ネパール評論

ネパール研究会

Archive for 9月 2019

情報洪水のネパール

ネパール情報が,このところ加速度的に急増している。

最大の要因は,いうまでもなくインターネットと情報機器(スマホ・パソコン)の普及。誰でも,どこでも文字・図表・映像・音声データを作成し,ネットを介して世界中に発信できる。しかも,いったん発信された情報は,その多くがどこかに保存・蓄積され,多かれ少なかれ利用可能だ。言語の違いでさえ,自動翻訳の飛躍的性能向上で,いまや誰にとっても障害ではなくなりつつある。

ネパールも,そうした情報化の例外ではあり得ない。技術的,可能的には,手間さえかければ,いまではネパールについてもたいていのことは知ることが出来る。分かるはずなのに分からないのは,検索の手間を惜しんでいるからにすぎない。

あるいは,ネパール・メディアの配信サービスに登録すればネパール発情報が,また各種自動配信サービスに「ネパール」,「Nepal」,「नेपाल」などをキーワードとして登録しておけば世界各国発ネパール情報が,時々刻々,配達されてくる。

さて,それはそうだとしても,実際には情報の大海をくまなく検索するのは大変だし,日々刻々配信のネパール情報もとてもじゃないがフォローしきれない。困った。どうしたものかなぁ?

【ネパール・メディアの現状】
ネット環境さえ整えば,ネパールにとって,地理的な「陸の孤島」はもはや何の障害でもない。しかも,様々な形の「後発国の優位」もある。今後が大いに期待される。ネパール・メディアの現状については,下記参照。

Nepal Media Survey 2019

Nepal is becoming a nation of net addicts, Nepali Times, April 12, 2019

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2019/09/24 at 10:52

カテゴリー: 情報 IT, 文化

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奄美の自然とその破壊(6)

5.自然破壊の土砂採取
湯湾岳からフォレストポリス(*),マテリヤの滝を経て東シナ海側の大棚に向け最後の峠を大きく回ったとき,愕然とした。
 *フォレストポリス=観光レジャー施設。キャンプ場,グラウンドゴルフ,フィールドアスレチック,バッテリーカー,売店など

美しい多雨林の山々に連なる海側の山が,ひと山丸ごと,山頂付近から下まで丸裸,茶褐色の山肌をさらけ出しているではないか! あまりにも,むごい。しばし呆然,その信じ難い光景を,ながめていた。

しばらくしてわれに返り,少し考えてみた。――とにかく,途方もない量の土砂採取だ。このままでは,この山全体が消えてしまう。奄美では,これまで車で走って見た限りでは,これほど大量の土砂を使っているところは見当たらなかった。いったい,これほど大量の土砂を何のために使うのか?(山からの同様の大量土砂採取は,帰途,名瀬の近くでも目にした。)

そうか,沖縄か! 沖縄は埋立名所,あちこちで土砂が海に大量投入され,空港やら産業用地が造成されている。この山の土砂も,沖縄に運ばれ,埋め立てに使用されてきたに違いない。たとえば,那覇空港(軍民共用)の拡張のために。あるいは,辺野古の米軍基地拡張が本格化すれば,そのジュゴンの海にも,この山の土砂が運ばれ,埋め立てに使われることになるに違いない。いや,すでに辺野古でも使用され始めているかもしれない(未確認)。

土砂採取されている目の前の山は,貴重な動植物が保護されている保護区・保護地域とは地続き。すぐ近く。図上で截然と線を引き,ここからは大規模開発OKというようなことが,許されてよいのだろうか? アマミノクロウサギなど特別に保護されるべき動物たちが行き来し,貴重な植物たちも双方に根付き群生し繁茂しているはずだ。それら,本来一体であるはずの自然の生態系を,人間の都合でバッサリ切り分け,一方を情け容赦なく「開発」してしまう!

