ネパール評論

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中ネ交通インフラ建設,印がますます警戒

中国が,チベットからネパールに向けての交通インフラ建設を加速させている。9月15日には,シガツェ和平空港(軍民共用)からシガツェ市内までの高規格道路が完成した。ラサからシガツェに至るG318号線の一部で幅員25m,イザというときには軍用機の離発着が可能だそうだ。

 ■シガツェ和平空港~シガツェ市(Google)

鉄道は,ラサからシガツェまではすでに完成しており,2020年までにその先の吉隆鎮(Kyrong, Gyirong, Kerung)まで延伸の予定。吉隆鎮からネパール側のラスワガディまでは30㎞ほど,カトマンズまででも120㎞余り。山岳地で難工事が予想されるが,すでに中国企業数社が事業化をネパール側に打診している。

この9月6~11日に公式訪中したKB・マハラ副首相兼外相も,このルートでの鉄道建設につき,中国側とかなり突っ込んだ話し合いをした模様だ。「一帯一路」のネパール経由ルートは,ラサ~シガツェ~ラスワガディ~カトマンズが本命となったとみてよいであろう。

 ▼シガツェから鉄道3線延伸,2030年までに(中国日報*3)
 

この中国南進に神経をとがらせているのが,インド。たとえば,国際政治学者のA・ルフ(*1)は,次のように指摘している。

「パキスタン,バングラデシュ,スリランカ,ネパールはいまや北京の衛星国家である。」
「ネパールは,旧シルクロードを今日に再生し名実ともに超大国になろうとする中国の大きな野望から最大の利益を得ている国の一つであり,これこそが,対印関係悪化を警戒しつつも,ネパールをしてインドをいら立たせても構わないという態度をとらせている理由である。」
「中国と南アジアとの経済関係は,『一帯一路』によりさらに強化され,これが安全保障関係強化にもつながるものとみられている。これを,インドは危惧しているのである。」(*1)

ネパールなどを「衛星国家」と呼ぶのはいささか言いすぎだが,「一帯一路」の旗を翻し,着々と南下する中国をインドが警戒するのは当然といえよう。

 ■吉隆鎮~ラスワがディ(Google)

*1 ABDUL RUFF, “China, Nepal to focus on cross-border Railway,” Modern Diplomacy, SEP 19, 2017
*2 Ramesh Bhushal, “Nepal dreams of railway linking China to India,” 中外対話,22.09.2017
*3 Cui Jia and Hou Liqiang, “Himalayan rail route endorsed,” China Daily, 2016-08-05
*4 Om Astha Rai, “The Tibet Train: China’s railway arrives in Kerung in 4 years, Nepal should get its border infrastructure in place by then,” https://nepalitimes.atavist.com/the-tibet-train
*5 “Feasibility study for railway projects in Nepal under way,” Himalayan Times, June 10, 2016

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2017/09/25 at 14:10

多国間共同訓練に自衛隊参加

ネパールで多国間共同訓練(GPOI)「シャンティ・プラヤ3」(3月20日~4月3日)が始まり,日本の自衛隊も「中央即応集団」の隊員2名が教官として参加している。(中央即応集団はUNMINにも派遣された。)
 【参照】ネパールでのPKO訓練に日本も参加カーターセンターと米太平洋軍とネパール(2)

GPOIは,2005年度から始まった米国支援の国際平和活動のための訓練プログラム。アジア地域では,米国太平洋軍主導で,ネパール,バングラデッシュ,カンボジア,タイ,インドネシア,マレーシア,モンゴルで開催されてきた。

ネパールでの訓練作戦名「シャンティ・プラヤ[プラヤス]」は,「平和への努力」の意。第1回はGPOI発足以前の2000年だが,GPOI発足後はそのプログラムとして2013年に第2回が実施され,そして現在,3回目が実施されている。

今回の「シャンティ・プラヤ3」の実施場所は,以前と同様,パンチカルの「ビレンドラ平和活動訓練センター」。参加国はパキスタン,バングラディシュ,スリランカ,タイ,インドネシア,マレーシア,ベトナム,ガーナ,オーストラリア,英,米,日など28か国で,参加人員は計1024人。

この「シャンティ・プラヤ3」訓練はネパール国軍主催,米太平洋軍後援ということになっているものの,実際には米軍主導の感は否めない。開会式ではハリー・ハリス・Jr米太平洋軍司令官が,「名誉ある平和」のための「平和への努力」を訴え,「ネ米関係は強力であり,さらに強化されていく」と語った。また,A・B・テプリッツ駐ネ米大使も,米国による「シャンティ・プラヤ」支援の意義を力説した。

「シャンティ・プラヤ3」は,たしかに国際平和活動のための訓練だが,実施場所のパンチカルはチベット国境の近く。そのような場所での米軍色の濃い訓練に,日本政府は陸自最精鋭の中央即応集団から教官2名を派遣している。面白く思わない国もあるのではないか?


