ネパール評論

ネパール研究会

憲法改正案,審議入りか

政府が2016年11月29日に議会に提出していた憲法改正案が,UML等の反対はあるものの,いよいよ審議入りとなりそうな雲行きだ。

現行2015年憲法は,それに基づく国政選挙や地方議会選挙も行われておらず,実質的にはその基幹部分がほとんど具体化されていない。その意味では,憲法はまだ形だけといっても言い過ぎではない。

ところが,それにもかかわらず,政府はその憲法の重要部分7か所を早々と改正するのだそうだ。しかも,その政府提出改正案ですら,反対派との泥沼交渉により,またまた修正ということになるかもしれない。この調子では,憲法改正案の改正案の,そのまた改正案の・・・・といったことになりかねない。

というわけで,あまり気は進まないが,重要問題ではあるので,一応,正式の政府提出憲法改正案の概要を紹介しておく。ただし,諸要求をつぎはぎしたため,複雑にして難解なため,誤読があるかもしれない。不審な部分があれば,原文でご確認ください。

第6条 ネパールで話されるすべての母語は,国民言語(national language) である。
改正案⇒第6条 ネパール政府は,言語委員会の勧告に基づき,すべての母語を憲法の付表に掲載する。

第7条(2) ネパール語に加え,各州は,州法に則り,州民の多数の話す1つまたはそれ以上の国民言語を公用語とする。
改正案(第7条(2)に(a)追加)⇒第7条(2)(a) 政府は,言語委員会の勧告に基づき,公用語とされたすべての言語を憲法の付表に掲載する。

第11条(6) ネパール人と結婚した外国人女性は,希望するなら,連邦法の定めるところにより,ネパールの帰化国籍を取得することが出来る。
改正案⇒第11条(6) ネパール人と結婚した外国人女性は,希望するなら,外国籍放棄手続き開始後に,連邦法に則り,ネパール帰化国籍を取得できる。

第86条(2)a 56議員は,州議会議員,村会の議長と副議長,および市の市長と副市長からなる選挙人団の中から選出される。投票には,それぞれ重みを配分する。各州から8議員を選出し,その中には少なくとも女性3人,ダリット1人,および障害者または少数者集団に属する者1人を含まなければならない。
改正案⇒第86条(2)a 56議員は,州議会議員,村会の議長と副議長,および市の市長と副市長からなる選挙人団の中から選出される。投票には,それぞれ重みを配分する。各州から3議員以上を選出し,その中には少なくとも女性3人,ダリット1人,および障害者または少数者集団に属する者1人を含まなければならない。それ以外の35議員は,各州の人口に基づき選出する。ただし,連邦法に則り,各州から人口比に基づき選出される35議員のうち14議員は女性とする。

第287条(6)a 公用語の要件を決め,ネパール政府に勧告する。
改正案(第287条(6)aに1)を追加)⇒第287条(6)(a) 1) 第6条に則り,ネパールで話されるすべての母語の表をつくり,ネパール政府に提出する。

付表(4)
第5州 ナワルパラシ(ススタ・バルダガート以西),ルパンデヒ,カピルバストゥ,パルパ,アルガカンチ,グルミ,ルクム(東部),ロルパ,ピュタン,ダン,バンケ,バルディヤ
改正案⇒第5州 ナワルパラシ(ススタ・バルダガート以西),ルパンデヒ,カピルバストゥ,ダン,バンケ,バルディヤ

第4州 ゴルカ,ラムジュン,タナフ,カスキ,マナン,ムスタン,パルバト,シャンジャー,ミャグディ,バグルン,ナワルパラシ(ススタ以東)
改正案⇒第4州 パルパ,アルガカンチ,グルミ,ルクム(東部),ゴルカ,ラムジュン,タナフ,カスキ,マナン,ムスタン,パルバト,シャンジャー,ミャグディ,バグルン,ナワルパラシ(ススタ・バルダガート以西),ロルパ,ピュタン

161225a■2015年憲法の州区画(Wikimedia Commons)

*1 “Govt registers 7-point constitution amendment bill,” Republica, November 30, 2016
*2 “SC gives nod for Constitution amendment bill,” Business Standard, 2 Jan. 2017
*3 “Govt preparing to table constitution amendment bill tomorrow,” Republica, January 7, 2017

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2017/01/08 @ 04:59

カテゴリー: 議会, 憲法

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