ネパール評論

ネパール研究会

米軍基地京都設置問題関係資料:前泊編著『日米地位協定入門』

米軍基地ができると,京都・丹後はどうなるのか? それは,この本を読むと,手に取るようによく分かる。
  ■前泊博盛(編著)『本当は憲法より大切な「日米地位協定入門」』創元社,2013年3月
  【参考】米軍経ヶ岬基地年表

本書によれば,在日米軍は,日米安保条約,地位協定,および他の諸々の合意や「密約」により,日本国内で自由に行動する広範な権限を認められている。

米軍関係者には日本への「出入国自由の特権」があり,米軍基地には「排他的管理権」がある(p35)。米軍には日本の法律が適用されず(p75),米軍基地は一種の「治外法権」であり(p73),米兵犯罪はほとんどまともには裁かれない(p73)。

法的には,安保条約等の日米条約群が憲法を含む日本の国内法に優位しており,その意味では「日本は法治国家ではない」(p238)。日本は,アメリカの属国・植民地であり,「主権国家とはいえない」(p86)。

本書は,在日米軍と米軍基地のこのような恐るべき実態を,豊富な実例と資料を用い,具体的に解明し,分かりやすく解説している。

いま京丹後市・経ヶ岬に設置されようとしているのは,まさに本書が告発する,そのような米軍基地である。

このような米軍基地は,いったん設置してしまったら,もはや撤去はおろか,最低限の監視や規制すらできない。いくら人権や民主主義を主張しようが,シビリアン・コントロール(文民統制)を叫ぼうが,馬耳東風,「治外法権」や軍事機密で守られた米軍や米軍基地を,いったい誰が,どのようにしてコントロールするというのか。

原発と同様,米軍基地にも,様々な甘い利権が付き,地域はすぐ分断され,取り込まれ,基地依存経済に転落してしまう。

そして,経ヶ岬基地には,160人もの米兵や軍属が配属される。橋下徹大阪市長があからさまに指摘したように,軍人・軍属の有り余る性的欲求は,何らかのかたちで慰安されなければならない。経ヶ岬基地でも,そのための慰安・娯楽の場が,必ず近辺の町村,たとえば宇川,伊根,間人,網野,峰山,宮津などにつくられるにちがいない。

橋本市長は,軍隊と性的慰安の必然的関係を指摘した点では,決して誤ってはいない。軍隊に性的慰安・娯楽施設はつきものだ。そして,もし橋本市長が沖縄米軍司令官に提案した合法的風俗業の活用で満足できなければ,性暴力に走りがちなこと,これまた事実だ。韓国や沖縄などで繰り返されてきた米軍関係者の性犯罪を見れば,これは明白だ。

しかも,そうした犯罪は,米軍特権や治外法権により,まともに裁かれ,処罰されることもない。

米軍基地の受け入れは,地域社会の健康と安全を根こそぎ放棄することにほかならない。日米の産軍官複合体の利益のために。

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   ■本書の帯

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/05/24 @ 19:19