ネパール評論

ネパール研究会

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文化災害:朝のシェイクアウトで右往左往

今朝,スマホがケタタマシク鳴ったので,何事かと驚き画面を見ると,「シェイクアウト」緊急警報であった。えっ!!, シェイクアウト・・・・⁇

驚いて,手元の電子辞書(十数年前購入)を引いてみると,「大辞林」には,この語は無し。「ウィズダム英和」では―

shakeout = 株価暴落大改変

そうか,株暴落の緊急警報か,これは大変だ,とビックリし,あわててネットを見ると,株など,暴落してはいない。むしろ,バブル以来の高値,絶好調だ。

変だなぁと思って,スマホ画面をよく見ると,この緊急警報は,阪神淡路大震災記念日(1月17日)に合わせた防災訓練の一環であった。

むろん,震災記念日に避難訓練をするのは,効果的だ。が,避難訓練であれば,誰でもスグ,それと判るような,平易な言葉で警報を出すべきではないか? それなのに,少しばかり古いとはいえ,辞書にも載っていないようなカタカナ用語でーー

シェイクアウト! シェイクアウト!

と絶叫する。が,こんな,わけが分からん舶来カタカナ語では,訓練にも何にもならない。このような「人為的な文化劣化による文化災害」を防止しなければ,人為では如何ともしがたい多くの自然災害に効果的に備えることもまた難しくなる。

文化災害を防止し,自然災害に備えよ!

宝塚市総合防災課

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2024/01/17 at 18:40

ネパール不動産バブル,日本人もビックリ!(5)

5.不動産価格に日本人もビックリ
ネパールの不動産価格高騰は,ネパリタイムズ記事が批判するように異様であり,これには地価上昇に慣れているはずの日本人も驚いている。たとえば,こんな記事がある――

miyachika「ネパールに移住するなら知っておきたい,年々高騰し続けるネパールの土地事情」miyachikaのネパール暮らし,2016/11/23日
ネパール民宿 Katunje Diary「だから言ったじゃないの♪♪」2018/01/31
ネパール民宿 Katunje Diary「カトマンズで家を探す義弟」2018/01/23
ネパール民宿 Katunje Diary「カトマンズの土地転がし」2018/03/26
宮本ちか子「地価が異常な上昇をし続けるヒマラヤの見える都市で、家を持つために大家になる」R.E.port, 2020/2/1

たしかに,このところのネパール不動産価格の高騰は異様であり,私自身,驚きを禁じ得ないが,その一方,振り返ってみると,すでに前世紀末頃には,カトマンズ盆地の不動産はかなり割高となっていた。その頃,これは不動産バブルであり,いずれ破裂するに違いないと危惧した記憶がある。

ところが,それから早や四半世紀たつというのに,不動産バブルは膨らみ続け,一向に破裂しそうにない。

これでは,たとえ不動産ローン金利が12%,あるいはそれ以上であっても,借金して不動産を買ったものが勝ちと多くの人々が考え,不動産投資に走るのも分からないではない。

不動産バブルはいつかは破裂するだろうが自分はその前に売り逃げられる――ネパールの不動産投機家たちも,かつての日本の同業者と同様,そう楽観視しているにちがいない。

■建設中の「カトマンズ・ビュータワー」。29階建高層ビルとなる予定だが,反対も多い(Rising Nepal,2020/12/02)

谷川昌幸(c)

Written by Tanigawa

2022/02/28 at 13:38

紹介:安倍泰夫『ネパールで木を植える』(5)

5 大震災と森林による生活安全保障
ネパールでは,10年に及ぶ人民戦争が2006年に終結,2008年に連邦民主共和制となり,2014年には制憲議会と政党内閣が成立した。ネパールが,この民主的新体制の下で生活の安定・開発促進へと向かい始めた矢先の2015年4月,ゴルカ地方を震源とする大地震が発生した。

この地震の被害は,死者8964人,被災者500万人余など,甚大であった。建物も,民家だけでなく寺院,学校,ビルなど,多くが全壊・半壊の大被害を受けた。

著者の植林事業地域でも,震源地が近かったため,甚大な被害が出た。トリスリ・バザールの町は崩壊,「植林センター」をはじめ村々の家屋の多くも倒壊した。が,植林した森は無事であった。

