ネパール評論 Nepal Review

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オリ首相就任と共産党統一

1.オリ首相就任
「統一共産党(CPN-UML)」のKP・オリ(खड्ग प्रसाद शर्मा ओली)議長が2月15日,ネパール第41代首相に就任した。

オリは,1952年2月22日,東部テラトゥム生まれのブラーマン。1970年頃から共産主義運動に参加,ジャパ闘争を闘い,73年から87年にかけ14年間投獄された。出獄後,UMLルンビニ地区代表(1990年就任)などを経て,UMLジャパ郡選出下院議員となり,党や政府の要職を歴任した。
・下院議員初当選 1991
・内相 1994-95
・副首相/外相 2006-07
・UML議長 2014.07-
・首相 (1)2015.10.11-2016.08.03 (2)2018.02.15-

2.共産党統一
オリUML議長が首相に就任できたのは,2017-18年の連邦議会選挙において,議会三大政党のうちの二党たるUMLと「ネパール共産党・マオイストセンター[マオイスト](CPN-MC)」が選挙後の統一を掲げ,安定と繁栄を訴え,選挙共闘により勝利したからである。

連邦議会代議院(下院)は議員定数275。このうちUMLは121(44.0%),MCは53(19.3%)の議席を獲得した。未曽有の大勝利である。

この選挙共闘の成功を受け,UMLとMCは選挙前に約束していた両党の統一に向け最後の詰めを行い,2月19日「7項目合意」に署名して一つの共産党となった。仮称「ネパール共産党(Communist Party of Nepal[CPN])」。

この新生「ネパール共産党」は,代議院(定数275)において174議席(63.3%)をもつ。これだけでも絶対多数を優に超えるが,もしマデシ系のRJP-N(17議席)かFSF[SSF]-N(16議席)の協力が得られるなら,三分の二を超え,憲法改正ですら可能となる。強力な安定政権の確立・維持に,形式的には十分な議席数である。

3.新生「ネパール共産党」の先行き?
しかしながら,新生「ネパール共産党」のオリ政権が強力な長期安定政権となるかどうかは,まだ何とも言えない。

(1)党名。新生政権党は「ネパール共産党(Communist Party of Nepal[CPN])」を名乗りたいらしいが,ネパールには共産党が多数あり,「ネパール共産党」もむろんすでに登録使用されている。看板にすぎないとはいえ,名は体を表す,おろそかにはできない。新党の名称はどうなるか?

(2)党是。「マルクス・レーニン主義」には異論はないが,「毛沢東主義(マオイズム)」はどうするか? 多数派のUML系は,もちろん由緒ある「人民多党制(複数政党制)民主主義」を党是とすることは当然と考え,譲る気はない。これに対し,人民戦争を戦い抜き事実上勝利したMC系は,多かれ少なかれ原理主義的な「毛沢東主義(マオイズム)」を放棄しはしないであろう。

(3)権益配分。議席,政府役職,党役職等の権益をどう配分するか? 政治闘争の赤裸々な本音部分。今回,MCが「ネパール会議派(NC)」との連立を解消してUMLに乗り換えたのも,NCがMCへの役職配分30-40%を拒否したのに対し,UMLは40%を約束したからだといわれている(*1)。身近な現世利益は現実政治を動かす大きな要因である。
*1 Kamal D. Bhattarai, “The (Re)Birth of the Nepal Communist Party,” The Diplomat, 21 Feb 2018.

新生「ネパール共産党」は,いまのところUML系6対MC系4の取り決めを守り,議席や主要な役職を配分しつつある。

党議長は,UML系のオリとMC系のプラチャンダ(PK・ダハル)が第一回党大会まで共同で務める(共同議長)。ただし,党大会がいつになるかは不明。

首相は,前半3年をオリ,後半2年をプラチャンダが務める。ただし,政権たらいまわし批判を恐れ,密約になっているともいわれており,約束通り政権が回されるかどうかは不明。

大統領と下院副議長はUML系,副大統領と下院議長はMC系に割り振る予定。

大臣ポストは,UML系11(61%),MC系7(39%)と,約束通り,6対4にきっちり割り振った(2018年2月24日現在)。しかし,これで不満はないのか? 以前であれば,大臣ポストをいくらでも増やし,ばら撒くことができたが,いまは憲法66(2)条により25大臣以下に制限されている。

