ネパール評論

ネパール研究会

マデシ1万人,マオイスト7千人の国軍採用提案

バブラム首相は3日,マデシ1万人を国軍に採用する予定と述べた。本当なら,これは大変な数だ。

いまのマオイスト=マデシ連立政権は,「4項目合意」(8月28日)に基づき,成立した。合意内容は,例のごとく曖昧な部分が多いが,要点は次の通り。

(1)人民解放軍統合は,特別委員会で決定。統合は7千人。
(2)土地所有権は剥奪されない。ただし,被害者には補償。マオイスト,マデシ,ジャナジャーティ,タルーの紛争関係者への免罪。
(3)自決権を持つ包摂的民主的自治州の設立。
(4)包摂参加の法律制定。マデシを国軍に採用し,他の公共部門にも包摂採用。マデシ部隊編成。

「4項目合意」がほぼこのようなものだとすると,マオイストは「統一民主マデシ戦線(UDMF)」の要求を丸呑みし,首相職を獲得したことになる。

特に問題となるのは,国軍問題。マオイスト人民解放軍が7千人であるのに対し,バブラム首相発言によれば,マデシは1万人。包摂参加原理によれば,4万人くらいは増員せざるを得ないだろう。しかも,独立のマデシ部隊を編成する。

それと関連して,自決権を持つ自治州の設立。国軍内とはいえ,もしマデシ部隊のようなものが存在すれば,マデシ自治州の連邦離脱は住民が決意すれば,決して不可能ではなくなる。

紛争中の人権侵害への免罪にも,アムネスティなどが抗議声明を出している。バブラム政権は,はや雲行きが怪しくなってきた。

* Yubaraj Ghimire, “A brewing rebellion,” Indian expressm, Oct,1; Gani Ansasri,”Maoists, Madhesis ink four-point deal,” Republica, Aug.29; Kiran Pandey, “UCPN-M, terai parties ink pact on peace, govt,” rising Nepal, Aug.28.

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2011/10/04 @ 09:58