■シャンティ・プラヤ3(国軍HP)

■米太平洋軍ツイート


■米太平洋軍司令官・駐ネ米大使・プラチャンダ首相(米大使館HP)

*1 “Shanti Prayas-III begins today,” Kathmandu Post, Mar 20, 2017
*2 “Exercise Shanti Prayas III kicks off, 28 countries taking part,” Himalayan Times, March 20, 2017
*3 “Exercise Shanti Prayas –III,” nepalarmy.mil.np/covernews1.php?
*4 “Global Peace Operations Initiative (GPOI),” US Department of State
*5 “Shanti Prayas Exercise Commences in Nepal,” U.S. Department of Defense, March 21, 2017

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2017/03/28 at 10:52

蘭州発加徳満都行,一番列車発車

中国甘粛省蘭州から5月11日午後,加徳満都(カトマンズ)に向け,一番列車「蘭州号」が発車した。43車両にコンテナ84個積載。ラサ経由でシガツェまで行き,そこでトラックに積み替え,キロン経由でカトマンズまで運ばれる。定期運行。

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  ■蘭州号(*1)

新華社掲載の写真を見ると,西蔵鉄道の線路は堅固な造りだし,カトマンズ行車両の編成もなかなか立派。さすが,中国はすごい。いまや鉄道大国だ。鉄道建設国際入札で日本が負けるのもむべなるかなだ。

といっても,まだシガツェから先が未完成のため,蘭州からカトマンズまで10日間もかかる。いまのところ,経済的にはあまりメリットはないだろう。しかし,チベット鉄道延伸計画は進んでおり,カトマンズまで結ばれるのも,そう遠い先のことではあるまい。そうなれば,中ネ間の交通は格段に便利となり,コストも下がり,人と物の往来が劇的に拡大するだろう。5月11日発車の一番列車は,その露払い,前祝といったところであろう。
  (注)中国各地からの鉄道ツアーはすでに多数売り出されている。
   160515■西安中信国際旅行社HP

さらにもう一つ,当面,これよりもはるかに重要といってよいのが,加徳満都行一番列車発車のもつ政治的な意味(*2)。先の連立組み換え首相交代騒動は,裏でインドが画策していたといわれている。インドは,現行憲法堅持で親中・反マデシのオリ政権を嫌い,コングレスに働きかけマオイストをUMLから引き離し,憲法改正・親印・親マデシのNC=マオイスト政権をつくらせようとした。この政権転覆のたくらみは,一時成功するかに見えたが,マオイストがオリ首相に「9項目合意」を呑ませることによりUMLとの連立継続をとったため,頓挫してしまった。

この間,オリ首相は,バンダリ大統領の訪印をドタキャンし,さらに駐印大使の召還さえも断行してしまった。これは重大な決断であり,対印関係はいま危機的な状況にあるといっても言い過ぎではあるまい。

そのような中,カトマンズに向け,中国から一番列車が発車! それは中ネの時間距離的接近をビジュアルに誇示するものであると同時に,当然,それは両国の政治的接近をも世界に向け強烈にアピールしている。新華社掲載の「加徳満都行蘭州号」写真の,それは,それは巨大なこと! 

といっても,むろんインドが,ネパールにとって,依然として地理的にも文化的にも最も近い国であることに変わりはない。地政学的に,ネパールはインド勢力圏内にある。そのネパールへの中国の急接近――ネパール政治に何かこれまでとは異なることが起こる可能性はある。それが何かは,まだわからないが。

*1 Liang Jun, “China opens its first combined transport service to Nepal,” People’s Daily Online, May 12, 2016.
*2 SANJEEV GIRI, “Beijing ‘sends’ freight train for Nepal,” Kathmandu Post, 2016-05-13.
*3 Ananth Krishnan, “China opens new trade route to Nepal amid India tensions,” India Today, May 12, 2016.

