ネパール評論

ネパール研究会

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丹後半島の晩秋

11月末,久しぶりに郷里に帰り,丹後半島を回ってきた。すでに晩秋とはいえ,温暖な好天続きだったせいか,紅葉がまだ残り,山や村を美しく彩っていた。

231203a 231203b■大内峠から望む天橋立 / 与謝野晶子歌碑

231203c■丹後町宇川

231203d■丹後町・弥栄町境界付近

丹後半島は,冬には数メートルもの雪が積もる豪雪地帯で,かつては日本三大秘境の一つとされていた。それでも日本海沿いに点在する漁村と内陸山地の村々との間には,山地を縫ってクネクネ上下する細い生活・交易路がいくつかあり,日常的使われていた。

ところが,高度成長が始まり,遠回りでも便利な車道が整備されていくと,古来の山道は敬遠され,ますます不便となった山道沿いの小集落からは住民が一家族また一家族と離れていった。

今回,たどってみた宇川沿いの山道もその一つ。山地の細いクネクネ道だが,数十年前までは,そこそこ整備され,道沿いには住居も何軒かはあった。

とりわけ感動的だったのは,その道から枝分かれした,さらに細い道の先の谷間に小集落があり,そこに小さなキリスト教会があったこと。まるでエデンの園

ところが,数年前,その山道を登り,分岐点まで行くと,枝道の方に「補修中につき通行止め」の看板が出ていた。その時は,一時的な通行止めで,先の谷間の集落はあるに違いないと思っていた。が,今回行ってみると,「通行止め」看板はそのまま。どうやら「エデンの園」のような谷間の小集落は教会ともども廃村となり,無くなってしまっていたらしい。

残念だが,仕方なく通行止めの枝道は諦め,まだ何とか通れる小川沿いの山道を登っていくと,道端に数件の廃屋がかろうじて残っていた。が,荒廃は無残なまでに進行。この冬の豪雪には,もはや,とうてい耐えられそうにはない。

その道端には,お地蔵さまがただ一人,笑みをたたえ,ひっそりとたたずんでおられた。

231203e ■丹後町小脇

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2023/12/03 at 17:33

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「陽春」の丹後:天橋立とネパール料理店

新年早々,所用で丹後の村に行ってきた。以前だと,この時期,厳寒で積雪も多かったが,地球温暖化のせいか,最近は,そのようなことはほとんどなくなった。この正月も暖かく,村の田畑に積雪なし。驚いたことに,民家の石垣に生えたユリらしき植物が満開の花をつけていた。
■石垣のユリ(?)

陽気に誘われ村の名所「大内峠」に行き,「股のぞき」をすると,日本三景の一つ「天橋立」が,まるで春霞に包まれたかのように,ぼんやりと中空に浮かんでいるのが望まれた。右手の高峰,鬼の住む大江山(832m)にさえ積雪なし。

5日には,近くの町のインド・ネパール料理店に行ってきた。小さな町だが,メニューを工夫し頑張っている。丹後の文化も,大きく変わりつつあるようだ。

■天橋立

■ネパール料理店

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2020/01/08 at 17:31

師走の丹後の村

わが「負動産」の片付けに,丹後の村に行ってきた。師走というのに異常に暖かく,まだ秋盛りのよう。付近の村は,2018年豪雪のせいか,荒廃が一段と進んだようだ。懐かしい山村風景が冬を越すたびに失われていく。


 ■紅葉の村/鉄橋を渡る気動車

 
 ■河原のススキと村/土蔵

■カヤ屋根の古民家


 ■カキとカン(空カンは鳥獣除け?)


 ■ゴールポスト?/廃屋

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2018/12/08 at 15:45

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晩秋の村

無人空家となった負動産の片付けに,丹後の村に行ってきた。朝は濃い霧が立ち込め,陽が昇ると咲き残る野の花に蝶が舞う。そこはかとなく哀愁ただよい,いかにも晩秋といった風情だ。

窓を開け掃除をしていると,野鳥が飛び込んできた。以前はあまり目にしなかった小鳥。耕作放棄地が増え,山の小鳥たちも民家近くまで来るようになったのだろう。

村の環境は,この数十年で大きく変わった。群れをなし無数にいた雀や,田植えの頃やってきて電線にズラリと並び低空曲芸飛行を繰り返していた燕が激減する一方,猿や猪が民家近くに出没し,道端では外来種の草花が優勢となった。

