ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

プラ袋禁止,カトマンズ盆地

ネパール新年の4月14日,「カトマンズ盆地プラ袋禁止」が宣言され,盆地内ではプラスチック袋の使用が禁止されることになった。(日本では「ポリ袋」が一般的だが,ネパールでは「プラスチック袋」と呼ばれているようなので,略して「プラ袋」と記す。)

根拠は,「プラ袋規制令2068(2011)」。原典がないので報道からの孫引きだが,これが3月に改正され,4月14日からの施行となった。
 ・カトマンズ盆地内:厚さ40ミクロン未満のプラ袋禁止
 ・カトマンズ盆地外:厚さ30ミクロン未満のプラ袋禁止
 ・罰則:5万ルピー以下の罰金または/および2年以下の投獄

いつもの通り,大胆かつ先進的な取り組みだ。近隣のインドは2002年,20ミクロン以下のプラ袋製造禁止。中国は2008年,極薄プラ袋使用禁止。ネパールでも,2011年には前述の「プラ袋規制令(2068)」が制定され,以後何回か施行が試みられたものの,そのつど業界団体などが反対,2012年(2013年?)には最高裁が「プラ製造業協会(NPMA)」の施行停止請求を認め,禁止命令は停止されてしまった。

これに対し,議会の環境委員会は2014年8月25日,2015年新年(4月14日)からのプラ袋禁止実施を決め,関係機関に通達を出した。今回も「プラ製造業協会」は2015年3月26日,最高裁に施行停止請求を出したが,最高裁は4月7日,この請求を棄却し,その結果,プラ袋禁止が4月14日から実施されることになったのである。

「プラ袋禁止」の管轄は,「科学技術環境省」で,大臣はコイララ首相が兼任している。直接実施に当たるのは,「環境局」。なかなか元気がよい。新年初日には,はなばなしく「プラ袋禁止行進」を敢行し,スンダラやニューロード沿道の人々に代替紙袋を配布した。また,環境局と警察の合同監視団が巡回し,違反を摘発し始めた。
 ・カリマティでプラ袋280kg押収(3月11日)
 ・アサン,ラリトプル,カリマティの23卸売店等からプラ袋400kg以上押収
 ・盆地入口のタンコット等で検問,プラ袋200kg押収

たしかに,ネパールのプラ袋ゴミ問題は深刻だ。様々な数字が報告されている(数値は記事のまま)。
 ・カトマンズのゴミの10%はプラ袋
 ・ネパールのプラ袋使用量300トン/日(?),カトマンズ470万袋/日
 ・プラ袋製造所300~500,プラ袋3万トン製造
 ・バクマバティ川清掃運動でプラ・ゴミ5千トン回収

ネパールのゴミ問題については,このブログでも繰り返し取り上げてきた。自然素材のゴミなら,道ばたや川に捨てても,しばらくすれば腐り自然に戻っていく。ところが,プラスチックはいつまでも分解せず,堆積し,環境を悪化させる。都市部もそうだが,むしろ悲惨なのは郊外。ちょっと人通りのあるところは,プラ・ゴミが散乱し,美観を著しく損ね,衛生状態を悪化させている。

特にショックだったのは,市街でも郊外でも,聖牛たちが生ゴミと混ざったプラ袋をあちこちで食べているのを見たとき。あまりの悲惨,バチ当たりに涙せざるをえなかった。インドが2002年にプラ袋を禁止した理由の一つも,聖牛が食べて病気になったり死んだりしたからだった。この問題については,参照:ゴミと聖牛火に入る聖牛の捨身救世ゴミのネパールゴミと糞尿のポストモダン都市カトマンズゴミまみれのカトマンズ

121130cゴミと糞尿のポストモダン都市カトマンズ

150420a■プラ袋ゴミを食べる聖牛

しかしながら,プラ袋禁止の実行はなかなか難しい。政府は,紙袋,布袋,ジュート袋を使用せよと呼びかけているが,使用勝手とコスト(5~70ルピー)に難がある。これらの袋では,肉や魚,あるいは水分の多い他の物品を包み保存したり運んだりするのは難しい。また,コストの面で商店や買い物客にとって負担が大きいのは,いうまでもない。