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/05/15 at 11:20

カテゴリー: インド, 経済, 外交, 旅行, 中国

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中国貿易展

カトマンズの法学部・言語学部前を歩いていたら,向かいに派手な宣伝看板が出ていた。

 ネパール・中国チベット経済貿易展 2015

さっそく中に入ってみると,ブリクティマンダップの会場もなかなか派手。展示は衣料,雑貨,食品が中心だが,中央には,ピカピカのバイク「珠峰」号も数台,展示してあった。

中国の対ネ輸出も,いずれこのようなバイクや車などの工業製品に比重を移していくであろう。航空機ですら,小型機商談は早や中国製中心となりつつある。日の丸MRJは,ネパールでは(そして他の途上国でも),お呼びではないということになりそうだ,たぶん。

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谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/12/17 at 20:40

カテゴリー: ネパール, 経済, 中国

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チベット鉄道ネパール国境延伸,2020年

中国日報(4月7日)が,また上海ーチベット鉄道のネパール国境延伸について報道した。

チベット鉄道は,すでに2014年8月15日,ラサ・シガツェ間(253km)が開通。次は,シガツェ・吉隆[Gyirong,Jilong]間(540km)を2020年までに開通させると,習主席が,この3月のBOAOアジアフォーラムにおいて,ヤダブ大統領に語ったというのだ。

150409b ■左より吉隆・シガツェ・ラサ(Google)

このBOAOアジアフォーラムでは,ヤダブ大統領がシルクロード経済圏とアジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加を積極的に表明し,中国側を喜ばせた。

もちろん,ネパールには参加のメリット大だ。A.ギリによれば,ネパール政府高官がこう語ったという。――道路等のインフラ建設には巨額の資金が必要だ。「だから,ネパールとしては,400億ドルの基金で始められるシルクロード構想やネパールも創設メンバーになる中国主導アジアインフラ投資銀行を通した中国からの援助を,さらに多く獲得したいと考えている。」(Amil Giri,”China to extend new aid package: President’s visit to Boao asia forum,” Ekantipur,Mar 25, 2015)

習主席が約束した対ネ援助は,145億ルピー/年。これによる事業は――
 (1)コダリ道路改良
 (2)ラスワガディーカトマンズ道路建設
 (3)ジョムソン(ムスタン)ーベニ(ミャグディ)道路建設

こうして中国援助で「陸のシルクロード」道路整備されていくと,いずれチベット鉄道のカトマンズ乗り入れということになる。国境までが2020年に開通するとすれば,カトマンズ延伸も,そう先のことではあるまい。

それにしても,3月のBOAOアジアフォーラムのことを,また報道したのはなぜか? 大詰めのAIIB発足へのだめ押し,景気づけといったところであろうか?

150409 ■BOAOアジアフォーラム

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/04/10 at 12:09

援助と建前逆手どり,対ネ中国外交の冴え

1.ネパール併呑イラスト
中国の王毅外相が12月25~27日,ネパールを公式訪問し,ヤダブ大統領,コイララ首相,パンデ外相らと会談した。ネパール側は大きく報道したが,驚いたのはネパールの代表的新聞,カトマンズポスト/Ekantipurの下図イラスト(f)。右図は数日前のネパール訪中団関係記事イラスト(Republica,2014-12-20)。

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今回記事のイラストが,どうしてこのようなものになったのか? 記事内には何の説明もなく,唐突の感は否めない。正直,ギョッとした。ネパールは中国に飲み込まれるのか!

2.対ネパール援助5倍増
王毅外相を団長とする訪ネ団は,派手にして効果的な援助外交を展開した。

(1)経済援助5倍増
現行1億5千万元から8億元(130億ルピー)に増額。5.3倍の大増額! ちなみに日本の経済協力は6千3百万ドル(2011年)。

(2)「公務員病院」援助
公務員病院は,中国援助(6億5千万ルピー)で建設され,132ベッドで2010年開院。公務員は半額で受診できる。今回は,MRI,CTスキャン,レントゲンなど2億ルピー相当額の医療機器を援助した。

