ネパール評論

ネパール研究会

制憲議会選挙2013(14):選挙監視役カーター元大統領のオフサイド

カーター元大統領(カーターセンター創立者)が11月16日,選挙監視活動視察のため訪ネし,ヤダブ大統領,レグミ内閣議長(暫定首相),ウプレティ選管委員長らと会談した。

17日のヤダブ大統領との会談では,カーター元大統領は,国家統治形態としては「フランス・モデル」が望ましいとアドバイスした(kathmandu Post, Nov.18)。ダハール報道官の説明だが,おそらく事実だろう。

カーター元大統領は,制憲議会選挙監視活動で重要な役割を果たしているカーターセンターの創設者。いわば国際選挙監視活動の象徴的存在。その権威ある監視役が,投票の2日前に,選挙の最大の争点の一つである大統領-首相制について,特定の制度を推薦した。

たしかに,主要政党の間で,大統領と首相が様々な形で権力を分有するフランス式の採用が検討され,一時は内諾もあったらしいが,その後,立ち消え状態。フランス式採用か否かは,新憲法制定の最大の争点の一つだ。そんな重大問題について,有力援助国元大統領にして選挙監視活動の象徴的存在たるカーター氏が,特定諸政党を有利にするような発言をしたというのだ。

これは,ネパール選挙活動規則の違反であり,処罰の対象となる。実際には,米ネの力関係からして,それは不可能だが,公平中立であるべき選挙監視役の選挙介入発言は,政治的にも道義的にも許されざることである。

カーター元大統領は著名人のため,その発言が大問題となり,多くのネパール人の激しい怒りを買っているが,西洋諸国や国際機関の関係者によるこの種の発言は日常茶飯事,いつものことであり,慣れっこになってしまっている。内政干渉を内政干渉と感じなくなっているのだ。

しかし,いうまでもないことだが,「独立自尊」は民主主義以前であり,むろん選挙以前である。そんなことも分からない――ふりしている――のが,西洋諸国である。

▼投票所準備(パンガ,11月18日午後)
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緊急報告】先ほど午後7時10分頃と8時30分頃の2回,キルティプルの近く,おそらくリングロード付近から,大きな爆発音が聞こえた。詳細不明。投票日前夜,かなり緊迫している。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/11/19 @ 01:27

カテゴリー: 選挙

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