ネパール評論

ネパール研究会

ネパール憲法AI探訪(26): 国歌(2)

3.タブーとしての国歌
国旗や国歌は,不用意に触れると祟られる恐ろしいタブーだ。特に国歌の方は,歌詞と曲があって,そのメッセージが国旗よりはるかに明確で,情に直接的に訴えかけるため,これに異を唱えると袋叩き,ひどい目に合う。

日本では,「君が代」を歌わなかった生徒たちが,先生から「非国民」と罵られたり,「体罰」を受けたりしてきた。教師の方も,国歌を拒否すれば懲戒処分。悩み苦しみ自殺に追い込まれてしまった校長さえ出てしまった。その一方,文科大臣は国歌なしの卒業式は「恥ずかしい」と非難し,五輪組織委員長は「国歌を歌えないような選手は日本の代表ではない」と断罪した。

同様のことが,外国でも頻発している。アメリカでは,国歌演奏に抗議したアメフト選手を大統領が激しく非難し,のちに,その選手を公告に使用したスポーツ用品メーカーが攻撃され,株価が急落した。また,オーストラリアでは,国歌を歌わなかった小学生が,両親もろとも,有力政治家から執拗に非難攻撃された。ネット検索すれば,同様の事例が多数,表示される。

国歌は,起立静聴や斉唱が何らかの形で法的に義務づけられておればむろんのこと,たとえそうでなくても,それの無視や拒否には,想像を絶するほどの非難・攻撃が浴びせられる。国歌は,一般に愛国ナショナリズム讃歌であり,みだりに触れてはならないタブーなのだ。

【参照】
日本における国旗国歌問題,WIKI
・Scott Bomboy, Does the United States or other countries compel National Anthem etiquette?, 2016/08/31
・藤森修一「国旗掲揚、国歌斉唱に関する米国の裁判判例及び諸外国の実態
米国代表女子W杯国歌斉唱「拒否」がネットで賛否,スポニチ,2023/07/24
・土屋英雄「アメリカ国旗宣誓・敬礼拒否、 国旗焼却事件等に関わる諸判決
国歌斉唱の起立拒んだ9歳女児、政治家が集中非難 オーストラリア,CNN, 2018/09/13

240513a東京都教育庁

240513b高文研

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2024/05/13 at 14:54

ネパール憲法AI探訪(25): 国歌(1)

1.憲法の国歌規定
ネパール憲法第9条は,国歌,国章,国花,国色(国の色),国獣,国鳥について定めている。

第9条 国歌等
(1)ネパールの国歌は,付則2に定める通りとする。
(2)ネパールの国章は,付則3に定める通りとする。
(3)ネパールの国花はシャクナゲ,国色(国の色)は深紅,国獣は牛(गाई)および国鳥はニジキジ(ロフォフォルス,डाँफे)とする。

付則2(第9条(1)関係) ネパール国歌
  幾多の花からなりし花環,われらネパール人民
  メチからマハカリまで,主権はあまねし
  勇者たちの勝ち取りし自由と平安
  知恵と平和の地,タライ・丘陵・ヒマラヤ
  分かたれることなき愛しき祖国,ネパール
  多様の民族,言語,宗教,そして文化
  われら進取の国,万歳万歳,ネパール

2.ネパール国歌の概要
ネパール国歌には,いわゆる曲名はない。歌詞の冒頭部分をとり,सयौं थुँगा फूलकाあるいはसयौं थुँगा फूलका हामीなどと呼ばれている。

ネパールでは2006年,民主化運動成功により議会政党側が権力を奪取,「王国賛歌」としての旧国歌を廃止し,公募により新国歌を選定することになった。

2006年11月,応募1272作品の中から詩人ビャクル・マイラの詩が,また翌2007年8月には候補6曲の中からアルバル・グルンの曲が,それぞれ選ばれ,合わせて国歌とすることが正式決定された。(参照WIKI

このネパール国歌は,「国歌」ということもあって,英語など外国語への公式訳はない。そのためか,英訳,日本語訳など,おびただしい数の外国語訳が出ている。人力もあれば,AI訳もある。上記掲載の日本語訳は,それら多くの訳詩を参考にして,私なりに試訳したもの。歌詞として不自然すぎるところに気づけば,そのつど修正の予定。

