ネパール評論

ネパール研究会

マオイストの中国詣で

谷川昌幸(C)

ネパール・マオイストが中国詣でをしている。

10月21日には,マオイスト軍幹部11人からなる訪中団が,9日間の「私的訪中」から帰国した。軍訪中団は,B.プン常任委員(軍担当)と妻OG.マガル,J.シャルマ議員(前副司令官),CP.シャルマ副司令官(PLA報道官)らからなり,ラサ経由で北京に行き,中国共産党幹部らと会見してきた。

その軍訪中団の帰国翌日(22日),今度はプラチャンダ議長と妻シタ・ダハル,KB.マハラ常任委員(外務担当)らが4日間の公式訪中に出発した。上海万博に出席し,中国共産党幹部や政府高官らと会見する予定という。

ネパール・マオイストがこのように次々と訪中するのは,なぜか? ジャー副大統領も訪中したので,マオイストだけではないが,それでもやはりマオイストの中国詣では目立つ。

もともとネパール・マオイストは,毛沢東原理主義であり,文革以後の鄧小平路線(社会主義市場経済)を修正主義と激しく非難していた。現在のインド・マオイストと同じ立場である。

これに対し,中国はネパール・マオイストを非難し,「マオイスト」「マオイズム」を使用するな,とさえ要求していた。犬猿の仲だったといってよい。

ところが,ネパール・マオイストは制憲議会選挙で大勝し,体制内に入り,アッというまに中国以上の「修正主義者」になってしまった。ネパール・マオイストの幹部たち,議員先生方は,資本主義粉砕など,もはや夢にも思っていないであろう。そのネパール修正主義マオイストが,中国修正主義マオイストに急接近しているのだ。

それはそれで結構なことだが,これに心穏やかでないのが,インド政府。ネ中接近を防止するため,あらゆる手段でネパール・マオイストへの圧力をますます強化していくのではないだろうか。

Written by Tanigawa

2010/10/23 @ 21:06