さらに,環境に対して,本当によいのかどうかも,議論の余地がある。特に紙は,製造に多くの水やエネルギーを必要とし,耐久性もなく,ゴミとして処分するとき大気を汚染する。

日本でも,たしか20年ほど前,ゴミ袋をポリから紙に替える運動があり,自治体が配布したりもしたが,ほんの1年ほどしか続かず,またもとのポリ袋に戻ってしまった。十分な説明なし。それほど,ポリ袋廃止は難しい。

ネパールの今回のプラ袋禁止は,条件付きであり,また禁止基準もあいまいだ。カトマンズ盆地内は40ミクロン未満禁止だが,それ以外では,30ミクロン未満禁止。こんな条件付き禁止の遵守は,実際上,難しいであろう。

事実,コスト高や不便さもあり,いまのところ,プラ袋禁止はほとんど守られていないようだ。政府は,徐々に取り締まりを強化し,禁止の全面実施を実現する計画のようだが,実際には逆に,いつものように,鳴り物入りで華々しく開始されても,あまり守られず,いつしか元に戻ってしまう可能性の方が大きいのではないだろうか。

しかしながら,プラ袋ゴミをこのまま放置しておいてよいわけではない。ゴミの回収・処理を高度化する一方,プラ袋の原材料そのものを植物系に替えていく努力をすべきだろう。もし植物系プラスチック(バイオプラスチック)が普及すれば,たとえ道ばたや川に捨てられても,環境への害は少なく,いずれ分解され自然に戻っていくであろうからである。

150420Plastic bags banned; A tax on some plastic bags; Partial tax or ban (Wiki: Phase-out of lightweight plastic bags)

* Republica,3,11 & 23 Mar,14,16 & 19 Apr 2015
* Nepali Times, #754, 17-23 Apr 2015 & 23 Mar 2015
* Kathmandu Post, 7 Apr 2015
* New Spotlight, 10 Apr 2015
* China daily, 15 Apr 2015

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/04/21 at 10:07

カテゴリー: 経済, 自然, 行政

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女生徒4人,成績苦に自殺

ネパール極西部,インド国境沿いのダトゥ村で4月13日,女生徒4人が,学年末試験「不合格」(詳細未確認)」を苦に自殺した。6年生(12歳)2人,7年生(13―14歳)2人。

4人の通う中学校で学年末試験(Final Exam)の成績が発表され,70人が「不合格」。その成績発表後,4人は下校し,途中のマハカリ河畔で,ショールで身体を結び合わせ,飛び込み,4人とも死亡した。近くのインド側から住民が目撃しており,遺体もインド側で発見された。家族の叱責を恐れたからだろうといわれている。

 150417■Dattu(Daktu)村(Google)

ネパールの学校は,一般に,丸暗記・ペーパー試験偏重であり,競争は過酷だ。特に初等5年,中等5(3+2)年の終了後に実施される全国統一学力試験(SLC: School Leaving Certificate)は,その成績により進学・就職が左右されるだけに,親族からの期待もあり,生徒にとっては大変な重圧となり,毎年のように生徒が成績を苦に自殺している。

一方,ペーパー試験偏重と対になっているのが,想像を絶する学歴第一主義。エリート教育をウリとする私学が,親族の期待を背に,それこそ託児所から英語で訓練し,有名小学・中学へと進学させる。授業料は高い。

Lincoln School(2011年)
 入学金 $450, 登録料 $3,000
 授業料(年) $11,860(1-5年生),$13,200(6-8年生),$14,700(9-12年生)

British School (1-6年生,2011年)
 登録料 125ポンド,Capital Development(?) 1,575ポンド,預託金 1,035ポンド
 授業料(年) 4,140ポンド [2015年の授業料 1,800-8,520ポンド]  

政府認定 A~Cグレード私学 授業料(月,2015年)
 Cグレード校 Rs.1,342(1-5年生),1,525(6-8年生),2,074(9-10年生)
 Bグレード校 Cグレード校の25%増し
 Aグレード校 Cグレード校の50%増し

ネパールの学校教育には,未就学に加え,ペーパー試験偏重,学歴至上主義の問題もある。このところ後者の深刻さの方がむしろ目立つようにさえなりつつある。

150416a150416■ネパールの現行教育制度/改正案

*Ekantipur,2015-04-13&14; Republica, 2015-04-13 & 2011-03-05

谷川昌幸(C)

