ネパール評論

ネパール研究会

オリ内閣拡大,困ったときの椅子頼み

大臣の椅子(ポスト)は,ネパールでも,日本など他の国と同様,政権維持のための,最も頼りになる手段だ。イザとなると,憲法規定も必要性もそっちのけで,大臣ポストが大判振る舞いされる。

いまオリ内閣は,マデシ反憲法闘争とそれに伴う「非公式経済封鎖」により窮地にある。マデシ要求を呑まなければ,「非公式経済封鎖」による石油・ガスなどの物資不足は長期化する。呑めば,今度は,マデシ以外の民族や社会諸集団が激しく反発する。二進も三進もいかない。

そこで,オリ首相は12月24日,いつもの手,大臣ポスト追加配分に踏み切ったのだ。新任大臣と拡大後のオリ内閣の構成は,以下の通り。
新任大臣(4)
 D・ボハラ(RPP):労働雇用大臣
 PB・シン(社会人民解放党):上水・衛生大臣
 SL・タパ(人民解放党):科学技術大臣
 E・ダカール(家族党):無任所
新任国務大臣(6,全員UML,無任所)
 D・バンダリ,MK・チョーダリ,DC・ヤダブ,NP・マガル,BB・マハト,DN・サハ
拡大後のオリ内閣(与党:UML,UCPN-M,RPP-Nほか12党)
 大臣40(首相1,副首相6,大臣21,国務大臣10,副大臣2)

内閣について,現行2015年憲法は,次のように規定している。
憲法第76条(9) 大統領は,首相の推薦に基づき,包摂原理に則り選ばれる25人以内の連邦議会議員からなる大臣会議[内閣]を組織する。
(原注)本条でいう「大臣」は,副首相,大臣,国務大臣および副大臣を含む。

 [訳注]大統領रास्ट्रपति 首相प्रधानमन्त्री 大臣मन्त्री 国務大臣राज्य मन्त्री 副大臣सहायक मन्त्री

オリ首相は,今回,いくつかの省を分割した。必要に迫られてというより,大臣の椅子を増やすためだと批判されている。また,無任所大臣もいっぱい。とくに新任国務大臣は全員UMLで,無任所。今後,具体的な担当任務が割り当てられるかどうか,不明。

このような省庁の分割や無任所の手を使えば,大臣はいくらでも増産できる。憲法の規定など,知ったことではない。ありがたい包摂民主主義の呪文を唱えさえすれば,憲法規定の州区画だろうが,大臣定員だろうが,たちどころに死文化されてしまうらしい。

151225

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/12/25 @ 19:40

カテゴリー: 行政, 議会, 憲法, 政党

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