(3)「武装警察アカデミー」新棟に記念定礎
中国援助30億ルピーで建設される「武装警察アカデミー」新棟に王毅外相が記念定礎。

(4)9分野支援強化
王毅外相は,貿易,投資,農業,インフラ,科学技術,交通,観光,文化交流,治安の主要9分野での支援・協力を約束した。特に重視するのが,水資源開発。「中国は水力発電事業を最も重視している。」(b)

(5)後発途上国脱出支援
「中国は,ネパールが2022年までに後発途上国(LDC)から脱出するための努力への支援を惜しまない。」(b)

中国はさすが大国,大ぶろしきを広げ,出すところにはドーンと出し,しかも公務員,武装警察,水力発電,交通インフラなど,狙いどころも大変よろしい。

3.「中印の架け橋」としてのネパール
中ネ関係についても,王毅外相は老練中国外交の冴えを見せてくれた。12月26日の中ネ共同記者会見において,王毅外相は,南アジアにおけるネパールの果たすべきユニークな役割を高く評価し,全面的な支援を約束した。

「ネパールは,大国を両隣にもつユニークな位置にある。中国は,ネパールが両国との良好な関係を発展させることを期待する。」(b) 「中印は,相互関係を強化しつつある。ネパールとインドも,相互利益のため関係を強化しており,それを中国は支持している。」(b) 「ネパールは中国とインドを結ぶ架け橋となりうる。」(d)

「ネパールは,急成長する二つの経済圏,すなわちインドと中国の架け橋となりうる。中国は,ネパールが中国と南アジアの架け橋となることを期待している。」(e)

中国はインドを敵視していない。中国は「インド・ネパール・中国の三国協力関係の発展を願っている。」(d)  「三国は,協力により,良い成果をえられる。」(e)

4.「一つの中国」と「自由チベット」対策
この中国外交の妙は,相手国の掲げる建前の逆手どり,あるいはあえて言うなら「誉め殺し」にある。外交の鉄則といってもよい。今回の訪ネにおけるその成果の一つは,いうまでもなく「一つの中国」の確認と,それに基づく「自由チベット」の封じ込め。

王毅外相は,中国の「核心的利益」へのネパールの支持に感謝し,チベット・ネパール国境取り締まり強化の必要性を強調した。たとえば,少々割り引かねばならないが,中華網(12月27日)はこう報道している。「ヤーダブ大統領とコイララ首相は『ネパールは一つの中国の政策を堅持し、ネパールの領土を利用して反中活動を行うことを決して許さない。・・・・』と述べました。」(h)

中国援助の「武装警察アカデミー」も,王毅外相によれば,治安に関する中ネ協力の好例である。王毅外相は,こう述べている。「主権・独立・領土を維持し発展することを目指すネパールの断固たる努力を,中国は高く評価する。中国とネパールは,よい隣人であり偉大な友人である。」(b)

まさしく建前の逆手どり,ないし誉め殺し。そして,とるべきものはとる。日本も学ぶべきだ。

5.「シルクロード経済圏」の南進
「建前の逆手どり」のもう一つの成果は,「シルクロード経済圏」のネパール経由南進である。

王毅外相は,中印協力促進や印ネ協力促進を繰り返し強調した。これに対し,パンデ外相は,こう応えた。「われわれは,地域の交通,交易,観光およびその他の経済諸活動を発展させるため,シルクロード経済圏の枠組みのもとに,どのような協力が可能か検討した。」(b)

またネパール側は,中国提唱の「アジア・インフラ投資銀行」への期待をも表明した。(e)

このように,中国の「シルクロード経済圏」構想は,北京での参加表明に加え,カトマンズにおいても,ネパール政財界により歓迎され広く受け入れられたのである。

6.「中印の架け橋」の政治的含意
王毅外相は,「中印の架け橋」としてのネパールの役割を繰り返し強調した。この考え方自体は新しいものではなく,古くから,ネパールは「二つの巨岩に挟まれたヤムイモ」と言われてきた。それはネパールの地政学上の宿命であると同時に,国際社会におけるネパール固有の存在意義,ネパールのユニークなアイデンティティとされてきた。

たしかに,独立国家としてのネパールの存在を認める以上,建前はそうなる。そうならざるをえない。が,しかし現実には,ネパールは明らかに文化的にも政治的にもインド勢力圏内にあり,インド支配からの自由を求める動きは,限度を超えると,ことごとくインドの介入により圧殺されてきた。ネパールはインドの勢力圏内――これはインドはむろんのこと,ネパール自身も,いや中国でさえも,事実上,実際には認めてきたことである。

