ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

仮設教室で憲法授業,ネパールの生徒たち

震災で校舎が損壊したネパールの学校では,テントや竹製の仮設教室をつくり,急場をしのいでいる。テントにせよ,竹を柱と壁に使用した竹製教室にせよ,寒暑,風雨などに十分対応できず,また音も筒抜けなので,授業はやりにくい。日本では想像もできないほど劣悪な授業環境だ。

そのような学校の一つが,カトマンズのスリョダヤ校。地震で本校舎が全壊,別棟の小さな数教室を除き,全教室を失った。そのため,USAID等のテント提供を受け,校庭にテント仮設教室をつくり,そこで授業を続けている。

そのスリョダヤ校で,先日,憲法制定議会の2議員を招き,いま最終段階にある新憲法をテーマに,特別授業が行われた。私は参加できなかったが,同校FBの写真からは,生徒たちが出席議員や先生たちを前に,盛んに意見を述べている様子がうかがわれる。

 全壊校舎跡のテント教室で,祖国の未来を託す新憲法について存分に議論する――なんと健気なことか!

ひるがえって,日本。冷暖房完備の快適な教室。雨も吹き込まなければ,蚊や蠅に悩まされることもない。ネパールの生徒から見れば,天国のような日本の学校で,いまどのような教育が行われているのか? どのような教育に変えようとされているのか? 日本で,憲法や国家の基本問題について,先生や生徒たちが自由に学び議論する権利は保障されているのか?

スリョダヤ校には,長年にわたって交流のある仲間たちと一緒に,ささやかながら再建支援を行っている。(参照:ネパール 震災支援 ムスムス

▼全壊校舎跡とテント仮設教室(7月15日)
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▼テント仮設教室で憲法特別授業(同校FBより)
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【参照】スリョダヤ校:フェイスブック ホームページ

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/07/28 at 16:38

カテゴリー: 国際協力, 憲法, 教育

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憲法公布日合意するも,シラケ後退ムード瀰漫

制憲議会(CA)ネバン議長が7月26日,新憲法の8月16日公布を提案し,これにNC,UML,UCPN.MJF-L(MDRF-D)の主要4党が合意した。これで,8月16日新憲法公布の可能性が一気に高まった。

ところが,憲法制定は,街でも新聞でも,全く盛り上がっていない。マオイスト分派によるバンダ(ゼネスト)が7月25日にあったが,これはいつものこと,休日が1日増えただけ。一言でいえば,憲法シラケムード,どうぞご自由に,といった感じだ。

ところが,これが曲者。市民,学生らのシラケ(無関心)の拡大を良いことに,以前にも指摘したように,憲法公聴会や憲法提言募集を利用した一種の「やらせ」ないし世論操作が行われている。
 参照: 儀式かやらせの憲法公聴会

各紙報道によれば,憲法公聴会・憲法提案募集において出され,CAが最大限尊重すべきだとされる主要意見は,次のようなものである。

(1)「世俗」「世俗的」は使用せず,「宗教の自由」の用語を用いる。[これにより布教活動制限の存続の可能性がある。]これと関連して,「ヒンドゥー国家」復帰要望も強い。
(2)州の数の削減。
(3)比例制当選の最低得票率設定。

他にも様々な意見が出されているが,国家の基本構造にかかわるのは,なんといってもこれらの要望である。そして,主要4政党は,これらの意見を最大限尊重する努力をすると約束している。

一見明らかなように,これは旧体制に向かっての大幅後退である。善悪は別にして,現象的には大幅な揺り戻し。しかもそれが,制憲議会選挙や制憲議会での議論といった公明正大な方法ではなく,透明性も公平性もまるでない憲法公聴会・憲法提案募集といった形で進められつつある。

さらに,それに輪をかけているのが,不透明で怪しい,正式憲法案作成までの手続き。

■憲法草案のCA採択:6月30日
⇒ 憲法草案への国民意見聴取:7月20,21日
⇒ 「市民関係・世論聴取委員会」が「国民の意見」をまとめ,報告書をCAに提出。
⇒ CAが,「国民の意見」報告書を「政治的対話・合意形成委員会(PDCC)」に送付。
⇒ PDCCが「国民の意見」報告書を参照しつつ憲法草案を修正し,これをCAに提出。
⇒ CAがこれを受理し,それを「憲法起草委員会」へ送付。
⇒ 「憲法起草委員会」が,それを(おそらく必要な修正を加え)憲法法案としてCAに提出。
⇒ CAが,この憲法法案を三分の二の多数を持って可決。
⇒ CA議長が可決憲法法案を認証。
⇒ これを大統領が憲法として公布。

