ネパール評論

ネパール研究会

法治「信号機」よりも人治「ロータリー」

午前,1時間ほど王宮博物館前・カンチパト付近を歩いてみた。まず気になるのが,例の信号機。

タメル入口(王宮博物館・アメリカンクラブ・旧文部省)交差点の信号機。旧来の格調高い英国風ロータリーを撤去し,日本援助で高性能信号機を設置した。

電気は来ている。午前11時頃で交通量も多い。が,見よ! 赤黄点滅で,車も歩行者も信号機など全く見ていない。法治(rule of law)の権化「信号機」は完全無視,交通警官の指示に従い,通行している。昨夜,交通警官がいないときは,ロータリー式完全「自治」通行が実践されていた。何の問題も無し。(再設置「ロータリー」は右外回りではないが,原理は,ロータリー式と同じ。)

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■タメル入口交差点 SAARC本部前より(赤点滅)/パスポート・センター前より(黄点滅)

もう一つ,王宮博物館前(交通警察署前)交差点では,電気は来ているはずなのに,完全消灯,警官が交通整理。交通警察自身が,署の前で自ら法治「信号機」無視のお手本を示している。お見事!

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 ■王宮博物館前交差点 完全消灯信号/背後は交通警察署 

私の「ロータリー文化論」には批判も多いが,この十数年の観察で,その妥当性がかなり実証されたように思う。

ネパール社会は,人治(人の支配)原理で動いている。そこに法治の制度や機械を外から持ち込んでも,うまくはいかない。今後どうなるか分からないが,少なくともいままでは,そうであったといってよいのではあるまいか。

[追加]点灯信号機発見(2013ー11-01)
ラトナ公園・バスパーク前の歩行者用信号機が点灯されていた! といっても,車も歩行者も警官の指示に従っていたが。
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夕方,バスパークからキルティプルまでバスで1時間半。道路は車の洪水。途中のスタジアム前,野菜市場前などの高性能信号機は,もちろん全滅。すべて,警官が手信号で整理していた。

エンジンを切って待っているバスの中から見ていると,警笛の鳴らしあいで強力そうな方が,先に通されていた。これぞ人治,加徳満都の道路は法学教育の場としても有益だ。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/10/30 @ 23:13