 

Written by Tanigawa

2015/04/17 at 14:38

カテゴリー: 教育

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青年ネパール,老年日本

国家(state)・国民(nation)は,全体として,一つの身体・生命・精神をもつ人間にたとえられることがある。一人の人間と同様,国家・国民も,生まれ,生長し,老い,そして死んでいく運命にある。

では,日本はどうか? いうまでもあるまい。日本の国家・国民は老い,いまや「後期高齢者」となってしまった。人口構成が高齢化しただけなら,まだしも救いはある。より深刻なのは,精神の老化だ。

たとえば,この4月は統一地方選だが,選挙はいたって低調。知事選は自公民相乗り候補多数,道府県議会は立候補者が定数以下で無投票となった選挙区が33.4%。選挙となっても,実際の競争は激しくなく,大半は微風程度だ。(下記参照)

日本では国政も地方政治も,少子高齢化,過疎化,貧富格差,財政危機,軍国主義化等々,いまや問題だらけなのに,国民の多くは見て見ぬふり,選挙に関心を示さない。街も村も,テレビも新聞も,いたって静か,選挙など,あって無きがごとき。平和そのもの。

150412■形骸化した選挙

日本人は,青年も壮年も老人も,みな精神的に老いたのだ。学生運動も労働運動もいまや死語。首相が集団的自衛権を唱え自衛隊を「わが軍」と呼ぼうが,労働者保護を緩め,社会保障を削減しようが,反対らしい反対はほとんど見られない。自由や権利を「不断の努力によつて」保持する(憲法12条)気力が萎えてしまったのだ。

日本国民も,青年・壮年期には,そうではなかった。学生も労働者も市民も,問題があれば,積極的に立ち上がり,抗議し,闘った。デモ,ストはいたるところで行われ,バスや鉄道も止まった。もちろん学校も休み。国民がまだ若く,未来があったからだ。

それも今や昔。日本国民は老い,そのために闘うべき未来がなくなった。今日,明日さえ平穏であれば,それ以上は望まない。5年後,10年後のことなど,知ったことではない。

これとは対照的に,ネパール国民はまだ若い。まばゆいばかりの未来がある。だから,何かあれば,過剰と思えるほど反応し,未来のために闘う。議会も街や村もキャンパスも闘いに充ち満ち,ストやバンダ(ゼネスト)は日常化している。

選挙も真剣だ。4月10日投票の制憲議会補欠選挙(バグルン1区,定数1)には,13人(10政党と無所属)が立候補し,投票率73%であった。(NC候補CD・カドガ当選)ネパール国民は,まだ憲法にも選挙にも期待しており,政治への希望を失ってはいない。

ストもバンダも,しょっちゅうやられると,たしかに迷惑だ。が,老化日本の無気力ニヒリズムに比べるなら,少なくとも若さが,未来がみてとれ,そこに希望と救いがあるといってよいだろう。

【参照】統一地方選投票率(%,朝日&毎日4月13日朝刊)
福岡県知事選 38.85
広島市長選 42.78
道府県議選:千葉 37.01 埼玉 37.68
名古屋市議選 36.57
無投票当選:道府県議選 33.4(総定数の21.9)
  香川県議選 定数の65.9
  山形県議選 定数の45.5
  宮崎県議選 定数の43.6

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/04/12 at 18:49

カテゴリー: 政治, 人権

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エベレスト・トンネルと「新シルクロード経済圏」盟主,中国

AFP,テレグラフ,デイリーメールなど西洋メディアが,チベット鉄道延伸はエベレスト・トンネル経由だと派手に報道し,ヒマラヤンなどネパールメディアや時事など日本メディアが,これを後追いしている。世界最高峰エベレスト(チョモランマ,サガルマータ)の横っ腹をぶち抜き,トンネルを通す! メディアが飛びつきそうなネタだ。が,本当かなぁ? 
150411