まるで大きな雲の中。そして,その雲が過去に向かって流れつつある。世論はつくられる。つくられる世論の中にいる人々は,大きな全体としての流れに気づかない。

ごく限られた人々にすぎないが,ネパールで知識人らと話していると,多かれ少なかれ論調が変化しているのに気づく。本人らは気づいていないかもしれないが。

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■ネパールを見守るヒマラヤ(7月26日夕,キルティプルより)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/07/27 at 14:54

カテゴリー: 憲法, 民主主義

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マチェガオン付近の震災,散策にさして支障なし

23日午後,暇つぶしにマチェガオン付近をぶらぶらしてきた。下記のコース。

キルティプル⇒⇒バトケパティ⇒⇒ドゥドポカリ⇒⇒マチェガオン⇒⇒タウケル⇒⇒サルヤンスタン⇒⇒キルティプル

ちょっと長いが,特にドゥドポカリ~マチェガオン間は,乾季にはマナスルやランタンの山々が見えるし,カトマンズ市街方面の景色もよい。山麓沿いの,車もバイクも少ない絶好の散歩コース。

数日前から天候が変わり,初秋のような爽やかな風。途中の茶店でお茶を飲んだりしながら,のんびり半日を過ごした。

この小路沿いにも古いレンガ積みの家屋があちこちにあり,山麓の風景とよくマッチしていたが,地震でかなり倒壊してしまった。特に,古い村であるマチェガオンには,レンガ造りの趣のある家が多かったが,地震で相当数が倒壊した。残念だか,自然には手向かえない。

マチェガオンからタウケルに向かって緩やかに下っていく小路からは,両側にレンガ工場が見える。特に情緒があるのが,乾季の花と霧の季節,いつまで見ていても飽きない。

ところが,そのレンガ工場の煙突が,地震で折れてしまった。これでは情緒半減。レンガ工場は,半壊煙突でも震災後復興のためフル操業,周囲にはレンガ山済みだ。この景気なら,煙突など,すぐ直すだろう。

環境上問題もあろうが,霧に霞むレンガ工場の煙突は,菜の花の田園によく似合う。

▼伝統的家屋健在
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150725j■竹製の門

▼被災家屋
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150725e■寺院の塔上部も破損

▼レンガ工場の折れた煙突
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▼キルティプル遠望
150725k■稲田の白点は白鷺(のような鳥)

【参照】
 カトマンズ市街の震災「軽微」,観光支障なし(2015-07-16
 震災深刻

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/07/26 at 12:45

カテゴリー: 文化, 旅行

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パタン震災,観光にさして支障なし

パタン旧市街は,まだ古い家がたくさん残っているので,地震被害は,カトマンズ市街に比べ,はるかに大きい。いたるところで家屋がツッカイ棒で支えれている。見るからに痛々しいが,しかし,それでも倒壊は思ったより少ない。

寺院はいくつか倒壊したが,すでに瓦礫はきれいに片づけられ,見て歩くに特に大きな支障はない。寺院周辺の趣のある古い店や喫茶食堂の多くも健在。のんびり歩きながら,古き良きネパールを存分に楽しめる。

街では,いつものように山鉾を立て,祭りを楽しんでいた。収穫と雨の神様,マッチェンドラナートの祭らしい。ブンガマティのはずれに大きな山鉾が立っていたが,パタンのこの小ぶりの山鉾はそれを迎えに行くものという。地震被害で巡行は延び延びになっているが,それでも修理し何とか祭りをやろうとする。家々をツッカイ棒で支えつつ,祭りは楽しむ。やぼな自粛はなし。粋だ。

というわけで,パタン観光は,必要な注意さえしておれば,特に危険ということはない。危険性から言えば,バイクや車の方が,何倍も危険だ。傍若無人,凶暴とさえ言ってもよい。ネパール観光は大いに楽しみつつも,バイクと車には,くれぐれもご用心いただきたい。

▼ツッカイ棒で支えられる家屋や寺院
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▼伝統的家屋/寺院修理
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▼パタン・ダーバー広場
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▼1階お土産・2階食堂喫茶/果物屋さん
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▼マッチェンドラナート山鉾
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谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/07/25 at 15:04

