ネパール評論

ネパール研究会

マオイストの憲法案(19)

4(13)非搾取権,環境権

第35条 非搾取権(शोषण विरुद्धको हक)
(1)搾取されない権利の保障。
(2)宗教,慣習,伝統,習慣などを理由とした搾取の禁止。
(3)人身売買,奴隷制,債務労働の禁止。違反者処罰と被害者への賠償。
(4)強制労働の禁止。
(5)搾取管轄裁判所の設置。

この「非搾取権」は,暫定憲法にも規定されているが,マオイスト憲法案では,搾取を扱う独立の裁判所を設置することになっている。「資本主義的搾取」は禁止されていないものの、「搾取」と闘うマオイストらしい規定だ。

第36条 環境権
(1)健康で清潔で持続可能な環境で生活する権利。
(2)気候変化災害を予防し安全に生活する権利。
(3)環境破壊被害への賠償責任。

この環境権の規定は,暫定憲法第3編にはない。ネパールでは,温暖化による氷河湖決壊から大気汚染,ゴミ処理問題にいたるまで,農村でも都市でも環境問題が深刻化しつつある。憲法の環境権規定は,実効性は別として,少なくとも宣言的な意味はあるであろう。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2011/06/17 @ 11:02

カテゴリー: マオイスト, 憲法

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