その自明の歴史的事実を考えると,いま中国が,ネ印友好支持を表明しつつも,「中印の架け橋」としてのネパールの役割を繰り返し強調することには,重大な政治的意図が隠されていると見ざるをえない。

中国は,怒涛の経済進出をバックに,「中印の架け橋」としてのネパールを,建前としてだけではなく,現実にもそうした役割を果たす存在へと変えようとしているのではないか。もしそうだとするなら,それは,ネパールをインド勢力圏から中国の方へ向けて大きく引き寄せることを意味する。

ネパールは非同盟中立・平和共存を外交原則としており,「中印の架け橋」はもともとネパール自身の外交の基本方針であった。それには,インドも面と向かっては反対できない。

中国は,そのネパールとインドの外交の建前を逆手にとって,ネパールをインド勢力圏への従属から引き出し,現実にも中印の中間に位置させ,そして,そうすることによって,その媒介国としてのネパールを介して,巨大な南アジア市場へと進出しようとしているのであろう。

まさしく「建前逆手どり外交」ないし「誉め殺し外交」だ。ネパールもインドも,自分たちの建前を逆手に取られてしまっては,この中国の外交攻勢への面と向かっての抵抗は難しいと覚悟せざるをえない。

冒頭で紹介したカンチプルのイラストは,中国進出に翻弄される小国ネパールの姿を,いささか自虐的に描いているのではないだろうか。

[参照資料]
(a)”Chinese Foreign Minister Wraps Up Nepal Visit,” Republica,2014-12-27
(b)Nepal can bridge China, SAsia’Ekantipur, 2014-12-27
(c)Chinese Foreign Minister Wang in Dhulikhel,Ekantipur,2014-12-27
(d)LEKHANATH PANDEY,”Nepal? China to work in nine core areas,” Himalayan,2014-12-26
(e)”China Increases Grant Assistance To Nepal,” Republica,2014-12-27
(f)”Chinese FM visit: Nepal-China ties ‘exemplary’,” Ekantipur,2014-12-27
(g)”Nepal can be a reliable South-Asian link: China,” Nepalnews.com,2014-12-26
(h)「ネパール大統領と首相、王毅外相と会談」中華網,2014-12-27
(i)「チベットに「布石」? 中国がネパール支援を5倍超に、外相が表明」,サンケイ=共同,2014-12-26
(j)ANIL GIRI,”In Nepal, Wang to press China’s peripheral policy,” Ekantipur,2014-12-26

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/12/31 at 12:52

「ヒマラヤ航空」設立,カトマンズ-ラサ便10月就航

中国「西蔵航空」は,8月18日,ネパールの投資2会社と合弁で,「ヒマラヤ航空」を設立した。エアバス319型2機により,カトマンズ-ラサ便を10月28日から就航させる予定(新華社8月22日; Nepali Times,22-28 Aug; Republica,21 Aug; ekantipur, 20 Aug)。

▼資本金 2500万ドル
 中 国 側:49% 西蔵航空
 ネパール側:51% HIF,イエティ世界投資
  *西蔵航空=エアバス319型9機保有。中国国際航空系
  *HIF=旅行業,水力発電等に投資。ネパール投資銀行系
  *イエティ世界投資=イエティ航空系列会社

この「ヒマラヤ航空」は,一応,ネパールの会社だが,中国側も49%出資しており,中国の意向が会社運営に大きく影響することは避けられない。

ネパールの航空会社にとって,チベットは多くの観光客が見込めるし,また中国の他の都市へのフライトも魅力的だ。日本の訪ネ客も,多くがすでに中国経由となっているのではないか。

航空分野でも,中国はネパールに対する影響力をますます拡大して行くであろう。

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 ■西蔵航空路線図(同社HP)/中国国際航空HP

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/08/24 at 10:19

カテゴリー: 経済, 旅行

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軽い日本,重い中国

ネパールにとって,日本はますます軽く,中国はますます重くなってきた。たとえば,先日の,ほぼ同時期の木原誠二外務副大臣(Vice-Minister,外務大臣政務官)の訪ネと,バブラム・バタライUCPN-M幹部の訪中の扱い。