(4)対印・対中関係。メディア,特に日本の新聞は,「親中安定政権誕生」などと書き立てているが,ネパールの対印・対中関係は,そう簡単ではない。

そもそも,いまや昇竜・中国を無視しては,世界の大半の国々は自国国益を守りえない。嫌中・日本ですら,中国無視や敵視は観念論,中国をよく観察し互恵関係を深めていかざるを得ない。ましてや国境を長く接し歴史的関係も深いネパールが中国に接近するのは,国益を考えるなら,当たり前。問題は,中国にどう接近し,どのような関係を構築していくかだ。

オリ首相はブラーマンで,もともと親印。親中の国王と闘い,14年間も投獄された。そのオリが,グローバル化の下での中国台頭により中国カードを手にし,使い始めたので,親中と見られているに過ぎない。国益第一なら,他の政治家であっても,多かれ少なかれ同じことをするはずだ。

一方,プラチャンダもブラーマンで,もともと親印。ネパール・マオイストは,中国共産党をニセ毛沢東主義者と非難し,激しく攻撃していた。中国側も,ときにはネパール体制側を支援しマオイスト弾圧に加担したことさえあった。いまはプラチャンダも中国に接近しているが,オリ同様,それは国益の観点からの戦略的な選択とみてよいだろう。

そこで問題は,オリ首相がたとえ戦略とはいえ,中国により接近した場合,インド筋が何らかの形で介入し,オリ政権打倒を画策するのではないかということ。そして,その際,働きかけのターゲットとなるのは,「ネパール共産党」反主流派のMC系,つまり親印・親マデシのプラチャンダではないか,ということ。

政権党「ネパール共産党」においては,オリ首相の率いるUML系が多数派。プラチャンダ率いるMC系は少数派であり,どうしても冷や飯を食わされ,不満がたまる。そこにインド筋が働きかけ,MC系の造反,連立組み換えによりオリ政権を崩壊させることは十分に考えられることだ。

事実,この数年の政権交代は,第三党マオイストによる連立相手組み換えによるものがほとんど。マオイストは2015年,UMLと組んでオリを首相とし,2016年には相手をコングレス党(NC)と取り換えてプラチャンダを首相とし,そして今度またUMLと組んでオリをふたたび首相とした。第三党のマオイストが,キャスティングボートを握っている。

そこにマデシ問題がらみでインド筋が介入してくるかもしれない。インドは,NC,マオイスト,マデシ系諸党の連携による親印政権を期待しているとみられている。

(5)移行期正義。「ネパール共産党」内のMC系の人々にとって,人民戦争期の重大な人権侵害をどう処理するか,つまり移行期正義の問題をどう解決するかは,個々人の浮沈に直接かかわる重大問題である。人民戦争期には,国軍,武装警察など政府側だけでなく,マオイスト側にも,重大な人権侵害に加担した人が少なからずいた。被害者側は,国際社会の強力な支援をバックに,責任者の処罰と損害賠償を求めている。これを受け,UML系も移行期正義の実現には肯定的である。しかし,もしオリ政権がこの問題に一歩踏み込めば,幹部を含め加害を疑われている人の多いMC系が激しく反発し,たちまち政権は動揺するであろう。オリ首相は,この難問をどう処理するか?

(6)憲法改正。マデシ系の人々は,インドの強力な支援をバックに,彼らの権利が認められるよう憲法を改正することを要求している。この要求に対し,MC系は肯定的,UML系は否定的。この問題は,インドが非公式国境封鎖を強行せざるをえなかったほど深刻。オリ首相は,この憲法改正問題をどう考え解決を図るつもりか?