最初の報道と思われるAFPの情報源は,おそらく中国日報のこの記事であろう。Zhao Lei,”Rail line aims for Nepal and beyond,” China Daily,2015-04-09. 読んでみると,たしかに紛らわしく不正確な記事だが,少なくとも次のことは読み取れる。
 (1)チベット自治区Losang Jamcan議長が3月,ヤダブ大統領に語ったのは,2020年までにチベット鉄道をシガツェから吉隆(Gyirong,Jilong)にまで延伸する計画があるということ。
 (2)エベレスト・トンネルについて語ったのは,中国工程院(Academy of Engineering)の鉄道専門家Wang Mengshu氏。

AFP等は,この二つの話しをはっきり区別せず,つないでしまったため,読者は次の(1)または(2),あるいはその両方と受け取ることになってしまった。
 (1)チベット鉄道ネパール延伸は,エベレスト・トンネルのコース。
 (2)チベット鉄道は2020年までにカトマンズまで延伸される。

しかし,2020年までに延伸されるのは,シガツェから吉隆までであり,ここから先は,そのままトリスリ川沿いに南下しカトマンズまで線路を敷設する方が楽だ。吉隆は国境からわずか35kmほど。経済合理性を考えるなら,中国政府はおそらくこのコースを採用するであろう。

ところが,である。中国は,目先のカネ儲けに目がくらむような,ケツの穴の小さな資本主義国ではない。かつては万里の長城を築き,いままた「新シルクロード経済圏」の盟主たらんとしている。すべてのロードは北京に通ず。そして,すべてのカネは,いずれ本家「円」(Yuan[CNY],人民元[RMB])を介し「アジアインフラ投資銀行」等を通して流通するようになる。

その21世紀の超大国・中国にとって,チョモランマ=エベレストをぶち抜き,トンネルを通し,五星紅旗はためく中国列車を走らせることほど,相応しく誇らしいことはない。

イギリスはマロリーやヒラリーに英帝国の威信を担わせローテク人力でエベレストを征服させた。ネパール・マオイストは,プラチャンダの息子に赤旗を持たせ,やはりローテク人力でエベレストを征服させようとした。

しかし,本家マオイストは,そんな前近代的な,せこいことはしない。世界最高峰エベレストを中国のカネと技術でぶち抜き,五星紅旗列車を走らせれば,中国こそが,世界最高,最先進,最強国家であることが,明白な具体的事実をもって,日々実証される。

21世紀のエベレスト征服は,まさしくこれをおいて他にはない。中国が,長大トンネル掘削でエベレストを征服すれば,魂も肝も抜かれたエベレストになど,あほらしくて誰もローテク人力で登ったりしなくなるだろう。

このチベット鉄道エベレスト路線は,つくりごとでも何でもない。以前から,シガツェから先は,吉隆路線だけでなくエベレスト路線も検討されていた。エベレストの真下ではないまでも,その近辺を通り,おそらくは何本かトンネルも掘り,カトマンズにいたる。

このエベレスト路線は,観光面から見て有利な上に,やはり中国にとって魅力的なのは,上述のような政治的価値である。中国政府が,エベレスト(の近く)にトンネルを掘り,五星紅旗列車を走らせるとなれば,中国の威信はいやが上にも上がる。だから,政治的に判断するなら,エベレスト路線優先となるわけだ。むろん,中国の国力からして,吉隆路線とエベレスト路線の両方をつくることも,決して無理ではない。長期的には,そうなる可能性大だ。北京,上海からチベット鉄道でエベレストへ行こう!!

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 ■エベレスト・トンネル線(Dailymail,9 April 2015)/シガツェ-吉隆&Yatung線(Global Times,2014-7-24) )

このように見るならば,AFP等の記事は,必ずしも全くの誤りという訳ではない。というよりもむしろ,資本主義国ジャーナリズムが,センセーショナルに騒げば騒ぐほど,中国政府は,してやったりと,ほくそ笑むことになる。「新シルクロード経済圏」や「アジアインフラ投資銀行」の願ってもない絶好の宣伝になるからである。

【中国大使館発表】  150411b
Qinghai-Tibet railway to reach Nepal in 2020
2015/04/10

China has announced that it will extend the Qinghai-Tibet railway to the border areas with Nepal within the next five years. The railway will stretch out for another 540 kilometers from Xigaze to Jilong county which sits on the border of China and Nepal.

The announcement was made earlier this month during Neapalese President Ram Baran Yadav’s visit to China.

President Yadav applauded the announcement, saying that it fitted into the main aim of his visit which was to promote road and air traffic between Nepal and China.