自然など,いくら貴重だとされようが,それは建前,人間の欲にはかなわない。軍事や金儲けが,文句なく優先されてしまうのだ。


 ■山頂から削り取られる山

■土砂採取場下の大棚側入口

【参照】辺野古埋め立て用土砂について防衛省に質問ーその回答(福島みずほOFFICIAL SITE,2015.06.16)



■防衛省「福島議員資料要求ご回答」より

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2019/09/19 at 14:59

奄美の自然とその破壊(5)

4.マングローブ原生林と亜熱帯多雨林
(1)マングローブ原生林

(2)亜熱帯多雨林
南部内陸側はすぐ山地だ。湯湾岳(694m,奄美群島最高峰)をはじめ,標高からは想像できないほど本格的な山容の山々が連なり,いずれも鬱蒼とした多雨林に覆われている。素人目には自然林としか見えない。

住用マングローブ原生林から宇検村に入り,そこから湯湾岳登山道路を軽レンタカーで登った。細い曲がりくねった急峻な山道を登りきると,湯湾岳展望台への道との分岐点。今回は展望台は割愛し,そこから,さらに草木にトンネルのように覆われた山道を登ったり下ったりしなが北東へ向け進んだ。対向車はおろか,人気は全くない。

あわや遭難かと心細くなったが,周囲は自然の生気に満ち満ちている。九州以北では見たこともないような南国の草木が茂り,色鮮やかな蝶々が舞い,密林からは奇妙な大きな鳴き声(鳥?)が聞こえ,あげくはヘビ(ハブ?)さえ出てきた。神秘的な「マテリヤの滝(マテリア滝)」(奄美語で「日の射す美しい滝」)もある。

散々走り,ようやく展望の利く峠(赤土山展望台)に出ると,そこからは高い山々と深く切れ込んだ広大な多雨林が一望できる。ガイドなしでは探訪困難な「金作原原生林」(前掲写真参照)や,アマミノクロウサギをはじめ貴重な様々な動植物の見られる「特別保護地区」も,この雄大な多雨林の一部である。むろん,指定されているのは一部特定地域だけだが,線引きは人為的なもの,それら保護地区が周囲の未指定地域と有機的に結びつき,孤立しては存立しえないことはいうまでもない。

日本にも,しかもこんな小さな島に,これほど見事な大自然があるとは!

■山中の標識


■赤土山展望台より/同左


■山腹の植生/道路わきのシダ(?)
■マテリヤの滝


■自然保護指定地区(大和村HPより。一部修正・加筆)
=特別保護区 =第1種特別地域 緑線内=第2種特別地域

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2019/09/18 at 15:25

奄美の自然とその破壊(4)

4.マングローブ原生林と亜熱帯多雨林
2日目は丸1日あったので,島南部を海岸沿いにほぼ1周してきた。往きは太平洋側を住用町マングローブ原生林まで行き,そこから峠を越え宇検村へ,さらにそこから湯湾岳→フォレストポリス→マテリア滝をへて,東シナ海側の大棚に降りた。そして東シナ海側を北上し,名瀬を経て「ばしゃ山村」へ戻った。

島の北部と南部は,風景から受ける印象がかなり異なる。北部は山地は多いものの開けた感じだが,南部は鬱蒼と茂る亜熱帯多雨林に覆われた山々が連なる。また海岸は,太平洋側と東シナ海側では,全くと言ってよいほど風景が異なる。太平洋側は,荒々しく,隆起サンゴ礁に囲まれた,いかにも南国の島という印象だが,東シナ海側は大きな入江が多く,波静かな穏やかな海岸が多い。

(1)マングローブ原生林
最初に見学したマングローブ原生林は,太平洋側の住用川と役勝川が合流する河口に広がっている。広大なマングローブ原生林で,汽水域の干潟も広く,保護が万全であれば,さらに広がりそうに見えた。

このマングローブ原生林沿いには,大きな「道の駅・マングローブパーク」が開設されている。モダンな「マングローブ館」のほかに,広いグラウンドゴルフ場まで併設されている。

地域の「経済活性化」のためであろうが,どうみてもマングローブ原生林とは調和しない。自然保護と経済開発をどう両立させるか――難しい課題だ。

■マングローブ原生林
■原生林内カヌー・ツアー
■道の駅とゴルフ場(同左HPより

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2019/09/14 at 13:11

カテゴリー: 経済, 自然, 旅行

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奄美の自然とその破壊(3)