以上のように見てくると,オリ内閣が親中長期安定政権になるかどうかは,まだいずれともいえないと考えざるをえない。今後の成り行きが注目される。


■オリ首相ツイッター(2月23日)/プラチャンダ議長フェイスブック(2月18日)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2018/02/25 at 17:46

プラチャンダ首相,TVで辞意表明

プラチャンダ(プシュパ・カマル・ダハル)首相が5月24日,テレビ番組で辞意を表明した。前日(23日)の議会で表明する予定だったが,タライ自治体増に反対する第2党UMLの抵抗で議会が開けなかったため,テレビで直接国民に辞意を伝えることになったのだそうだ。

今回のこの首相交代には,いつもの劇的な要素がまるでない。ビジネスライク。昨年8月,第1党のNC(コングレス党)と第3党のMC(ネパール共産党マオイストセンター)が政策協定を結び連立政権を発足させることになったとき,首相は地方選まではMC,そのあとはNCとする紳士協定を結んだ。今回の首相交代は,その取り決めによるもの。(首相交代が6月14日後期地方選の前か後かはまだ未定。)

しかし,それにしてもあまりにも実務的。乱闘や首相不在長期化は困るが,そうかといって政党の打算見え見えの首相交代にはシラケてしまう。政党都合による首相職のたらい回し。報道も地味。

プラチャンダMC議長から首相職を回されるのは,NCのデウバ党首。タライ紛争に対するカトマンズ中央政府の姿勢がどうなるか,特に注目される。なお,駐日ネパール大使のプラチバ・ラナさんは,デウバ党首の義母。(参照:駐日ネ大使候補プラチバ・ラナさん,議会委員会が承認) 


 ■プラチャンダ議長(2013年2月党大会ポスター)/ デウバ党首FB(5月26日)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2017/05/26 at 17:22

カテゴリー: 議会, 政党

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ネパール地方選を中国援助

プラチャンダ首相が訪中し,3月27日,習近平主席と会談した。会談後,中国政府は,ネパールの5月地方選に対し,1億3千6百万ルピーの援助をすると発表した。

あれあれ,ネパール政府は,次の選挙では外国援助を受けないと宣言していたのではなかったかな?(参照:地方選,5月14日投票)それを知ってか知らずか,よりによって人民民主主義の中国が多党制民主主義のネパールの選挙を支援する。興味深い。

一方,この中国による選挙支援には,世界最大の選挙民主主義国インドをバックにするマデシ諸党が猛反発,中国政府を激しく非難している。ネパールでは,地方選ですら,国際政治と密接不可分なのだ。難しい。

■在中ネ大使館HPより

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2017/03/31 at 22:40

プラチャンダ訪印と憲法改正問題

プラチャンダ首相が9月15-18日,インドを訪問した。初の外国公式訪問。訪印中の両国会談では,経済協力や防衛治安協力も取り上げられたが,注目されたのは,やはり憲法改正問題。

モディ首相:「首相閣下の賢明な指導の下,包摂的対話を通して多様な社会のすべての人々の要望を受け止め,憲法をうまく施行されていくに違いないと,私は確信しています。」(*1)

プラチャンダ首相:「ネパール国民選出の制憲議会による昨年の憲法公布は,歴史的な成果であった。わが政府は,すべての人々の参加をえてネパール憲法を施行していく真摯な努力を続けてきた。/タルー,マデシ,ジャナジャーティのことを真剣に考え彼らの正当な要求に応えなければ,新憲法施行の環境は整わない。/民族,言語,カースト,階級に違いはあっても,ネパールの国家と国民を統一していかなければならない。/もし人々を統一できなければ,政治危機が拡大するだろう。」(*1,4)

これらネ印両国首相の発言を見る限り,ネパール憲法については,評価がほぼ一致しているように見える。しかも,インド側は,慎重に,こう念押しさえしている。

V・スワラップ印外務省報道官「憲法制定はネパールの国内問題だ。われわれは,そこに介入したことは決してない。何が最善かを決めるのは,ネパール国民である。」(*4)

しかし,非公式の場では,マデシの要求する憲法改正をめぐり,かなり突っ込んだ議論があったといわれている。ネパール側が印政府に対しネパール憲法「歓迎」の表明を求めたのに対し,印政府はこれを拒否したとも伝えられている。もしそれが事実なら,憲法改正が依然としてネ印間の懸案として残っているということになる。(*5)

そうした中,ネパールでは憲法記念日(9月20日)が祝われたが,報道を見る限り,あまり盛り上がらなかったようだ。国家構成の基本たる憲法について評価が鋭く分裂している現状は,政治的に健全な状態とは到底いえないであろう。