1.木原外務副大臣の訪ネ報道
木原外務副大臣の訪ネ(5月7-8日)は,2012年4月の玄葉外務大臣訪ネ以来の日本要人の訪ネであったが,ネパール各紙の扱いはごく控え目であり,ほとんど注目されなかった。

木原副大臣は,大統領,首相,外務大臣などネパール側要人と会談した。また,日本援助事業を視察し,社会・経済開発支援,民主化支援などの継続も確認した。ところが,新聞は,こう報道している。

「(日本大使館の)浜田氏によれば,副大臣は,今回の訪ネにおいて,いかなる二国間援助の約束も,いかなる事業計画への署名もしないという。」(Himalayan, 6 May)

冷めている。あまり期待はされていない。しかも,各紙は,木原副大臣が,ネパールに対し,次期国連安保理非常任理事国選挙において日本を支持することを要請したとも伝えている。つまり,木原副大臣の訪ネは安保理選挙運動のためだ,と見透かされているのだ。

この情況では,ネパールの1票は期待できないのではないか? かつて(2000年8月),日本の安保理入りへの支持を得るため森首相がわざわざ訪ネしたにもかかわらず,ネパールは日本に1票を入れず,中国に恩を売った。ましてや今回は,中国がちょっと動けば,日本への1票は期待薄であろう。

ネパールは,もはや日本をそれほど必要とはしていない。

2.バブラム・バタライUCPN-M幹部の訪中
対照的に,中ネ関係はますます重要となりつつある。両国要人の相互訪問も日常化している。たとえば,木原副大臣訪ネと前後して,バブラム・バタライUCPN-M幹部が訪中した。

バタライ氏は,今回の党大会(5月7日閉会)で中央委員会から離脱し,現在は無役。ところが,その無役のバタライ氏が一私人として家族を連れ訪中すると,中国政府は,要人の公式訪問と同等以上の処遇をもって応えた。

バタライ氏の今回の訪中は,実に興味深いものだ。5月7日,ラサ経由で成都着。成都には,数名の中国共産党要人がわざわざ北京からやってきて,バタライ氏と会談した。共産党四川省書記や成都市長も彼と会談した。

翌8日,バタライ氏はラサに戻り,中国政府要人と会談し,シガツェに移り,そこで1泊。さらに次は,中国政府の手配により,チベット最西部のマナサロワールに行っている(詳細不明)。

この間の一連の会談において,中国側はバタライ氏に対し,チベット問題での協力を要請した。これに対し,バタライ氏は中国側にこう請した。

「ネパールは,中印間の強靱な架け橋となりうる。チベット鉄道をインドにまで延伸し,南北道路をコシ川,ガンダキ川,カルナリ川沿いに建設すべきだ。また,中国はインドと協力してネパールの水力発電事業を推進すべきだ。」(Republica, 8 May)

バタライ氏の発言は,中国に対する要請ではあるが,これは中国側のネパールに対する要請でもある。ネ中両国の利害は,大きく見ると,いまのところ多くの点で一致している。

この観点から,今回のバタライ氏の旅程は実に興味深い。これはどう見ても,単なる私的旅行ではない。政治臭プンプンの,生臭い政治目的旅行といってよいであろう。

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 ■=カトマンズ,A=ラサ,B=成都,C=シガツェ,D=マナサロワール(Google)

*Republica,7-8 May; Ekantipur,8 May,; Himalayan, 6-7 May; Nepalnews.com, 8 May

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/05/12 at 09:02

チベット難民に警告,ゴータム内相

ゴータム副首相兼内相は3月22日(土),「全国人権基金(HURFON)」年次大会において,チベット難民に対し,反中国活動をしないよう強く警告した(Nepalnews, 22 Mar)。

この3月10日は「チベット蜂起」55周年記念日であった。ネパール警察は,約900人の制服・私服警官を動員し,ボダナートなど重点地区を中心に警戒してきた。焼身抗議に備え,毛布と消化器を準備しているという。

それでも,3月10日には,小規模ながら,「自由チベット」デモが行われた。拘束されたのは,中国大使館付近5人,スワヤンブー付近4人,ポカラ1人など,10数人。チベット難民の抗議活動は,例年よりも少なかった(Republica & Ekantipur, 10 Mar)。