時は移り,自然も変わる。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2018/11/10 at 16:36

カテゴリー: 自然, 農業, 旅行

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みのりの秋,里も山も

今年も柿が豊作だ。枝が折れるほど,たくさんなっている。気候変動のせいかもしれないが,豊作それ自体はめでたい。

以前だと,柿が実れば採り入れ,甘柿はそのまま食べ,渋柿だと皮をむき軒下につるして干し柿とし,少しずつ食べた。干し柿は甘くて栄養満点の保存食だった。

ところが,いまでは柿はほとんど採られず,柿の木にそのまま放置されている。人手が少なくなったのと,他にスナック菓子など安直な食品があふれているからだろう。

しかも今年は,サルもカラスやヒヨドリも柿の実を食べにやってこない。山もきっと豊作で,わざわざ里まで降りてこなくてもよいのだろう。柿の実を食い荒らされると腹が立つが,今年のように全く来ないと,それはそれで少々淋しくはある。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2017/11/06 at 21:50

カテゴリー: 自然, 旅行

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霧の秋の村

山陰の丹後は,高山や盆地のような濃い霧が出ることは少ないが,それでも夜冷えると,早朝に霧が立ち込める。見慣れた村の風景も,霧に包まれると,おとぎの国のような不思議な風情が感じられる。


 ■霧の中の鳶/掲示板とコスモス


 ■前日夕方のトンボ(まだ赤トンボではない)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2017/10/11 at 11:59

カテゴリー: 自然

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雪中の仏像とバス停

丹後の雪も,地球温暖化で,以前とは比較にならないほど少なくなったが,それでもお地蔵さんやバス停が埋まるほどには積もる。見る分には情緒があるが,生活は大変だ。

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 ■雲原バス停付近

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 ■長尾公民館横

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2017/01/20 at 16:08

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丹後のネパール料理店,大繁盛

丹後のネパール料理店が大繁盛。しかも,客には若い女性が多い。一つには,こんな僻地にまでネパール人コックがやってきて,自ら本場の料理を調理し出してくれること。もう一つは,料理がおいしくて安いこと。たとえば,このナン。巨大なうえに,うまい。これで日替わり定食650円! (ナンはネパール料理ではないという人もいるが,そう思い,おいしく楽しく頂いているのだから,それでよいのではないか。)

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(c)谷川昌幸

Written by Tanigawa

2016/11/01 at 19:09

カテゴリー: 文化

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柿、未曾有の大豊作の不気味

丹後の村では、柿が大豊作。こんなスゴイ実りは、これまで一度も見たことがない。

柿は、古来、日本に最適の果樹。空き地や田畑の周辺に植えておけば、勝手に育ち、実をつける。農薬、肥料、剪定など、一切不要。文句なしの100%自然農法。(資本主義化した商品作物としての柿は別物)。

それにしても、今年はスゴイ! あまりにも多くの実をつけたため、実の重さに耐えきれず、多くの枝が折れ、幹さえ裂けてしまった木も少なくない。

多くて穫りきれない。あとは、おやつとしてヒヨドリやサルに進呈しよう。クマが来ると怖いが、今年は山中の野生柿も大豊作なので、危険を冒して里まで降りてくることはあるまい。

大豊作はめでたいが、こんな異常な実りだと、天変地異の前兆かと、少々不安になる。取り越し苦労だろうが、やはり何かにつけ、ほどほどが、よい。面白味はないが。

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■無数の実をつけた柿の木/小枝にびっしり結実

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■折れたり裂けたりした柿の木/つるし柿

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/10/28 at 20:47

カテゴリー: 自然, 文化

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京都の米軍基地(23):特定秘密としてのXバンドレーダー

米軍Xバンドレーダーは,原発と同等,いや見方によれば原発以上に危険である。すでに「京都の米軍基地(13):「Xバンドレーダー体制」の危険性」において指摘したように,Xバンドレーダーは軍事機密の塊であり,特定秘密保護法が制定されれば,その出力など,つまりはXバンドレーダーに関することが「特定秘密」に指定されることは,まず間違いない。