160924■在印ネ大使館HP

*1 KALLOL BHATTACHARJEE, “Nepal constitution, a historic achievement: Prachanda,” The Hindu, September 17, 2016
*2 Shubhajit Roy, “Involve all in implementing Constitution, India tells Nepal,” The Indian Express, September 17, 2016
*3 NAYANIMA BASU, “Nepal’s Constitution amendments dominate Modi, Prachanda talks,” The Hindu Businessline, Sep 16, 2016
*4 “Never Been Prescriptive In Nepal’s Constitution Making: India,” NDTV, September 16, 2016
*5 Ram Khatry, “Report claims PM Narendra Modi refused to “welcome” Nepal constitution,” southasia.com, 17 September 2016

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/09/24 at 16:22

ゴビンダ・KC医師のハンスト闘争(6)

5.ハンスト勝利と政権交代以後
(1)「4項目合意」の締結
ゴビンダ・KC医師は7月24日,オリ政権(UML)と「4項目合意」を締結し,ハンストを終えた(*1,2)。

[4項目合意の内容]
 ・政府はこれまでの約束を守る。
 ・各州に国立医大を1校以上設置。ただし,カトマンズ盆地には,10年間,医科大,歯科大,看護大は新設しない。
 ・医科大の授業料の上限設定。国立医科大に無料ベッド枠設定。
 ・すべての医学部・保健学部を対象とする統一試験の実施。
 ・マンモハン・アディカリ病院は国家医学アカデミー(ビル病院)の管轄とする。
 ・カルキCIAA委員長の弾劾は,すでに議会で問題とされているので,それを見守る。

以上が「4項目合意」の内容として報道されているものだが,もしこのとおりとすると,これはゴビンダ医師の要求にほぼ沿うものと見てよいであろう。

むろんこれは「約束」であり,これまでと同様,空手形になる恐れはあるが,それはそれとして,少なくとも形の上ではゴビンダ医師がハンスト闘争に勝利したのである。

(2)「4項目合意」とプラチャンダ首相
ところが,「4項目合意」締結のその日(7月24日),オリ首相(UML)は辞意を表明し,政権を投げ出してしまった。そして8月3日,次の首相にマオイストのプラチャンダ議長が選出された。突然の政権交代。見方によれば,「4項目合意」はどさくさまぎれ,ともいえる。では,「4項目合意」はどうなるのか? 

いまのところ,NC=マオイスト連立プラチャンダ政権は,「4項目合意」を継承する姿勢を見せている。プラチャンダ首相は8月26日,首相官邸でゴビンダ医師らと会い,次のように約束した。

「あなた方の要望はよくわかっている。要望には最大限応えていきたい。」「教育,健康など基本的必要に国家は責任をもつべきだと,私は信じている。しかし,いまの政治文化,行政機構,政策を前提にする限り,これらすべての要望に応えることは難しい。」(*3)

ゴビンダ医師も,プラチャンダ首相の政治的思惑には気づいているので,面会後,こう述べ,予防線を張っている。

「プラチャンダ首相に対し,約束を守り,率先して私の要求に応える努力をしてほしい,と要望した。そして,要求に応えられないならば,次のハンストを始めるに何ら躊躇しない,と釘を刺しておいた。」(*4)

(3)ゴビンダ医師とガガン・タパ保健大臣
プラチャンダ内閣のガガン・タパ保健大臣(NC)は,プラチャンダ首相以上に明確に,ゴビンダ医師を支持している。

ガガン・タパ(40歳)は,王政反対学生運動のリーダーとして頭角を現し,2006年民主化に貢献。以後,NCの次世代政治家として特に若い世代から大きな支持を得ている。制憲議会議員(第一次2008-12,第二次2013-)。2016年8月26日,プラチャンダ内閣の保健大臣に就任。

ガガン・タパは,オリ前政権に対しゴビンダ医師がハンストを開始すると,すぐ駆け付け,連帯を表明した。そして,7月21日,他の2議員(NCのDR・グルンとマオイストのSS・シュレスタ)の支持を得て,ゴビンダ医師の諸要求に関する審議を議会に提案した。彼は,こう述べている(*5)。

「政府はこれまで,医学教育改革に関する様々な合意をKC医師との間で取り交わしてきた。それらの約束が実行されていないのであれば,実行せよと政府に指示するのが,議会の義務である。」

