ネパール評論

ネパール研究会

制憲議会選挙2013(34):小選挙区制

小選挙区制(पहिलो हुऩे निर्वाचित हुने निर्वाचन प्रणली)は,定数240。立候補は2選挙区まで可能。もし2選挙区とも当選の場合は,開票結果発表後30日以内に,いずれか一方の選挙区の当選辞退届を制憲議会議長に提出する。その結果,欠員となった選挙区は,補欠選挙を実施する[第5条(2)]

今回,2選挙区立候補が何人いたかは調査していないが,2選挙区当選による補欠選挙は4選挙区ある。UML,NC各2名で,いずれも幹部らしい。

この2選挙区当選者の一人が,UMLのMK・ネパール。カトマンズ2区ではNCとマオイストに圧勝し,ラウタート1区では3百票あまりの僅差でAK・グプタ(MJF-D)に辛勝した。ネパールは,これら2選挙区のうち,地元重視を理由に,ラウタート1区を選択,その結果,カトマンズ2区は補欠選挙となった。圧倒的多数で支持したカトマンズ2区の有権者からすれば,あの選挙はいったい何だったのか,バカにするな,といったところだろう。

これと対照的なのが,マオイストのプラチャンダ議長。カトマンズ10区では,NCのRK・ケーシーとUMLのS・マナンダルにまさかの惨敗,第3位に甘んじた。もう一つの立候補選挙区シラハ5区では,UMLのLN・シュレスタに9百票あまりの僅差で辛勝,かろうじて議席を確保した。この場合,シラハ5区は滑り止めといったところ。

この2選挙区立候補制は,いったい何の目的で採用されたのだろう? 建前はいざ知らず,実際には,各党有力者がメンツとして首都カトマンズで立候補し,同時に,万が一の保険として地方選挙区にも立候補するため利用されているとしか思えない。プラチャンダがその好例。こんな不透明な制度は廃止した方がよいのではないか?

もう一つ,小選挙区制で注目すべきは,各政党は包摂原理(समावेशी सिद्धान्त)を考慮して候補者を選考せよ,と規定されていること[5(3)]。しかし,これは「考慮(ध्यान दिनु)」せよということであり,比例制の場合とは異なり,厳密には法的拘束力はないと見るべきだろう。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/02/03 @ 21:47

カテゴリー: 選挙, 政党

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