【参照】ネパール国歌演奏
Nepal National Anthem with Subtitles
Nepal National anthem Nepali & English lyrics
「何百もの花束」日本語訳付き
Nepali Army playing National Anthem of Nepal during IndraJatra

240507

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2024/05/07 at 10:08

ネパール憲法AI探訪(24): AIと著作権

改めて言うまでもないことだが,AIや自動翻訳の進歩は驚異的。この「ネパール憲法AI探訪」の開始は2023年6月のことだが,この,わずか10カ月ほどでも,それらは信じられないほどの革命的な進化を遂げた。それらの利用は,「ネパール評論」でも,もはや避けらないどころか,むしろ加速度的に増加する一方だ。

いまや,自動翻訳は,英⇌日はよほどひねくれた文章でない限り,日常的使用ではほぼ問題なし。もはや学校での実用英語教育は不要。ネ⇌日も翻訳精度が日々改善されてきている。

また,様々な問いに対するAI回答も,出来・不出来のバラツキはまだ大きいものの,比較して最善の回答を探せば,大いに参考になるものが見つかる確率が高くなってきた。学校での暗記型教育もまた不要になりつつある。

ただし,ここで注意すべきは,いまのところAIは回答作成に使用した資料の出典を明示しないことが少なくないこと。これでは,回答の妥当性を確かめようがない。いや,それ以上に,AI回答が参照先資料の無断盗用かどうかの判断も難しい。

AIは今後さらに加速度的に進化し,AIなしでは事実上,生活は出来なくなってしまうに違いない。・・・・が,たとえそうであっても,AIによる著作権・著作人格権の侵害に加担するのだけは,平に,平に御免こうむりたい。それは,人間人格のAI化,人間の非人間化に他ならないからだ。

AIは他者の著作権を尊重しますか?

240429

ChatGPT回答
はい、AIは他者の著作権を尊重します。著作権は知的財産権の一形態であり、他人が創作したコンテンツや作品を適切に保護するための法的枠組みです。AIは著作権を尊重し、他者の著作物を不正に使用したり、無断で再利用したりすることはありません。
Gemini回答
AIが著作権を完全に尊重するかどうかは、現時点では明確ではありません。
AIの学習データ: AIは、著作権で保護された著作物を含む大量のデータで学習されます。この学習過程自体が著作権侵害に該当するかどうか、法的な議論が続いています。
AI生成コンテンツ: AIが生成する文章、画像、音楽などは、既存の著作物と類似している場合があり、著作権侵害とみなされる可能性があります。
著作権の権利者: AIによる創作活動が、人間のクリエイターの著作権利益にどのような影響を与えるのか、まだ十分に理解されていません。
Perplexity回答
AIは他者の著作権を尊重する必要があります。以下の点に留意する必要があります。
– AIの学習データとして他者の著作物を利用する場合、著作権者の許諾が必要です。許諾なく著作物をコピーしてデータセットに含めることは、著作権法上の複製権を侵害する可能性があります。
– ただし、フェアユースなどの例外規定に該当する場合は、許諾なくデータセットに含めることができます。
– AIが生成したコンテンツに、既存の著作物との類似性や依拠性が認められれば、著作権者は著作権侵害として損害賠償請求や差止請求ができる可能性があります。
– 生成AIのデータ入力時には、第三者の著作権を有するデータの利用に注意を払う必要があります。
したがって、AIは他者の著作権を尊重し、適切な利用ルールに従う必要があります。

追加2024/05/03】Google英語版,AI優先表示へ
今朝,Google英語版で検索したら,何と,AI回答が先頭に表示された。Google開発のAIとのこと。かなり優秀そうだが,典拠の詳細は不明。

恐ろしいことになり始めた。情報のAI化が加速度的に進行し,AI支配社会が到来する。人間人格のAI化,私=AI被造物。世界も人間もAIにより造られる。近未来の神はAIなのだ!