特定秘密保護法(案)は,こう定めている。

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特定秘密保護法(案)
第二十二条 特定秘密の取扱いの業務に従事する者がその業務により知得した特定秘密を漏らしたときは、十年以下の懲役に処し、又は情状により十年以下の懲役及び千万円以下の罰金に処する。特定秘密の取扱いの業務に従事しなくなった後においても、同様とする。
(2~5略)
第二十三条 人を欺き、人に暴行を加え、若しくは人を脅迫する行為により、又は財物の窃取若しくは損壊、施設への侵入、有線電気通信の傍受、不正アクセス行為(・・・・)その他の特定秘密を保有する者の管理を害する行為により、特定秘密を取得した者は、十年以下の懲役に処し、又は情状により十年以下の懲役及び千万円以下の罰金に処する。
(2~3略)
第二十四条 第二十二条第一項又は前条第一項に規定する行為の遂行を共謀し、教唆し、又は煽動した者は、五年以下の懲役に処する。
2 第二十二条第二項に規定する行為の遂行を共謀し、教唆し、又は煽動した者は、三年以下の懲役に処する。
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この特定秘密保護法の危険性については,すでに多くの批判がなされている。要するに,秘密は秘密であって,何が秘密かを示せば,秘密ではなくなってしまうということ。だから,国民は何が秘密か明確に知らされることなく,その秘密を理由として処罰される恐れがある。罪刑法定主義の原理的否定である。朝日新聞(10月26日夕刊)素粒子のいうとおりだ。
 「お前は秘密を漏らした。逮捕する」
 「何の秘密を」
 「それは秘密だ。私は知らぬ」。

特定秘密保護法が成立すれば,丹後は間違いなく「Xバンドレダー体制」になる。米軍関係者は,軍人・軍属160人,関係者全部を含めるとその何倍にもなる。当然,飲み屋で一緒になったり,友人になったり,あるいは結婚し家庭を持つかもしれない。そんなとき,ついうっかり,あるいは酔っぱらって,Xバンドレーダーの出力や使い方などを聞こうものなら,しょっ引かれ,取り調べられ,下手をすると懲役刑になるかもしれない。たとえ日本人妻であれ,義理の父母や隣人であれ,同じこと。恐ろしい。たとえ処罰までは行かなくても,警察に事情聴取されるかもしれないということだけでも,威嚇効果は十分だ。

それも,Xバンドレーダーの出力といった,いかにも秘密らしい「秘密」だけではない。たとえば,このレーダーは,大量の冷却用水を必要とする。となれば,地域の谷間の取水口付近も「特定秘密」とされるかもしれない。そんなこんなで,Xバンドレーダーと直接・間接に関係するあらゆる事が「特定秘密」とされる可能性がある。いや,たとえそうでなくても,何が秘密か分からないところでは,そう考えて行動したほうが安全だ。疑心暗鬼,住民にとっては「見ざる,聞かざる,言わざる」以外に,自分を守る手だてはなくなる。

Xバンドレーダー基地は,電磁波の健康被害,温排水の影響,軍人・軍属の交通事故や犯罪などよりも,実際には,それが軍事機密ないし「特定秘密」となるということの方が,住民全体の日常生活には,はるかに深甚な影響を及ぼす。Xバンドレーダーは,数千キロ先を常時監視するため,自分を隠す必要がある。見られないで見る。丹後は,見えない「秘密」に脅え,住民の自主規制,相互監視に向かう。「Xバンドレーダー体制」による住民監視社会の到来だ。

このような事態は,市議会審議においては,ほとんど考慮されてこなかった。いま,当初想定していなかった特定秘密保護法をめぐる新しい状況も生まれつつあるわけだから,市議会は改めてXバンドレーダー配備受け入れの是非を再審議すべきではないか? 「Xバンドレーダー体制」が成立すれば,もはや抵抗は出来なくなってしまうだろう。

【追加】(2014-1-16)
安倍政権は,2013年12月6日「特定秘密保護法」を成立させ,12月13日公布した。さらに2014年1月14日には,秘密指定基準を検討する「情報保全諮問会議(秘密法諮問会議)」の座長に,読売新聞社の渡辺恒雄会長・主筆を選任した。この人事をみても,この法律がどのように運用されるかは,明白といってよいであろう。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/10/27 at 22:37