Nepal has long been expecting that a new Tibetan railway which would extend to the border areas to boost bilateral trade and tourism between the two countries.

Nepal is an important transit point between China and South Asia, and a major chunk of the two countries’ expanding trade has been conducted through Tibet. With this newly announced Xigaze-to-Jilong section of the railway in five years, better road and rail connections could be expected between Nepal and China.

Earlier in March when Chinese President Xi Jinping met with Nepalese President Ram Baran Yadav at the 2015 Boao Forum for Asia in south China’s Hainan province, the Nepalese President said that Nepal will support China’s initiatives of jointly building the Silk Road Economic Belt and 21st-Century Maritime Silk Road as well as the Asian Infrastructure Investment Bank, or AIIB, saying that these are great measures to promote regional connectivity.

Moreover, Nepal also calls for strengthened cooperation between the South Asian Association of Regional Cooperation, or SAARC, and China, in a bid to promote regional interconnectivity and economic development.

(http://www.fmprc.gov.cn/ce/cenp/eng/News/t1253828.htm)

【参照】
ラサ-カトマンズ,道路も鉄道も
青蔵鉄道:シガツェ10月開通,ネパール延伸へ
初夢は鉄路カトマンズ延伸?
青蔵鉄道のルンビニ延伸計画
中国の「シルクロード経済圏」,ネパールも参加
* Zhao Lei,”Rail line aims for Nepal and beyond,” China Daily,2015-04-09
*”TIBET-NEPAL RAILWAY, China may build tunnel under Everest,” AGENCE FRANCE PRESSE,2015-04-09
* “China plans rail tunnel UNDERNEATH Mount Everest,” Dailymail,9 April 2015
* “China-Nepal railway with tunnel under Mount Everest ‘being considered’,” The Telegraph, 09 Apr 2015
*”China may build tunnel under Everest,” Himalayan,2015-04-09
*”China Plans Strategic High-Speed Rail to Nepal Through Mount Everest,” sputniknews.com,2015-04-10
*「「チベット・ネパール鉄道」中国が計画、エベレストにトンネル?」,時事=AFP,2015/04/10

谷川昌幸(C)

チベット鉄道ネパール国境延伸,2020年

中国日報(4月7日)が,また上海ーチベット鉄道のネパール国境延伸について報道した。

チベット鉄道は,すでに2014年8月15日,ラサ・シガツェ間(253km)が開通。次は,シガツェ・吉隆[Gyirong,Jilong]間(540km)を2020年までに開通させると,習主席が,この3月のBOAOアジアフォーラムにおいて,ヤダブ大統領に語ったというのだ。

150409b ■左より吉隆・シガツェ・ラサ(Google)

このBOAOアジアフォーラムでは,ヤダブ大統領がシルクロード経済圏とアジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加を積極的に表明し,中国側を喜ばせた。

もちろん,ネパールには参加のメリット大だ。A.ギリによれば,ネパール政府高官がこう語ったという。――道路等のインフラ建設には巨額の資金が必要だ。「だから,ネパールとしては,400億ドルの基金で始められるシルクロード構想やネパールも創設メンバーになる中国主導アジアインフラ投資銀行を通した中国からの援助を,さらに多く獲得したいと考えている。」(Amil Giri,”China to extend new aid package: President’s visit to Boao asia forum,” Ekantipur,Mar 25, 2015)

習主席が約束した対ネ援助は,145億ルピー/年。これによる事業は――
 (1)コダリ道路改良
 (2)ラスワガディーカトマンズ道路建設
 (3)ジョムソン(ムスタン)ーベニ(ミャグディ)道路建設

こうして中国援助で「陸のシルクロード」道路整備されていくと,いずれチベット鉄道のカトマンズ乗り入れということになる。国境までが2020年に開通するとすれば,カトマンズ延伸も,そう先のことではあるまい。

それにしても,3月のBOAOアジアフォーラムのことを,また報道したのはなぜか? 大詰めのAIIB発足へのだめ押し,景気づけといったところであろうか?