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2024/04/29 at 17:14

ネパール憲法AI探訪(23): 国旗の図像学(10)

5.ネパールの3角形国旗[続]
(7)独立堅持の誇りとしての二重3角形国旗
ネパール国旗は,具体的な解釈には揺れがあるにせよ,3角形であるという点では,現在では世界唯一の国旗である。

前述のように,南アジアには3角旗を国旗とする「国」は多数あった。たとえば,WIKI, “Flags of Indian princely states”を見ると,二重3角旗もあれば,顔面つきの太陽を描いた国旗もある。特に,デワ国(DewaJunior)の国旗は,図形的に,外形はネパール国旗とそっくりである。

そうした多くの国々のうち,ネパールだけが,現在に至るまで3角旗を「国旗」として堅持してきた。ネパール国民が国旗を誇りに思うのは当然であろう。

240421e 240421f240421g ■Dewas State (Junior Branch) / Ajaigarh State / Benares State (WIKI)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2024/04/25 at 09:34

カテゴリー: インド, 宗教, 憲法, 政治, 文化, 歴史

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ネパール憲法AI探訪(22): 国旗の図像学(9)

5.ネパールの3角形国旗[続]
(6)ネパール国旗:2015年憲法
ところが,ネパールが,マオイスト人民戦争とそれに続く民主化運動を経て,王制を廃止し連邦共和制に大きく革命的に体制変換すると,国旗をどう変えるかが重要問題の一つとなった。

たとえば,2009年9月の制憲議会において,デブ・グルン議員(UCPN-M)は,「月と太陽を描いた旗は王制を表しており,多民族共和国の象徴たりえない。国旗は,包摂比例民主共和国に相応しいものに変えるべきだ」と主張した。*Maoist want Nepal’s national flag changed, Reuters, 2009/09/17

【参照】マオイストの国旗案「13星紅旗」

また,国民戦線,サドバーバナ党などからも,新憲法を制定するのだから国旗も新国家を象徴する図形にすべきだなどと,様々な国旗変更要求が出された。*Nepal: Proposals to change the flag (Kathmandu Post, 2009/09/17)

これに対し,現国旗維持を主張したのが,NC,UMLなど保守ないし穏健派諸党。たとえば,UMLのアグニ・カレル議員は,こう主張した:
「わが国の国旗はユニークだ。それ自体,アイデンティティを有し受容されている。国旗を変えてネパールが新しくなるわけがない。太陽と月は,わが国がそれらと同様,永遠たることを意味しているのだ。」*Nepal: Proposals to change the flag (Kathmandu Post, 2009/09/17)

また,NCのB・ニディ議員も,こう主張した:
「わが国旗はユニークであり,唯物論や宗教を持ち出して論じるべきものではない。国旗問題には,[図形の意味の]再定義で対応すべきだ。・・・・太陽と月は,ヒンドゥーだけの象徴ではない。他の宗教もそれらを敬愛している。」*Nepal: Proposals to change the flag (Kathmandu Post, 2009/10/15)

国旗変更を主張していたUCPN-Mは,当時,議会最大政党だったが,その国旗変更案は,NC,UMLなどの反対多数で否決され,結局,国旗問題は,国旗解釈の変更で決着することになった。

その結果,1990年憲法第5条の文言のうち,「伝統的に継承されてきた」の部分だけが削除された。強硬な国旗変更要求に,一部,譲歩したわけだ。

では,これにより国旗の意味(解釈)は,どうなったのか?

憲法規定の変更なのだから,当然,ネパール政府の公式解釈が出されているはずなのだが,いくら探しても見つからない。そこで,仕方なく,久し振りにAI先生にお伺いを立てた。

回答は,明快そのもの。たとえば,perplexity英語版によれば,ネパール政府は次のように説明しているそうだ:
質問】ネパール国旗の公式解釈は?
回答】・二重の3角形=ヒマラヤの象徴,ヒンドゥー教と仏教の象徴
・月=ネパール人民の冷静にして平和的な国民性の象徴,寒冷なヒマラヤ高地の象徴
・太陽=ネパール人民の決断力と実行力の象徴,タライなど高温地域の象徴
・深紅色=ネパール人民の勇敢の象徴,国花シャクナゲの色
・濃青色の縁取り=仏陀の頃から享受されてきた平和と調和の象徴
・国旗の起源=マハバラータと,プリトビ・ナラヤン・シャハによる国家統一

これは確かに明快な回答だが,参照先に政府機関は一切なく,少々,勇み足のような気がする。が,「政府公式解釈」と断言しなければ,上記のような国旗解釈が,現在,広く認められていることは確かである。政府自身も,おそらくこのような国旗解釈を,事実上,容認し,国政にあたっているのではないかと思われる。

むろん,政府の国旗解釈がはっきりしないので,今後,国旗の意味付けが大きくぶれ,紛争を引き起こす恐れが,あるにはあるのだか・・・・。

150730b■カーラバイラブ前の国旗(2015/07/30)