「腐敗を規制すべき憲法設置機関たる職権乱用調査委員会(CIAA)それ自体が職権を乱用し医学教育分野の腐敗を広めていると糾弾される事態になったら,人民代表の最高機関(議会)は,沈黙しているべきではないし,また沈黙していることもできないはずだ。」

「KC医師が提起しているのは,公益にかかわる諸問題だ。それらについて審議し彼の生命を救うため,直ちに行動すべきだ。権威ある議会で審議し必要な解決策を見つけ出さなければならない。私が,この公的重要性をもつ議案を提出したのは,そのためである。」

そして,保健大臣に就任すると,ガガン・タパは8月26日,こう明言した(*6)。

「在野中も,私はゴビンダ医師の訴えを支持してきた。これからは[保健大臣として],彼の諸要求に応えていきたい。・・・・全力を尽くしたい。マテマ委員会報告の実行が決定的に重要だと思う。」

(4)ゴビンダ医師ハンストと党派抗争
ネパールでは,何か事があれば,すぐそれは政争に利用される。ゴビンダ医師ハンスト闘争にも,そうした側面が多分にあるように思われる。

ゴビンダ医師がオリ政権に対しハンスト闘争を始めると,反UMLのNCとマオイストが彼の支持に回った。ゴビンダ医師勝利には,そうした党派抗争力学も,かなり大きく作用していたと見るべきであろう。

もしそうであるなら,新政権のプラチャンダ首相やガガン・タパ保健大臣が,ゴビンダ医師との約束をどこまで守るか,はなはだ心もとない。医療・保健分野には様々な利権が渦巻き,そこには新政権側の人々も多数関与しているからである。

160907■保健省FB(9月3日)

*1 “Four-point agreement forged, Dr KC to end hunger strike,” Himalayan Times, July 24, 2016
*2 “Dr Govinda KC breaks hunger strike,” Republica, July 25, 2016
*3 “PM assures Dr Govinda KC,” Himalayan Times, August 26, 2016
*4 “PM to ‘take initiatives’ to address Dr KC’s demands,” Kathmandu Post, Aug 27, 2016
*5 “Gagan Thapa files proposal of public importance seeking discussion on Govinda KC’s demands at House,” The Himalayan Times, July 21, 2016
*6 “Thapa vows to address Dr KC’s demands,” Kathmandu Post, Aug 27, 2016

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/09/07 at 16:30

ゴビンダ・KC医師のハンスト闘争(1)

コビンダ・KC医師が7月10日,医学教育・医療制度の抜本的改革をもとめ決死の無期限ハンストを開始した。8回目のハンストであり,支援も拡大したため,UML=マオイスト連立政権(オリ首相)はゴビンダ医師に歩み寄り,「4項目合意」を締結,ゴビンダ医師は7月24日,ハンストを終えた(*2,3,4)。(「4項目合意」の内容については後述。)

しかし,この「4項目合意」は広範な約束を含み,その中にはカルキCIAA委員長弾劾も含まれている。政府にとって,履行は極めて困難だ。

さらに,ゴビンダ医師ハンストの終了後間もない8月11日,今度は,ガンガ・マヤ・アディカリが戦時犯罪裁判を求め,決死の無期限ハンストを始めた(継続中*1)。人民戦争期の戦時犯罪には,官民,与野党を問わず,有力者が多数かかわっており,それらの調査,裁判,処罰は,これまた極めて困難だ。

この間,政権は,UML=マオイスト連立(オリ首相)からNC=マオイスト連立(プラチャンダ首相)に交代した(8月3日)。しかし,交代後の現政権のプラチャンダ首相は8月26日,ゴビンダ・KC医師らと会い,前政権と彼らとの約束は守ると明言した(*5,6)。

しかしながら,その約束の中には,前述のように,カルキCIAA委員長弾劾を始め難しい課題が多い。そこで,ゴビンダ医師も,こう念押ししている。

「もしこれらの要求が実現されなければ,次のハンストを始めるに何ら躊躇しない,と彼(プラチャンダ首相)には告げておいた。」(*6)