150409 ■BOAOアジアフォーラム

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/04/10 at 12:09

京都の米軍基地(67):米軍イースター布教,大成功

経ケ岬米軍が,京丹後市の現地住民を招き,「イースターエッグハント――一緒にアメリカ文化体験」を催行した。京丹後市国際交流協会との共催。

イースター祭がキリスト教の宗教儀式であることは,前述のとおり明々白々(参照:米軍とキリスト教)。米軍は正直であり,宣撫すべき現地住民(「原住民」)を招き宗教活動をしていることを,隠しはしない。平然と,こう公言している。

Great Easter event with over 100 children for the Easter Egg Hunt. Very special service by COL Revell, 94th AAMDC Chaplin. Thank you to Central Hotel and the Kyotango International association for making it possible.
イースターイベント(復活祭)にて行われたイースターハントに、100名以上の子供たちが参加してくれました。参加者の皆様、そして開催にご協力いただきました京丹後市国際交流協会とセントラーレ・ホテルに大変感謝致します。第94米陸軍対空ミサイル防衛コマンド チャップリン、ラビル大佐による特別礼拝も受けました。
(経ケ岬米軍FB,赤強調=引用者; 原文中の「Chaplin=チャップリン」は喜劇王。和製英語ではChaplainと綴る。旧宗主国OEDで確認せよ!)

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 ■参加者(米軍FB,子供の顔削除)/京都新聞4月6日記事(子供の顔削除)

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 ■会場での礼拝(米軍FB)/礼拝案内(正面左に掲示?,同FB)

写真には,イエスや十字架は写ってはいないが,これはどう見ても礼拝(Service)。その宗教儀式,布教・宣教の場に,ほとんどが異教徒のはずの現地の子供と家族多数(約100人)が招待され,参加したのだ。

アメリカは,キリスト教を事実上「準国教」とする宗教国家であり,また米語(英語)を「世界共通語」と信じて疑わない英語帝国主義(English Imperialism)の国家でもある。対照的に,現代日本は,宗教と政治を峻別する世俗国家(憲法第20条)であり,米語(英語)は多くの外国語の一つにすぎない。日本は,国家の在り方も文化も,米国とは大きく異なる。

しかし,日本は,単に米国と異なるだけではない。困ったことに,日本は,幕末と太平洋戦争の二度の惨めな敗北がトラウマとなり,根深い対米劣等感に憑りつかれている。アメリカが後進国・日本の啓蒙を「天与の使命(Manifest Destiny)」と信じて疑わないのに対し,日本は,そのアメリカの顔色を常にうかがい,何か言われれば,すぐ恐れ入り,進んで迎合する。その典型が,キリスト教と米語(英語)だ。(参照:英語帝国主義安倍首相と英語

しかも,ここで見落としてならないのは,少なくとも米政府当局は,日本を冷静かつ冷酷に分析し,長期的戦略を立て,このような対日政策を目的合理的に遂行しているということ。

アメリカは世界有数の多文化社会。英語以外の言語,たとえばスペイン語を母語とするアメリカ人も多数いるはずなのに,米軍は,スペイン語での交流会を開き,日本の子供やその家族を招き交流しようとはしない。あるいは,キリスト教以外の宗教も,ユダヤ教,イスラム教,仏教など多数信仰されているはずなのに,たとえばイスラム教の宗教儀式を主催し日本人と交流することもない。米軍は,「アメリカ文化はキリスト教と英語」というプロパガンダが米国国益に最もかない,かつ日本に最も有効と見定め,そのフィクションにより日本人を啓蒙・教化しつつあるのだ。

子供たちは身ぶり手ぶりや片言の英語で軍人と話し,イベントを楽しんだ。」(京都新聞4月6日)

「身ぶり手ぶりや片言の英語で軍人と話し」たのは,子供だけではあるまい。大人もまた日本側は幼稚なことしか表現できず,米軍人・軍属やその家族は,たとえ2,3歳の子供であっても,会場では圧倒的に優越した上位者の側にあったにちがいなる。こうして,日本側は対米劣等感をインプットされ,ことあるごとに思い知らされ,対米従属に馴致されていく。米国ソフトパワー恐るべし。

米国は正直だ。自分たちが世界最強の武器を持ち,いつでも行使できる恐ろしいワシであることを誇りこそすれ,隠したりはしない。日本でも,イザとなれば治外法権,何でもできる。

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 ■経ケ岬米軍シンボルマーク(米軍FB)/霊峰富士を撃つ米兵(米軍FB)

