川昌幸(C)
京都の米軍基地(77):裁かれない米兵犯罪
米軍経ヶ岬基地は,在日米軍基地の一つであり,したがって他の基地周辺で起こっていることが京丹後でもいずれ起こると覚悟すべきである。京丹後だけは例外と考えるのは非合理であり,根拠なき単なる希望的観測にすぎない。では,何が起こるのか? この問題を考えるのに参考になるのが,この本:
●布施裕仁『日米密約 裁かれない米兵犯罪』岩波書店,2010年
「なぜ米兵犯罪は裁かれないのか。強姦や暴行の被害者が裁きを求めて得られないのは,なぜなのかーー。徹底的取材で明らかになった日米密約とその関連文書には,米兵犯罪を日本で裁かせないようにするための数々の巧妙なトリックと日米両政府の申し合わせが隠されていた。・・・・現代の治外法権を追う。」(表紙カバー)
本書によれば,米軍人・軍属らによる犯罪や重大事故が,いまも日本各地で幾度となく繰り返されている。その要因はいくつか考えられるが,最も根本的なものの一つが米軍人・軍属には日本の警察権や刑事裁判権が十分には及ばないこと。
米軍人・軍属は,日米地位協定により,基地に逃げ込めば日本側には逮捕されず,また「公務中」の犯罪や交通事故は米軍側に裁判権がある。(「公務中」か否かは米軍側が判断。)さらに,「協定」以外にも,「非公開取り決め」や「密約」が巧妙に幾層にも仕組まれており,米軍人・軍属は不起訴にされたり,刑が著しく軽くされたりする事例が多数ある(vii頁)。いわば「現代の治外法権」。これでは,米軍人らの犯罪や交通違反がなくならないのは当然といえよう。
▼米軍人らの犯罪(2001~08年,17頁表2より作成)
[罪名] | [起訴(人)] | 「不起訴(人)] | [起訴率(%)] | [起訴+不起訴(人)] |
殺人 | 3 | 1 | 75 | 4 |
傷害暴行 | 64 | 174 | 27 | 238 |
強姦 | 8 | 23 | 26 | 31 |
強制猥褻 | 2 | 17 | 11 | 19 |
住居侵入 | 17 | 78 | 18 | 95 |
強盗 | 33 | 13 | 72 | 46 |
窃盗 | 37 | 474 | 7 | 511 |
車等による 業務上過失 死傷 |
427 | 2140 | 17 | 2567 |
この数字は,表沙汰になったものだけ。それでも,8年間で,これだけある。被害者の中には,米軍人・軍属らの享受する「現代の治外法権」に絶望し,被害の訴えを諦め,泣き寝入りしてしまった人も少なくないはずだ。
京丹後は,「国益」のために米軍基地を受け入れた。その代償も,むろん地元京丹後が支払うことになる。お国のために滅私奉公!
【参照】伊波洋一・柳澤協二『対論 普天間基地はなくせる』かもがわブックレット,2012 [2016年1月26日追加]
[伊波](米軍基地の)残し方に二つの大きな問題があります。・・・・
一つは、米軍基地の運用を米軍に委ね、日本政府の関与を認めないというものです。つまり、米軍基地の使用権の白由です。
もう一つは、米軍人とその家族及び軍属が起こす犯罪について、目本政府が責任を問わないというものです。日本に裁判権があっても、それを放棄するという密約がある。
最近、沖縄で帰宅時の危険運転の事故で軍属が若者を死亡させ、目本側に裁判権がないことが問題になりました。なぜかと言うと、公務中の事故はアメリカが裁くことが取り決められているからです。でも、アメリカでは一九六〇年の連邦最高裁判決で戦時以外は軍属を軍法会議で裁いてはいけないということが確定している。つまり、軍属は日本でもアメリカでも裁かれない。飲酒運転であっても帰宅中は公務とされます。こういうことがずっと続いてきたのです。(7頁)
谷川昌幸(C)
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