3.カトリック信仰の村々
予備学習なしだったので全く知らなかったのだが,奄美にはカトリック教会がたくさんある。カトリックは,ある意味,柔軟であり,伝統文化をうまく取り入れ,地方ごとの特色ある教会をあちこちにつくっている。奄美でも,そうした趣が見て取れる。

奄美のキリスト教は,1891年にパリ外国宣教会フェリエ神父の来島に始まり,以後,各地に教会が建てられ信者も増えていったが,国粋化・軍国化につれ信者迫害が激しくなり,教会施設も破壊されたり事実上没収されたりした。また戦争末期には,空襲を受け,名瀬聖心教会などが破壊された。奄美の教会は,そうした苦難を乗り越え,今日に至っているのである。現在の信者数は人口の6%ほど。ちなみに長崎は4%余。

今回は,それら奄美の教会のうち,通りすがりに目にした大笠利教会,瀬留教会,知名瀬教会の3教会を見学してきた。

いずれも南国奄美らしい趣のある教会で,たまたま来られていた信者さんが教会の由来や現状について親切に説明して下さった。

▼大笠利教会
■礼拝堂
■歴代司祭
■ガスボンベ利用募金箱

▼瀬留教会
 

▼知名瀬教会
■全景
■玄関
■マリア像

▼奄美の教会(名瀬聖心教会HPより

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2019/09/14 at 11:09

カテゴリー: 自然, 宗教, 文化, 旅行

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奄美の自然とその破壊(2)

2.「ばしゃ山村」の南国情緒
2泊した「ばしゃ山村」は,奄美空港から車で南へ10分位の太平洋側海岸沿いのリゾートホテル。

「ばしゃ」は奄美語で「芭蕉」。「ばしゃ山」は「芭蕉群生地」のことだが,もうひとつ,大切な「ばしゃ山」をもたせなければ嫁にいけない娘がいたという言い伝えから,そうした,あまり器量の良くない娘のことを奄美では「ばしゃやま」と呼ぶこともあるそうだ。ホテル「ばしゃ山村」の「ばしゃ山」がどちらを意味するかは,つい聞きそびれてしまった。

それはそれとして,「ばしゃ山村」のすぐ前は浜辺。水着に着かえ,部屋そばのガジュマルの下を通り,サンゴや奇妙な形の貝殻が打ち上げられている砂浜をほんの数分歩くと,そこはもう太平洋。外海は沖に出ると危ないので海岸近くを泳いでいると,大きな魚(魚種不明)がすぐ近くまで寄ってきた。魚もたくさんいるようだ。

その海沿いのレストランで朝日や夕日を眺めながら奄美料理をいただく。至福のひと時だ。

■ホテル遠景

■ホテル庭のガジュマル

■ホテル前の海岸

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2019/09/11 at 15:25

カテゴリー: 自然, 旅行

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奄美の自然とその破壊(1)

9月初旬,2泊3日で奄美大島に行ってきた。大阪・伊丹空港から直行便で1時間半ほど,大変便利で,ちょっとした息抜き旅行には最適だ。

奄美は初めて。予備知識ゼロ。航空券+ホテル+レンタカー(軽)セットの旅行社格安個人旅行。11時すぎ奄美空港に着くと,すぐ空港前でレンタカーに乗り,島の北部を見て回り,夕方,空港南方20分ほどの海岸沿いのホテル「ばしゃ山村」に入った。

1.濃い自然と人情
わずか半日の見分だが,奄美の自然も人々も実に素晴らしかった。自然は,亜熱帯のはずなのに,草も木も,磯の生き物たちも生気に満ち満ち,まるで熱帯のようだ。

人々は親切で,ある小さな集落で民家横の大きな木を眺めていると,通りがかりの村人が「ガジュマルだよ」と声をかけてくれ,そればかりか自宅庭先の木に鈴生りのグァバも見せてくれ,収穫してあった実をたくさんビニール袋に入れ,「おいしいよ」といって,分けてくださった。

■潮溜まりプール。太平洋側にはこのような潮溜まりがあちこちにある。

■ソテツの群生(笠利町)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2019/09/10 at 16:50

カテゴリー: 自然, 文化, 旅行

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