村人たちは,備蓄食料が失われてしまったので,森に植えたマンゴーやパパイヤの木の実を食べてしのいだ。森にはまた,水や再建用資材もあった。

大地震で家が壊れても,森は不死身だった。根はしっかり土をつかまえ,水を保持する。泉が湧く。・・・・生長した木を使って被災者用の仮設も作られた。植林の効果は着実に現れている。」(300頁)

日本でも,森林は,つい数十年前までは,村の生活基盤の一つであった。私の村でも,炊事用・暖房用のマキ,家屋新築・改築用木材,キノコ用ホダ木,売却・収益用木材など,ほとんどすべて自分たちが植林し育てた私有林や共有林から取ってきていた。そして水も田畑には山からの流水を,また自宅用には井戸水か,裏山の湧水をパイプで引き込むかして,使用していた。

もしあの頃,日本の山々がネパールのようであったなら,村の生活はネパールのそれと大差なかったであろう。水不足のため農業は過酷であり,子供であった私も,遠くの川まで毎日,灌漑用や飲用の水を汲みに行かされていたに違いない。

『ネパールで木を植える』を読むと,「外材」を無尽蔵であるかのごとく輸入し使い捨てにしている今の日本人の暮らし方が,自然に反し,「持続可能(sustainable)」ではないことがよくわかる。

日本の山々は緑豊かなように見えるが,現実には,山林の多くは手入れされることなく放置され,荒れるがままである。日本の山林も危機にある。本書は,私たち自身の日本の山々のことを考えるためにも,読まれるべきである。

200206e ■イラム(谷川2015/01/28)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2022/02/10 at 18:37

カテゴリー: ネパール, 自然, 農業, 国際協力,

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世界でいちばん美しい村,大阪上映

「世界でいちばん美しい村」が,大阪の「第七芸術劇場」(淀川区十三)で,6月17日から上映される。石川梵監督らのトークショーも予定されている。詳しくは,同劇場HPをご覧ください。
 ●第七芸術劇場 http://www.nanagei.com/

世界でいちばん美しい村
「ネパール大地震で壊滅した村が、悪戦苦闘しながら復興を果たそうとする姿を捉えた感動のドキュメンタリー。貧しくともいつも笑顔のアシュバドル一家、村を支える一人の看護婦、神秘的な風習、ヒマラヤの大自然を舞台に繰り広げられるさまざまな人間模様を捉える。」(公式HPより)

■公式HPより

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2017/06/13 at 10:53

カテゴリー: ネパール, 自然, 文化

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倉吉の趣のある町並みと震災

鳥取県の倉吉は,2016年10月21日の「鳥取中部地震」で震度6弱の揺れに襲われ,大きな被害を受けた。その倉吉に「鳥取復興割」を利用して行ってきた。

倉吉は初めて。なかなかユニークな町で,こんな壁画が表通りにドーンと描かれている。

この近くには,白壁土蔵の並ぶ「重要伝統的建造物群保存地区」があり,趣がある。古い建物が多いため,白壁などにかなりの地震被害が出ていた。

また寺院でも,山門や墓所など被害は大きい。民家や事業所ビルなどは,地域や建物により被害状況は大きく異なる。地盤や建物の構造によるのだろう。

倉吉の震災復興は,豪雪の冬が終わるこれから本格化するのであろう。ユニークで趣のある町,倉吉。一日も早い復興を願っている。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2017/03/11 at 20:38

カテゴリー: 旅行

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鉄筋ふんだん,新築建物

地震崩壊に懲りたのか,カトマンズの新築建物には,素人目にも,ふんだんに鉄筋を使っていると思えるものが多い。とくに官庁系。

これは,キルティプル新庁舎建築現場。後方がキルティプルの丘。もともと地盤の良いところで,先の地震でも付近の建物には大きな被害はなかった。それでも,これほど鉄筋が林立している。新建築基準ではこうなるのかな?

