ネパール評論

ネパール研究会

マオイストとブラジャー:権力欲と性欲とメディア

ネパールのメディアは,一面,面白い。実験的といってよい。たとえば,これはネパールニューズコムのトップページ――

(Nepalnews.com, 2011-6-5)

画面上部は,マオイストがカナル首相(UML)の続投を支持したという政治記事。6月4日,マオイスト指導者たち(プラチャンダ議長,バブラム・バタライ副議長,モハン・バイダ副議長,ナラヤンカジ・シュレスタ書記長)が首相官邸を訪れ,カナル首相に「挙国政府具体化まで辞めなくてもよい」と進言した。カナル首相にも早期退陣の考えはない。

日本とは好対照。菅首相は,せっかく玉虫色妥協で不信任案否決を勝ち取ったにもかかわらず,すぐ腰砕け,6月4日には,早期(8月頃)退陣を表明してしまった。なんたる淡泊さか。

ネパールでは,こうはならない。マオイストの三巨頭は犬猿の仲であり,内紛が絶えないが,イザとなると結束し権力保持・拡大に当たる。カナル首相もそれをうまく利用し,政権の延命を図る。権力欲が政治家の本性だとすると,ネパールの政治家の方が,日本の政治家よりも,はるかに政治家らしいといえる。

このように,ネパールの政治や政治家はいまや日本の学ぶべきモデルとなりつつあるが,そこに目をつけたのが,ネパール・メディア。

ネパールニューズコムは,上記トップページにおいて,日本人の興味を引きそうな政治記事のすぐ下に,魅惑的な下着広告を配している。性が人間のもう一つの本性だとするなら,権力関係記事の下に性関係商品広告を掲載するのは,理にかなっている。ネパールニューズコムは,劣化著しい日本の政治と性事に商機を見いだし,「日本頑張れ」と鼓舞激励してくれているのだ。(日本では「週刊ポスト」などの週刊誌がこの戦略をとってきたが,かつてほどの元気はない。)

日本の権力欲減退政治家や性欲減退草食系男児は,いまこそギラギラ・ギトギトの濃厚味ネパールに目を向け,自らの本性を覚醒させるべきであろう。

(補足)ネパールニューズコム自身は,自ページが日本でどう表示されるか(どのような広告が入るか)までは,おそらく考えてはいなかったであろうが。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2011/06/05 @ 12:47

カテゴリー: 情報 IT, 政治, 文化

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