それなのに,われらが同朋は,それを見て見ぬふりをし,子供をすら差し出す。「子供たちは身ぶり手ぶりや片言の英語で軍人と話し」たのだ!! 植民地根性が習い性となっているといわれても,いたしかたあるまい。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/04/07 at 20:53

Republica vs Nepal National

ネパールのネットメディアには不思議な習性がある。何の予告も案内もせず,ある日突然アドレスを変更,アクセス不能となる。継続して読みたければ,自分で新アドレスを探さねばならない。ちょっと予告しておけばよいのに,それをしないのが,いかにもネパール流。不思議な,読者無視の慣習だ。

今回は,ネパール大手メディアの一つで,International New York Timesと連携しているRepublica(My Republica)。突然のリンク切れで,アクセスできなくなってしまった。あちこち探し,新アドレスを見つけたが,また切れた。新聞そのものは発行しているようだが,こんな不親切では信用失墜,ネット版の読者に見放されてしまう。

これとは対照的にサービス精神旺盛なのが,中国系やオセアニア系,あるいはキリスト教会系。幾度か紹介した中国日報(China Daily)は,無償配布に加えて,奨学金さえ出し,サービスとイメージアップにこれ努めている。参照:中国日報

オーストラリアMidwest Radio NetworkのNepal Nationalも,なかなか使い勝手が良い。ニュース選択センスがよいし,画面もすっきりしていて読みやすい。参照:Nepal National

また,キリスト教会系ニュースメディア,たとえばローマカトリック教会のAsianews.itも,当然ながら立場が明確であり,たいへん興味深い。参照:Asianews.it

Asianews.itの中国語版発信趣旨説明によると,中国の大学ではキリスト教への関心が高い。中国通信制大学の調査(詳細不明)では,北京の学生の61.5%がキリスト教に関心を持ち信者になりたいと願っているという(本当かなぁ?)。だから,Asianews.itは,中国語版をネット配信しているのだそうだ。

Asianews.itのネパール向けニュースページも,おそらく,これと同じ趣旨で配信されているのだろう。そして,このAsianews.itのキリスト教関係記事は,上述のNepal Nationalにも転載されている。オセアニアないし西洋の人々にはネパールのキリスト教関係記事への関心が高い,また,ネパールの人々にもキリスト教への関心を高めてほしい,とNepal Nationalが考えているからにちがいない。

こうしたことを念頭において今週のネパリタイムズ(3-9 Apr,#752)を見ると,なかなか興味深い。中国日報(China Daily)の広告が出ているのは言うまでもない。そして,記事としては,「ネパール人,しかるのちにカトリック教徒」が目に付く。

150405 ■ネパリタイムズ記事

このネパリタイムズ記事によれば,キリスト教徒は,2011年全国人口調査で375,699人,全国キリスト教連盟発表で250万人,そのうちカトリックは8,000人。カトリックはまだ少数派だが,キリスト教徒総数はかなり増加している。

記事によれば,信徒であっても,様々な軋轢を恐れ隠れている人々(いわばネパール版「隠れキリシタン」)もいるし,逆に受洗していなくても教会行事には参加する人もいる。こうした状況を考え合わせると,信徒250万人というのも,あながち誇張ではないだろうし,もしそうだとすると,キリスト教はすでに相当の大勢力になっているとみてよいであろう。

Asianews.itは,こうしたネパールの状況をよく見据え,ネパールニュースを発信し,Nepal Nationalはそのキリスト教会系ニュースを転載しているのだろう。

このように,中国系やオセアニア系,あるいはキリスト教会系メディアは,それぞれの得意な方法で,読者へのサービスに余念がない。これに比べ,ネパールメディアは,まだまだ知識身分の特権意識が抜けきらない。「恩恵を恵んでやるぞ」といった上から目線。これでは「士族の商法」,自由競争市場では早晩淘汰されてしまうであろう。

【追加2015-04-08】
Republicaは,HP再構築が完了したらしく,再び接続できるようになった。が,他のネパールメディアと同様,依然として垢抜けせず,読みにくい。
【訂正補足2015-04-09】
Nepal NationalはAsianews.itの記事の転載をしているだけでした。上記のように訂正補足します。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/04/06 at 13:31

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