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民間の建物は,これほどではないが,それでも以前に比べ,基礎はしっかりしているように見える。これは,雨後の筍のようなタメル・ジャタ地区の建築現場。

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谷川昌幸(C)

 

Written by Tanigawa

2015/11/28 at 13:30

カテゴリー: 経済

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ネパール震災チャリティバザー ムスムス

Written by Tanigawa

2015/09/28 at 09:51

カテゴリー: 国際協力

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観光客,本当に少ない

地震後3か月たつというのに,観光客は本当に少ない。オフシーズンにはちがいないが,それにしても往きのタイ航空はガラガラだったし,カトマンズやパタンの観光地にも外人観光客はほとんどいなかった。中華街と化しつつあるタメルにも,中国人客はごく少ない。噂では,地震被害のほとんどなかったポカラ方面でも,観光客は激減だそうだ。これでは,観光業者は大打撃をまぬかれないだろう。

これは風評被害。震災復興のためにも,安全なところへの観光はもっともっと宣伝してしかるべきであろう。ネパール激励観光ツアー「ネパールで散財しよう!」。これは正常な経済活動であって,一方的な援助に伴う不愉快な副作用はない。大いに遊んで,そのことが結果的に震災ネパールの復興に寄与することになる。

150802a150802b■スンダラ付近/ジャタ付近

150802c150802d■ジャタ付近/タメル

150802e150802f■旧王宮

150802g■キルティプル近郊

谷川昌幸(C)

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2015/08/03 at 18:44

カテゴリー: 旅行

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中国プレゼンス,震災支援で急拡大

ネパールにおける中国のプレゼンス(存在感)が,急拡大している。小中学校に行くと,以前は「こんにちは!」などと声をかけられたが,いまでは「ニーハオ」だ。街には中国製品があふれ,あちこちで中国企業が工事をしている。

そして,それにダメ押ししたのが,震災救援活動。どこにいっても中国政府援助の青テントや「中国紅十字」の白テントが張られている。公園はむろんのこと,路地にも民家の庭にも中国援助テントはある。(個人購入中国製テントもあるかもしれないが,見ただけでは区別できない。)とにかく,ものすごい数。

援助国,援助団体などの間で援助地域割りがなされているのかどうか知らないが,首都圏を見るかぎり,メッセージは一目瞭然。中国は,目に見える形で,被災したネパールの人々を全力で支援している,ということ。

震災後のテント緊急援助は有効で,中国の支援は高く評価される。と同時に,その中国の震災救援作戦は,政治的にみても実に見事であり,羨望を感じざるをえない。なにはばかることなき大国のおおらかなふるまい――日本にはとうてい真似はできまい。

▼中国援助テント
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 ■トゥンディケル/ラーニポカリ

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 ■パタン

150801g150801a
 ■パタン/キルティプル

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 ■ムルク(バラジュ北西の村)

谷川昌幸(C)

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2015/08/02 at 18:59

カテゴリー: 国際協力, 中国

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仮設教室で憲法授業,ネパールの生徒たち

震災で校舎が損壊したネパールの学校では,テントや竹製の仮設教室をつくり,急場をしのいでいる。テントにせよ,竹を柱と壁に使用した竹製教室にせよ,寒暑,風雨などに十分対応できず,また音も筒抜けなので,授業はやりにくい。日本では想像もできないほど劣悪な授業環境だ。

そのような学校の一つが,カトマンズのスリョダヤ校。地震で本校舎が全壊,別棟の小さな数教室を除き,全教室を失った。そのため,USAID等のテント提供を受け,校庭にテント仮設教室をつくり,そこで授業を続けている。

そのスリョダヤ校で,先日,憲法制定議会の2議員を招き,いま最終段階にある新憲法をテーマに,特別授業が行われた。私は参加できなかったが,同校FBの写真からは,生徒たちが出席議員や先生たちを前に,盛んに意見を述べている様子がうかがわれる。

 全壊校舎跡のテント教室で,祖国の未来を託す新憲法について存分に議論する――なんと健気なことか!

ひるがえって,日本。冷暖房完備の快適な教室。雨も吹き込まなければ,蚊や蠅に悩まされることもない。ネパールの生徒から見れば,天国のような日本の学校で,いまどのような教育が行われているのか? どのような教育に変えようとされているのか? 日本で,憲法や国家の基本問題について,先生や生徒たちが自由に学び議論する権利は保障されているのか?

スリョダヤ校には,長年にわたって交流のある仲間たちと一緒に,ささやかながら再建支援を行っている。(参照:ネパール 震災支援 ムスムス

▼全壊校舎跡とテント仮設教室(7月15日)
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▼テント仮設教室で憲法特別授業(同校FBより)
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【参照】スリョダヤ校:フェイスブック ホームページ

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/07/28 at 16:38

カテゴリー: 国際協力, 憲法, 教育

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