ネパール評論

ネパール研究会

雪の自然と現代的幸福の不自然

昨夜から雪。一面銀世界できれいだが,住民にとっては,やっかいもの。

高度成長以前であれば,冬はコタツに入り茶を飲み,おしゃべりするか,せいぜい薪ストーブのそばで米俵や縄を藁でつくるくらい。みな貧しかったが,それなりに幸せな自然な冬の生活であった。

ところが,常在戦場の現代,雪が降ろうが霰が降ろうが,槍が降ろうが,働かねばならない。そこで,役所は早朝から除雪車を出し,常夏の国から輸入した石油を惜しげもなく使い(燃費1km/ℓ以下?),除雪する。住民は,大枚はたいて冬タイヤに替え,それでもスリップ事故に脅え,積雪渋滞にたえ,通勤せざるを得ない。

農家も大変。現代農業は商品作物でないとやっていけないので,冬に春や夏の野菜や果物をつくるため,ビニール温室を設置し,熱帯輸入の石油を燃やし,雪が降れば,夜中でも起きて倒壊防止のため雪下ろしをせざるを得ない。

不自然なことをしなければ生きられないのが,資本主義社会。現代の豊かさは,不自然なことに幸福を感じること。そのうち,自然中の自然,死さえも克服し,永遠の生という至福を,人間は手にすることになるであろう。

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谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2017/01/23 @ 13:39

カテゴリー: 経済, 自然, 農業, 文化

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