ネパール評論

ネパール研究会

ゴビンダ医師のハンスト闘争(30)

7.ハンスト:開始から終了まで
 (1)ジュムラでハンスト開始
 (2)体調悪化
 (3)ゴビンダ医師支持の拡大
 (4)カトマンズへの強制移送

(5)カトマンズでのハンスト継続
ゴビンダ・KC医師は2018年7月19日,軍ヘリによりジュムラからカトマンズへ強制移送され,午後4時にはトリブバン大学教育病院(TUTH)に収容された。

ゴビンダ医師の体調は,20日以上にも及ぶハンストのため極度に悪化,生命すら危険な状態になっていた。7月20日にKCを見舞ったデウバNC党首は,こう述べている。「彼は危険な状態だ。何か言いたそうだったが,話すことはできなかった。・・・・彼の背後には何百万人もの支持者がいる。政府は直ちにKCとの話し合いに応じ,彼の要求を聞き入れるべきだ。」(*67)

7月22日には,KCの母(80歳)が彼と面会し,精密検査受診を訴えた。この母の懇願を受け,KCが検査を受けると,冠疾集中治療室(CCU)での治療が必要なほど危険な状態であった。(*68)

7月25日付報道では,TUTH医師が,KCは危険な状態にあると警告した。白血球数,血糖値,カリウム値が,いずれも基準から著しく外れ,記憶喪失もある。このままでは,痙攣(seizure)を引き起こし,意識喪失(coma)になるという。

まさに極限状態。この文字通りの「決死のハンスト」は人々の関心をさらに高め,メディアが連日,大きく報道し,KC支持の集会やデモ,医療機関のストなどが拡大していった。

7月21日には,マイティガルでKC支持大集会が開催された。参加したのは,ガンガ・タパ元保健大臣らNC幹部数名,「新しい力」党のバブラム・バタライとヒシラ・ヤミ,ビベカシール・サージャ党幹部,スシル・カルキ元最高裁長官,人権活動家のクリシュナ・パダディ,女優のクリシュナ・マナンダールといった有力者・著名人をはじめとする多数の人々(参加者数詳細不明)。

マイティガル集会後,ニューバネスワルに向け,「マフィアのお友だち政府はいらない」などと書かれたプラカードを掲げ,風船を手にした「風船デモ」が行われた。このデモ隊は,ニューバネスワルで警官隊と衝突,デモ隊側数十人と警官11人が負傷した。この知らせを聞き,デウバNC党首はオリ首相に会い,警官隊の実力行使を非難し,KCの要求に応えなければ,闘争をさらに強化すると警告した。(*69, 70, 71)

翌22日には,「ゴビンダ・KC医師連帯同盟」主催のKC支持集会がダーバー広場で開かれ,医師,看護師,医学生ら約300名が参加した。さらに23日には,国民民主党,ビベカシール・サージャ党,ネパール医学協会を中心とするKC支持集会が開かれ,数百人が参加した。こうしたKC支持集会やデモは,ポカラなどでも実施され,全国へと拡大していった。(*72, 73)

■風船デモ(Republica, 22 Jul 2018)

*67 Bishnu Prasad Aryal, “180 days, 6 years, 15 hunger strikes,” Republica, July 18, 2018
*68 “Dr KC agrees to checkup at mother’s request,” Republica, July 24, 2018
*69 “For Dr. Govinda KC, Against Govt’s Decision,” Republica, July 21, 2018
*70 “Dozens including 11 police injured in protests over Dr KC’s demands,” Republica, July 22, 2018
*71 “Civil society takes to the street over Dr KC’s demands,” Republica, July 22, 2018
*72 “Civil society starts mass sit-in supporting Dr KC’s demands,” Republica, July 23, 2018
*73 “Civil society’s mass sit-in continues Monday,” Republica, July 24, 2018

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2019/05/06 @ 09:41