ネパール評論

ネパール研究会

新憲法支持低迷,はや改憲か?

リパブリカ世論調査(同紙10月1日付)によると,9月20日公布の新憲法については,反対が賛成をかなり上回った。調査はネット回答であり,詳細も不明だが,一つの目安とはなる。やはり,あまり支持は広がっていないようだ(*1)。

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  ・新憲法に賛成 37.73%
  ・新憲法に反対 54.14%
  ・新憲法に留保付き賛成 8.13%

最大の理由は,もちろんタライにおける激しい反憲法闘争。すでに50名以上の犠牲が出ており,また印ネ国境付近での道路封鎖によりネパール国内ではガソリン,灯油,航空燃料,医薬品,食料などの不足が深刻化してきた。

このタライの反憲法闘争にはインドの暗黙の支援があり,力で強引に押しつぶすことは困難だ。インドの後押しがある限り,中央政府ないし主要3党は,タライのマデシやタルーの憲法改正要求に相当思い切った譲歩をせざるをえないだろう。

すでに主要3党は,マデシやタルーの要求にこたえ,憲法改正の検討を始めた。州区画や選挙区の見直し,あるいは国家諸機関への比例参加の明確化など,新憲法の骨格にかかわる部分の改正(修正)だ。

このような改正は,タライの人々の民主的包摂を考えるなら,必要であり,また望ましくもあろう。が,他方で,制定直後の抜本改正,ましてやそれが隣国の圧力の下での改正であればなおのこと,「ネパール基本法としての憲法」(第1条)の権威を大きく損なう恐れがあることもまた否定できない。朝令暮改⇒⇒法=統治=国家そのものへの不信。

これは難しい。ネパールはこの難局をどう打開していったらよいのであろうか?

*1 “Republica Polls : Over 54 percent of voters diverge with Nepal Constitution,” Republica, 2015-10-01
*2 “Ready to readjust boundaries,” Nepali Times, 2015-10-01
*3 “Government initiates process to amend constitution,” Himalayan, 2015-10-02

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/10/03 @ 22:31

カテゴリー: インド, 憲法, 民族

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