【参照】国旗の変更 ヒンズー教王国象徴としてのネパール国旗

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2024/04/24 at 17:13

カテゴリー: 宗教, 憲法, 政党, 政治, 文化, 歴史

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ネパール憲法AI探訪(21): 国旗の図像学(8)

5.ネパールの3角形国旗[続]
(4)ネパール国旗:1962年以前
ネパール国家そのものの国旗を誰が,いつ定めたかは,前述のように判然とはしない。「ネパールの旗の歴史」などによれば,二重3角旗を国旗にしたのはプリトビ・ナラヤン・シャハ国王であり,その後,ジャンガ・バハドゥル・ラナが月と太陽をそれぞれのラージプートをより具象的に象徴する顔面に変えたとされる。参照:A Flag history of Nepal; Flag of Nepal

また,当初,2つの3角図形が上下に並べてあったのが20世紀前期に現行の一部重なった二重3角旗に変更され,さらに旗に描かれている顔も,幾度か,部分的に変更されたという。これらの変更理由は不明。おそらく,1962年憲法制定までは,国旗規定も明確ではなかったのであろう。
240421dList of flags of Nepal

(5)ネパール国旗:1962年憲法~1990年憲法
ネパール国旗が憲法で明文規定されたのは,1962年憲法においてである。

1960年,マヘンドラ国王は議会を解散して全権を掌握,自ら非政党パンチャヤト制の新憲法制定に着手した。その一環として,国王は国旗をも改めることにし,図案作成を著名図案家シャンカー・N・リマールに命じた。

命を受けたリマールは,既存の二重3角形国旗から顔を削除し月と太陽のデザインを一部修正した図案を作成し,国王に答申した。国王は,この図案を採用,1962年憲法(パンチャヤト憲法)の第5条と付則1で,これを国旗として詳細に明文規定したのである。
240103-1■ネパール国旗(1962-)

ここで注目すべきは,たしかに国旗の月と太陽から目・鼻・口など顔の部分は削除されたものの,二重3角形も配色もほぼそのまま継承された上に,憲法本文で「ネパール国旗は伝統的に継承されてきた(as handed down by tradition)」と明言したこと。1962年憲法規定の国旗も,より抽象化されたとはいえ,依然としてヒンドゥー教伝統文化の図形化に他ならなかったのである。

この国旗は,民主化運動成功により成立した立憲君主制の1990年憲法にも,そのまま継承されることになる。

【参照】国旗の変更 ヒンズー教王国象徴としてのネパール国旗

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2024/04/23 at 11:20

ネパール憲法AI探訪(20): 国旗の図像学(7)

5.ネパールの3角形国旗[続]
(2)シャハ王家の旗
ネパールが「国旗」を必要とするようになったのは,当然ながら,プリトビ・ナラヤン・シャハが国家統一し「ネパール国家」が成立して以降のことである。

シャハ家は,16世紀半ば以降,王家としてゴルカを統治してきた。王家はもともと「月のラージプート(chandravanshi, 月種族)」であったが,ゴルカ王国の旗は,宝剣を挟んで三日月と太陽が描かれた単一の三角旗であった。したがって,おそらく,この王国の旗とは別に,月だけを描いた王家の旗も早くからあったのであろうが,いまのところ詳細不明(王家3角旗の作成使用は,後述のラナ家3角旗とセットかもしれない?)。

240421aゴルカ王国旗 240421bシャハ家旗

いずれにせよ,このシャハ家のプリトビ・ナラヤン・シャハが1768年,国家統一すると,当然ながら,新生ネパール国家そのものの旗,つまり「ネパール国旗」が必要になる。

が,残念ながら,「ネパール国旗を誰が創ったかを知る人は一人もいない」(Dan Nosowitz, “Decoding the Unusual Shape of the Nepali Flag,” 2018/09/03)。

(3)ラナ宰相家の旗
シャハ王家の「月」に対し,ラナ家の方は,「太陽のラージプート(suryavamshi,日種族)」として,「太陽」を自らのシンボルとしていた。

