ネパール評論

ネパール研究会

京都の米軍基地(65): 米軍とキリスト教

米軍基地経ヶ岬通信所と京丹後市国際交流協会の主催で,キリスト教の復活祭を祝う「宗教行事」が実施されるそうだ。これが,その案内。

▼米軍フェイスブック 
イースター・エッグハント☆
日時:4月5日(日)10時~ 場所:セントラーレ・ホテル京丹後,参加費:無料
主催:米軍基地経ヶ岬通信所、京丹後市国際交流協会
内容:十字架にかけられて亡くなったイエス・キリストが、三日目に復活したことを記念・記憶する“復活祭(イースター)”を祝うため、特別に飾付けられたイースター・エッグ(お菓子が詰まったプラスチック卵)を、イースター・バニーというウサギが隠し、復活祭の朝にその隠された卵を子供たちが探すという文化が、主に欧米で毎年春に行われます。皆さんもこのエッグハンティングを体験してみませんか? アメリカの文化、そしてアメリカ人とふれあえる貴重な機会になりますので、多くのお子様・保護者様のご参加を受付けております!

▼「広報きょうたんご」(2015年2月15日)
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何よりもまず先に,ここで米日両案内文を比較してみよ! 正文は,もちろん米軍側案内。なぜ,日本側が,こんなとんでもない「誤訳」をしたのか? いうまでもあるまい。下記のような批判が,そのまま当てはまることを恐れたからにちがいない。しかし悲しいかな,主導権は米軍側にある。そんな植民地根性丸出しの日本側の卑屈な配慮などまったくお構いなく,正々堂々,平然と,宗教行事として,日本人住民に向け日本語で案内したのだ。正直な米軍! 立派な米軍!

この米軍側案内が呼びかけているように,復活祭は,宗教色が薄れてきたとはいえ,れっきとしたキリスト教の宗教行事。ブリタニカも,「イエス・キリストの復活を祝うキリスト教最古,最大の祝日」と説明している。

そのキリスト教行事としての復活祭を,キリスト教徒が自分たちだけで祝ったり,あるいは私的に友人や知人,あるいは一般の人々に参加を呼びかけるのは,もちろん自由である。そうした形であれば,大いに祝われてよいし,信者の友人に誘われたら,私も参加するかもしれない。

しかし,進駐米軍が軍として,そして京丹後市国際交流協会が協会として,復活祭を主催し,一般市民に参加を呼びかけるのは,いかがなものか?

参加費は無料となっているが,いったい誰が,経費を負担するのか? 米軍が出すのか? それとも,京丹後市国際交流協会が負担するのか? あるいは,折半か? ちなみに,交流協会は,設立と運営に市が深く関与している。

京丹後市国際交流協会は,市の企画推進課の肝いりで平成20年3月設立された。
 会員=個人143,団体4(H24),
 京丹後市補助金=110万円(H23),80万円(H24),根拠法令なし。単費財政負担

こうした事実を考え合わせるなら,この行事には,「政教分離の原則」の観点から,根本的な疑問を感じざるをえない。

また,それに加え,文化の観点からも,ここには見過ごせない問題がはらまれている。そもそも米軍はれっきとした軍隊であり,暴力装置である。その米軍が,軍事力を背に,進駐先の現地住民をキリスト教行事に勧誘する。これは,これまでに世界各地で深刻な紛争を引き起こし問題とされてきた,先進キリスト教強国による宗教侵略・文化侵略と,本質的には,同じことである。

様々な文化や宗教の競争的共存は,文化を発展させ豊かにしてくれるが,たとえ間接的にであれ,また金銭的にも多額ではないにせよ,ある特定の宗教ないし文化が軍隊や公権力をバックに宣伝される場合,文化間競争・宗教間競争は,もはや公平とはいえない。

そうした状況では,不利な立場に立たされる側の宗教や文化が反発し,根深く難しい宗教紛争や文化対立を引き起こす場合が多い。それは,途上国の現状を見れば,明らかである。

米軍は,米国を守るための先兵として,はるばる丹後半島にまでやってきたのだから,進駐先でやっかいなもめ事を引き起こすのは本意ではあるまい。外国軍が進駐先で嫌われるのは,いつどこでも同じこと。そう覚悟してあきらめ,できるだけ波風立てないように,ひっそり静かに駐留するよう心がけるべきだろう。

▼参考:復活祭関連本表紙
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[追加2015-03-18]
米軍は,3月14日,横浜で行われたカトリック「聖パトリック祭」パレードに参加した。ここでも政教一致,軍教一致。
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[参照]京都の米軍基地(91):武器を背に布教活動

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/03/15 @ 14:41