140324 ■中ネ航空協定改定:カトマンズ2014年2月24日(中国大使館HP)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/03/24 at 14:11

カテゴリー: 外交, 中国, 人権

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青蔵鉄道:シガツェ10月開通,ネパール延伸へ

1.新華社の報道
中国は青蔵鉄道の建設を進め,2006年7月,上海-ラサ間(1956km)を開通させた。さらにラサから先,シガツェまでの延伸が,この10月までに完成し,営業を開始するという(新華社3月6日)。

ラサ-シガツェ間は253km,高所で難工事であったはずなのに,2010年着工からわずか4年で完成,中国の強い意思と,圧倒的な底力を見せつけた。ラサ-シガツェ間の列車は120km/hで運行され,2時間で着く。

シガツェは,パンチェン・ラマが住むタシルンポ寺があり,チベット仏教の聖地の一つ。そこに青蔵鉄道が乗り入れる。新華社記事によれば,タシルンポ寺のあるラマ僧はこう語っている。「信心深いチベット人すべての願いは,ラサとシガツェの仏様に礼拝することだ。この鉄道は,その巡礼の旅を安全で快適なものにしてくれる。」

中国は,すでにラサ博物館に次ぐ規模の「シガツェ博物館」を開館(2010年6月)し,また「シガツェ平和空港」も開港(2010年10月)している。さらにそれらに加え,青蔵鉄道が10月までに完成する。新華社記事は,チベットの発展に寄与するとして,それらを高く評価している。

140307b ■A=ラサ,B=シガツェ,C=カトマンズ(Google)

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■上海-チベット鉄道/タシルンポ寺(中国チベット鉄道旅行HP)

2.インド・メディアの報道
この青蔵鉄道延伸は,インドでも主要メディアが大きく報道した。むろん,新華社とは対照的に,中国進出への警戒が記事の基調となっている。

「中国は,シッキムのインド国境近くのシガツェまでチベット鉄道路線を延伸したが,これは,兵員と武器を遠隔ヒマラヤ地域で容易に移動させる戦略的能力を,中国軍に与えることになるであろう。」(The Times of India, 6 Mar)

「中国新華社ニュースは,上海-チベット鉄道がチベット・シガツェのパンチェン・ラマの本拠に達することを,その政治的意義を力説しつつ,報道した。」(The Times of India, 6 Mar)

「中国は,チベットで交通インフラの拡充を進めてきたが,これは,中国軍の国境への移動を容易とし,北京を戦略的に有利にするものではないかという懸念が,インドでは高まっている。」(The Times of India, 6 Mar)

「鉄道延伸発表は,中国政府支援の第11代パンチェン・ラマたるギェンツェン・ノルブが全人代開会式に出席しているとき,行われた。・・・・ノルブの選出には疑義が出された。・・・・ダライ・ラマが承認し選出された[先代の]ゲンドゥン・チューキ・ニマは,選出後,行方不明となった。中国政府が拘束しているとみられている。」(The Hindu, 6 Mar)

「中国は,鉄道をシガツェからネパール国境まで延伸する予定。さらに中国側は,建設費を援助し鉄道をネパール国内にまで延伸しようと考えているが,これまでのところ,カトマンズ[ネパール政府]は,インドに配慮し,中国提案には慎重な態度をとっている。」(The Hindu, 6 Mar)

このようにインド側は中国の鉄路南下を警戒しているのだが,しかし,インド側はインド側で鉄路を南方からネパール国内に着々と伸ばしている。インドからすれば,それとこれは話が別らしい。というのも,インドはネパールを勢力圏内と考えており,そこへの中国の進出は侵出であり,インドの脅威に他ならないと感じているからである。
 ▼中国は軍事援助,インドは鉄道建設
 ▼青蔵鉄道のルンビニ延伸計画

3.ヤムイモは生き残れるか
ネパールは,建国以来,「二巨石間のヤムイモ(Yam between Two Boulders)」と呼ばれてきた。印中二大国に挟まれ,それを宿命として引き受け,生存を図らざるをえない。

一方におけるグローバル化と他方における中国超大国化。この地政学的激変の中,ネパールは二つの巨石に押しつぶされ,磨り潰されて吸収されてしまうことなく,一つの独立国家として生き残ることが出来るのであろうか?

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/03/07 at 17:58