プラチャンダ首相にとって,ゴビンダ医師ハンストは,潜在的には継続しており,いつでも再開されうる強力な闘争なのである。

このように,プラチャンダ首相はいま,ゴビンダ医師とガンガ・マヤ・アディカリによる,いずれ劣らず対処の難しいハンスト闘争に直面している。後者についてはすでに概説したので,以下,ゴビンダ医師ハンストについて見ていくことにする。

160831b■ハンスト連帯FB(8月30日)

【参照】
*1 戦時犯罪裁判要求,プラチャンダ首相の覚悟は?(1
*2 “Four-point agreement forged, Dr KC to end hunger strike,” The Himalayan Times,
July 24, 2016
*3 “Dr Govinda KC breaks hunger strike,” Republica, July 25, 2016
*4 Manish Gautam, “Dr KC to call off fast after govt agrees to meet some demands,” Kathmandu Post, Jul 25, 2016
*5 “Will address your demands as far as possible, PM assures Dr Govinda KC,” The Himalayan Times, August 26, 2016
*6 “PM to ‘take initiatives’ to address Dr KC’s demands,” Kathmandu Post, Aug 27, 2016

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/09/01 at 13:27

大使選任手続き,最高裁が停止命令

プラチャンダ内閣が8月5日,すでにオリ内閣が4月19日候補者として閣議決定し,選任手続きを進めていた新任大使候補22名のうち,いわゆる「政治的」選考14候補の推薦を破棄した。これに対し,以下の4名が,プラチャンダ内閣の推薦破棄決定を不当とし,最高裁に破棄取り消しを求める訴えを出していた。
(原告)
 Yuvraj Karki == South Korea
 Shiv Maya Tumbahamphe == Israel
 Khadga Bahadur KC == Japan
 Narad Bhardwaj ==Sri Lanka
(理由)
 新任大使選任手続きは最終段階に入っており,外務省推薦7候補についてはすでに議会聴聞(ヒアリング)を完了している。ところが,他の候補については,直前になって議会聴聞が取り消された。これは公平の大原則に反する。

最高裁(スシラ・カルキ裁判長)は8月17日,この訴えにつき,プラチャンダ内閣に対し新たな選任手続きの停止命令と破棄理由提示命令(期限2週間以内)を言い渡した。最高裁は今日(8月24日),原告・被告双方の訴えを聞くことになっており,早ければそこで何らかの判断が示されることになるかもしれない。

また,これとは別に,他の3人の大使元候補も同趣旨の訴えを8月21日,最高裁に提出した。
 Niranjan Kumar Thapa == Myanmar(注:4月報道ではロシア)
 Khagendra Basnyat == Bangladesh
 Bharat Bahadur Rayamajhi == UAE
これら3人の訴えがどう扱われるかはまだ分からないが,いずれにせよ,日本を含む22か国において,新任ネパール大使の着任がかなり遅れることになるのは避けられそうにない状況である。

  160824■最高裁

【参照】
(1)新任大使アグレマン取得停止要請
(2)次期大使推薦予定,取り消し
(3)オリ内閣次期大使推薦閣議決定(Republica, 19 Apr)
Dubasu Chhetri(Britain), Khadga KC(Japan), Khagendra Basnet(Bangladesh), (Narad Bharadwaj(Sri Lanka), Tara Prasad Pokharel(Brazil), Ramesh Khanal(Germany), Jhabindra Aryal(Egypt), Padam Sundas(Bahrain), Ali Akhtar Mikrani( Saudi Arabia), Mahendra Singh(Qatar), Bharat Bahadur Rayamajhi(UAE), Lucky Sherpa(Australia), Sewa Adhikari(Pakistan), Yubraj Karki(South Korea), Niranjan Thapa(Russia), Yubanath Lamshal(Denmark), Prakash Subedi(Austria), Lok Bahadur Thapa( Belgium), Rishi Adhikari(Myanmar), Dr Mahendra Pandey(China), Shiva Maya Thumbahamphe(Israel)
(4) Ambassador nominees: Apex court’s show cause to govt, Kathmandu Post, Aug 18, 2016
(5) Decision to withdraw names of ambassadorial nominees stayed, The Himalayan Times, August 18, 2016
(6) Three ambassador nominees file writ at SC, Rato Pati, Aug 22, 2016

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/08/24 at 12:23

カテゴリー: 外交, 政治

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