震災深刻(6): ブンガマティ

ブンガマティは,コカナの南方2~3Kmのところにあるネワールの古い村ないし町。コカナ~ブンガマティ間は,つい最近まで田畑の中の田舎道であり,ところどころに伝統的な彫刻や手織りやタンカ工房があり,それらを冷かしながらぶらぶら散歩するのに最適のコースであった。いまでは,少し家屋が増えたが,それでものどかな田舎道に変わりなく,地震以前は,外国人旅行者ともときどき途中で出会ったものだ。それが,今回は,一人も見かけなかった。

コカナから歩いてブンガマティに入ったとたん,あまりの激しい崩壊に,茫然自失。爆撃を受けた町のようだ。コカナ以上の惨状。

ブンガマティは,趣のある調和のとれた美しい町だったのに,この損壊の状況では,復元は難しいであろう。

それでも,驚くべきは,町の人々。他の被災地でもそうだったが,ここブンガマティでも,被災家族が,ごく自然な当然の作業をしているかのように,黙々と損壊した自宅の後片付けや取り壊しをしていた。状況が絶望的なだけに,ネパール庶民の不屈の精神と力強さを深く印象付けられた。

▼震災以前のブンガマティ
 コカナとブンガマティ  ブログ内検索:ブンガマティ

▼損壊家屋
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150723g■周囲の家屋ほぼ全壊

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▼仮設住宅
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▼寺院健在
150723t■記憶では数年前修理済み。

150723u■寺院内は避難所として使用。

【参照】カトマンズ市街の震災「軽微」,観光支障なし(2015-07-16)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/07/24 at 17:40

カテゴリー: 自然, 文化, 旅行

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震災深刻(5): コカナ

コカナは,パタンの南方6~8kmのところにあるこじんまりしたネワールの村ないし町。古いレンガ造りの家並が長い時の流れの中でじっくり熟成し,落ち着いた独特の雰囲気を醸し出していた。世界文化遺産候補。

そのコカナが,今回の地震で大きく損壊した。コンクリート使用建物は,少々古くてもすべて無事のようだったが,レンガ積みの古い家は多くが全壊または半壊していた。3か月経っているので,倒壊した家々の壁は元の土に戻り,通路や宅地に土手か小山のようになって堆積している。しばし呆然,涙なくして見られない光景だ。

崩壊家屋の間の狭い通路には,ショベルカーが入り,家々の残骸を掬い取り,ダンプカーで次々と運び出していく。鉄筋も固いコンクリート片もほとんどないので,作業はみるみる進んでいく。文化は熟成に長年月を要するが,破壊は一瞬だ。

古い家並が残っているところもあるにはあるが,これだけ多数の家屋が損壊してしまうと,もとの姿に戻すのは困難であろう。コカナには,援助機関が多数入り,テントや仮設住宅の設置など,活発な支援活動を展開している。

▼震災以前のコカナ
 コカナとブンガマティ ブログ内検索:コカナ

▼崩壊をまぬかれた古い建物
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▼崩壊家屋/後片付け/崩壊家屋撤去
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▼仮設住宅と救援活動
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150722l■ワールドビジョンは,掲示によれば,一定の条件を付けたうえで,特に支援が必要な被災家族に現金7500ルピーを配布。

▼コカナの下方の田園風景
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【参照】カトマンズ市街の震災「軽微」,観光支障なし(2015-07-16)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/07/23 at 14:59

カテゴリー: 自然, 国際協力

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余震におののく人と犬

いま,カトマンズで地震があった。下から突き上げる感じの揺れだったが,たいしたことなく,たぶん震度1くらいだろう。

が,地震と同時に,人々が外に飛び出したらしく,おののき叫ぶ声がキルティプルの丘の上まで地鳴りのように響いてくる。人ばかりか,犬もおののき,鳴き叫んでいる。人も犬も地震慣れしていないのだ。

これで,今夜からまた外のテントや仮設住宅で寝る家族が激増するに違いない。

【補足】(2015-07-23)
余震発生は7月22日午後10時14分。震源は,カトマンズのシンハダーバー付近。シンハダーバーは政府官庁街,その直下が震源とは,なかなか意味深だ。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/07/23 at 01:56

カテゴリー: 自然

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