真実和解委員会の構成と機能(3)
3.真実和解委員会の職務
真実和解委員会(TRC)の具体的な職務については,上述の「合意」や法令に細々と詳細に規定されている。記述が錯綜し,わかりにくいところもあるが,要点をまとめると以下の通り。
(1)重大な人権侵害の調査と結果報告
重大な人権侵害事件を調査し,加害者と犠牲者を特定。犠牲者には調査結果を通知し,「犠牲者証明書」を発行する。調査結果報告書は公表する。
(2)損害賠償および被害救済の勧告
委員会は,加害者に対し妥当な損害賠償を勧告する。財産被害については,当該財産の返却または損害相当額の賠償の勧告。
また,政府に対しては,必要な被害者救済の実施を勧告する。
・犠牲者への損害賠償。上限30万ルピー。
・無償教育。大学まで。
・医療支援。上限10万ルピー。
・リハビリ支援。
・雇用保障,職業訓練。
・失業者への無利子貸与金。上限50万ルピー。
・無利子事業資金貸与
・住居支援。上限50万ルピー。
・その他,必要な措置
(3)和解の勧告
委員会は,被害者または加害者が和解を申し出,和解が合法である場合は,和解を勧告する。
・加害者は,人権侵害を反省し,損害を賠償し,謝罪をする。
(4)罪の赦し(アムネスティ)
委員会は,加害者の申し出と被害者の同意がある場合,調査のうえ,罪の赦免(アムネスティ)を勧告する。罪の赦免には,次のことが必要:
・加害者が,重大な人権侵害を犯した事実を認めること,
・加害者が,加害行為に関する事実をすべて委員会に申し出ること,
・加害者が,加害行為を反省し,犠牲者に謝罪し,それを犠牲者に受け入れられていること,
・委員会は,被害者への妥当な損害賠償を勧告すること。
(5)訴追の勧告
加害者に対し罪の赦免(アムネスティ)が認められない事件の場合,または被害者との和解が不可能な場合は,委員会は,加害者の訴追を勧告する。
「重大な人権侵害」の場合,和解手続きに入っている者,および罪の赦免の勧告を受けた者を除き,委員会は,政府(法務長官)に対し,加害者の訴追を勧告する。
谷川昌幸(C)
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