ラナ家の先祖はクンワル家で,ゴルカ王国でシャハ王家に軍人として仕えていたが,シャハ王家によるネパール統一後,首都となったカトマンズに王家とともに移った。

ところが,シャハ王家は,国家統一したものの,統治が安定せず,権力争いが激化した。その中で頭角を現したのが,クンワル家。ライバルを次々と排除していき,ついに1846年,ジャンガ・バハドゥル・クンワルが宰相(首相)に任命され,実権を掌握した。そして同年,国王より「ラナ」姓をも授けられ,名実ともに「ラナ宰相家統治」を始めた。このラナ宰相家統治は,「ラナ家専制」などとも呼ばれ,1951年まで1世紀余も続く。

このラナ宰相家の旗が,太陽を描いた3角旗だが,この旗も起源不明。宰相家統治開始前後に,王家3角旗と対で定められ使われ始めたのかもしれない。
240421cラナ宰相家旗

いずれにせよ,この種の太陽や月を描いた3角旗そのものは,インド大陸で古くから多数見られるので,シャハ王家もラナ宰相家もその古来の伝統にのっとって自家の旗を決め,早くから使用していたのかもしれないが,詳細は不明。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2024/04/22 at 08:45

寺院の花まつり

今日は,近くのギャラリーでハープ演奏を聴いた後,隣の森の中にある平林寺に行ってきた。花まつりが行われており,寺は多くの参詣者でにぎわっていた。*参道横切るマルーン色 宝塚の平林寺

240407

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2024/04/07 at 17:14

カテゴリー: 社会, 宗教, 文化

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活気あふれる古寺

近くの中山寺に花見に行ってきた。桜だけでなく,馬酔木やマンサクなども満開。春爛漫であった。

この寺は,西国24番札所。由緒ある古寺だが,五重塔など比較的新しい建物が多い。そのこともあってか,境内は近現代的に美しく整備・管理され,安産祈願,初参り,七五三など,葬式や墓参り以外の様々な行事も,あれこれ工夫し,多数,執り行われているようだった。境内は様々な参詣者で活気に満ちていた。

伝統に拘泥しすぎない――これも仏教寺院のこれからの行き方の一つであろう。

240406

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2024/04/06 at 18:33

カテゴリー: 宗教, 文化, 歴史

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ネパール憲法AI探訪(19): 国旗の図像学(6)

5.ネパールの3角形国旗
(1)ヒンドゥー教の3角旗
ネパールの3角形国旗が「3」や「3角形」の神秘的魅力をバックにしていることは明らかだが,より具体的・直接的には,いうまでもなく,それはヒンドゥー教の3角図形や3角旗の伝統を正統に継承するものに他ならない。

たとえば,古典「バガヴァッド・ギーター」(マハーバーラタ)の周知の場面を描いたこの水彩画(1830年頃制作,大英博物館所蔵)。

240404a 240404bGouache painting on paper, part of an album of seventy paintings of Indian deities

ここでは,馬車に乗ったアルジュナに御者を務めるクリシュナが教えを説いているが,その馬車の上には2棹の3角旗がはためいている。クリシュナ側の旗に描かれているのは神猿ハヌマーンだが,アルジュナ側の旗には,そのものずばり「太陽」と「月」が描かれている。

「太陽」と「月」の配置が上と下,逆ではあるが,それを除けば,このバガヴァッド・ギータ画の二重3角旗は,現在のネパール国旗と瓜二つではないか!

「バガヴァッド・ギーター」は古典中の古典だし,クリシュナとアルジュナも人気の高い神々である。むろん,この大英博物館所蔵画そのものは1830年頃の作だが,このような場面を描いた絵そのものは昔から他にもたくさんあったであろうし,また,それらに描かれた二重3角旗もネパール各地にあったにちがいない。

たとえば,いまでもネパール各地の寺院には,金属製の二重3角旗(Dhoja)が掲げられている。いつからか判然とはしないが,相当古いものが多いことは確かだ。(撮影寺院名失念。同様の旗はパシュパティナートなど他にも多数ある。)

240404d 240404f ■カトマンズ(2013/11&2015/07)

240404c ■バクタプル

240404e 240404i ■ブンガマティ(2013/11)

ネパールが「国家の旗」として国旗を定めたのは,18世紀末に国家統一されて以降のことだが,二重3角旗そのものは,ネパール各地の寺院に古くからあり,その地域の目印ないし象徴となっていたにちがいない。もしそうだとすると,ネパール古来の二重3角旗を継承するネパール国旗は,世界最古の歴史を有する国旗の一つということになるであろう。

【参照】国旗の変更 ヒンズー教王国象徴としてのネパール国旗

【本頁,AI不使用】

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2024/04/05 at 11:27