ネパール評論

ネパール研究会

カトマンズ盆地の戸建住宅と高層住宅

1.戸建住宅
11月25日、キルティプールの西北を散策。仏教ゴンパの下の豪華改築キルティプール病院のところを下って川辺に出ると、左から右まで新興住宅の見事なパノラマが広がる。

カトマンズ、パタン、キルティプールなど、ネワールの古い住宅は中庭を囲むような構造であり、多くの家族がそこに共同で住んでいるが、キルティプールの西の対岸の丘の住宅は、ほぼ同じ構造の小さな戸建て、まるでマッチ箱を斜面のひな壇に並べたかのようだ。壮観といえば壮観、ネパール新興住宅文化を象徴するものの一つである。

仮説としては、新興住宅に移り住む人々は、様々な出自であり、伝統的な形の共同住宅=共同社会を形成できないからではないか。あるいは、戸建ての方が、しがらみが無く、財産として購入・売却しやすいからかもしれない。いずれにせよ、見知らぬ他人の市場社会には、バラバラのマッチ箱戸建てがよく似合う。


■キルティプール西方の丘の戸建住宅


■キルティプールの丘北方下の戸建住宅

2.高層住宅
これと対称的で対照的なのが、高層住宅。カトマンズ盆地の各地に、ニョキニョキ林立し始めた。これは現代の集合住宅だが、伝統的な中庭を囲むネワール住宅とは、原理的に異なるようだ。中まで入ったことがないので推測にすぎないが、これらは、多くの場合、居住するにせよ主な目的は投資であり、顔の見えないバラバラの個人や企業を相手にしているのではないか。

個人主義が資本主義をつくるのか、資本主義が個人主義を育てるのか? おそらく両側面があるのだろう。今後、ネパールは、住居形態の変化により、文化的にも大きく変わっていくのではないだろうか?

 
■パタンの高層住宅/パタン南方の高層住宅

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/11/27 @ 21:05